関東地方の単作水田におけるオゾン(O
3)の実態を把握することを目的として,2010年6月から2011年9月にかけてパッシブサンプラー法を用いてO
3濃度週間値を2高度(地上2, 6 m)で測定し,微気象測定と併せて濃度勾配法により交換フラックスを算定した.また,パッシブサンプラーを用いたO
3濃度の測定では,従来は亜硝酸とアルカリを含浸させたフィルターを用い,含浸させた亜硝酸をO
3が酸化して生成した硝酸を定量してO
3量に換算するものの,アルカリを含浸させたフィルターは大気中の硝酸ガスを捕集する能力を有し,O
3濃度を過大評価する可能性があったことから,亜硝酸とアルカリを含浸させたフィルターとアルカリのみを含浸させた同じ材質のフィルターを併用し,両者の硝酸捕集量の差をO
3が生成させた硝酸とみなす改良法を試験した.従来のO
3用フィルターの硝酸ガス捕集効果は平均9.2%であり,必ずしも無視できないものであった.調査地のイネ栽培期間のO
3濃度週間値はしばしば40 ppbを超え,周辺の一般環境大気測定局のO
3濃度週間値よりも高い傾向を示した.調査地と測定局のO
3濃度週間値の相関がきわめて高かったことから,測定局のO
3濃度の経時変化パターンを用いて求めた調査地のO
3濃度時間値から交換フラックスおよび沈着速度の時間値を求めて整理した.調査地のO
3沈着速度の中央値は,非耕作期間の昼間が0.78 cm s
-1,夜間が0.26 cm s
-1,イネ栽培期間の昼間が0.94 cm s
-1,夜間が0.40 cm s
-1であった.
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