大気汚染学会誌
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18 巻, 3 号
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  • 村尾 直人, 内山 政弘, 大喜多 敏一, 太田 幸雄
    1983 年 18 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    重油燃焼および微粉炭燃焼により発生するフライアッシュ, 石炭ストーブからの煤煙粒子表面におけるSO2の吸着およびSO42-への酸化を調べた。実験は流通型吸着反応管中で行い, 約1, 10,100ppmのSO2希釈ガスについて湿度を変化させて吸着, 酸化を調べた。
    重油燃焼フライアッシュについて, SO2吸着量は, Tartalleui等や Liberti等の結果とほぼ一致する。他方, Haury等は石炭燃焼フライアッシュについて, 本実験結果よりかなり高いSO2吸着量を示しているが, その一因として, フライアッシュの重金属含量が非常に多いことを推定した。またJudeikis等が示した高いSO2の吸着による除去速度は, 解析の仮定に問題があることを示した。
    本実験結果より, 石炭煤煙や石炭フライアッシュによる大気中のSO2酸化速度を求めたが, かなり小さい値となった。
  • 市川 誠一, 杉田 暉道, 小城原 新, 村林 博志, 宍戸 昌夫, 戸沢 隆, 渡辺 啓
    1983 年 18 巻 3 号 p. 202-209
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染の健康影響の評価に用いられている呼吸器症状について, 局所免疫の側面から考察する目的で, 分泌性の免疫グロブリンと呼吸症状との関連性を学童の唾液を用いて検討した。
    唾液は早朝起床時に採取した混合唾液で, 3000rpm, 15minの遠沈処理した上清について, 総蛋白量 (T.P), albumin, IgAおよびIgG濃度を測定した。
    保護者記入による児童用のATS-DLD質問表により, 持続性咳, 持続性疾, 持続性咳および疾, 喘鳴, 喘息様症状, 喘息様症状・寛解, 喘息及び気管支炎の既往歴等の訴え別に愁訴者を分類し, これらの訴えのない健常者と比較検討した。その結果, 以下の成績を得た。
    1) 健常者に比べて, 持続性痰を訴える学童はIgA濃度が有意に高く, 喘息及び喘息様症状を訴えた学童は低いことが示された。T.Pに占める比率では, IgA/T.Pが健常者に比べて喘息, 喘息様症状を訴える学童は低く有意差が認められた。
    2) 喘息様症状の中で, 呼吸器病で3日以上寝こむことが最近31間に7回以上を訴える学童は, 他の症状を訴える学童に比べてIgA濃度が有意に低く。健常者に比ぺても有意に低かった。またIgA/T.Pでも同様に低かった。
    3) 喘息様症状・寛解を訴える学童のIgAは, 健常者との間に差違がなかった。
    喘息様症状を訴える学童, とりわけ最近31間に呼吸器の病気を7回以上訴える学童では, IgAが低く局所免疫能の低下が示唆された。
  • 山口 克人, 祖泉 克明, 吉川 彰
    1983 年 18 巻 3 号 p. 210-220
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気拡散シミュレーションに必要な風系の客観的推定法として, 直接法, 変分原理による方法, 観測点速度固定法, 渦度固定法, 適動量固定法の5つを選び, 大阪府中部20km四方の地域を対象として混合層内で鉛直方向に平均した二次元的な風系を推定することによって各推定法の比較を行った。その結果, 混合層上端での鉛直速度を決定するパラメータによって, 得られる修正風系が異なり, 場合によっては極めて不自然な風系となること, 変分原理に基づく推定法は残留divergenceが比較的大きく, また演算時間も他の方法に比べて大きいが, 広い範囲の条件に最も適合しうる方法であることなどが明らかとなった。
