大気汚染の健康影響の評価に用いられている呼吸器症状について, 局所免疫の側面から考察する目的で, 分泌性の免疫グロブリンと呼吸症状との関連性を学童の唾液を用いて検討した。
唾液は早朝起床時に採取した混合唾液で, 3000rpm, 15minの遠沈処理した上清について, 総蛋白量 (T.P), albumin, IgAおよびIgG濃度を測定した。
保護者記入による児童用のATS-DLD質問表により, 持続性咳, 持続性疾, 持続性咳および疾, 喘鳴, 喘息様症状, 喘息様症状・寛解, 喘息及び気管支炎の既往歴等の訴え別に愁訴者を分類し, これらの訴えのない健常者と比較検討した。その結果, 以下の成績を得た。
1) 健常者に比べて, 持続性痰を訴える学童はIgA濃度が有意に高く, 喘息及び喘息様症状を訴えた学童は低いことが示された。T.Pに占める比率では, IgA/T.Pが健常者に比べて喘息, 喘息様症状を訴える学童は低く有意差が認められた。
2) 喘息様症状の中で, 呼吸器病で3日以上寝こむことが最近31間に7回以上を訴える学童は, 他の症状を訴える学童に比べてIgA濃度が有意に低く。健常者に比ぺても有意に低かった。またIgA/T.Pでも同様に低かった。
3) 喘息様症状・寛解を訴える学童のIgAは, 健常者との間に差違がなかった。
喘息様症状を訴える学童, とりわけ最近31間に呼吸器の病気を7回以上訴える学童では, IgAが低く局所免疫能の低下が示唆された。
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