大気環境学会誌
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54 巻, 6 号
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研究論文(技術調査報告)
  • 向井 智樹, 松本 淳, 松岡 雅也, 定永 靖宗
    2019 年 54 巻 6 号 p. 195-201
    発行日: 2019/11/10
    公開日: 2019/11/10
    ジャーナル フリー

    熱分解–キャビティ減衰位相シフト分光(TD-CAPS)法による粒子状有機硝酸(PONs)濃度連続測定装置の開発を行った。本装置ではPONsが高温で熱分解され生成したNO2を測定することで、PONsの総量を定量する。具体的には、大気をPONsラインとバックグラウンド(BG)ラインの二つに分け、PONs濃度とBGを交互に測定する。PONsラインでは最初に活性炭デニューダーによりPONs測定の干渉となるガス成分の除去を行う。その後360℃に加熱された石英管内で熱分解した後、NO2濃度をCAPS法により測定する。一方BGラインでは、最初にフィルターと活性炭デニューダーでPONsと干渉となるガス成分をすべて除去した大気を360℃に加熱後、NO2濃度を測定する。両ラインから得られたNO2濃度の差分からPONs濃度を決定する。本装置では活性炭デニューダーに活性炭繊維シート(ACFS)を用いた。活性炭デニューダーの最適な長さとACFSの種類を選定したところ、最適化されたデニューダーは干渉ガス成分をほぼ100%除去し、約半年以上の破過時間を有した。またPONs透過効率も90%以上の高い値を得た。大阪府立大学構内にて、本装置を用いた実大気中のPONs濃度の無人連続測定を1カ月間行い、本装置によりPONs濃度が連続観測可能(時間分解能2分、1時間値の検出下限5.3 pptv)であることが示された。

  • 石割 隼人
    2019 年 54 巻 6 号 p. 202-213
    発行日: 2019/11/10
    公開日: 2019/11/10
    ジャーナル フリー

    PM2.5中の有機化合物について、神奈川県内の都市部と山岳部で採取した試料をGC-MS分析に供して同定および定量を行った。その結果、都市部と山岳部の両方の試料に針葉樹が放出するモノテルペンの一種であるα-ピネンの酸化生成物であるピノンアルデヒドが含まれていることが確認され、また、都市部の試料からブチルカルビトール等の人工合成有機化合物が複数確認された。山岳部の試料にはナイロン-6の原料であるε-カプロラクタムが含まれており、排出源からの移流によるものと考えられた。PM2.5に含まれる有機化合物は地域性が高く採取場所によってその成分組成が異なっている場合があり、その構造を明らかにすることで各成分の発生源・排出源の推定につながる可能性が示唆された。都市部においては特にピノンアルデヒドとブチルカルビトールが、山岳部においてはピノンアルデヒドとε-カプロラクタムが春・夏季よりも秋・冬季に濃度が高くなる傾向が認められた。なお、今回同定を行ったPM2.5に含まれる有機化合物の中に、規制によって使用・排出が制限された化学物質の代替物質として開発された成分が含まれていることが確認された。当該有機化合物については室内濃度指針値の設定が検討されていることから、PM2.5に含まれる有機化合物はその構成や濃度が経時的に変化していく可能性が示唆され、今後も継続的に監視を行っていく必要性・重要性が示された。

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