大気汚染学会誌
Online ISSN : 2186-3695
Print ISSN : 0386-7064
ISSN-L : 0386-7064
21 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 氷見 康二
    1986 年 21 巻 6 号 p. 465-485
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染物質の排出係数は, 地域社会の大気汚染に関与する多くの発生源からの汚染物質排出量を推定し特徴づけるベく活用されてきた重要な技術定数であり, 大気汚染防止政策の方向を決定するためにも用いられてきた.
    この総説では, 排出係数を定めるための調査研究に関して記述し, 固定燃焼施設, 化学工業プロセス, 蒸発損失源および石炭, 鉱石等の堆積場を例として排出係数を紹介した.
    また今後解決すべき排出係数に関する課題に関して論じた.
  • 関東内陸地域におけるバックグラウンドオゾンの濃度変動特性
    藤田 慎一
    1986 年 21 巻 6 号 p. 486-495
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    関東北部に所在する赤城山頂と山麓とで1年間にわたって実施したオゾン濃度の観測データなどをもとに, 内陸地域でのパックグラウンドオゾンの動態について検討した. 観測データは移動平均法を適用して周期と振幅とが異なる三つの成分に分離し, 各成分と気象条件との関係を調べた. 推定されたバックグラウンド濃度は, 春に最高値, 秋に最小値を持つ正弦関数型の年変化を示す. 日最高値が100ppbを超過する高濃度の大部分は高気圧の圏内に見出され, パタン的には, 春型と夏型の二つに分類できる. 前者は, バックグラウンドの濃度レベルが上昇する4~6月に発生し, 局地風系による高濃度気塊の影響が重畳する. 後者は, バックグラウンドの濃度レベルが相対的に低下する7-9月に発生し, 大気下層でのオキシダンドの生成と移流の効果が支配条件となる
  • 斎藤 幸一, 飯倉 善和, 内藤 正明, 村上 重信, 西条 達也
    1986 年 21 巻 6 号 p. 496-500
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    鹿島コンビナート地域におけるNO2の空間変動と既存観測局の地域代表性をとらえる目的でフィルターバッチ法を用いた稠密調査を行った。対象期間は昭和6五年3月5日から3月7日までの2日間で, 約1kmメッシュ間隔に配置した143点の平均濃度は7.lppbであり, その標準偏差は3.5ppbであった。また, 主要道路近傍に配置されている既存観測局のいくつかにおいて周辺データとの差が大きい局があること等が認められた。なお, この調査結果と既存測定局データとの比較から簡易測定法の有効性も確認できた。
  • 松本 光弘, 植田 直隆, 西川 喜孝
    1986 年 21 巻 6 号 p. 501-511
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1984年4月より一年間にわたり, 内陸部の田園都市である奈良市において, 各季節にアンダーセンサンプラーで大気中のエアロゾルを採取して, エアロゾルおよび無機イオン成分 (SO42-, NO3-, Cl-, F-, NH4+, Na+, K+, Ca2+, Mg2+) の粒度分布を測定し, その季節変動を調べると共に降雨によるこれらのイオン成分の除去効果を検討した。
    奈良市におけるエアロゾルの粒度分布は年間を通じて「二山型」を示し, また, 各イオン成分の粒度分布は,(1) SO42-, F-, NH4+, K+成分のように年間を通じて微小粒子側に分布が集中しているもの (FF (Fine fracdon, 微小粒子分率): 65~95%) と,(2) Na+, Ca2+, Mg2+ 成分のように年間を通じて粗大粒子側に分布が集中しているもの (FF: 5~45%) と,(3) NO3-, Cl-成分のように季節によって粒度分布が異なるもの (FF: 16~67%) の3種に大別することができた。このような粒度分布の違いは主にイオン成分の発生源由来に起因しているが, NO3-, Cl-成分はその二次生成物であるNH4+塩の安定性に大きく関与し, また, NO3-成分については粗大粒子の組成がNa NO3の他にCa (NO3) 2の存在が推定された。
