大気汚染学会誌
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22 巻, 1 号
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  • 指宿 堯嗣
    1987 年 22 巻 1 号 p. 1-23
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ガス状汚染物質と大気中の水滴 (雲霧雨滴) や粒子状物質の間で起こる不均一系化学反応が対流圏化学において果たす重要な役割をレビューした。主要な内容は二酸化硫黄の酸化反応 (第3章), 窒素酸化物の変換 (第4章), 有機化合物の変換・分解 (第5章) である。
  • 杜 尭国, 古賀 修, 堀内 宣利, 鈴木 伸
    1987 年 22 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    簡易型オキシダントモニターの作製の際, トリエタノールアミン (TEA) 緩衝溶液を使用すると, オキシダントによってKIから遊離されたヨウ素 (I2) 量が抑制される現象が見い出された。この原因の一つとしてTEAとI2が反応することが考えられたので, この反応性について溶液系を用いて検討した。
    TEA-I2の混合溶液を酸性にしても30%のI2の消失がみられた。この結果, TEA-I2の反応が起こっているとして, 生成物の分析を行った。TEA-I2の水溶液を濃縮すると無色な微結晶が得られた。この結晶を, 元素分析法, 戸紙電気泳動法, ガスクロマトグラフィー, 赤外分光法, 質量分析法によって分析した。この結果, 生成物は, 付加体のTEA・HIであることが示された。この無色の結晶は水に容易に溶解し, 結晶の融点は167.5℃であった。
    TEA-I2反応のもう一つの生成物はHCHOであった。これはFID検出器付のガスクロマトグラフで確認した。
    実験結果から, TEA-I2の反応に対して下記の反応式を仮定した。
    TEA+3I2+3H20=NH41+5HI+6HCHO
    TEA (過剰) +HI=TEA・HI
  • 山本 昭代, 稲益 健夫, 久永 明, 北森 成治, 石西 伸
    1987 年 22 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1-nitropyrene (1-NP) は, ディーゼルエンジン排気ガス中, コピーのトーナー液, 大気浮遊粒子中に検出され, 高い直接変異原活性を示すために最近発がん性に関して注目を集めている。そこで, 大気汚染物質で発がん性のあるbenzo (a) pyrene (B (a) P) と1-NPの呼吸器官に対する発がん性の比較を雄性シリアンゴールデンハムスターを用いて行った。1回投与量2.0mgの各物質を0.2mlのリン酸緩衝液に懸濁し, 1週間に1回, 連続15週間にわたり, 投与総量30mgをハムスターの気管内に投与した。投与終了後はハムスターは無処置で放置し, 死亡したハムスターについて主に呼吸器官の腫瘍発生を病理組織学的に検索した。
    その結果, 1-NP群では検鏡できた21匹中2例に呼吸器官の腫瘍の発生があり, 腫瘍発生率は10%であった。これに対してB (a) P群では22匹中19匹に呼吸器官の腫瘍発生があり, 腫瘍発生率は86%であった。対照群では腫瘍の発生はなかった。さらに, 担腫瘍動物の平均生存日数は1-NP群481日, B (a) P群246日とB (a) P群が1-NP群に比べてはるかに短く, 1-NP群とB (a) P群との間の腫瘍発生率の差は0.1%のレベルで有意な差が認められた。
    これらのことにより, B (a) Pの呼吸器官に対する発がん性は同量のB (a) Pに比べ著しく強いことが認められた。
  • 北村 洋子, 仁平 明, 菊池 格, 加藤 信男
