大気環境学会誌
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55 巻 , 2 号
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研究論文(原著論文)
  • 齋藤 克知, 奥田 知明, 長谷川 就一, 西田 千春, 原 圭一郎, 林 政彦
    2020 年 55 巻 2 号 p. 27-33
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    大気粒子状物質は、生体に入り込むことで人体への有害性が懸念される。この大気粒子の生体への有害性評価のためには、粒子全体の質量のみならず成分組成の相違に着目することが必要不可欠である。本研究では、価数によって有害性の異なるCrに着目し、微小粒子と粗大粒子をフィルター法とサイクロン法で採取し、大気粒子中Crの化学状態を、X線吸収微細構造 (X-ray Absorption Fine Structure: XAFS) 分光法にて解析した。大気粒子は2017年の4季節において、神奈川、埼玉および福岡の3地点で採取し、大気粒子中CrおよびCr標準試料のXAFSスペクトルの測定を行った。これらのスペクトルに対して線形合成解析を行うことで、Crの各価数の割合を算出した。XAFSスペクトル測定の結果、フィルター試料中Crから得られたスペクトルはノイズが大きくなった。一方で、サイクロン法で採取した大気粒子中Crから得られたスペクトルはノイズが小さくなったため、このスペクトルを解析に用いた。解析の結果、大気粒子中Crの化学状態は、試料採取地点や粒径により異なっていたが、ほぼすべての大気粒子中Crの主成分は3価Crであった。また、微小粒子の方が粗大粒子よりも3価Crの割合が大きかった。さらに、微小粒子、粗大粒子ともに3価Crの割合が福岡、神奈川、埼玉の順に大きく、特に福岡では3価Crの割合は他の2地点よりも15%以上大きかった。さらに、有害性の強い6価Crが一部の粗大粒子から検出された。

  • 浦西 克維, 池盛 文数, 嶋寺 光, 近藤 明, 菅田 誠治
    2020 年 55 巻 2 号 p. 34-49
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    2019年3月上旬に北海道地方で発生したPM2.5高濃度汚染の要因を解明するため、同時期に中国東北部で大規模発生したバイオマス燃焼 (BB) に注目し、大気質モデルCMAQを用いた感度解析を実施した。BB排出インベントリにはGFASを用いた。2019年2月下旬の中国東北部の平均気温は平年値より約10℃高く、早期に雪解けが発生し農地等でのBBが起こりやすい条件が整っており、大規模なホットスポットが衛星で観測された。また、GFASも例年の10倍以上の規模のBB排出量を推計していた。中国東北部および周辺で発生したBBが中国国内のPM2.5濃度および日本(北海道地方、東北地方)のPM2.5濃度に与えた影響を解析するため、標準ケースに加え、BB排出量を増加させた複数のケースについても計算を実施した。標準ケースでは、2019年2月下旬–3月上旬の中国東北部、日本のPM2.5濃度を過小評価したが、中国東北部の農地由来のBB排出量を増加させたケースではこの期間の過小評価が改善した。2019年2月下旬–3月上旬の日本のPM2.5濃度は中国東北部内のBBの影響を強く受けていること、GFASは中国東北部の農地由来を主とするBB排出量の推計値を過小評価している可能性が高いことが明らかとなった。今後、中国東北部で同規模のBBの発生が常態化すると、日本へのPM2.5高濃度汚染が継続的に発生するおそれがある。

  • 市川 陽一, 露木 敬允, 薦田 直人, 宮元 健太, 廣畑 智也, 中園 真衣, 関 光一, 毛利 英明, 守永 武史
    2020 年 55 巻 2 号 p. 50-59
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    グリーンインフラは大気汚染の緩和策の一つとして注目されている。森林による大気質の改善について、樹木への沈着や樹木の吸着の観点からの研究は多い。しかし、大気汚染物質の輸送におよぼす樹木の流体力学的効果については、これまで沿道の大気汚染緩和に着目され、森林を対象とした研究事例はほとんどない。そこで本研究では森林を対象に風洞実験によって流体力学的効果を解析した。実験に用いた樹木模型の空隙率を防風林の抗力を考慮した流体力学計算結果 (Wang and Takle, 1997) から評価するとおよそ30%であった。樹木密度が小さな森林では、トレーサガスの濃度は森林の風上から風下にかけて減少した。一方、樹木密度が大きい森林では森林の中央でトレーサガスの濃度が最小となった。樹木密度が大きいと、森林の風下で渦領域ができ、森林の風上と風下の両方からトレーサガスが森林に流入するためと考えられる。樹冠を通した物質交換は樹木密度が小さいほうが大きかった。

