大気汚染学会誌
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21 巻, 5 号
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  • 長沢 伸也, 岡本 眞一, 塩沢 清茂
    1986 年 21 巻 5 号 p. 349-371
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本報では, 起伏のある地形上における大気汚染予測に関する従来の研究および問題点について, 内外の文献をもとに, 拡散実験と拡散モデルを中心として総説した。
    本報で検討した事項は以下の通りである。
    1) 地形の取り扱いに関する問題点の考察
    2) 野外実験の概要および拡散幅や煙の上昇式の検討
    3) 大気汚染予測モデル (風系推定モデルと拡散モデル) の紹介
    4) 拡散モデルの評価
    以上の研究報告によれば, 起伏のある地形上では, 野外実験結果で拡散幅が平坦地に比べて大きくなる点や, 起伏のある地形上に適用するために提案されている大気汚染予測モデルの多くは, プルーム主軸の取り扱いが便宜的であり, 再現性が十分でないなどの問題が指摘されている。
  • 起伏のある地形上における大気汚染予測システムの評価
    長沢 伸也, 大滝 厚, 塩沢 清茂
    1986 年 21 巻 5 号 p. 372-379
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    著老らは, 拡散モデルにおけるパラメータの最適化と定量的評価を, 直交配列表を用いた実験的回帰分析の考え方とSN比を応用して行うことを提案した、本報では, この方法を起伏のある地形上における大気汚染予測システム に適用し, Gar6eld地区および栃木地区の拡散実験データについて, パラメータの最適化と定量的評価を行った、その結果, 以下のことを明らかにした。
    (1) パラメータの最適値を少ない計算回数で得ることができた。
    (2) 寄与率の大きいパラメータは, 大気安定度, 地表面の擬似的な抵抗係数, および風向, 風速の境界条件であった。
    (3) この大気汚染予測システムでは, パラメータを最適化した場合のSN比は-4~20dbであった
  • 小野 忠義
    1986 年 21 巻 5 号 p. 380-385
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    植物葉中のカロテンに及ぼすオキシダントの影響を暴露試験と野外調査で研究した。
    オゾン (O3) 暴露試験には, 葉中にα-, β-カロテンを含有するイチョウとニンジンを用いた。イチ ョウは0.3PPmの03に日中6時間, 3日間, ニンジンは0.25PPmの03に日中6時間, 2日連続暴露した。いずれの植物もO3暴露によってα-カロテンが著しく減少し, それに対しβ-カロテンの減少は低く, したがってα-/β-カロテン比は低下した。α-/β-力ロテン比の低下は, 03障害の指標に利用できるものと考えた。
    次に, 1975~1976年の2ヵ年間, 大気汚染地域の大阪市および堺市に植栽されている街路樹のイチョウ葉中のカロテン含量およびα-/β-カロテン比について調査した。対照地域は奈良県大和高原沿い地域のイチョウを用いた。大気汚染地域のイチョウはO3暴露試験の場合と同様にα-カロテンの減少度が大きく, したがってα-/β-カロテソ比も低下した。α-カロテソ含量にオキシダントが影響しているものと推定した。
  • 比較的長期にわたる大気腐食と硫黄酸化物濃度との様相について
    鈴木 伸, 立本 英機
    1986 年 21 巻 5 号 p. 386-395
