大気環境学会誌
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50 巻, 1 号
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あおぞら
総説
〔学生・若手研究者の論文特集(1)〕
原著
  • 桐山 悠祐, 速水 洋, 板橋 秀一, 嶋寺 光, 三浦 和彦, 中塚 誠次, 森川 多津子
    2015 年 50 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2015/01/10
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    近年、日本国内において、オゾンの前駆物質濃度は減少する傾向にあるがオゾン濃度は長期的なトレンドでは増加している。越境汚染の影響が比較的少ない夏季の関東地方では国内の発生源対策が重要と考えられる。本研究ではWRFおよびCMAQと2000年から2005年にかけての排出量減少を反映した排出量データを用いた大気質シミュレーションを行い,排出量の削減がオゾン濃度に与えた影響を検証した。その結果、2000年から2005年のNOxとVOCの排出量削減により,オゾン日中最高濃度は東京湾沿岸の一部を除いた関東全域で減少を示していた。また、NOxのみ削減した場合、オゾン日中最高濃度は東京都心を中心に増加するが内陸部では減少することが示された。VOCのみの削減では関東の全域で濃度減少が示され、VOC削減の有効性が示唆された。さらに、高濃度日に対する感度解析の結果、内陸部ではNOx sensitive あるいはMixed sensの状態を取る事が多く、一方の都心周辺ではVOC sensitiveの状態が優勢であった。この結果よりそれぞれの地域でのオゾン濃度低減に対する前駆物質の削減の有効性が示された。
  • 石山 絢菜, 高治 諒, 定永 靖宗, 松木 篤, 佐藤 啓市, 長田 和雄, 坂東 博
    2015 年 50 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 2015/01/10
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    新規に開発した熱分解/キャビティ減衰位相シフト分光法によるPANs (peroxyacyl nitrates), ONs (有機硝酸エステル,organic nitrates) 連続測定装置を用いて、石川県能登半島珠洲で2012年12月からPANsとONsの測定を行っている。本稿では、PANsとONsの季節変動性に焦点を置いて2012年12月~2013年8月まで解析を行った結果を報告する。PANsとONsは春季に高濃度、夏季に低濃度となる季節変動性を示した。珠洲に到達する気塊を、後方流跡線解析を用いて、ロシア、中国北東、中国・韓国、日本、海由来に分類した。冬季から春季にかけてPANsとONs濃度はともに中国・韓国由来の気塊において高くなっている一方、春季から夏季にかけて濃度の気塊の由来地に対する依存性は見られなくなった。さらに、冬季から春季にかけてPANsとONsは規則的な日内変動を示さないが、春季から夏季にかけてPANsとONsはともに夜間は濃度が低く日中に濃度が高くなる明確な日内変動を示した。このような結果になった原因として、冬季から春季にかけては長距離輸送により、春季から夏季にかけては観測地点近傍での光化学生成反応により、PANsとONs濃度変動が支配される寄与が大きいことが挙げられた。
  • 林 伊津美, 中根 英昭, 上窪 哲郎
    2015 年 50 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2015/01/10
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    気象庁の測定によると、1990年代半ば以降は、札幌、つくば、那覇のいずれにおいてもオゾン全量が増加しているにもかかわらず、地上紫外線量が減少していない。この一見矛盾する現象の特性を理解するために、札幌、つくば、那覇の気象庁による正午のブリューワー分光光度計による紫外線分光観測データについて、オゾン全量の影響を受けるUVインデックス (290~400 nm) とオゾン全量の影響を受けない長波長UVインデックス(UVAインデックス;324 nm観測値に基づき計算)の時系列データを比較した。
    その結果、UVAインデックスとUVインデックスの比 (UVA/UV) の有意な増加傾向が検出されたのは札幌のみであり、つくば、那覇においては変化がない、またはわずかな減少傾向が見られた。すなわち、オゾン全量の影響を検出することができたのは札幌のみであった。UVインデックスに対するオゾン全量の影響は、つくば、那覇では小さいか、または他の要因に隠されていることが考えられる。上記の結果について、airmass factorの考慮、エアロゾルの粒径の変化等を組み合わせて説明することが有効であると考えられるが、実際の変化についてさらなる検討が必要である。
