近年、地球温暖化による気候変動が大きな問題となっているが、これに伴い、海から輸送されてくる海塩物質量も大きく変動していることが考えられた。そこで、1984年から2004年までの間、横浜市磯子で観測した湿性沈着物(自動雨水採取装置により採取、以下、WD:Wet Deposition)、大気降下物(常時開放型濾過採取装置により採取、以下、WDD:Wet and Dry Deposition)デ-タを用い、Na
+を指標とした海塩物質沈着量の経年変化を回帰分析した。
その結果、WD、WDDのNa
+沈着量の経年変化は、それぞれ、y=0.065x+0.50(y:Na
+沈着量(g/m
2/y)、x:year-1983、p<0.01)、y=0.082x+0.66(y:Na
+沈着量(g/m
2/y)、x:year-1983、p<0.01)となり、両者とも経年的に有意な増加傾向が認められた。さらに、WDについて、台風と台風以外の降水とに分け、Na
+沈着量の経年変化を回帰分析したところ、これらは、それぞれy=0.038x-0.10(y:Na+沈着量(g/m
2/y)、x:year-1983、p<0.05)、y=0.027x+0.60(y:Na
+沈着量(g/m
2/y)、x:year-1983、p<0.01)となり、両者とも経年的に有意な増加傾向が認められた。これらのことから、この21間に限って言えば、横浜における海塩物質の沈着量はやや増加傾向にあると推定された。
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