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    千葉県市原地域の大気腐食の実態を調査するために, 昭和43年8月から50年7月の期間に, 大気汚染と金属腐食との関連性について検討した。調査は金属試験片 (50×100mm) として鉄板, 銅板, アルミニウム板, 真ちゅう板およびトタン板を選び, それらの金属試験片を市原地域内の工場地区を背景とした4か所および山間部に1か所, 3か月間大気汚染暴露させた。暴露後, 各種金属試験片の重量変化を調べた。また同時に, 金属試験片の表面に付着した硫黄成分を硫酸バリウム法で測定した。測定地点における硫黄酸化物濃度もPbO2法で測定した。さらに表面粗さ測定器で各種金属試験片の表面粗さも調べた。その結果,
    1) 金属腐食の様相は測定地点により異なり, 金属試験片の重量変化量はトタソ板 (0.00859)<真ちゅう板 (0,01769)<銅板 (0.02329)<アルミニウム板 (0.02409)<<鉄板 (0.62899) の順に増加した。
    2) 比較的長期にわたる重量変化量の周期的変動からみると, 鉄板およびトタン板は夏季に重量変化量が大きくなり, 冬季に小さくなる様相を示し, 銅板, アルミユウム板および真ちゅう板は冬季に大きくなり, 夏季に小さくなる様相を示した。
    3) 金属腐食を大気汚染と比較すると, 傾向的には重量変化の様相は硫黄酸化物濃度の分布の様相と一致した。
    4) 特に, 冬季には真ちゅう板とトタン板を除いて, 銅板およびアルミニウム板の重量変化は硫黄酸化物濃度と相関性がみられる。
    5) 大気腐食の度合は, 腐食された金属表面粗さによっても評価される。
  • 坂井 洋一, 角脇 怜
    1986 年 21 巻 5 号 p. 396-401
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ハイボリウムエアサンプラーを用い, 石英繊維炉紙上に採取した大気浮遊粉じん中の有機質炭素 (OC) を2種類の熱的分離法, すなわち (1)熱分離法および (2) 酸化分解法で除去したのち, 元素分析器 (CHNコーダー) でエレメンタルカーボン (EC) の定量を行った。熱的分離法の処理温度, 処理時間を種々変化させ, 残留するC, H, Nの元素量を検討した結果, 次の事が明らかになった。
    (1) 法によってOCを分離する場合は, ECの過小評価をさけるため, Heキャリヤーガスの精製を十分に行い, 処理時間を2分以内とすること。またECの過大評価をさけるため。処理温度は900℃ まで上げる必要があった。
    (2) 法によってOCを分離する場合は, 処理温度を厳密に管理する必要があり, 390℃ ~410℃ で処理を行えば,(1) 法の値とほぼ一致し, 簡便法として十分実用できると考えられた。
    (1) 法によってOCを分離した試料中の残留H/C比から, 上述の (1) 法の条件で前処理を行った試料中の炭素量が, EC量として評価されるべきであると考えられる。
  • 飯豊 修司, 鈴木 房宗, 星野 充, 内藤 季和, 飯村 晃, 鈴木 将夫
    1986 年 21 巻 5 号 p. 402-410
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    各種ばい煙発生施設において, 排ガス温度がJIS Z8808の方法によるばいじん測定値に及ぼす影響について検討した。
    排ガス温度のちがいを考慮して, 1形+2形 (ただし2形は加熱せず空気冷却) の捕集部を用い, 煙道内ではガス状で存在していても大気中に排出された直後に冷却されて粒子化するものもすべて捕集する実験を行った。その結果, 1形の捕集率一通常は, 1形と2形の捕集部とも同一条件下において1形の捕集率を算出するが, ここでは, 本来一次粒子である大気中に排出直後に冷却されて粒子化するものを含め, すべてのばいじんに対する1形の捕集ばいじん量の比を1形の捕集率と考えた。すなわち, 1形/(1形+2形) とした。一の調査より, ボイラーとガラス溶融炉で, 各々排ガス温度と捕集率に密接な関係があった。しかし, 回帰直線の傾きは両施設で異なっており, ばいじんの組成に起因しているためと思われた。そこで, ボイラーとガラス溶融炉について重点調査を行ったところ, 捕集ばいじんの組成は, ボイラーの1形では総炭素70%, SO42-10%, 金属類15%, 2形ではSO42-50%, 総炭素10%, 水分40%, ガラス溶融炉の1形ではSO43-60%, Na30%, 2形ではSO42-70%, 金属類10%, 水分20%から主に成っていた。
