大気汚染学会誌
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20 巻, 6 号
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  • 原口 公子, 山下 俊郎, 重森 伸康
    1985 年 20 巻 6 号 p. 407-415
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    環境大気中に存在するリン酸トリエステル類について試料の採取方法並びに分析方法を検討した。
    試料の採取は, ハイボリウムエアサンプラーを用い, ガラス繊維ロ紙の下にXAD-7樹脂を入れたステソレス製円筒を取り付けて, 吸引流速700l/分で24時間行った。採取した試料は, ソックスレー抽出器で抽出後, 酸・アルカリで処理し, シリカゲルカラムを用いて分画する。各溶離液は濃縮後N-P検出器付ガスクロマトグラフで溶融シリカキャピラリーカラムを用いて定量した。
    添加回収実験は, 8種類の標準物質のアセトン溶液をロ紙上に添加して, 上記の操作を行い回収率を求めた。その結果, リソ酸トリジクロロプロピルとリン酸トリフェニルは, ロ紙上に捕集され, 沸点がそれ以下のリン酸トリブチルやリン酸トリクロロエチルは主に樹脂上に捕集されることがわかった。この方法を環境試料に適用しGC/MS-MFで同定した結果, 大気中には, リソ酸トリエチル, リソ酸トリプチル, リソ酸トリクロロェチル, リン酸トリクロロプロピル, リン酸トリジクロロプロピル, リン酸トリフェニルの存在が確認されその濃度は2~5ng/m3程度であった。
  • 拡散モデルの評価と感度分析
    長沢 伸也, 岡本 真一, 梅田 茂樹, 大石 大和, 大滝 厚, 塩沢 清茂
    1985 年 20 巻 6 号 p. 416-428
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    起伏のある複雑な地形にも適用できる拡散予測システムを気象観測および拡散実験に基づいて提案した。このシステムでは, 第1報で提案した風系推定モデルを用いて, 地形の起伏を受けて形成される複雑な風系の中で, 第2報で提案したプルーム主軸が3次元的に変化する場合にも適用できる拡散モデルにより濃度計算を行う。
    本報では, 栃木地区の拡散実験データをもとに, 拡散モデルの感度分析を行い, 各パラメータの設定値の相違による計算結果の変化を考察した。その結果, 拡散モデルでは, 拡散幅の影響が大きく, 拡散実験時のトレーサーガス濃度を正しく再現するためには, 大気安定度から推定されるPasqui11-Gifford線図での拡散幅よりもかなり大きな値を設定する必要がある。栃木地区の場合には, 大気安定度より1~2階級程度不安定側の線図から求められる拡散幅を用いて, 水平拡散幅σyについてはさらに3倍程度の希釈倍率を乗ずることが必要であることがわかった。更に, 拡散モデルと風系推定モデルを総合して考察すれば, 最終的な濃度推定値に対して風系推定モデルの影響の方が大きいと考えられた。
    Garfield地区の拡散実験に提案モデルを適用して検証を行い, やはり良好な再現結果が得られた。
  • 河野 仁, 伊藤 昭三
    1985 年 20 巻 6 号 p. 429-437
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    住宅街での道路内排気体の道路端から150m以内のスケールにおける乱流拡散の実験値を解析し, 住宅街での拡散についてモデル化の一つの手法を検討した。本実験で得られたデータとの比較から, 初期拡散はボディーソースで表現できる可能性があることを見出した。ただし, そのボディソースの大きさは道路幅と道路沿いの建物の平均高さを与えると実測値をある程度説明できる。
  • 北島 永一, 谷中 隆明, 丸山 隆雄, 黒崎 裕人
    1985 年 20 巻 6 号 p. 438-443
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    新潟市の市街地と郊外の対照地点において道路粉じん中のアスファルトについてその挙動を調査した。市街地の調査は新潟市役所近傍の4地点で行い, 道路粉じん試料として道路端堆積物 (1地点), 降下ばいじん, 大気浮遊粉じんを, また, 郊外の対照地点では, 降下ばいじん, 大気浮遊粉じんを分析対象とした。アスファルトの分析は各試料のBenzene/Ethanol (4/1) 抽出物質について, ゲル浸透高速液体ク獄マトグラフ (蛍光光度検出器付) 法によって行った。
    調査の結果, 道路粉じん試料中のアスファルト濃度は夏季および秋季に低い値を示すのに対し, 冬季, 春季には高い値を示した。すなわち, 道路端堆積量は, 3月4月は他の月の約700倍, 降下ばいじん量では50倍, 大気浮遊粉じん中濃度では6倍, 冬季の値が他の季節の値よりも高い値を示し, とりわけ粗大粒子についてその相違は大きかった。市街地の道路端と郊外の対照地点を比較すると, 明らかに市街地のアスファルト濃度は高かった。市街地の4地点において調べた降下ばいじん, 大気浮遊粉じん中のアスファルト濃度は冬季には夏季よりも顕著に道路端からの距離に応じ減衰していた。これらの調査結果は, 冬季スパイクタイヤの使用による道路粉じん中アスファルトの増加を示していた。
  • 福崎 紀夫
    1985 年 20 巻 6 号 p. 444-450
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中の浮遊粉じんに付着した水銀 (粒子状水銀) をハイボリュームエアサンプラーおよびアンダーセソサンプラーに石英繊維炉紙を装着し, 工場地域, 都市地域, 田園地域でサンプリングした。加熱分解-金アマルガム捕集-加熱気化原子吸光光度法によって水銀を定量し, その大気中濃度の地域的時間的変動と粒径分布, 生成過程について考察した。