    1987 年 22 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    塩釜局における過去7年間のオキシダント計によるOx濃度測定値とオゾン計によるO3濃度測定値との比 (Ox/O3) の変化から, オキシダント計の, 向流吸収管の “汚れ” による感度低下は夏期に顕著であった。また, オキシダント計の配管中の一般細菌は, 向流吸収管内に多く存在しこれを培養し吸収液中のヨウ素との反応性を調べた結果, 十分量の細菌があれば, 吸収液中のヨウ素を取り除いてしまうということがわかった。ヨウ素と細菌の反応では, 細菌の濃度に逆比例して吸収液中のヨウ素量が低下し, 0℃, 10分以内でもかなりの量のヨウ素量の低下が生じた。これらの結果, 向流吸収管に付着した “汚れ” は細菌に基づくものであり, 感度低下は吸収液と光化学大気汚染質との反応により遊離したヨウ素の一部が向流吸収管内の細菌に吸着され, 光化学オキシダントとして定量されないために生じることを見出した。
  • 炭素鋼1ヵ月暴露試験
    古明地 哲人, 門井 守夫
    1987 年 22 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    東京都内で炭素鋼の大気腐食試験, および, 大気汚染物質の測定を行い, 炭素鋼の腐食量と環境因子 (大気汚染, 気象の各因子) との関係について検討した。
    炭素鋼の腐食量は工業, 商業地域等, 人間活動の多い地域で1970年代のはじめに特に大きく, 住宅地域や山間地では小さい傾向であったが, その後の大気汚染対策により硫黄酸化物濃度, 降下ばいじん量とも急激に減少し, これに伴い, 全調査地点で減少を示し, 1980年には1970年に比較し約1/4まで低下した。
    この腐食量の経年的な著しい減少傾向および地域差と密接な関係があると考えられる環境因子のうち大気汚染因子では硫黄酸化物, 降下ばいじん量が特に腐食量と密接な関係を有していることが認められた。
    1ヵ月暴露の腐食量と環境因子測定値から求める重回帰式をいくつかのグループに区別して求めたが, これらの計算値と実測値とは良い相関を示した。
  • 谷川 昇, 岩崎 好陽, 中浦 久雄, 泉川 碩雄
    1987 年 22 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    焼却能力が150t/dの流動床式都市ごみ焼却炉 (流動床炉) から排出される大気汚染物質の排出挙動について調査を行った。
    流動床炉の排ガスの性状は, ストーカ式都市ごみ焼却炉と比較するとNOx, ダスト, 臭気濃度は同程度であるが, SO2濃度は低く, CO, THC濃度は高い値であった。また, 過剰のCaCO3を流動床炉内に投入することにより, 湿式洗浄装置と同程度の高いHCI除去率が得られた。
    流動床炉排ガス中のNOx, SO2, HCl, CO, THCなどの大気汚染物質およびO2の濃度は, ごみ投入量の変化に対応して激しく変動していた。特に, ごみ投入量が急増してO2濃度が急減することによって起きる低酸素燃焼時には, 高濃度のCO, THCと黒煙が排出され, ベンゼン, プロピレン, アセチレンなどの環状および不飽和炭化水素成分の増加が認められた。
  • 影響の大きさと疫学的下限値の推定
    清水 忠彦
    1987 年 22 巻 1 号 p. 57-71
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大阪府医師会では, 1973年~1985年の隔年に, 大阪府全公立小学校児童 (延べ6,449校, 5,480,443人) の “ふだんからの咳” の自覚症状について, 質問紙法による調査を実施した。
    その調査成績を解析し, 次の結果を得た。
    (1) 大阪府では, 1973~1981年間に, 二酸化硫黄濃度が著しく減少, 二酸化窒素濃度が横ばいであった。汚染地域と対照地域との咳訴症率の地域差は, この間に二酸化硫黄濃度の低下に応じて減少した。しかし, 1981年以降は, 二酸化硫黄濃度の低下にかかわらず, 咳訴症率の地域差が横ばいになった。咳訴症率に影響した二酸化硫黄濃度の下限値は, 年平均0.013~0.015ppmであった。
    (2) 社会環境がほぼ似ていると思われる大気汚染観測局 (27局) の周辺1km以内の学校 (調査児童数89, 866人) の咳訴症率と二酸化窒素濃度とは, 家族の喫煙の間接影響を補正すると, 相関係数+0.708 (P<0.001) であった。