    イオン成分のFFと降雨による除去率の関係は有意の相関が見られ, エアロゾルの粗大粒子が降雨により除去されやすいことが確かめられた。
  • 寺田 伸枝, 溝口 勲, 河野 俊彦, 林 豊
    1986 年 21 巻 6 号 p. 512-520
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    18ヶ月間にわたって, O3 (0.1ppm) とNO2 (0.3ppm) に単独, 複合暴露したラットの肺の病理学的変化について検討した。
    O3の単独暴露では, 1ヶ月後に, II型細胞の腫大と増加, I型とII型の中間型の細胞, 血管内皮細胞のpinocytotic vesiclesの増加, 肺胞壁間質の軽度の水腫が認められた。水腫液の貯留によって開大した組織間隙には, 離開した膠原線維と遊走細胞がみられ, air-bloodbarrierの肥厚を生じていた。3ヶ月後では, より進行した間 質の水腫が広汎に認められたが, 6, 18ヶ月後では消失する傾向にあり, また肺胞上皮の変化はほとんどみられなかった。
    03とNO2の複合暴露では, O3単独暴露に比べ, 全暴露期間にわたって間質の水腫がより顕著に, かつ広汎に認められた。また中間型細胞が少数認められ, 肺胞上皮にも, 持続的な影響を及ぼしていると考えられた。
  • 玉川 勝美, 久松 由東, 松下 秀鶴
    1986 年 21 巻 6 号 p. 521-526
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    二酸化窒素存在下でのアスファルトの光化学反応生成物の変異原性についてS. typhimurium TA98株, TA100株, ニトロレダクターゼ欠損菌株であるTA98NR株および1, 8-ジニトロピレン耐性菌株であるTA98/1, 8-DNP6株 (以下TA98株, TA100株, TA98NR株TA98/1, 8-DNP6株と略する) を用い検討を行った。
    アスファルトのベンゼン溶液をフィルタ一に塗布し, ベンゼンを充分揮散させた後, 高圧水銀ランプによる光照射下, 空気気流中で10ppmの二酸化窒素に0.5~4時間曝露させた。
    二酸化窒素非存在下で光化学反応を行った場合には, 菌株, S-9mixの有無にかかわらず変異原性は認められなかった。しかし, 二酸化窒素存在下で反応を行ったところ, TA98株に対し比較的強い変異原性が認められ, 特にS-9mix無添加の系で強い活性が認められた (復帰変異コロニー数: 705/100 μg)。また, この変異原性はTA98NR株およびTA98/1, 8-DNP6株を用いた場合には著しく減少した。このことから, この変異原性はニトロアレーン類によることが推測された。また, 光化学反応生成物の総変異活性はアスファルトの塗布量にかかわらずほぼ一定であったことから, 変異原性物質の生成はアスファルト塗布表面で起こっているものと推測された。
  • 末田 新太郎, 由下 俊郎, 重森 伸康, 原口 公子
    1986 年 21 巻 6 号 p. 527-534
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    環境大気中の塩基性含窒素芳香族化合物 (アザアレーン) の捕集法および分析法について検討した。環境大気試料は, ハイボリウムエアサンプラーにガラス繊維ろ紙およびXAD-4樹脂を装着した装置で捕集した。捕集した試料は, 各々ベンゼン150mlを用いてソックスレー抽出器で8時間抽出した。ベンゼソ抽出物は, クデルナダニッシュ濃縮器で濃縮した後, 1N塩酸で分画した。分画した塩基性成分は, ガスクロマトグラフィ質量分析計により, 13種類のアザアレーンを同定し, 溶融シリカキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィにより定量した。捕集効率を測定するため, ガラス繊維ろ紙上にアザアレーン標準品を添加し, 約700l/minの流速で24時間環境大気を吸引した。アザアレーンは, 大部分が樹脂に吸着捕集されていた。樹脂の捕集効率は, XAD-4 83.4~93.8%, XAD-7 75.6~97.8%およびフロリジル43.9~98.3%であった。アザアレーンは, XAD-4に効率良く捕集された。この方法を用いて北九州市内のアザアレーンを測定した。その濃度範囲は, 0.10~7.34ng/m3であった。
