大気汚染学会誌
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24 巻, 1 号
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  • 最近の知見と問題点
    Hanspeter WITSCHI, 嵯峨井 勝
    1989 年24 巻1 号 p. 1-20
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    近年, 日本人のがんによる死亡率のうちで肺がんによる死亡率が著しく増加してきている。この増加の主な原因は喫煙や食品によるものと考えられているが, 都鄙間の比較や腺がんの割合の増加などから, 喫煙や食品だけでは説明が付かない点がある。そのようなことから, 大気汚染の影響を危惧する意見もあり, 例えば, ジーゼル排気ガス等の影響についてはある程度明らかになりつつある。ここでは, その化学的反応性の故に発がんに対する影響が危惧されているオゾン (O3) と二酸化窒素 (NO2) の2つのオキシダント様大気汚染ガスの肺がん発生に及ぼす影響に関する最近の知見とその問題点について科学的検討を加えた。
  • 松本 光弘
    1989 年24 巻1 号 p. 21-27
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    浮遊粒子状物質 (以下, SPMと略) 測定機により, 1時間毎に採取した微量SPM中の多環芳香族炭化水素 (以下, PAHsと略) の分析に, 大量注入-高速液体クロマトグラフィー (以下, HPLCと略)-分光蛍光法の検討を行った。
    本方法は, 移動相 (アセトニトリルー水混合溶液, 80: 20, v/v) と同じ組成の試料溶液を作り, HPLCに大量注入 (通常200μl) することにより, 高精度, 高感度で3種のPAHs (ベンゾ (a) ピレン, ベンゾ (k) フルオランテン, ベンゾ (ghi) ペリレン (以下, 各々, Ba P, Bk F, Bghi Pと略)) の定量が可能となった。
    本分析法の検出限界は, 注入量200μlの場合, Ba PO.063ng/ml (絶対量: 0.013ng), Bk F 0.072ng/ml (0.014ng), Bghi P 0.71ng/ml (0.14ng) であり, 3種のPAHs濃度の測定の変動係数も1.1%以内であった。
    本方法はβ線吸収方式のSPM測定機を用い, 1時間毎に採取 (吸引流速: 18l/min, 捕集時間: 55分32秒) してSPM中に含まれるPAHsの微量分析に有効であると確認された。
  • 高月 紘, 酒井 伸一, 糸川 嘉則
    1989 年24 巻1 号 p. 28-36
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    アスベストによる室内環境汚染とその削減対策について, とくに最近の我が国の動向と京都大学において行った汚染削減対策を中心に論じた。アスベストの非職業的暴露については種々論議のあるところではあるが, その発がん性, 悪性中皮腫の発生等には閾値がないとする学説もあり, 現状では安全側の視点をもつべきであること, 教職員・学生等の健康面, 不安感への最大限の配慮, 教育研究機関としてより快適環境を求める必要性, などの理由からアスベスト削減対策を京都大学において実施した。吹付けアスベストが剥離・剥落状態で, 緊急対策が必要であると判断されたものが西部学生食堂, 教養部講義室に, 約2,000m2存在し, 作業場所のシート隔離, 撤去作業従事者の呼吸用保護具, 保護服の着用などの配慮策を講じた上で撤去を行った。
    アスベスト濃度はアスベストの存在する室内において, 人的活動のない閉鎖状態では学内の一般環境濃度と大差ないものの, 資材搬入のあった人的活動状態では3.8f/1, ファン稼働状態では18f/1と閉鎖状態ならびに学内一般環境に比較して高い濃度となった。吹付けアスベスト撤去後の同一室内におけるアスベスト濃度の減衰状況を調査した結果, 撤去中に1,000~2,000f/1あたりまで上昇した場合, 十分な減衰には1週間程度必要であった。撤去後室内のアスベスト濃度は閉鎖状態, 使用開始後とも一般環境と同レベルであることが確認された。