  • 都市ごみ焼却炉からの水銀の排出
    安田 憲二, 大塚 幸雄, 金子 幹宏
    1983 年 18 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都市ごみを焼却すると, ばい煙とともにHgが排出される。Hgの排出挙動は以下のとおりであった。
    (1) Hgの排出係数は, ごみ組成によって変動するが, 炉型式の違いによる変動は認められなかった。
    (2) 都市ごみ焼却では, 可燃物からのHg排出寄与率は約5%であった。
    (3) Hgは, ごみ中に含まれている乾電池, 体温計, 蛍光灯などが原因となって排出されている可能性が大きい。
    したがって, Hgの排出を防止するためには, 乾電池, 体温計および蛍光灯を分別収集し, これらの焼却を避ける方法が有効であると思われる。
  • 田中 茂, 金子 正秀, 今野 芳幸, 橋本 芳一
    1983 年 18 巻 3 号 p. 226-232
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中の微量粒子状およびガス状ヒ素化合物の測定法についで検討を行った。粒子状ヒ素化合物は, 2段アンダーセンサンプラー・を用いで粒径1.5μm以上の粗大粒子と粒径1.5μm以下の微小粒子とに分けで捕集した。そしで, 粒子状ヒ素化合物は, 硝酸一過酸化水素水を用いることで損夫する事なく完全に抽出できた。ガス状ヒ素化合物は, 10%ポリエチレンイミンおよびグリセリン溶液を含浸させたアルカリフィルターによっで捕集した。このアルカリフィルターを用いてガス状ヒ素化合物の捕集を行った結果, 捕集効率は72%となり, 2枚使用することで, 大気中のガス状ヒ素化合物を90%以上捕集することができた。
    粒子状およびガス状と素化合物の分析は, 液体窒素コールド・トラップ法を組み合せた還元気化原子吸光法によっで行った。本分析法の感度は非常に高く, 検出限界は約0.2ngであり, また, ngレベルのヒ素の定量における再現性も良好であった。そしで, 大気採取量が40m3の場合, 0.005ng/m3程度の大気中のヒ素化合物の定量が可能である。
    1982年2月~7月に横浜市の日吉においで採取した大気試料を分析した結果, 大気中のヒ素化合物の平均濃度は, 粗大粒子 (>1.5μm) においで1.9ng/m3, 微小粒子 (<1.5μm) においで4.7ng/m3, ガス状ヒ素化合物においで0.02ng/m3であった。したがっで, 大気中のヒ素化合物の大部分は, 微小粒子中に存在しでおり, また, ガス状ヒ素化合物は全ヒ素量の0。1~0.5%であった。
  • 杉前 昭好
    1983 年 18 巻 3 号 p. 233-240
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中の金属成分の比重分布についての特性づけのために, 大気浮遊粒子状物質, 都市ダスト, 土壌試料を重液としてジクロルメタン, ヨウ化メチレンの混合物を用いて比重1.3から>3.3の範囲で12段階に比重別分離し, 各分離フラクションについてICP-AESによるFe, Mn, Zn, Cuなどの金属元素の分析を実施した。比重別の濃度プロファイルには, これら試料間に大きな差異があり, 土壌中の金属成分は一般に比重2.7と>3.3の成分が主成分であるのに対し, 大気浮遊粉じん中の金属成分は比重が小さく, 各金属成分に特徴的な分布パターンを有す。Low-vdによって捕集したZn, Mn粒子の濃度は比重1.9において最大となり, その後比重の増大につれて濃度は減少する。Fe粒子の濃度は比重2.1位置で最大を示し, 比重>3.3位置でも濃度が増大する。このサンプラーは空力学的粒径10μm以上の粗大粒子の除去のためのサイクロンを有しており, このサイクロンによって高比重粒子が除去されているものと考えられる。通常0.1-100μmの粒径範囲の粒子の捕集されているHi-vol試料では, Fe粒子の最大濃度は比重の最も大ききな (>3.3) フラクションにおいて認められ, Mnのプロファイルもまた比重>3.3位置において, わずかではあるが濃度増加を示す。しかしこれら成分の舞り上り土壌 (比重2.7) に直接帰着される比重部分の濃度は低い。この比重2.7における極大はビル空調フィルター付着粉じん (都市ダスト) 中のFe Mn, Pbの濃度プロファイルに認められ, これは高吸引速度のブロワーで吸引しているため, かなりの量の粗大土壌粒子がフィルター上に捕集されているためであろう。
