大気環境学会誌
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46 巻, 4 号
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あおぞら
総説
技術調査報告
  • 下田 美里, 田子 博, 熊谷 貴美代, 齊藤 由倫, 小澤 邦壽, 飯島 明宏
    2011 年 46 巻 4 号 p. 209-216
    発行日: 2011/07/10
    公開日: 2011/09/12
    ジャーナル フリー
    群馬県では硝酸性窒素による地下水汚染が深刻な状況にあり、その改善のためには各種発生源からの窒素負荷量を定量的に把握する必要がある。本研究では、地下水窒素汚染に対する大気からの窒素沈着の寄与を推計した。窒素化合物の乾性沈着量を定量的に見積もるため、土地利用形態の異なる県内の4地点において大気中窒素化合物濃度を測定し、インファレンシャル法から乾性沈着量を求めた。群馬県全体における乾性沈着量は0.46 t-N/km2/yrと見積もられ、硝酸ガス(HNO3-N: 47%)およびアンモニアガス(NH3-N: 21%)からの寄与が大きかった。これまでの研究で求めた湿性沈着量1.68 t-N/Km2/yrと合計すると、大気沈着量は2.14 t-N/km2/yrであった。群馬県における地下水への全窒素負荷量(農業、畜産、工場排水、生活排水からの負荷量を含む)に対する大気沈着の寄与率は24%と推計された。
  • 丹羽 忍, 芥川 智子, 酒井 茂克, 秋山 雅行, 小暮 信之, 田中 敏文, 瀬賀 八郎
    2011 年 46 巻 4 号 p. 233-239
    発行日: 2011/07/10
    公開日: 2011/09/12
    ジャーナル フリー
    小規模煙道用として最近開発されたノンサンプリングの光散乱式ダスト濃度計(DDM-HAL2)を用いて、ダストとPM2.5の連続モニタリングについての検討を行った。まず、実験室において、試験用粉体(JIS Z 8901)としてフライアッシュ(5、10種)、関東ローム(7、8、11種)、タルク(4、9種)の計7種類を選定し、DDM-HAL2の機器性能試験を行った。その結果、粉体の濃度変化に対する応答性の良さ、性能試験における粉体の取り扱い性や再現性の適・不適、DDM-HAL2の指示値とダスト及びPM2.5濃度の間に共にR=0.9以上の高い相関性などが認められ、PM2.5の連続測定の可能性も明らかになった。一方、農作物残渣・木屑ペレット燃焼ボイラと都市ビル等熱源用の木質バイオ・天然ガス燃焼ボイラを対象に、DDM-HAL 2の現場実証試験を行った。その結果、ほとんどが平均径0.5~0.8μm程度の微粒子に対して0.04g/m3N~1.5g/m3Nの広い濃度範囲において、ダスト濃度だけでなくPM2.5濃度においても極めて高い相関性(R=0.977、0.983)を有すること、長期間にわたる指示値やゼロ点の安定性の良さ、低濃度においてダスト及びPM2.5濃度の急激な変化を的確に捉えられることなどが実証された。
論壇
  • 小林 真
    2011 年 46 巻 4 号 p. 217-223
    発行日: 2011/07/10
    公開日: 2011/09/12
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日の東北関東大地震を切っ掛けとし、福島第一原子力発電所から放出された放射性セシウム-137Csを土壌から除去する効果的な方法を探索するため、木質資源を用いて作成した炭による放射性物質の吸着および除去の可能性について検討した。本論文中では、以下の5つのトピックについて過去の文献を元に議論した:炭の物質吸着のメカニズム、炭の吸着能力のバリエーション、土壌中での137Csの存在形態、そしてそれらを踏まえた上で実際に被災地においてどのように炭を使うか、そしてファイトレメディエーションとの複合的な効果である。過去の研究から、主な放射性汚染物質である137Cs を炭を利用して吸着することができる可能性を見出した。一方で、KCl溶液や有機物を土壌中へ添加することでより効果的に炭を用いた137Csの吸着除去の可能性も考えられる。炭の材料として間伐材や竹材などの未利用の木質資源を利用することで、広範囲にわたる汚染物質の除去へも対応可能となる。一方で、炭を土壌中へ施用する方法のみならず、放射性物質を吸着させた後に土壌中から取り出し吸着した137Csを回収する工程も必要と考えられた。
原著
  • 塩田 憲司, 今井 玄哉, 高岡 昌輝, 木本 成, 松井 康人, 大下 和徹, 水野 忠雄, 森澤 眞輔
    2011 年 46 巻 4 号 p. 224-232
    発行日: 2011/07/10
    公開日: 2011/09/12
    ジャーナル フリー
    大気中浮遊粒子状物質(SPM)や微小粒子状物質(PM2.5)の固定発生源調査として、都市ごみ焼却施設4施設において集塵機(BF)前および煙突前の煙道中でばいじんを粒径別に捕集した。BF前の平均ばいじん濃度は1,300~2,000mg/Nm3の範囲で、煙突手前が0.007~0.31mg/Nm3の範囲であった。煙突前の排ガス中ばいじん濃度の平均値は1998年時点に比べ、1/200以下に低減されていることがわかった。ばいじんの粒径頻度分布はBF前においては1.0μm、10μm付近にピークを持つ2山型を示した。これは過去の調査と同様の結果であったが、煙突前においては傾向が見られなかった。煙突手前の排ガス中のSPM濃度については環境基準値(0.10mg/m3)と比べると、施設AおよびCではその値はすでに下回っていた。PM2.5濃度についても施設Aでは、環境基準値の1年平均値(15μg/m3)をも下回っていた。全粒径ばいじんの集塵効率についてはいずれの施設においても99.9%以上であり、設備更新前に比べ上昇した。PM2.5の集塵効率についても99.9%以上であった。BF後の排ガス中サブミクロン以下の粒子は30nm付近に頻度分布を持っていた。以上より最新式の排ガス処理設備が導入された都市ごみ焼却施設からは1次粒子としてのSPM、PM2.5の排出は極めて少ないと考えられ、また1998年の調査結果と比べ有害大気汚染物質およびダイオキシン類除去対策の効果が認められた。
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