大気環境学会誌
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52 巻, 2 号
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あおぞら
〔学生・若手研究者の論文特集〕
研究論文(ノート)
  • 田中 清敬, 速水 洋, 齋野 広祥, 三浦 和彦, 板橋 秀一, 齊藤 伸治
    2017 年 52 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー

    都心上空での大気質を把握するため、東京スカイツリー(TST)で上空の大気質の定点観測を行ってきた。その中で、2015年12月9~10日には地上で高濃度のPM2.5が観測された。この事例に着目し、地上・上空の各種汚染物質の濃度変動から、都心域での地上–上空間における大気質の挙動差、PM2.5の高濃度要因を解析した。9日午後の東京スカイツリー高度320m (H320)で地上より高い二酸化硫黄(SO2)濃度が観測された。これは9日18時ごろから境界層が形成され、H320は南風により大規模固定煙源や船舶の影響を受け続けたためと思われる。都心付近で微小粒子状物質(PM2.5)濃度が90 μg/m3を越えた10日夜は、いわゆる房総前線に伴う逆転層の形成が高濃度の原因と考えられた。この高濃度域は東京23区南東部が中心で、高濃度汚染気塊の高さは22~23時で200m程度と推定された。また、両日午前中のH320と地上(H10)の粒子数濃度比(NH320/NH10)は、粒径が小さいほど早く増加を始める傾向があった。

一般論文
研究論文(原著論文)
  • 澤田 寛子, 河野 吉久, 玉置 雅紀
    2017 年 52 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー

    対流圏オゾン濃度の上昇によりイネの収量が低下することが明らかになっているが、米の品質に与える影響については解明が進んでいない。さらに、地球温暖化の進行時に危惧される気温とオゾン濃度が同時に上昇した複合条件下における米の品質について検討した報告はない。本研究では、気温とオゾン濃度上昇の複合ストレスが玄米の外観品質に与える影響の品種間差異について解析した。

    単独のオゾン暴露または加温条件下でのオゾン暴露により多くの品種の白未熟粒が増加し、主に北日本で栽培される品種は感受性の高いことが明らかになった。二元配置分散分析により、白未熟粒の発生割合に対して、オゾンと気温との間に有意な相乗効果が認められる品種と認められない品種のあることが明らかとなった。オゾンへの感受性が高い品種について、オゾン暴露量と白未熟粒の発生割合との関係を解析したところ、「コシヒカリ」では加温区と無加温区のオゾン処理による白未熟粒の増加傾向は同様であったが、「里のゆき」では加温区において、オゾンによる白未熟粒の増加が著しく高まっており、気温上昇下でのオゾンによる白未熟粒の増加機構が品種により異なることが示唆された。

    また、玄米アミロース含有率とオゾン処理による白未熟粒の発生割合との間に有意な負の相関があり、アミロース含有率の低い品種ほどオゾンによる外観品質の低下が生じやすく、気温上昇下ではさらにその傾向が強まることが示唆された。

  • 豊永 悟史, 張 代洲
    2017 年 52 巻 2 号 p. 68-80
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー

    九州西岸域における1996–2003年の降水中イオン濃度の観測データを用いて,温帯低気圧(Cy),停滞前線(SF),台風(Ty)による降水タイプ別の特徴を解析した.Cyによる降水中のNa, Cl, nss-SO42−, NO3, NH4, nss-Ca2+の8年間の平均濃度はそれぞれ68.6±33.1, 80.9±40.9, 32.1±8.8, 14.4±3.7, 15.3±3.5, 8.3±3.4 μeq/Lであった.対照的に,SFによる降水中の濃度はそれぞれ24.9±6.2, 30.2±6.9, 18.2±7.5, 8.1±3.1, 9.9±4.2, 4.4±2.7 μeq/Lと低い値であった.Ty(全11事例)による降水中のNaとClの濃度はそれぞれ227.7±518.3と275.6±619.4 μeq/Lであった.後方流跡線と統計手法を用いた解析により,CyとSFによる降水中イオンの濃度差は,気塊の由来と化学プロセスの違いにより生じていることが示唆された.年間の全降水中の平均イオン濃度はCyとSFによる降水によって主に決定されていた.SFによる降水量の年変動データを用いた試算から,その変動が年間の全降水中の平均イオン濃度に強く影響しうることが示された.以上の結果は,降水化学の地域差の要因推定や正確な将来予測のためには,降水タイプを考慮する必要があることを示している.

研究論文(技術調査報告)
  • 定永 靖宗, 上野 友之, 佐藤 啓市
    2017 年 52 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー

    現在の窒素酸化物測定の主たる公定法であるオゾン化学発光法は、窒素酸化物濃度を過大評価することが知られている。本研究では典型的な都市域である大阪府立大学構内において、先行研究で開発した高確度窒素酸化物測定装置と公定法とによる、窒素酸化物濃度の比較連続観測を通年で行った。なお、本論文では高確度窒素酸化物測定装置、公定法で測定した窒素酸化物濃度をそれぞれNOx, NOx*と定義する。公定法が時間帯や季節を問わず窒素酸化物濃度を過大評価していることが確認された。NOx*とNOxの1時間値の濃度差と濃度比の平均値はそれぞれ3.38 ppbv, 1.32であった。濃度差NOx*–NOxとポテンシャルオゾン(PO)の間には特に夏季の昼間に高い相関関係が得られた。この結果は、大気中の光化学反応が活発で、PO濃度が高いほどNOx*–NOxが高い、すなわち公定法がより過大評価する傾向にあることを示している。一方、光化学活性度の低い夜間においても、高いNOx*–NOxが観測され、その原因の一つとして、亜硝酸やN2O5など暗反応で生成する窒素酸化物種の寄与が示唆された。

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資料
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