大気環境学会誌
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45 巻, 3 号
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あおぞら
総説
  • 北田 敏廣
    2010 年 45 巻 3 号 p. 107-116
    発行日: 2010/05/10
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    大気化学輸送モデルの開発とその応用について述べた。特に、雲解像および雲非解像モデルおける、雲物理過程の扱いに焦点をあてて、雲解像モデルについては、日本海上の仮想的な雲生成が大陸起源の汚染物質の輸送と変質に与える影響について、また雲非解像モデルについては東アジアを対象とした湿性沈着に対する適用例について結果を紹介した。さらに、最近、話題となっている、日本の太平洋側都市域における光化学オキシダント・ピーク濃度に対する長距離輸送と日本起源光化学スモッグの相対的寄与について、化学輸送モデルを用いた推定結果について述べた。
原著
  • 水野  建樹, 目黒  靖彦
    2010 年 45 巻 3 号 p. 117-125
    発行日: 2010/05/10
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    都市部のNOxやSPMの最近の濃度減少に対して、自動車への排出規制がどの程度寄与したのかを道路交通センサスと常時監視測定局のデータを用いて推定した。都区内のように多くの自排局と一般局が混在しているような地域では、自排局と一般局のNOxやSPMの平均の濃度差は主要な道路を通行する自動車からの排出量と直接関係していると仮定して、1999年度と2005年度におけるそれぞれの濃度差と道路交通センサスの結果を組み合わせることによってディーゼル車とガソリン車の寄与率を推定した。次に、両年度における道路交通センサスデータ濃度差と交通量の差異からそれぞれの自動車の寄与率の変化を推察し、ガソリン車やディーゼル車への規制の効果を見積もった。その結果、NOxに対してはガソリン車への規制が大きな効果があり、規制により6年間で45%近い排出削減となったことが見積もられた。一方で、ディーゼル車規制では10%程度の削減に留まっていることが把握できた。SPMに対しては、道路直近だけの濃度を取り出せばガソリン車はほとんど無関係で、ディーゼル車だけの影響であることがわかった。さらに、1999年度からの6年間で、都区内を走行するディーゼル車全体で70%程度SPM排出量の削減が進んだと推察され、SPMの濃度減少にはディーゼル車への規制が極めて大きな効果があったことがこの解析からも裏づけられた。
ノート
  • 曹 仁秋, 牧野 国義, 東野 達, 山本 浩平
    2010 年 45 巻 3 号 p. 126-131
    発行日: 2010/05/10
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    前線の接近と通過に伴う気圧(AP)降下と上昇が粒子状物質(PM)濃度に及ぼす影響を、長期間モニタリングされたPM10 (全量) 、PM2.5(含揮発性成分、不揮発性成分、硫酸塩、硝酸塩、EC・OC)や気象要素の24時間平均値について解析した。モニタリングデータの統計的解析の結果、濃度は上昇時よりも降下時により有意に増加し、特に冬季に顕著であった。降下時と上昇時のPM2.5成分比を比較すると、有機物と硫酸塩は上昇時に成分比が上昇した。さらに、AP変化の開始時点と5hPa変化時点との濃度を比較したところ、降下時にはECと硝酸塩を除くほぼすべての成分濃度に有意な正の相関があったが、上昇時には有意差は認められなかった。また、PM個数濃度の粒径分布は、上昇時には降下時から小粒径側にシフトした。
技術調査報告
  • 加藤 善徳, 梅田 てるみ, 草野 一
    2010 年 45 巻 3 号 p. 132-143
    発行日: 2010/05/10
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    近年、地球温暖化による気候変動が大きな問題となっているが、これに伴い、海から輸送されてくる海塩物質量も大きく変動していることが考えられた。そこで、1984年から2004年までの間、横浜市磯子で観測した湿性沈着物(自動雨水採取装置により採取、以下、WD:Wet Deposition)、大気降下物(常時開放型濾過採取装置により採取、以下、WDD:Wet and Dry Deposition)デ-タを用い、Na+を指標とした海塩物質沈着量の経年変化を回帰分析した。
    その結果、WD、WDDのNa+沈着量の経年変化は、それぞれ、y=0.065x+0.50(y:Na+沈着量(g/m2/y)、x:year-1983、p<0.01)、y=0.082x+0.66(y:Na+沈着量(g/m2/y)、x:year-1983、p<0.01)となり、両者とも経年的に有意な増加傾向が認められた。さらに、WDについて、台風と台風以外の降水とに分け、Na+沈着量の経年変化を回帰分析したところ、これらは、それぞれy=0.038x-0.10(y:Na+沈着量(g/m2/y)、x:year-1983、p<0.05)、y=0.027x+0.60(y:Na+沈着量(g/m2/y)、x:year-1983、p<0.01)となり、両者とも経年的に有意な増加傾向が認められた。これらのことから、この21間に限って言えば、横浜における海塩物質の沈着量はやや増加傾向にあると推定された。
  • ―酸化触媒の効果―
    柴田 慶子, 柳沢 伸浩, 田代 欣久, 坂本 和彦
    2010 年 45 巻 3 号 p. 144-152
    発行日: 2010/05/10
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    加熱脱着-GC/MS法をディーゼルエンジン排出粒子中の多環芳香族炭化水素(PAHs)の分析に適用した。酸化触媒装着条件下における排出微量粒子や低圧インパクタ(LPI)にて分級捕集した微量粒子に含まれるPAHsの分析が加熱脱着-GC/MSで効率的に行えることがわかった。2種類のエンジンを用いて回転数をそれぞれ固定し、低負荷ならびに高負荷条件で全粒子中PAHsの酸化触媒有無(エンジン排気量6.6 L)の排出量、低負荷ならびに中負荷条件で全粒子中PAHsと粒径別粒子中PAHs(エンジン排気量3.0 L)の排出量を評価した。酸化触媒装着により、低負荷条件では82 %、高負荷条件では75 %、測定対象としたPAHs全体の排出量を削減できることがわかった。また、低負荷条件におけるPAHs排出量は、中負荷および高負荷条件よりも多い傾向が示された。低負荷条件の場合の粒径別PAHsの排出量は、文献で報告されている大気中PAHs濃度が最大となる粒径(0.48~0.68 μm)に対し、より小さな粒径(0.13~0.22 μm)が最大となっていることがわかった。
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