大気環境学会誌
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50 巻, 6 号
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あおぞら
研究論文(ノート)
  • 峰島 知芳, 中根 令以, 島田 幸治郎, 利谷 翔平, 佐藤 啓市, 大山 正幸, 寺田 昭彦, 細見 正明
    2015 年 50 巻 6 号 p. 249-256
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2016/04/05
    ジャーナル フリー
    土壌からの亜硝酸ガス (HONO) の直接発生が昼間に存在する未解明のHONO発生源となり得る可能性が指摘されている。我々は、水田の中干し期間に、ダイナミックチャンバー法とフィルターパック法を用いてHONOの直接発生量を測定した。観測されたフラックスは、先行研究と同様の値で、最大値は40.4 ng/m2/sであり、土壌の酸化還元電位 (Eh) が負の還元状態から正の酸化状態に変化した後であった。また、フラックスは日中に多く (3.5±0.9 ng/m2/s)、夜間に少なかったが (1.5±0.3 ng/m2/s)、フラックスの増大は土壌温度の変化による化学平衡の偏りと気液平衡だけでは説明できなかった。肥料施肥の影響を調べるために、化学窒素肥料を慣行量施肥した系(施肥系)と、無施肥の系(コントロール系)の2系を比較した結果、施肥系の方がコントロール系よりHONOフラックスが平均して大きかった。これは、土壌中のNO2、NO3に差がなかったことから、施肥系の方が土壌の含水率が低かったことが原因として考えられる。今回観測されたフラックスの大気中HONO濃度への影響は無視できない大きさであることがわかった。
研究論文(技術調査報告)
  • 上野 広行, 齊藤 伸治, 國領 和夫
    2015 年 50 巻 6 号 p. 257-265
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2016/04/05
    ジャーナル フリー
    1990~2011年度の関東地方の常時監視データを用いて、光化学オキシダント (Ox) の前駆物質である非メタン炭化水素 (NMHC)、窒素酸化物 (NOx) 濃度とOx生成量との関係を解析した。気象の影響を除くと、前駆物質濃度とOx生成量との関係は明瞭になり、関東地方は大局的にはVOC-sensitiveの状態にあると考えられた。また、前駆物質濃度とOx生成量との関係は3期に分けて異なっており、これにはOx測定法の変更が影響している可能性が示唆された。大気中VOC組成の変化としては芳香族化合物が減少していたが、全体の反応性は大きく変わっていないと考えられた。Ox高濃度日低減のための前駆物質濃度低減率を推定した結果、NMHC濃度を2009~2011年比で20%低減すればNOxが20%低減したとしてもOx高濃度日は半減するものの、Ox高濃度日をゼロにするためにはNMHC濃度を50%程度低減する必要があると考えられた。
  • 萩野 浩之, 森川 多津子, 秋山 賢一, 佐々木 左宇介
    2015 年 50 巻 6 号 p. 266-277
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2016/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では、ガソリン燃料蒸発ガス組成の特性と大気環境への影響度を把握することを目的とし、市場で販売されている燃料に比べてオレフィン類の含有量が少ないガソリン燃料により、給油時と車両の終日車両保管時(DBL)において排出される揮発性有機化合物を調査した。給油時の排出では、実際に計測した蒸発ガス組成比に対し、ラウールの法則(燃料組成比と蒸気圧のデータ)から推定した蒸発ガス組成比を比較した。その結果、蒸発ガスの計測値と燃料組成からの推計値の組成比はおおむね一致し、給油時の環境温度や流速による大きな差異は見られなかった。DBL試験において、蒸発ガスの組成は、車両保管時の1日目は芳香族分の割合が高く、2日目以降はパラフィン類が主成分であり、燃料蒸発ガスのうち、低い分子量のVOC(C5以下)の割合が高かった。これら組成の違いは、1日目までは透過(燃料タンクやチューブからの揮発)により、2日目以降は破過(燃料タンクからの蒸発ガス回収装置(キャニスタ)中の活性炭からの揮発)によるものと考えられる。大気質への影響を評価するため、最大増加反応性(MIR)を用いたオゾン生成ポテンシャル(OFP)による指標値を算出した。給油時やDBL試験のキャニスタ破過後のOPFは、本研究で用いた燃料組成から推定した蒸発ガスのOPFと類似する結果であった。また、国内外の燃料組成のデータを比較した場合、蒸発ガスのOFPは燃料中の組成によって大きく変化し、特にオレフィン類の含有量の影響を受けることが示唆された。地域別のVOC排出量について各発生源の排出量で重み付けしたOFPEWを調べた結果、給油時とキャニスタ破過後による寄与は地域により異なることが示唆された。また、全発生源からのVOC排出量のOFPEWに対する燃料蒸発ガスによる寄与は、2010年8月のケースで4~21%であった。
  • 井上 和也, 東野 晴行
    2015 年 50 巻 6 号 p. 278-291
    発行日: 2015/11/10
    公開日: 2016/04/05
    ジャーナル フリー
    社会的に関心が高いオゾン等の2次生成ガス物質にも適用可能であり、かつ、行政の担当者等モデルの非専門家にも簡単に利用可能な大気モデルADMER-PROを開発、公開した。ADMER-PROは以下の特徴を有している。1)有害大気汚染物質等任意の個別VOC成分を含む排出物質と2次生成ガス物質の濃度分布を同時に推定可能、2)諸物質の排出量等入力データをモデルに内蔵しているため、本モデルひとつで複数物質の濃度分布を推定可能、3)リスク評価でしばしば必要となる年間等長期間の平均濃度を比較的短時間で推定可能、4)Windows PCにて簡単な操作で実行可能。ADMER-PROを関東・近畿地方における複数物質の年間平均濃度分布推定に適用し、計算結果を実測値と比較することにより現況再現性を評価した結果、本モデルは、NOxや有害大気汚染物質のVOC成分等排出物質、2次生成ガス物質のいずれの濃度についても、おおむねファクター2の精度で実測値を再現する能力があり、比較的良好な現況再現性を有するモデルであることがわかった。本モデルの公開により、排出物質とそれらを原因物質として生成する2次生成ガス物質の両方を考慮した化学物質のリスク評価・管理が大きく進展することが期待される。
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