    粒子状水銀濃度は地域差が大きく, 田園地域における粒子状水銀濃度はおおむね0.05ng/m3未満であり, 冬季に低値を示す傾向があるのに対し, 工場地域や都市地域では田園地域よりもはるかに高値を示し, ときには1ng/m3を超えることもあり, また, 濃度変動幅が大きいという特徴がある。
    粒径分布と他成分との相関関係に基づく主成分分析とから, 粒子状水銀には加熱・燃焼等で人為的に発生するガス状水銀が同じ発生源のダストに吸着して生成し, 主に微小粒子として存在するものと, これとは別に田園地域では, 主に土壌由来粒子にガス状水銀が吸着して生成し, 主に粗大粒子として存在する2種類が存在すると考えられる。
  • 大気汚染物質と植物の葉中の金属含有量との相関
    立本 英機, 中川 良三, 鈴木 伸
    1985 年 20 巻 6 号 p. 451-462
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    千葉市内の環境汚染の実態を調査するために, 大気中の汚染物質と木本植物の葉中の金属含有量との相関について検討した. 木本植物はサンゴジュ, マサキ, カイヅカイブキおよびキョウチクトウを選び, それらの葉中のZn, Pb, Cd, Feの含有量を簡便法により測定した。一方, 大気中の粉じんはハイボリ箔ームエアサソプラーで採取したのち, 前述の種類の金属含有量を定量した。NOxおよびSO2は自動測定を行った。その結果,
    1) 木本植物の葉中の金属含有量は, 木本植物の種類により大きく異なった。たとえば, 京葉工業地帯に近く, 国道16号線から東300mのH場所ではサソゴジュの葉中のZn, Pb, CdおよびFeの含有量はそれぞれ43~56μg/dry-g, 8.5~12.1μg/dry-g, 0.79~0.92μg/dry-g, 490~583μg/dryであった。
    2) NOx, SO2および粉じんの濃度が高いときは, 特に木本植物中のPb含有量が高い値を示す傾向があった.
    3) 木本植物の葉の金属含有量と大気汚染物質との間において最も高い相関係数を示したのはPb-NOx系, Pb-SO2系およびPb-dust系で, それぞれ0.87, 0.80, 0.88であった。
  • 前橋市と東京都港区との比較
    大谷 仁己, 嶋田 好孝, 氏家 淳雄, 西村 哲治, 松下 秀鶴
    1985 年 20 巻 6 号 p. 463-469
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1983年10月3~17日, 1984年1月6~20日, 4月9~23日および7月9~24日の間, 前橋市および東京・港区において大気浮遊粉じんを採取し, その変異原活性をサルモネラ菌TA100およびTA98株を用いて測定した。前橋市の値は群馬県衛生公害研究所で, 東京・港区の値は国立公衆衛生院でそれぞれ別々に測定した。両者で同一の大気浮遊粉じん抽出物を測定したところ差がみられたため, 補正のための係数としてTA100+S9に対しては0.79, TAIOO-S9, 0.78;TA98+S9, 1.33およびTA98-S9, 0.60を各々東京の値にかけ両者の比較を行った。
    その結果, 両地点とも大きな経日変動がみられた。それぞれの算術平均値を比較すると, 東京における変異原活性は前橋に比べ2菌株とも高い値を示した。また, 両者の季節変化には差がみられ, 東京・港区では2菌株とも冬 (1月)>秋 (10月)>春 (4月)>夏 (7月) の順に高い値を示したが, 前橋では秋~ 春>冬~ 夏の順であった。この一因は測定点群馬県衛生公害研究所が前橋市の北西部に位置するため, 冬期は強い北西からの季節風により, 市郊外から汚染の少ない空気が流入することにより変異原活性が低くなり, 春・秋は風が弱く汚染物が停滞しやすいことにより変異原活性が高く出たものと思われる。
  • 伴 豊, 古谷 圭一, 菊地 正, 江 安瑛, 黄 衛初, 馬 慈光, 呉 錦
    1985 年 20 巻 6 号 p. 470-479
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気浮遊粉じん中硫黄の状態別定量を高分解能けい光X線分析法を用いて行ない, S2-とS6+の状態量と大気中二酸化硫黄濃度との関係を, 中国北京地区における、典型的な都市地区, 工業地区, 自然地区の3っのサソプリソグ地点 (東単, 北辛安, 懐柔) において1982年7月より1983年12月の期間にわたって測定した。
    試料はハイボリュームエアサソプラーを用いた石英ファイバーフィルター上に捕集した, けい光X線分析法による硫黄の検量線作成について, 従来行われてきた方法では問題があるため, あらかじめ燃焼赤外線吸収法を利用して硫黄量を求めた実際試料を用いて補正する方法を開発した。
    状態分析の結果, 大気浮遊粉じん中硫黄はS2-とS6+の2つの状態が存在し, S6+は全硫黄中の85%以上を占めることが明らかとなった。全硫黄量, S肝量, S2-量とも東単で最高のレベルを示し, 北辛安では東単とほぼ等しいかやや低値を示し, 懐柔では常に低いレベルで推移した。これら各種の硫黄の挙動は3つの地点間で類似した傾向を示したが, 大気による希釈, 輸送の影響と推測される。北京市付近では暖房の使用が一定期間内に制限されるが, 暖房期にはS2-, 二酸化硫黄濃度が増大し, 特に東単で著しかった。懐柔では空気量当たりの硫黄量は低値を示したが, 粉じん量当たりのそれは最高で, 二酸化硫黄の気相酸化, 固相への凝縮と関連しているものと考えられる。
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