観測例の少ない山梨県地域における大気エアロゾルの動態を解明するため、甲府市の中心部に近い住宅地域において観測を行った。得られた化学成分濃度を関東地方及び長野県、静岡県の住宅地域で得られた結果と比較すると、甲府地域はこれらの地域の中では微小粒子濃度はやや低いが、特にNO
3-とNH
4+の含まれる割合が低く、一方炭素成分の含まれる割合は高い傾向が認められた。PM
10への寄与が大きい成分は有機物成分、土壌・鉱物成分、nss-SO
42-であり、PM
10に対するPM
2の質量比は平均63.6%であった。PM
2質量への寄与が最も大きい成分は有機物成分であり、冬季に濃度が高い傾向を示した。自動車排ガスとバイオマス等廃棄物焼却の影響が示唆され、中でも水溶性成分はバイオマス等廃棄物焼却の、非水溶性成分は自動車排ガスの影響がより強く示唆された。また、夏季を中心に光化学反応による水溶性成分の生成も示唆された。次いでnss-SO
42-の寄与が大きく、光化学反応による生成のため夏季に高濃度を示した。PM
10-2質量への寄与が最も大きい成分は土壌・鉱物成分であり、春季に高濃度を示し、黄砂の飛来の影響が認められた。次いで有機物成分が重要であり、バイオマス等廃棄物焼却あるいは植物片の影響が示唆された。アジアの大陸地域からの輸送の影響が確認された成分は黄砂に由来するnss-Ca
2+であり、PM
10-2中NO
3-も大陸地域あるいは日本国内でこれに取り込まれて輸送されてきたと考えられる。一方、PM
2中の主成分である炭素成分やnss-SO
42-などには、気団の輸送経路と濃度との関係は認められなかった。
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