    次に, 煙道排ガスが大気中に排出されて希釈。冷却され直ちに粒子化していく状態に近い雰囲気を強制的に作り, ぼいじんとミストを捕集する空気希釈法と水冷却法及び簡易法である (1形+2形) 法とを比較すると, 後者でもほぼ同等の値が得られた。
    これらの結果より, 排ガス温度によっては1形による捕集では完全に捕集し切れないばいじんが存在することになり,(1形+2形) 法等の捕集部の改善が必要である。
    また, 浮遊粒子状物質対策からも, 発生源でのばいじんとミストの分別捕集は重要な課題である。
  • 田中 茂, 駒崎 雄一, 山懸 勝弘, 橋本 芳一
    1986 年 21 巻 5 号 p. 411-418
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中微量アンモニアの測定法として, 大気中のアンモニアを, リン酸等を含浸させたフィルター, 又は, シュウ酸等をコーティングした拡散デニューダーを用い捕集し, 改良インドフェノール法で定量する方法について検討を行った。その結果, 含浸フィルターの場合は, 5%リン酸一5%グリセリン混合液を含浸させたものが, ホウ酸又はシュウ酸一グリセリン混合液を含浸させたものと比較して捕集効率が良好であった。また, 拡散デニューダーの場合, 1%シュウ酸エタノール溶液をコーティングしたものが, ホウ酸エタノール溶液をコーティングしたものと比較して捕集効率が良好であった。そして, 含浸フィルター法および拡散デニューダー法のいずれの場合も, 環境大気レベルのアンモニアを充分に捕集できることがわかった。通気流量20l/minの場合アンモニアの捕集効率は含浸フィルター法で96%, 拡散デニューダー法で92%であった。インドフェノール法によるアンモニアの定量には, アルカリ性の緩衝剤 (リン酸三ナトリウムークエン酸三ナトリウム溶液) を添加したフェノール・ニトロプルシドナトリウム溶液を使用することで試料を抽出した試料溶液中のリン酸やシュウ酸の発色反応における影響を緩和し, 再現性を向上させることができた。また, リン酸含浸フィルターおよびシュウ酸拡散デニューダーのアンモニアのブランク値は, それぞれ0.6±0.2, 0.4±0.2 (5本) μgであり, ブランク値の変動の3倍を定量限界とした場合, 大気中のアンモニアの定量限界は大気採取量4.8m3 (0℃, 760mmHg) で, ともに0.13、μg/m3であった。
  • 鈴木 茂, 永野 敏, 佐藤 静雄
    1986 年 21 巻 5 号 p. 419-427
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    空気中の極微量塩素化ベンゼン類 (一塩素化ベンゼンおよび二塩素化ベンゼン) の測定方法を検討し, 洋服ダンス, 屋内および屋外空気中の濃度調査を実施した。
    試料空気の捕集は, TENAX®GCを充填した捕集管に被検物質を吸着させて行った。捕集された被検物質は, 捕集管を220℃に加熱して脱着させ, キャリヤーガスとともにガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/MS) に導入した。
    都市域 (川崎市) および田園地域 (神奈川県丹沢) における調査で, 防虫防臭剤として使用されているパラジクロロベンゼン (PDCB) の濃度は, 屋外, 屋内とも他の塩素化ベンゼン類より遙かに高濃度であった。
    PDCBの濃度は以下のとおりである: 田園地域13~25PPt;都市域0.16~0.95PPb;屋内0.044~2.0ppm;洋服ダンス内0,2~88ppm.オルトジクロ癖ベンゼンの濃度は, 田園地域および都市域でそれぞれ, 2~4および2~52pptであった。メタジクロロベンゼンの濃度は, 田園地域および都市域とも1ppt未満であった。モノクロロベンゼンの濃度は, 田園地域および都市域でそれぞれ, 3~4および6~36pptであった。
  • 栗田 秀實, 植田 洋匡
    1986 年 21 巻 5 号 p. 428-439
