大気環境学会誌
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50 巻, 4 号
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あおぞら
研究論文(原著論文)
  • 山崎 龍哉, 高橋 章, 松田 和秀
    2015 年 50 巻 4 号 p. 167-175
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/01/09
    ジャーナル フリー
    PM2.5の森林への乾性沈着における成分間差違を明らかにすることを目的として、2012年12月から2013年11月の1年間、東京郊外の森林において樹冠上から林床にかけて無機イオン成分濃度の鉛直プロファイルを測定した。PM2.5は、当該森林に設置された観測鉄塔を用いて、1週間ごとに連続して捕集した。観測地点におけるPM2.5中の主な無機エアロゾルは季節や高度によらず、(NH4)2SO4およびNH4NO3であった。いずれの季節においても両成分間のプロファイルに明確な差が現れ、SO42-に比べてNO3-の濃度が林床方向へ大きく減衰していた。気温の鉛直プロファイルから、冬季と春季は樹冠下において林床付近の気温が高い傾向を示した。一方、夏季と秋季は樹冠上から樹冠内にかけて高度間における気温の差は見られず、樹冠下では林床付近の気温が低い傾向を示した。これらの気温分布から、冬季と春季には林床付近の温度上昇にともなうNH4NO3の揮発の影響が顕著に現れた可能性が示唆された。また、夏季と秋季における樹冠内部の両成分のプロファイルの差は、HNO3の沈着除去にともなうNH4NO3の揮発影響に起因する可能性が示唆された。林床付近の温度上昇または樹冠によるHNO3の沈着除去により、NH4NO3粒子は沈着面直近でHNO3にガス化し、(NH4)2SO4粒子よりも効率よく大気から除去されることが示唆された。
研究論文(ノート)
  • 中込 和徳, 花岡 良信, 本間 大輔, 五十嵐 歩, 宮地 斗美, 佐々木 一敏, 細井 要一
    2015 年 50 巻 4 号 p. 176-184
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/01/09
    ジャーナル フリー
    2012年および2013年の夏季に長野市内で実施したPM2.5成分調査結果について、SO42-を目的変数、石油燃焼の指標元素 (VまたはNi) および石炭燃焼の指標元素 (As、Pb、Cdのいずれか) を説明変数とし、外れ値の存在を考慮して線形重回帰分析を行った。その結果、Vを石油燃焼の指標元素とした場合、石炭燃焼の指標元素としてAs、Pb、Cdのいずれを用いても、得られた重回帰式によりSO42-濃度変動の約9割が説明できた。ただし2012年7月26~29日はSO42-濃度が特異的に高く、外れ値として除外された。重回帰式の切片はおおむね0であり、外れ値期間を除くと、観測されたSO42-の大部分は石油および石炭燃焼起源であったと考えられた。この重回帰式をもとに石油燃焼と石炭燃焼の寄与割合を推定したところ、平均で54:46であり両者は同程度であった。また後方流跡線の経路区分(中国大陸、東シナ海、日本)と石油および石炭燃焼寄与濃度の関係について検討した結果、石油燃焼については、それぞれ2.7、2.5、2.3 μg/m3とおおむね一定であった。一方石炭燃焼については、それぞれ3.8、2.1、1.3 μg/m3と大陸寄りの経路ほど大きく、大陸の寄与が大きいと考えられた。2012年7月26~29日に観測された高濃度SO42-の要因としては、後方流跡線解析等の結果から、桜島等九州地方の火山の影響が示唆された。得られた重回帰式をもとに、その寄与率を推定したところ5~6割に及んだ。
研究論文(技術調査報告)
  • 奥田 知明, 永井 雄祐, 磯部 涼真, 船戸 浩二, 井上 浩三
    2015 年 50 巻 4 号 p. 185-191
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/01/09
    ジャーナル フリー
    PM2.5を対象とした分析を行ううえで、分粒装置の使用は必須であるが、インパクター法やサイクロン法では捕集板や壁面等からの粒子の再飛散が起こる可能性がある。バーチャルインパクター法は再飛散を防止できるが、従来のものは形状が複雑であり、流量も小さいものが多かった。そこで本研究では、極めてシンプルな構造を持つ単孔ノズル型のミドルボリュームPM2.5バーチャルインパクター (単孔VI) の開発と性能評価を行った。製作した単孔VIによる分級曲線の傾きは米国EPAの連邦標準測定法に指定されているWINSインパクターと同程度であったが、単孔VIによる50%分粒径はWINSより微小側を示した。単孔VIのノズル間距離と副流流量の変化による分級性能への影響は顕著ではなかった。一方、加速ノズル内径を大きくすると、分級曲線の傾きを保ったまま50%分粒径が粗大側にシフトした。単孔VIおよびWINSを分粒装置として用いて得られたPM2.5中化学成分の比較を行った。単孔VIとWINSの分級特性の違いのため、いくつかの化学成分において両者の値は異なっていたが、PM2.5質量濃度に関しては、両者の値に有意な違いは認められなかった。
  • 辻本 浩子, 山岡 純子, 仲地 史裕, 川中 洋平
    2015 年 50 巻 4 号 p. 192-198
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/01/09
    ジャーナル フリー
    大気中微小粒子状物質 (PM2.5) の酸分解/誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS) 法の酸分解および測定方法について変更を行うことで、従来一斉分析が困難であったケイ素 (Si) を含む無機30元素の一斉分析法の開発を試みた。硝酸、フッ化水素酸および過酸化水素を用いた従来の酸分解法では、開放系で行う加熱濃縮の工程で分解液中のSiが四フッ化ケイ素として揮散してしまう。そこで本法では、マイクロ波による密閉加圧分解した試料を、加熱濃縮を行わずに耐フッ化水素酸仕様のICP-MS測定に供することで、測定対象元素の溶解を十分に確保しながらSiの損失をおさえることに成功した。本法における対象30元素の添加回収率は96.0~110%であり、操作中に損失がないことを確認した。本法を都市大気粉塵 (NIES CRM No. 28) およびPM2.5の認証標準物質 (NIST SRM2783) に適用した結果、測定値/保証値の比はNIES CRM No. 28で0.92~1.10 (Si:0.96)、NIST SRM2783で0.80~1.21 (Si:1.02) であり、よい一致がみられた。本法は、PM2.5の環境基準と同程度の粉塵量に対してSiの揮散のない分解が可能であり、かつ従来法よりも前処理操作を短縮できることから、PM2.5の無機30元素一斉分析法として十分に実用性を有する定量法である。
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