大気環境学会誌
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49 巻, 2 号
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あおぞら
総説
  • 田中 茂
    2014 年 49 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 2014/03/10
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    拡散スクラバー法は、ガスと粒子との拡散係数の相違を利用してガスを捕集・除去する効率的な方法である。多孔質テフロンチューブに空気を通気するとガスは多孔質テフロンチューブ内壁の孔へ拡散・浸透する。拡散したガスは、多孔質テフロンチューブ外壁に配置された水等の吸収液に捕集される。拡散係数の小さい粒子は空気の流れに沿って通過する。吸収液に純水を用いれば、様々な水溶性ガス(HCI, HNO3, SO2, NH3, HCHO等)を捕集できる。拡散スクラバーは、単にガスの捕集装置ばかりでなく、簡単に分析装置と接続できる優れたインターフェースである。IC、HPLCなどの分析機器との接続により、サブppbvレベルの空気中微量ガスの自動連続測定が実現できる。拡散スクラバー法は、環境計測技術だけではなく、有害ガスを除去する空気清浄システム等の技術としても利用できる。優れた特徴を有する拡散スクラバー法により開発された空気清浄装置が様々な産業・生活環境での有害ガス除去技術として広く利用されることが期待できる。
原著
  • 菱田 尚子, 永淵 修, 田辺 雅博
    2014 年 49 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2014/03/10
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    一降雨イベント内における降水中水銀濃度の変動とその要因を明らかにするために、滋賀県長浜市余呉町摺墨に開発した自動降雨採水器を設置した。自動降雨採水器は、接続した貯留槽内の降水を降雨量一定量間隔で回収するようプログラムを設定した。自動降雨採水器を用いて採取したサンプルを測定した結果、降雨イベントごとで平均降水中総水銀濃度は異なった。さらに一降雨イベント内でも濃度変動を示した。降雨初期に濃度が最も高く徐々に低下する傾向がみられたが、イベントにより濃度変動パターンは様々であった。降水中に含まれる水銀は、2価水銀と粒子状水銀の2形態である。降水中水銀を形態別に測定したところ、降水中水銀の大部分は2価水銀が占めており、そこに粒子水銀が付加される。一降雨イベントを分割して降水を採取したことにより、降水中総水銀濃度は2つの存在形態の影響を受けて、一様ではない濃度変動をすることが明らかになった。
ノート
  • 鶴丸 央, 長井 祥秀, 梶井 克純
    2014 年 49 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2014/03/10
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    O3誘起によるHOx (OH, HO2) ラジカル生成速度直接測定装置の開発を行った。大気試料にO3を添加して反応管に導入し、生成したROx (OH, HO2, RO2) 濃度をPERCA/LIF (PEroxy Radical Chemical Amplification/Laser Induced Fluorescence) 法を用いて測定することで、反応により生成するHOx量を評価した。測定したROx濃度は添加したO3濃度の関数として表される。測定したROx濃度についてO3濃度が0 ppbv近傍での傾きを求め反応時間で除することによって、単位O3濃度および単位時間あたりのラジカル生成速度であるPHOxを定義した。本実験装置におけるROxの壁面消失を見積るためisopreneとO3を用いた基礎実験を行った。測定により得られたROx濃度とMCM計算モデル (ver. 3.2) により得られたROx濃度から、壁面消失を見積もる装置関数KK=0.42×[O3]0.048と決定した。測定したPHOxの値はKを用いて補正した。実大気中のNOxおよびO3によるバックグラウンドの変動を避けるため、大気試料のPHOx観測時には大気試料を一度テドラーバッグに捕集した。2013年7月の京都大学構内において、大気試料のPHOxおよびROx濃度の観測に成功した。両者は昼高く夜低い同様の傾向を示した。
技術調査報告
  • 黒島 碩人, 緒方 裕子, 大河内 博, 床次 眞司, 反町 篤行, 細田 正洋
    2014 年 49 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2014/03/10
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    2012年6月27日から2013年7月30日にかけて、福島県浪江町南津島地区の里山でスギと落葉広葉樹の生葉、落葉、表層土壌、底砂を一月ごとに採取し、NaI(Tl) シンチレーション検出器で放射性セシウム(134Csおよび137Cs)濃度を測定した。放射性セシウム濃度は落葉>表層土壌>生葉>底砂の順であり、放射性セシウムは落葉に蓄積している状況にあった。冬季の積雪と春先の融雪は落葉の放射性セシウム濃度に影響を及ぼさなかった。森林内を流れる小川の上流域の底砂と1ヶ月後の下流域の底砂では放射性セシウム濃度に正の相関関係があり (r=0.87, n=9)、この里山では放射性セシウムが浮遊砂として平均的に1ヶ月で500 mを移動したことが示唆された。