  • 田辺 潔, 松下 秀鶴, 郭 錦堂, 今宮 俊一郎
    1986 年 21 巻 6 号 p. 535-544
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気浮遊粉じん中の発癌性ニトロアレーンの高感度分析法を開発した。この方法は, 超音波抽出法, 液々分配'順相高速液体クロマトグラフィー (順相HPLC), Na SHによる還元および螢光光度計付逆相HPLCからなり立っている。6種のニトロアレーンの検出下限は, 1, 6ージニトロピレン (1, 6-DNP) では1Pg, 1ーニトロピレン (1-NP), 1, 3-DNP, 1, 8-DNPでは2P9, 2-ニトロフルオレン (2-NF) では4Pgおよび3一エトロフルオランテン (3-NFR) では40Pgであった。
    本法を東京の大気浮遊粉じんに適用した結果, 5種のニトロアレーンを検出した。その濃度範囲は1-NPでは14.8~134P9/m3, 1, 6-DNPでは0.33~8.74Pg/m3, 1, 8-DNPではND~6.58Pg/m3, 1, 3-DNPではND~4.66Pg/m3および2-NFではND-27.2Pg/m3であった。
  • 塩崎 卓哉, 田辺 潔, 半田 隆, 松下 秀鶴
    1986 年 21 巻 6 号 p. 545-550
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    個人サンプラー等から得られる少量の浮遊粉じん試料中のベンゾ [a] ピレン (BaP) を十分に測定し得る高感度かつ簡易迅速分析法についての検討を行った。その結果, ベンゼソーエタノールを用いた超音波抽出→ 液-液分配→77°Kでの低温螢光光度法によるBaPの定量からなる方法を見いだした。
    本法により, 約20pg/ml~25ng/mlの範囲の極微量のベンゾ [a] ピレンが精度よく測定できるため, 少量短時間採取によって得られた試料でも十分に分析・定量しうることがわかった。また, 測定に要する時間も約10分間と短いため, 本法は, ベンゾ [a] ピレンの個人被曝量のモニタリングに有用な方法であると考えられる。
  • 才木 義夫, 片桐 佳典
    1986 年 21 巻 6 号 p. 551-556
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    米国において使用されている大気汚染指数 (PSI) の手法を用いて, 神奈川県地域 (21地点) における大気環境を1年間にわたり解析し, 手法の適用性について検討を行い, 次の結果を得た。なお, PSIの計算に使用する汚染物質濃度の測定方法1はFcderal Refereme Methodに定められている方法であるが, ここでは日本の測定方法による大気汚染常時監視測定局のデータを使用した。
    県内の大気の状況を, PSIの方式に準じて評価すると, 日数頻度でgood 40.8~75.5%, moderate 22.1~50.1%であったが unhealthful 0.6~9.5%, very unhealthful0~0.6%と地域によっては環境の悪い日が見られた。また, 地域分布についてはOx, SPの影響が大きい日には従来の結果と類似した傾向が見られた。PSIが高く, 環境状況の悪い日はOx濃度が高い地域で多く, 都市域のNO2等の影響が大きい地域では比較的少ないが, このことはNO2の影響がOxに対して相対的に低く見積もられているためであり, またNO2の低濃度領域における指標への換算係数が与えられていないこと等に起因していると思われる。これらのことから, PSIの手法は環境評緬手法としては有効と思われるが, 日本に適用する場合には各汚染物質の影響度及び測定方法を日本の現状に合わせる工夫を行い, 新らしい指標を作成することが必要であろう。
feedback
Top