大気汚染学会誌
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18 巻, 2 号
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  • 辻野 喜夫
    1983 年 18 巻 2 号 p. 101-111
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    炭化水素汚染調査は大阪市内において昭和54年12月~昭和55年9月で実施し, 大気中に含まれる炭素原子数2~9の炭化水素成分をCapillary Columnを用いたガスクロマトグラフ法により連続的に分析した。
    因子分析による光化学大気汚染の解析は, 観測変量として炭化水素, 日射量, Ox, NO2/NOx比ら38変量を用い, 観測データ200個で実施した。因子分析法は初期因子解にミンレス法, 最終回転解にエカマックス法を用いた。初期因子解によると, 6因子を抽出した場合の累積因子寄与は38個の情報全体について88.5%に達した。光化学大気汚染は最終回転解の因子軸の解釈によって説明された。因子分析による炭化水素の光化学反応性の評価は, それに対応する光酸化速度の平方根との間に0.1%の水準で有意な相関が認められ, スモッグチャンバー実験による評価にほぼ一致した。
  • 私市 和俊
    1983 年 18 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    硫黄酸化物濃度の日平均値に等間隔間欠サンプリング法を適用し, この方法がランダムサンプリングと層別サンプリングのどちらに近似できるかについて, 母数, 年平均値及び非超過確率に対応する濃度値の各相対誤差の比較により検討した。その結果, 後者で良く表現されることが分かる。
    また, 層別サンプリング理論中に含まれる, 4次モーメント, 層間分散等, 複雑な項を簡略化し, 各相対誤差と標本数の関係を示すダイヤグラフを提示した。これらのダイヤグラムは, 時間を考慮に入れたサンプリング計画における標本数の決定に役立つであろう。
  • 村尾 直人, 内山 政弘, 大喜多 敏一
    1983 年 18 巻 2 号 p. 120-126
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    煤煙粒子, 石炭燃焼フライアッシュ, 重油燃焼フライアッシュ, カーボンブラック表面上でのHClの吸着量の測定を行った。フライアッシュ, 煤煙粒子のHClの吸着は相対湿度への依存が大きく, HCl濃度へのそれは小さかった。各粒子で吸着量に大きな差があったが, フライアッシュによる吸着量が一番多く, 相対湿度50%(25℃) 以上で7層以上の吸着がみられた。石炭燃焼フライアッシュではHCl吸着量とH2O吸着量との比が一定値をとった。脱離実験によりHClが粒子表面においてH3O+Cl-の形で存在することを推定した。表面の効果を考慮した吸着機構, 予想される人体影響について考察した。
  • 小体の比率と相違について
    君塚 五郎, 林 豊
    1983 年 18 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都市および農村住民の剖検肺261例より合鉄小体を抽出し, 個数および形態について比較検討した。
    抽出された小体は4種のものがみられ, このうち2種類は石綿小体と考えられるもので小体の大部分を占めていた。含鉄小体の陽性率は都市例85.4%, 農村例87.8%であった。ビーズ状の形態をとる第I型の小体の陽性率は都市例92.0%, 農村例84.0%で両者の間に統計的有意差はなく, 又個数によって分けた場合の分布もほぼ同様であり, 環境全体に及んでいる石綿線維に基づくと考えられた。他方第IIの型は都市例に36.2%, 農村例22.3%にと有意に都市例に多く, 更に肺組織5g中50ケ以上の症例は都市の男性例のみであった。このことは第IIの型を形成する石綿線維が職業的環境に由来することを示唆していると考えられた。第IIIの炭素を中心とする小体は農村例に高率であったが絶対的個数は非常に少くなかった。また第IVの型もまれにのみ見られた。
  • 市瀬 孝道, 嵯峨井 勝, 久保田 憲太郎
    1983 年 18 巻 2 号 p. 132-146
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    NO2の生体影響について脂質過酸化の面から, Wistar系雄ラットを用いて急性, 亜急性および慢性暴露実験を行った。
    10ppm NO22週間暴露では過酸化脂質生成は1日目に減少したがその後3~4日目に対照群の2倍に増加した。しかし, その後ふたたび低下し5~10日目には対照レベルへ戻った。一方, 過酸化脂質ににる障害から生体を防御するGlutathione peroxidase (GPx), Glutathione reductase (GR), Glucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD), Superoxide dismutase (SOD), Disulfide reductase (DSR) 等の酵素活性と還元型グルタチオン (GSH) 等は初期に低下するが3日目より増加しはじめ, 5~7日目にはMaximumレベルに達し14日目までそのレベルを維持し, 過酸化脂質生成とは対称的なinverse re1ationshipを示した。