原著
  • —粒径分布と吸湿性の気管支・肺胞沈着率への影響—
    梶野 瑞王, 五十嵐 康人, 藤谷 雄二
    2014 年 49 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2014/03/10
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    呼吸により体内に取り込まれるサブミクロン粒子は気道深部に到達するが、その気管支・肺胞への沈着率は、粒径約10 nmで70%、100 nm~1 μmで10~20%、10 μm以上でほぼ0%と大きく異なる(成人男子、軽運動時、鼻呼吸)。また、気管支・肺胞内は水飽和であるため、乾燥径が同じであっても、吸湿性の違いにより、沈着率も変化する。発生時の煤粒子は疎水性 (fresh soot) であっても、一般に長距離輸送中に親水性成分の凝縮を受け、粒径が大きく、吸湿性も高くなるため (aged soot)、気管支・肺胞への沈着率は小さくなると考えられる。したがって、fresh sootを多く含む発生源近傍の都市気塊と、aged sootを多く含む長距離輸送気塊では、大気濃度が同じであっても、気管支・肺胞への沈着量は、前者の方がより多くなる。Fresh sootとaged sootの代表的な粒径分布と吸湿性を仮定すると、fresh sootの沈着率は、aged sootに比べて約2倍高い可能性が示唆された。エアロゾル粒径分布を、対数正規分布を仮定した数基準乾燥幾何平均径で40~280 nm、幾何標準偏差を1.3~2.0、吸湿性κを0~0.7で変化させたとき、気管支・肺胞への沈着率は4.00–42.0%と1桁程度変化した。有害物質の正確な曝露評価のためには、その重量だけでなく、キャリアとなるホストエアロゾルを特定し、その粒径分布と吸湿特性の時空間分布を把握する必要がある。
原著
  • 山﨑 聖司, 三巻 耕太郎, 野口 直人, 飯田 弘
    2014 年 49 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2014/03/10
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    連続的なUV-B照射がキュウリ (Cucumis sativus L.) 子葉に及ぼす影響を調べるために、キュウリ子葉の切片の観察およびCs1-MMP遺伝子の発現解析を行った。Cs1-MMP遺伝子はMMPをコードし、キュウリ子葉の老化からプログラム細胞死 (PCD) の遷移時に発現する遺伝子である。切片の観察の結果、UV-B照射8日目には柵状組織細胞のクロロプラストの配列が異常になった。UV-B照射12日目には表皮細胞が押しつぶされたことにより、向軸側の子葉表面が滑らかになった。UV-B照射8~16日目には柵状組織の縦の長さが減少した。UV-B照射16日目には柵状組織の上層の細胞の細胞壁の厚さが薄くなった。また、UV-B照射8~16日目にはCs1-MMP遺伝子の発現が誘導された。以上のことから、UV-B照射したキュウリ子葉においてCs1-MMP遺伝子の発現誘導と、表皮細胞と柵状組織の上層の細胞の崩壊のタイミングには強い相関性が示された。UV-B照射したキュウリ子葉においてPCDにつながる細胞壁の崩壊にCs1-MMP遺伝子が関与する可能性が考えられる。
技術調査報告
  • 福井 哲央, 國領 和夫, 馬場 剛, 神成 陽容
    2014 年 49 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2014/03/10
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    大気汚染物質の総合排出インベントリーEAGrid2000-Japanを、2005、2010年度に年次更新するため、排出実態の変化が大きい発生源に重点をおいて、新たに推計を行った。推計対象物質はCO、CO2、NMVOC、NH3、NOx、PM10、PM2.5、SO2である。基本的な方針として、排出推計カテゴリーごと(例えば自動車における車種・燃料等の区分)の活動による排出に関して、年間の全国排出量を推計し、相対的な地域分布・季節変化は2000年度と同じであることを仮定して配分する方法をとった。推計の結果、2005、2010年度ともに、汚染物質別に最も排出寄与の大きい発生源は、自動車 (NOx, CO, PM10, PM2.5)、発電所と廃棄物焼却施設以外の工業部門を中心とする大規模燃焼発生源 (CO2, SO2)、固定蒸発発生源 (NMVOC)、農業 (NH3) であった。人為起源の大気汚染物質排出量は、2000年度から2005年度にかけてCO2以外はすべて低減し、2005年度から2010年度にかけてCO2を含めてすべて低減している。NOx、CO、PM10、PM2.5は自動車、NMVOCは自動車と固定蒸発発生源の排出低減の寄与がそれぞれ大きく、排出規制の効果を反映した結果となっている。一方、NH3は農業と便槽の排出低減の寄与が大きく、家畜頭数や非水洗化人口等の活動量の減少を反映した結果となっている。
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