大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
48 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
あおぞら
原著
  • 斎藤 正彦, 若松 伸司, 相原 敬次
    2013 年 48 巻 6 号 p. 251-259
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2013/12/18
    ジャーナル フリー
    丹沢山地のブナ林の衰退原因の一つとしてO3が挙げられているが、丹沢山地全域でO3濃度がどのような状況にあるのかは分かっていない。そのため本研究では、数値モデル(気象モデルと大気質モデル)を用いてO3濃度を算出し、気孔からのO3 の取り込み量(PODyaccumulated Phytotoxic Ozone Dose, y = a threshold)を推定した。計算期間は開葉から落葉までを含む7ヶ月間として、数値モデルによりO3濃度や気象要素(温湿度、日射量、風速)を計算した。丹沢山地の犬越路局で実測されたO3濃度、温度、湿度から求めたPOD126.2 mmol/m2)とモデルから求めたPOD1 (27.7 mmol/m2) とを比較した結果、ほぼ同程度の値が得られ、モデルに適用可能性があることが示された。POD1の水平分布から、丹沢山地全域でPOD1のクリティカルレベル4 mmol/m2/yearUNECE, 2010)を大きく超えており、これは首都圏からのO3生成の前駆物質の排出の影響であると考えられる。夏季にO3フラックスが低下するのは、O3濃度の低下と飽差や日射量の気孔パラメータ値の減少により、気孔が閉じる傾向にあったためと解釈される。また、気孔の開口に好適な温度および湿度条件により、標高が高いほどPOD1が大きくなり、標高の高いところに生育しているブナには大きいリスクとなっている。AOT40 についても、同様に丹沢山地全域でクリティカルレベルを超えているが、AOT40 による評価に比べO3フラックスFstが時間値で推定され、詳細にO3による影響を考察することができる。
  • 田中 伸幸, 安田 百慧子, 津崎 昌東, 宮崎 あかね
    2013 年 48 巻 6 号 p. 260-267
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2013/12/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,食材中の主要構成成分である炭水化物,タンパク質,脂質の含有量が,加熱調理による多環芳香族炭化水素 (PAHs)生成量に及ぼす影響を評価した。7 種類の食材を焼き調理した際の調理排気を採取し,PAHs を分析した。その結果,焼き調理による排気中の粒子状PAHs 濃度は,食材中の脂質含有量が少ないクルマエビ,トリササミ,コーンにおいて低く (0.012~0.068 μg m-3) ,脂質含有量が多いサーモンや豚肉などで高くなる(21.3~703 μg m-3) 傾向が示された。また,脂質を多く含有する食材では,食材の種類によらず3 環のPhenanthrene,および4 環のFluoranthenePyrene が支配的であり,これら3 成分で全PAHs 53~62%を占めた。さらに,調理排気中のPAHs 濃度は食材中の脂質含有量と強い正の相関を示した一方で,炭水化物やタンパク質含有量とは相関が認められなかった。以上の結果から,焼き調理にともない生成するPAHs は,食材の種類によらず,食材中の脂質含有量から推計しうることが示唆された。また,豚肉調理により得られたデータから,生成したPAHs の分配を評価した。その結果,豚肉の焼き調理により生成するPAHs のうち,食材に残留するのは0.02%に過ぎず,ほぼ全量が調理排気に移行し,換気扇フィルタに捕捉される47%を除いた53%は室外大気に放出されると推計された。
  • 奥田 知明, 小島 礼子, 渡部 功太郎, 松浦 慎一郎, 大久保 圭祐, 鳩谷 和希, 郡司 裕真
    2013 年 48 巻 6 号 p. 268-273
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2013/12/18
    ジャーナル フリー
    我が国における優先取組物質の見直しに対応した大気中クロム分析法の開発を目指し検討を行った。PTFE フィルターに PM2.5 等の大気粉じんを捕集し、三次元偏光光学系エネルギー分散型蛍光X 線分析装置で非破壊的に全クロムを測定した後、アルカリ抽出/イオンクロマトグラフィー/ポストカラム吸光光度法 (IC/DPC ) により六価クロムを測定した。IC/DPC 法による検量線の直線性および繰り返し精度は良好であったが、試料からの抽出に用いるNaOH に起因すると考えられる六価クロムのブランクが一定量認められた。VFe および三価クロムのイオン種の共存による六価クロム分析への影響は認められなかった。本研究における分析操作によって試料中の六価クロムはほぼ100%回収され、また六価からの価数変化も起こらないことが示された。実大気試料採取時における三価および六価クロムそれぞれの価数変化の検討を行ったところ、1 週間大気を通気させてもクロムの価数は変化しなかった。2012 6 月~2013 7 月の期間の横浜におけるPM2.5 中クロム濃度は6.5±4.9 ng/m3、同六価クロム濃度は1.0±1.0 ng-CrVI/m3となり、六価クロムの全クロムに対する割合は17.4±15.1%となった。全クロム濃度から六価クロム濃度を差し引くことで、クロム及び三価クロム化合物濃度 (5.5±4.7 ng/m3) を求めることができ、優先取組物質の見直しに対応した大気中クロム分析を達成することができた。
速報
  • 鵜野 伊津志, 弓本 桂也, 原 由香里, 板橋 秀一, 金谷 有剛, 杉本 伸夫, 大原 利眞
    2013 年 48 巻 6 号 p. 274-280
    発行日: 2013/11/10
    公開日: 2013/12/18
    ジャーナル フリー
    化学輸送モデル (GEOS Chem) とアジア域における大気汚染物質排出インベントリREAS を用い、2004 – 2013 年にかけての東アジア域のエアロゾル濃度の経年変化の解析を行った。その結果、2013 1 月は特異的にシベリア高気圧強度が弱く、中国東部で高濃度汚染の起こりやすい条件となり、PM2.5 の超高濃度汚染が発現したことを明らかにした。モデルによる収支解析の結果から、2013 年1月は例年に比較して、中国から日本域への輸送量の大きな増加はなく、日本における高濃度の頻度も例年より少なかった。
入門講座
feedback
Top