本研究は,大気濃度の平均化時間が濃度勾配法によるアンモニアガス(NH
3)およびアンモニウム塩粒子(pNH
4)の交換フラックスの算定値に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.2008年および2009年の春に北海道の畑において観測を実施した.大気濃度の観測にはフィルターパック法を用いた.大気濃度の観測頻度は昼間1~3回,夜間1回とした.昼間3回の観測を昼間1回とした場合の交換フラックスの誤差はNH
3およびpNH
4ともに小さく,両者は1:1に近い関係を示した.ただし,NH
3では牛ふん堆肥の施肥当日の誤差が比較的大きく,観測地から顕著なNH
3発生が生じるなどの撹乱が予想される場合には昼間の観測頻度を複数回とすることが望ましいと判断された.また,昼夜各1回の観測を日1回とした場合の誤差はNH
3で大きく,日単位の平均化により交換フラックスを平均30%過小評価した.交換フラックスの把握を目的とする場合には昼夜を区分した大気濃度の観測が不可欠であると結論された.一方,pNH
4については日単位の平均化であってもほぼ1:1の関係を示した.さらに,週単位の観測であっても,昼夜を区別することにより交換フラックスの算定値の誤差を低く抑えられることが示された.
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