    都市ダスト中の金属成分に関する知見を得るため, 水および各種有機溶媒への溶解性試験も実施しており, Zn, Pb, Cd, Cu, V, Mnなどの金属成分はかなりの溶解性を有することが判明している。各種溶媒で超音波抽出したあとの残渣中の金属成分の比重分布を相互比較した結果, 比重2.3以下の粒子は有機溶媒にかなり溶解することが判明した。また溶媒強度パラメーターの大きな有機溶媒で処理すると粗大なシリカ粒子 (比重2.7) に付着していた微小な金属粒子がその表面から脱離することもわかった。
    都市ダストの特性を更に把握するため加熱処理したダスト中の金属成分の比重分布についても考察した。
  • 松下 秀鶴, 塩崎 卓哉, 藤原 美紀, 後藤 純雄, 半田 隆
    1983 年 18 巻 3 号 p. 241-249
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    環境試料中の芳香族ニトロ化合物 (NO2-PAH) の微量分析法作成の一環として, 溶融シリカキャピラリーカラムガスクロマトグラフィーにおけるNO2-PAHの分離挙動を調べ, 得られた分離条件を環境大気試料に適用した。本ガスクロマトグラフィーでは, カラムに化学結合型5%フェニルメチルシリコン溶融シリカキャピラリーカラムあるいは, Carbowax 20M溶融シリカWCOTカラム, 検出器に窒、素-リン検出器 (NPD) を用いた。試料は, スプリットレス方式で注入され, 昇温法で分離された。その結果, 上記種類のカラムの併用により, 40種のNO2-PAHのほとんどが良好に相互分離することがわかった。更に, 内部標準物質としてベンゾ (f) キノリンを用い, NO2-PAHの相対保持比を算出した結果, これらの変動係数が0.15%未満と再現性が良好なことから, 相対保持比は物質同定に有力な手段となり得ることがわかった。また, ピーク高さの変動係数は5.6%以下となり, ピーク高さの測定により十分NO2-PAHを定量しうることもわかった。NPDは含窒素あるいは含リン合化物の選択的検出器で, NO2-PAHに対する検出感度はS/N=2で1ng以下となり, そのほとんどは10Pgから0.2ngであった。したがって, NPDは多種のNO2-PAHの微量分析に有用であると考えられた。本分離条件を大気浮遊粉じん中のNO2-PAHの分離分析に適用した結果, 19種のNO2-PAHが大気浮遊粉じん中に存在する可能性が見出された。
  • 松下 秀鶴, 森 忠司, 田辺 潔
    1983 年 18 巻 3 号 p. 250-255
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    室内空気中のニコチン濃度およびこれへの個人被暴露量の簡易分析方法を開発した。本法は, 次の各操作すなわち, 固体捕集法による室内空気中のニコチンの捕集, 固体捕集剤への内標準物質 (イソキノリン) の添加, アルカリ性メチルアルコール溶液によるニコチンの溶出, そして熱イオン化検出器付ガスクロマトグラフィー (GC-FTD) によるニコチンの分析から成り立っている。
    本分析方法は98.8±2.1%と高いニコチンの捕集効率が得られ, 内標準物質であるイソキノリンに対するニコチンの脱着効率の比の平均値は1.01±0.01と再現性がよく, 分析手法の簡易化に有用であることが判った。また本捕集剤中でのニコチンは暗室 (室温) および冷凍庫 (-20℃) 内での保存では少なくとも7日間は安定であることが判った。
    本分析条件でのニコチンの絶対検出下限は4.5pg (S/N=2) であり, 本法を用いると0.30μg/m3までの濃度のニコチンを精度よく分析できる。
