大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
47 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
あおぞら
原著
  • 鵜野 伊津志, 板橋 秀一, 山地 一代, 高見 昭憲, 長田 和雄, 横内 陽子, 清水 厚, 兼保 直樹, 梶井 克純, 加藤 俊吾, ...
    2012 年 47 巻 5 号 p. 195-204
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル フリー
    沖縄辺戸岬での2008年春季の集中観測時を対象として、領域化学輸送モデルCMAQを用いて越境大気汚染の特徴の解析を行った。観測期間中に8回の間欠的な大陸からの流れ出しが起こり、数値シミュレーションにより濃度の時間変動や、高度分布がほぼ説明された。観測期間のライダー計測で捕らえられた汚染物質の高度分布も全般的にモデル結果と良く一致し、汚染質の輸送は2km以下で生じ、汚染気塊の空間スケールが説明できた。濃度のピークの出現時の気象条件には、単純な寒気の吹き出し(BCF)のケースと、高気圧の北側輸送(HPN)を汚染質が輸送されるケースの2つパターンがあることが判った。この2つのケースについて、汚染気塊のaging情報が異なり、HPNの方が、汚染気塊はagingされていた。中国の排出量のゼロにした感度解析で、中国起源のSO42--O3-COの相関関係を調べた。その結果、辺戸岬で観測された濃度ピーク時には中国起源の汚染質の寄与が圧倒的であることが判った。NMVOCの成分とその比の解析から、モデル計算に用いられているNMVOC発生源インベントリの改善の必要性が示唆された。
  • 板橋 秀一, 鵜野 伊津志, Kim Soontae
    2012 年 47 巻 5 号 p. 205-216
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル フリー
    東アジア域の急速な発展に伴う大気環境の変動への理解を進めるには、ソース・リセプター解析をもとに大気汚染物質排出量の大気質への影響を評価することが不可欠である。本研究では、光化学オゾン(O3)のように非線形の化学反応を伴う化学物質にも適用可能な感度解析手法Higher-order Decoupled Direct Method(HDDM)を東アジア域のソース・リセプター解析に初めて適用し、2007年春季の広域越境大気汚染の事例に応用した。従来、排出量変化に対する化学成分濃度の応答を評価するには、排出量を様々に変化させてその応答を見るBrute Force Method(BFM)が主流であったが、HDDMでは1回のモデル計算で排出量変化に対する化学成分濃度の非線形的な応答も含めて求められる。HDDMによる感度解析の結果に基づきO3感度レジームを判定し、越境大気汚染時にはNOX sensitive領域にあったことがわかった。また、排出量変化に対する化学成分濃度の応答を評価するparametric scalingを用いて各感度レジームでO3等値線図を作成し、近年の東アジア域のNOX排出量の増大が越境大気汚染時のO3濃度上昇の要因となったことを示した。さらに、zero-out contribution(ZOC)を用いて非線形性も考慮した発生源寄与を解析し、越境大気汚染時には高濃度O3の30 %程度が中国の人為起源大気汚染物質由来として説明でき、特に中国華北平原(central eastern China; CEC)がその5割以上を占めていることを明らかとした。本研究を通じて、HDDMが東アジアスケールの大気環境研究手法として十分に適用できることを示した。
  • 斎藤 正彦, 若松 伸司, 岡崎 友紀代, 堀越 信治, 山根 正伸, 相原 敬次
    2012 年 47 巻 5 号 p. 217-230
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル フリー
    丹沢山地ではブナの衰退が進み、その原因の一つとしてO3が影響していると考えられている。しかし、モデルを用いた立体的な解析は行なわれてこなかったため、本研究では、オゾンゾンデ観測結果と数値モデル(気象モデルと大気質モデル)を用いて、丹沢山地とその周辺のO3の挙動を解析した。丹沢山地内の谷間で発生する気流は気象モデルでは再現されないが、O3濃度の水平方向の変化スケールが十数kmであるため、大気質モデルによるO3濃度の推定は妥当であると考えられた。モデルの格子間隔を15 km(本州域)と5 km(関東域)にした場合の地上O3濃度は、丹沢山地(犬越路局)とその周辺の測定局においては大きな差は認められなかった。犬越路局でのO3濃度の日変化が小さい、つまり日中にO3濃度が上がらず、夜間に濃度が下がらない特徴があった。日中にO3濃度が上がらない理由として、1化学反応によるO3生成が座間に比べ犬越路局で小さく、2乾性沈着によるO3濃度の減少が座間に比べ犬越路局で大きいためであったと解釈される。夜間にO3濃度が下がらない理由として、夕方、海上の低いO3濃度の進入(移流)が座間に比べ犬越路局では十分でないため、O3濃度は低下しなかったと解釈される。オゾンゾンデ観測や大気質モデル結果より、ABL(大気境界層)内ではO3濃度は高さと共に増加するか、または一定の分布を示し、ABLより上層の自由大気ではO3濃度は急速に低下しバックグランド濃度(50 ppb)近くなった。数値モデルは、丹沢山地でのO3濃度のモニタリングを補完することが可能であることが示唆され、数値モデルの有効性が示された。
技術調査報告
  • 横田 久司, 上野 広行, 石井 康一郎, 内田 悠太, 秋山 薫
    2012 年 47 巻 5 号 p. 231-239
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2012/10/23
    ジャーナル フリー
    ガソリンを給油する際にその一部が蒸発し、大気へ排出される「給油ロス」がある。SHEDを用いて、給油ロスに含まれるVOC成分を測定し、合計及び131種の成分別排出係数を算定するとともに、給油所からの給油ロスによるVOC排出量を推計した。2009年度における東京都内の給油ロスによる排出量は約1万トンと見込まれ、2005年度に比べて給油ロスの都内合計のVOC排出量に対する割合は増加していた。給油ロスによる損失額は、東京都で約19億円、全国では約162億円と見積もられた。VOC成分には、大気中VOC測定用の標準ガスに含まれない“未定量成分”が存在し、これらの成分にはアルケン類が多いため、MIRを考慮した未定量成分のオゾン生成への寄与割合は大きく増加した。以上のことから、VOC対策を効果的に推進していくためには、VOC成分の個別の排出量を的確に把握することが不可欠であることが示唆された。
入門講座
feedback
Top