大気環境学会誌
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51 巻, 4 号
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あおぞら
研究論文(原著論文)
  • 鵜野 伊津志, 長田 和雄, 弓本 桂也, 板橋 秀一, 桑原 昇平, Xiaole Pan, 原 由香里, 山本 重一
    2016 年 51 巻 4 号 p. 181-189
    発行日: 2016/07/10
    公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー

    黄砂時には、硝酸塩 (NO3) が高濃度になることが知られている。我々は福岡市近郊で1時間の高分解能で微小(粒径2.5 μm以下の粒子でPM2.5と記す)と粗大(粒径2.5–10 μmの粒子でPMcと記す)モードのNO3と0.5–10 μmの個別粒子数濃度の連続観測を行い、黄砂とともに微小と粗大モードのNO3の濃度レベルと時間変化の詳細な観測とモデル解析に成功した。観測からは微小と粗大NO3の重量比はほぼ1 : 3で、粗大NO3/PMcの重量比は5–8%に達し、両者の間にはR=0.87の高い相関関係が見られた。これは黄砂粒子の表面にHNO3が不均質反応で取り込まれ、主にCa(NO3)2として越境輸送されるためと考えられる(以下、黄砂に取り込まれたNO3をNITDと記す)。このダストとの不均質反応過程を含む化学輸送モデルを用いてシミュレーションを行い、観測されたNO3の日変化が再現できた。モデルによるソース・レセプター解析結果は、福岡に到達する時点では、微小NITD2.5と粗大NITDcの70–80%が北京・華北平原から上海にかけての大規模な大気汚染発生源のNOxに起因し、日本国内寄与は11%以下であった。観測とモデル解析から、不均質反応により黄砂に取り込まれたNO3濃度の増加量は、粗大NO3の方が多いが、微小NO3の高濃度化にも影響があり、観測された微小NO3の時間変化はNITD2.5を入れないと再現できなかった。これは微小黄砂表面での不均質反応で生成されるNO3も、PM2.5大気汚染に対して重要であることを示している。

研究論文(ノート)
  • 板野 泰之, 山神 真紀子, 長谷川 就一, 田子 博, 長田 健太郎, 鈴木 義浩, 秋山 雅行, 山川 和彦, 菅田 誠治
    2016 年 51 巻 4 号 p. 190-195
    発行日: 2016/07/10
    公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー

    全国の21自治体より提供されたPM2.5自動測定機の空試験のデータを解析したところ、空試験の平均値は±5 μg/m3の範囲内であったが、平均値算出のためのデータ数(空試験の実施継続時間数)には15–55時間の幅があった。標準偏差には測定原理の違いに起因すると考えられる機種差が認められたが、そのような機種差では説明がつかない著しく大きい値も散見された。これらの結果を踏まえ、空試験の結果から区間推定した母平均および母標準偏差を評価指標とすることで、確度と精度を評価する方法を考えた。実際に、自動測定機を用いて15時間の空試験を5回実施し、平均値については信頼区間が0 μg/m3を、標準偏差の信頼区間は測定機設置当初に実施した長期空試験から推定された信頼区間を含むことを評価基準とし、95%信頼区間を用いた評価を試行した。その結果、明らかな測定状態の異常に起因する測定値の低下やばらつきの増大を適切に棄却することができた。

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