大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
54 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
あおぞら
総説
  • 竹中 規訓
    2019 年 54 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/03/23
    ジャーナル フリー

    大気環境学会賞ではこれまでに行ってきた研究である、大気汚染物質の新規な測定法の開発や測定、大気中で起こっているであろう反応の研究、さらに水滴の凍結や乾燥過程での反応、亜硝酸の人体影響、バイオディーゼル燃料の製造と燃焼排ガスの測定や大気環境への影響など、大気環境にかかわる多岐に渡る研究が対象であった。これらをすべてを紹介するのは紙面の関係で無理であるので、ここでは、受賞の元となった業績の中でも大きな比率を占める大気中の亜硝酸ガス (HONO) が関わる研究で1) 大気中の異相の化学、2) ガス状HONOの測定、3) HONOの人体影響について述べる。

  • 嶋寺 光
    2019 年 54 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/03/23
    ジャーナル フリー

    気象・大気質モデルを用いた大気環境動態解析に関する研究の成果について概説した。霧による酸性物質沈着量の空間分布推計では、森林植生への霧水沈着に伴う酸性物質沈着量の推計手法を開発し、近畿圏の山岳地域において酸性物質沈着量に対する霧水沈着の寄与がときに降雨・降雪による湿性沈着の寄与に匹敵することを明らかにした。また、関東都市大気の微小粒子状物質 (PM2.5) を対象としたモデル間相互比較研究UMICSでは、多種多様な感度解析を実施し、PM2.5の主要成分である硝酸塩の過大評価改善と有機粒子の過小評価改善の方向性を示した。さらに、2013年冬季中国でのPM2.5高濃度化の要因や夏季の近畿圏の高濃度オゾンに対する植生起源揮発性有機化合物の寄与を明らかにした。また、エアロゾル直接効果を考慮することで、中国の高濃度汚染地域で大気が安定化し、風下地域へ輸送されるPM2.5が減少することなど、大気汚染現象の解析の成果を示した。

  • 萩野 浩之
    2019 年 54 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/03/23
    ジャーナル フリー

    大気中の微小粒子状物質(PM2.5)は主要な大気汚染物質の一つであり、大まかな化学組成や大気中での動態研究は数多くなされている。しかし、PM2.5は時間や地域(空間)の濃度変動が極めて高く、PM2.5に含まれる有機成分は複数の化合物から構成されるため、大気中での動態や発生源に関する知見は充分とはいえない。健康影響だけでなく地球規模での気候変動などへの影響を知るために、発生源や濃度変動を正確に把握することが世界共通の研究課題となっている。PM2.5の化学特性の解明を目的として、粒子組成を測定する研究を開始した。植物燃焼起源の指標物質であるレボグルコサンは、都市近郊大気において、単一の有機成分として珍しく高い濃度で観測された。本研究が行われた頃の大気環境行政は、ダイオキシンや自動車排出ガスに注目しており、規制が進められていた。このような社会動向に反して、本研究で都市近郊大気であっても植物燃焼起源の寄与が無視できないことを明らかにし、大気中PM2.5の化学特性を解明する重要性を示した。本稿では、レボグルコサンに着目し、これまでに行われている大気中PM2.5に関する研究を総説し、大気濃度の動態と化学変化に関する研究の今後の展望について言及する。

研究論文(技術調査報告)
  • 奥田 知明, 坂出 壮伸, 藤岡 謙太郎, 田端 凌也, 黒澤 景一, 野村 優貴, 岩田 歩, 藤原 基
    2019 年 54 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/03/23
    ジャーナル フリー

    可能な限り多数の測定装置を同時に利用することで、閉鎖的環境の代表例である地下鉄構内の空気中粒子状物質の詳細な特性調査を行った。総粒子個数濃度はCPC、ナノ粒子側粒径分布はSMPS、ミクロン粒子側粒径分布はAPS、ミクロン粒子側粒子個数濃度はOPC、粒子状物質の帯電状態は自作の帯電粒子測定装置K-MACS、PM2.5濃度はポータブルPM2.5濃度計、粒径別の個別粒子の元素組成はSEM/EDX、フィルター採取された粒子の元素組成はEDXRFにより測定された。地下鉄構内におけるPM2.5質量濃度は、列車の到着本数が過密になる7–8時台を過ぎた時間帯にピークを示した後徐々に減少し、午後になると約50–120 μg/m3の範囲でほぼ定常的な上昇と減少を繰り返した。地下鉄構内のPM2.5質量濃度は、屋外と比較して約2–5倍であった。地下鉄構内においては、屋外大気と比較して粒径0.5 μm以上の比較的粗大側の粒子が高濃度となった。地下鉄構内のFe、Ti、Cr、Mn、Ni、Cu、Znなどの金属類は、屋外観測地点の数十から数百倍の高濃度であった。一方で、Sの濃度は地下鉄構内と屋外観測地点で大きな違いは見られなかった。0.5–1.0 μmの粒径範囲においては、地下鉄構内の粒子の約70%以上は帯電していた。地下鉄構内における粒子状物質濃度は屋外と比較して高く、かつ地下鉄構内ではFeを含んだ粒子が多いことは、過去の研究例と同様の傾向であった。このことに加えて、本研究では複数の測定装置により、粒径による元素組成の違いや、粒子の帯電状態などといった、地下鉄構内空気中粒子の詳細な特性を把握することができた。

入門講座
論壇(学会創立60周年記念)
feedback
Top