2012年および2013年の夏季に長野市内で実施したPM
2.5成分調査結果について、SO
42-を目的変数、石油燃焼の指標元素 (VまたはNi) および石炭燃焼の指標元素 (As、Pb、Cdのいずれか) を説明変数とし、外れ値の存在を考慮して線形重回帰分析を行った。その結果、Vを石油燃焼の指標元素とした場合、石炭燃焼の指標元素としてAs、Pb、Cdのいずれを用いても、得られた重回帰式によりSO
42-濃度変動の約9割が説明できた。ただし2012年7月26~29日はSO
42-濃度が特異的に高く、外れ値として除外された。重回帰式の切片はおおむね0であり、外れ値期間を除くと、観測されたSO
42-の大部分は石油および石炭燃焼起源であったと考えられた。この重回帰式をもとに石油燃焼と石炭燃焼の寄与割合を推定したところ、平均で54:46であり両者は同程度であった。また後方流跡線の経路区分(中国大陸、東シナ海、日本)と石油および石炭燃焼寄与濃度の関係について検討した結果、石油燃焼については、それぞれ2.7、2.5、2.3 μg/m
3とおおむね一定であった。一方石炭燃焼については、それぞれ3.8、2.1、1.3 μg/m
3と大陸寄りの経路ほど大きく、大陸の寄与が大きいと考えられた。2012年7月26~29日に観測された高濃度SO
42-の要因としては、後方流跡線解析等の結果から、桜島等九州地方の火山の影響が示唆された。得られた重回帰式をもとに、その寄与率を推定したところ5~6割に及んだ。
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