  • 荒木 真, 岩橋 香季, 嶋寺 光, 山本 浩平, 近藤 明
    2015 年 50 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2015/01/10
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    PM2.5のモニタリングネットワークは既存測定局への追加配置を原則として急速に整備が進められているが、結果として適正な配置のネットワークが得られるかは不明である。モニタリングネットワークの最適化の研究では観測値を用いて最適化を行うことが多い。そのため、構築初期段階など測定値が対象領域の濃度分布を十分に代表しない場合にはその手法は適用できず、日本におけるPM2.5のモニタリングネットワークへの適用も困難である。本研究では観測値の代わりに大気質モデルによる計算値を用い、これにハイブリッド遺伝的アルゴリズムを適用して近畿地方におけるPM2.5観測網の最適化を行い、それと比較することで現在のネットワークの評価を試みた。得られた最適化ネットワークは比較的均一で対象領域全体の濃度分布を十分再現できる配置であった。現在のネットワークは高濃度域が出現する傾向がある大都市部では濃度分布を把握できる配置であるが、対象領域全体の代表性には向上の余地があり、それは既存ネットワークへの再配置によって実現可能であると考えられた。PM2.5測定機を既存測定局に設置することを原則とした配置方法は、おおむね妥当であることが示された。濃度が高い地域、あるいは人口が多い地域により多くの測定局が配置されるように、それぞれ濃度および人口による重み係数を導入して最適化を行ったところ、人口による重み係数は良好に動作して人口を反映したネットワークが得られた。
〔一般論文〕
原著
  • 吉門 洋
    2015 年 50 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2015/01/10
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    首都圏から北に開ける関東平野中央部で夏季に出現するオゾン高濃度現象に関与するであろう前駆物質濃度の挙動を、気象条件と関係づけて解析し、VOC規制の影響についても検討した。大気常時監視測定局で継続的に測定されてきたNMHC、NOx、光化学オキシダント (Ox) 濃度と風データ12年分(2000~2011年、7~8月のみ)を利用した。また、アメダス日照および風データにより海風日・非海風日の判定を行った。
    Ox高濃度の出現率が圧倒的に高い海風日について、東京都区内の前駆物質濃度に注目し、日中のOx生成に関与する06~09時の3時間平均濃度が高くなる気象条件を探索した。海風開始以前の早朝に静穏で、特に都心部に向けて収束する風向分布の時に濃度が上昇し、日中のOx高濃度出現に結びつくことがわかった。また、そのようなケースで東京都の東部から埼玉県北部にわたる広域Ox高濃度が発生していた。
    しかし、対象期間の後期にはこのような早朝の濃度上昇が目立たなくなり、広域Ox高濃度の出現は格段に減った。しかし、より低いNMHC濃度域において、前期にもかなりの出現比率があった平野北部でのOx高濃度出現はあまり改善されず、後期にかえって目立つようになった。
技術調査報告
  • 吉門 洋
    2015 年 50 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2015/01/10
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    簡易な論理の組み立てと現状データ解析によって光化学オキシダント(Ox) 前駆物質の排出削減効果を試算した2005年の東京都Ox対策検討会の方法を、その後の実測データにより検証するとともに、その手法によって近年のOx高濃度日数の変化をVOC排出規制の効果として評価できるかどうかを検討した。
    この試算の手法では年々の気候変化の影響が混入するが、海風日に限定して評価するなどにより、その影響がかなり除去され、結果は改善された。
    基準期間2000~2002年以降の10年程度の範囲では、この試算はおおむね現実となっており、検討対象である関東平野中央部の全体としては、NMHC濃度低減の効果によりOx高濃度日が顕著に減少したと判定できた。しかし、海風の風下地域にあたる対象地域北部では効果が現れにくい汚染構造の存在が推測された。
解説
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