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1983年7月26~30日に実施された東京湾地域から長野県東北部までの広範な地域における共同観測結果を用いて, 沿岸地域から内陸の山岳地域への大気汚染物質の輸送および変質過程を解析した。
    早朝の弱風時に東京湾地域に形成された汚染気塊は, 光化学反応による変質を伴いつつ, 12時頃まで同地域に滞留した。その後, 中部山岳地域の熱的低気圧に吹き込む大規模風が発達するとともに, 汚染気塊は内陸に向かって輸送された。16時頃に長野県東部に侵入したこの低温多湿な汚染気塊は, 日没後に山風と相乗して重力風を形成し, 日本海側に流下した。汚染気塊の移動経路は, パイロットバルーン観測データから求めた高度100mの流跡線と良く一致した。また, 汚染気塊の輸送速度は15時頃に最大となり, 日中の平均輸送速度は4.6ms-1であった。
    流跡線上のNO, NO2, Ox, 炭化水素成分濃度の経時変化のパターンはスモッグチャンパー実験の結果と良く一致し, 輸送中に汚染物質の沈着や新たな供給が少しあるものの, 汚染気塊中ではスモッグチャンバー実験で観測されたと同様の光化学反応が進行していたことが確認された。
    更に, これらの結果と, 先に報告した長野県東北部におけるOx高濃度日の統計的な解析結果に基づいて, 沿岸地域から内陸の山岳地域への大気汚染物質の輸送過程を模式的に表わして, その特徴を明らかにした。
  • 前田 泰昭, 宗森 信
    1986 年 21 巻 5 号 p. 440-445
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    あらかじめ十分水洗し, 60℃で乾燥したパラホルムアルデヒドに, 一定温度で一定流量の浄化空気を流すことによって低濃度の気相ホルムアルデヒドを定常的に発生させることができた。パラホルムアルデヒドの量と充填の仕方, 温度, 空気流量を変えることにより, 10ppbから100ppmの範囲で気相ホルムアルデヒドの濃度を自由に変えることができた。希釈空気の流量を1l/minと20l/minでホルムアルデヒドを60日間連続して発生させた場合, 10日ごとにパラホルムアルデヒドの重量減から求めた気相濃度の平均値は191ppbと9.8ppbで, 相対標準偏差はそれぞれ1.2%と5.6%であった。
  • 森 忠司, 吉川 政雄, 松下 秀鶴
    1986 年 21 巻 5 号 p. 446-453
    発行日: 1986/10/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    東京およびその近県に居住するオフィス勤労者及び主婦を対象として, NO2個人被曝量, 室内及び室外のNO2濃度を冬期, 春期, 夏期および秋期に亘って調査した。測定はNO2フィルターバッジを用い, 生活行動時間の調査と共に一週間行った。
    NO2個人被曝濃度の分布は冬期においては他の季節と著しく異なり, 13~132ppbと広い範囲に渡り, その平均値も37.7ppbと, 他の季節の平均値15.2~17.9ppbに比べ2倍以上高かった。これは冬期の自宅室内での暖房の影響に負うところが大きく, 事更, NO2被曝濃度は暖房器具未使用者群の18.0ppbに対して石油ストーブ使用者群で43.6ppb, ガスストーブ使用者群で33.4ppbと高かった。また喫煙による被曝濃度への影響は認められなかった。同一家庭居住の男女の被曝濃度は高い相関を示した。
    一日のうちの室内生活時間は通年平均で, 勤労者, 家庭婦人とも22時間以上であり, そのうちの勤労者でおよそ6割, 家庭婦人では9割以上, 自宅室内に滞在することが判った。
    NO2個人被曝量は各季節とも自宅室内被曝量と有意な相関を示し, 春期には職場室内および台所での被曝量とも有意な相関を示した。
    さらに自宅及び職場の室内及び屋外のNO2濃度とそれらの環境での滞在時間から計算したNO2個人被曝量の予測値は個人被曝量の実測値と比較的よい一致を見た。
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