  • 高橋 司, 武 直子, 大泉 毅, 諸橋 将雪, 高橋 雅昭, 佐瀨 裕之
    2020 年 55 巻 2 号 p. 60-77
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    2016–2017年に本州日本海側の最大都市である新潟市において、PM2.5の発生源や各発生源からの寄与割合を明らかにすることを目的として、イオン、無機元素、炭素成分のほか、レボグルコサンなどの有機マーカー成分の通年観測を実施した。その結果、レボグルコサン、マンノサンの濃度は秋季に最も高くなった。バイオマス燃焼の影響について考察したところ、秋季はレボグルコサン/マンノサン比と後方流跡線解析結果から、佐渡市での稲わら燃焼と中国東北部でのopen burningの影響、冬季はAsなどの石炭燃焼の指標物質とレボグルコサンの濃度に相関関係が見られたことから、中国東北部で家庭用燃料として使用された石炭やバイオマス燃料の燃焼の際に生じたPM2.5の影響をそれぞれ受けていると推測された。これらの有機マーカー成分を用いてPMFモデルによる発生源解析を行ったところ、有機マーカー成分を用いない場合よりも多い11因子が抽出され、PMFモデルに有機マーカー成分を用いることの有効性が示された。また、各発生源からの寄与濃度を算出した結果、新潟市では1次生成粒子よりも2次生成粒子の影響が大きいことが示唆された。

  • 猪股 弥生, 梶野 瑞王, 植田 洋匡
    2020 年 55 巻 2 号 p. 78-91
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    有害大気汚染物質(優先取組物質21種類)の属性別(一般環境 (I)、固定発生源周辺 (H)、沿道 (E))及び、属性ごとの地域別(日本全国 (JPN)、阪神 (HAN)、関東 (KAN)、九州 (KYU)、瀬戸内 (SET)、東海 (TOK)、本州日本海沿岸 (SOJ))の濃度の2001–2015年の期間についてトレンド解析を行った。いくつかの物質(1,2-ジクロロエタンI 29%、H 77%、E 34%増加率、クロロホルムH 7%、酸化エチレンH 1%、ヒ素及びその化合物、H 37%)を除くと、有害大気汚染物質の[濃度](トレンド解析結果の主成分と季節変動成分の和)は、2001–2015年の期間に、Iで12–75%、Hで17–58%、Eで17–70%減少していた。環境基準値あるいは指針値の設定がある有害大気汚染物質の[濃度]は環境基準値あるいは指針値より小さい値であった。Iにおけるジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ヒ素及びその化合物、1,3-ブタジエン、ベンゼンは冬春季に[濃度]が高いことからアジア大陸からの越境輸送の寄与が大きいと考えられた。アクリロニトリル、アセトアルデヒド、水銀その他の化合物、ホルムアルデヒド、塩化メチルは、夏季に[濃度]が高く、国内発生源からの寄与が大きいと考えられた。ベンゾ[a]ピレンは1月(大)と5–6月(小)に、その他の物質は5–7月(大)と9–10月(小)にピークの双山分布あるいは春夏季にピークであることから、越境輸送と国内発生源寄与の混合タイプであると考えられた。Hにおける有害大気汚染物質の[濃度]は、IとEの有害大気汚染物質の[濃度]と比較して高い値であった。IとEの有害大気汚染物質の季節変動は類似していることを考えると、Hにおける有害大気汚染物質の[濃度]変動は局所的な発生源の影響を反映しているものと考えられた。多くの物質において、I、H、Eのいずれの属性についても、その[濃度]の減少は2000年代初めに大きく、2010年頃から地域による濃度差が小さくなる傾向にあった。

研究論文(ノート)
  • 福﨑 有希子, 小宇佐 友香, 浅木 麻衣子, 小林 芳久, 高橋 和清, 國分 優孝, 星 純也, 坂元 宏成, 後藤 有紗, 島 美倫, ...
    2020 年 55 巻 2 号 p. 92-99
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/03/10
    ジャーナル フリー

    関東地方南部における光化学反応に大きく寄与している芳香族炭化水素、アルケンの発生源地域を推定するため、東京湾岸地域で2時間ごとの揮発性有機化合物 (VOCs) 集中観測を実施した。得られたデータを用いて、芳香族炭化水素と1,3-ブタジエンについて16方位別に全調査対象VOCs合計濃度に対する濃度割合を算出した。その結果と化学物質排出移動量届出制度 (PRTR) データから算出した16方位別距離加重排出量の傾向がおおよそ一致することから、東京湾岸地域の大気中VOC濃度および濃度割合は周辺の発生源と風向の影響を大きく受けていることが示唆された。各調査地点で調査対象VOCsに対するアルケンの濃度割合が最も大きい風向は川崎市および市原市沿岸部の方向であり、PRTRデータから確認できる1,3-ブタジエンの排出地域の方角を示した。このため、PRTR対象外のエチレンやプロピレンなどの主要なアルケン成分についても同地域から排出されていることが示唆された。

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