0.4PPm, 1.2ppmおよび4ppm NO2の4カ月暴露の亜急性暴露実験でも1カ月目までは急性暴露の場合と同様の変動パターンを示したが, 2~4ケ月目にかけて過酸化脂質はふたたび徐々に増加した。一方, 防御系酵素活性は逆に徐々に低下して対照レベルに近づく傾向を示し両者の間にはやはりinverse relationshipが成り立っていた。0.04ppm, 0.4ppmおよび4ppm NO2の9, 18おにび27カ月暴露の慢性実験においても呼気中エタン測定ににる過酸化脂質生成は0.04ppm 9カ月暴露の時点からすでに有意に対照群より増加し, その増加はNO2濃度の増加にともなって上昇し, かつNO2暴露期間の延長につれて増加していた、しかし4ppm 27カ月暴露の場合はエタン生成はむしろ減少していた。これは回復を意味するものではなく, むしろ肺組織の質的変化を意味するものと考えられ, 病理学的検討の結果からもこのことは支持されている。
  • 田町 敏夫, 高橋 幹二, 伊藤 春海, 鳥塚 莞爾
    1983 年 18 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    種々の化学物質を含むエアロゾル粒子は, 吸入実験用, 臨床薬あるいは工学的試験粒子として役立つが, このような場合には, 粒径の均一性と物理的ないし化学的な安定性が要求される。ここでは, 核発生部に超音波ネブライザーを用いた蒸発凝縮型エアロゾル発生装置を試作し, 種々の化学物質を含む粒子の発生を試みた。核となる化学物質にはウラニン, 重酒石酸ニコチン, ヒスタミン2リン酸塩を, これを包含する粒子主剤にはセバシン酸ジオクチルを用いた。発生粒子の粒径分布と濃度は, 核となる化学物質の液濃度, 媒質気体流量, ボイラー温度, リヒーター温度に依存するが, 適正な操作条件下では, 平均粒径1~2μm, 幾何標準偏差が1.2以下の均一なエアロゾル粒子が, 数時間にわたって安定な状態で発生できた。
  • 岩崎 好陽, 中浦 久雄, 谷川 昇, 石黒 辰吉
    1983 年 18 巻 2 号 p. 156-163
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    悪臭官能試験法におけるパネルの影響を検討するため521名 (男326名, 女195名) の被験者の嗅力を調査した。嗅力の検査方法は3種類の基準臭 (イソ吉草酸, スカトール, メチルシクロペンテノロン) を用い, 5-2法で行った.結果は次のとおりである。なおこの調査は1974年から1982年にかけて実施したものである。
    (1) パネルの選定に関しては、パネルとして不適当な嗅覚障害者が被験者の約5%存在し, その比率は年齢とともに増加していた。男女の嗅力の差については臭質によりその結果は異なった。また年齢に関しては, イソ吉草酸において, 年齢10歳当たり閾値濃度 (w/w) で約30%嗅力が減退していた、体調の影響については, やや悪い方が, 普通の場合よりかえって嗅力が高くなった。
    (2) パネル人数と精度に関しては、三点比較式臭袋法におけるように, パネル人数6名で、上下カットを用いる場合は, 得られる結果が母平均値の±10%の幅の中に入る確率は約94%であった。
  • OZIPPモデルとCBM-IIモデルの適用例について
    若松 伸司, 鈴木 睦, 畠野 昌治
    1983 年 18 巻 2 号 p. 164-174
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    チャンバー実験をもとにしてつくられた化学反応モデルの中から, OZIPPモデルとCBM-IIモデルを, フィールドにおける流跡線上の濃度変化データに適用し, 濃度の時刻変化を再現するとともに, NMHC濃度をパラメータとして両モデルにおける03の時刻変化の比較を行った。解析の結果によれば, NMHCの初期濃度が0.3ppmC程度で実測値と計算値は一致した値を示した。またNMHC濃度が0.4ppmC以上になると, NMHCが増えてもO3の最大値には大きな変化はみられないが, O3の立ち上がりが, NMHCの濃度に比例して急になることが示された。この傾向はCBM-IIモデルにおいてより明瞭にあらわれていた。
  • 笹野 泰弘, 松井 一郎, 清水 浩, 竹内 延夫
    1983 年 18 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 1983/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    混合層高度を連続的にモニターするためのMie散乱レーザーレーダーを製作し, 夏季に13日間にわたるテスト観測を行った。その結果, 晴天下の日中に発達する混合層高度の時間変化を明瞭に捉えることができた。
    本装置は, 混合層高度モニターの専用装置として, 鉛直上方だけを測定対象とした単機能型となっている。混合層内は上層の自由大気に比べてエアロゾル濃度が高く, 混合層の上端で濃度が急減しているケースが多い。レーザーレーダーは, このエアロゾル濃度の鉛直分布を測定するもので, 演算により濃度の急減する高度を求めることにより, 混合層の高度を推定することができる。
    本研究では, 局所的な濃度で正規化した濃度の鉛直勾配 (Sasano et al.1982) を指標として, 客観的にエアロゾル濃度の急減高度を求めている。
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