    咳訴症率に影響した二酸化窒素濃度の下限値は, およそ年平均で0.020~0.025ppmであった。
    (3) これらの成績から, 咳訴症率と大気汚染濃度との関係を示すモデル式を提唱した。
  • III. ヨウ素ガス人工暴露法による異常症状発生原因の立証とヨウ素の収着特性
    松丸 恒夫, 高崎 強, 松岡 義浩, 白鳥 孝治
    1987 年 22 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ヨウ素工場周辺で発生したナシ葉の異常症状の原因がヨウ素ガス汚染によるものであることを立証する目的でナシにヨウ素ガスを暴露し, 異状症状の再現を試みた。併せて, ナシ葉に対するヨウ素ガスの収着特性を検討した。
    その結果, 現地実態調査で確認した異常症状の次のような特徴を再現することができた。
    (1) 被害症状は主として褐色の斑点として発現する。
    (2) 褐色斑点に伴って葉に黄色化もしくは橙色化がみられる。
    (3) 異常症状の発現した葉は早期に異常落葉する。
    (4) 斑点の発現部位や被害程度に品種間差がみられ,「幸水」と「八幸」が感受性,「長十郎」が抵抗性である。
    また, ナシ葉のヨウ素収着特性については, ヨウ素ガス一定濃度条件下ではヨウ素収着速度は一定であるが, ガス濃度が高くなるに従いヨウ素収着速度は増加することが認められた。
  • 振動による再飛散方式の検討
    小暮 信之, 田森 行男, 今上 一成, 太田 康成, 渡辺 金之助
    1987 年 22 巻 1 号 p. 78-86
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ダストサンプリングに際してサンプリング管内に生じるダストの沈着特性を検討した上で, この対策としてサンプリング管に機械的振動を加えることのできる沈着防止システムを試作し, その有効性について実験的に検証した。
    実験に使用したダストは, いずれも平均径約4μmの炭酸カルシウムおよびフラィアッシュである。
    内径φ6~14mm, 長さ約2mのガラス製サンプリング管を介して等速吸引速度10m/sでダストサンプリングした場合, ダスト捕集器に至るまでの管内で45~53%もの大量のダストが沈着し, とくにノズル吸引口直後の90。ベンド部を含む先端部で20~26%と, 他の部分に比べて大きかった。
    内径φ10mm, 長さ75cmのガラス製サンプリング管内において沈着した2種類のダストに対して管を介し加振器により振動を加えた結果, 加振振動数に対する振動加速度の割合として定義した加振効果が1.5G/Hz以上のとき, 沈着したダストのうちの約86%が減少 (再飛散) した。一方, 加振効果の大きさを無次元化した振動レイノルズ数に対して沈着ダストの減少率をプロットすると, 2種類のダストはいずれも同じ対応曲線として示すことができ, その結果から90%以上のダストを減少させるためには, 振動レイノルズ数を700以上にすればよいことがわかった。
  • 後藤 隆雄
    1987 年 22 巻 1 号 p. 87-96
    発行日: 1987/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    TEA戸紙法によるNO2濃度の簡易測定法を用いた系統的調査によって, 現実の生活場でのNO2濃度の時間的および空間的挙動性質の一部, 濃度分布を解明した。
    (1) 調査時期の解析として, 甲子園の場合にも西播磨の場合にも近年低濃度ピークが少なくなり, 高濃度ピークが大きくなっている。
    (2) 調査地区の解析として, 甲子園の場合にも西播磨の場合にも隣接する地区での濃度分布は類似している。
    (3) 西播磨での160調査地点は, そこでの時間的濃度分布として, 正規分布15地点, 一山型の対数正規分が90地点, 二山型40地点などが求められた。またこの分布の50%タイル値を用いて表わした160地点の濃度分布は算術平均値で求めた濃度分布 (対数正規二山) に比べて現実的である対数正規一山であると判明できた。
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