    室内空気中のニコチン分析の一例として研究室内の空気中のニコチン濃度を調べた結果, 0.57~2.36μg/m3であった。また談話室内空気中のニコチンの経時変化を調べた結果, ニコチン濃度は2.5~23μg/m3と10倍近く変動すること, ニコチン濃度の変動のパターンはタバコの喫煙本数のそれとよく類似することが判った。
  • 田中 茂, 小林 英二, 橋本 芳一
    1983 年 18 巻 3 号 p. 256-262
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    アンダーセンサンプラーのようなカスケードインパクターは, エアロゾルの粒度分布を決定する捕集装置として大変広く使用されてきた。しかしながら, 捕集表面が粒度分布に重要な影響を与える事が知られている。最も重要な捕集誤差は, 捕集表面からの粒子の “跳ね返り現象” に関係している。最適な捕集表面の選択を行う為に, 異なった捕表面を持つ3台のアンダーセンサンプラーを使用してエアロゾルサンプリソグの比較テストを行った。
    最初のテストにおいては, ポリエチレンシート, ガラス板, 石英フィルターを捕集表面として使用した。重量および元素分析の結果, 石英フィルターが適した捕集表面である事が判った。
    2回目のテストにおいては, パラフィンとワセリンでコーティングした2種類のガラス板とポリエチレンシートを捕集表面として使用した。パラフィンとワセリンでコーティングした捕集表面は高い捕集効率を示し, 特に “跳ね返り現象” による粗大粒子の損失を防いだ, それ故に, パラフィンおよびワセリンでコーティングした捕集表面は, 捕集したエアロゾル中の各元素の平均粒径値を増加させた。例えば, ワセリンおよびパラフィンをガラス板にコーティングした捕集表面とポリエチレンシートの捕集表面から得られたナトリウム平均粒径は, それぞれ4.2, 3.3, 21μmであった。これは, 平均粒径がそれぞれの捕集表面によって大きく異なる事を示した。
    2回のテストの結果から, 正確な粒子の粒度分布を得るには, 粘着性又は柔かい捕集表面を用いたアンダーセンサンプラーを使用すべきである。
  • NASNデータによる考察
    田中 茂, 田村 定義, 橋本 芳一, 大歳 恒彦
    1983 年 18 巻 3 号 p. 263-270
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    黄砂現象による大陸起源の土壌粒子が, わが国に及ぼす影響について, 環境庁による国設大気測定網 (NASN) の, 札幌・仙台・新潟・東京・大阪・倉敷・松江・大牟田の8地点において, 昭和53年 (1978) 1月から昭和57年 (1982) 3月までの約4年間の浮遊粒子状物質分析結果を用いて検討した。
    NASNの各測定局で, 毎月, ローボリウムサンプラーによって集められた浮遊粒子状物質試料は, 中性子放射化法と, けい光X線法によって分析され, 浮遊粒子状物質中の31元素が測定されている。
    黄砂現象の出現頻度の高い4月, 5月においては, 土壌起源であるAl, Scの大気中濃度は, 年平均値の2~6倍の値を示すのに対し, Ni, Zn, Pb, Br, As, Sb等の人工起源元素の大気中濃度は, Al, Scで見られた季節変動を示さなかった。土壌粒子が浮遊粒子状物質に対して占める割合は, 通常10~40%であるものが, 黄砂現象が観測される4月もしくは5月においては, 50%以上に増加した。これらの事実は, 春期において, 黄砂現象によって輸送される大陸起源の土壌粒子は, 日本上空のエアロゾルに対し大きな影響を与えることを示すものである。
    また, NASNデータの解析結果から, 4月もしくは5月の春期において, アジア大陸からわが国に輸送される土壌粒子の大気濃度は, 10~20μg/m3と推定された。
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