  • エアコンの除塵フィルターに付着した粉塵の変異原性
    玉川 勝美, 松本 久美子, 高橋 陽子, 関 敏彦, Joellen LEWTAS
    1989 年24 巻1 号 p. 37-44
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    N.Y.Kadoらによる高感度Amesテスト (microsuspension法) を用い, エアコンのフィルターに付着した粉塵の変異原性の調査を行った。この際, 復帰変異コロニーの生育速度を早め, 試験期間を短縮化するために, 有元らの “アミノ酸添加最少グルコース寒天培地” を用いた。
    本法により大気浮遊粉塵の変異原性の検出では矢作らのプレインキュベーション法と比べ4~18倍の高い感度が得られ, ベンゾ (a) ピレン [B (a) P], 2一ニトロフルオレン [2-NF], 1-ニトロピレン [1-NP] 等の化学変異原に対しては5~64倍の感度が得られた。
    本法を用いることにより, His+復帰変異コロニーの検出には18~24時間のインキューベーションで十分であることが分かった。
    本法を当試験所内の6ヵ所のエアコンの除塵フィルターに付着した粉塵の変異原性の評価に適用した。喫煙室の粉塵は全般に変異原性が最も強く, 次いで執務室, 原子吸光室, ガスクロマトグラフ室, 等の順だった。また変異原性, タール含有率およびB (a) P含有量とも全般に火の使用頻度と相関性が認められた。
    microsuspension法は微量の試料を試験する場合には有用であろうと考えられた。
  • 橋本 芳一, 渡辺 清孝, 湯本 孔一郎, 関根 嘉香, 金 煕江, 大歳 恒彦
    1989 年24 巻1 号 p. 45-51
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    石炭, 石炭灰および大気粉塵中のテルルを分析し, その大気中における挙動と環境試料中の濃度レベルを同族元素のセレンと比較した。テルルは地殻および土壌に対する濃縮係数が高く, 粒度分布においては微小粒子側に多く存在する。またテルルは石炭中に選択的に含有され, 石油中には定量されていないことから, 石炭燃焼由来の元素であると考えられ, Se/Teモル比の検討から石炭燃焼排出物のトレーサーとなる可能性が見出された。横浜市と冬期に暖房燃料として石炭消費量が増加する韓国ソウル市における大気中テルル濃度と, それぞれの都市の石炭消費量の間には相関が見られた。現在石炭は世界的レベルで石油とほぼ同量の需要のあるエネルギー源である。特に東アジア地域においては, 石炭需要の急速な増大が今後見込まれており, それに伴う大気汚染に対するモニタリングには, テルルは有用な元素であると考えられる。
  • 開沼 泰隆, 岡本 真一, 塩沢 清茂
    1989 年24 巻1 号 p. 52-59
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気測定局配置に関して, 大気汚染質濃度の把握と測定局数との調和を図り, 総合的な観点からその適正配置方法を提案することを目的として, まず前報で同定した測定局の適正配置に対する意思決定者の多属性効用関数の感度分析を行った。その結果, 感度の高い属性は測定局数, 広域包括度であることが明らかになった。次に, この分析結果を基にして, 対象地域において感度の高い属性群に重点を置いた配置方法を検討し, この方法に基づいて2つの測定局配置案を作成した。2つの配置案と現状配置とを比較した結果, 2つの配置案の期待効用値は高く, 現状配置よりも好ましい配置案であることが分かった。さらに, 意思決定者の意見のバラツキ, 2つの配置案の差を考慮して, 測定局配置案の選好順位に対して解析した結果, 2つの配置案についての優劣を定量的に把握することができた。
  • 安達 修一, 片山 博雄, 竹本 和夫
    1989 年24 巻1 号 p. 60-63
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    マウス (ICR/Jcl, ♀, 4週齢) にタンパク質分解酵素であるパパインのミストを吸入暴露し, 小葉中心性の肺気腫を形成させたのち, 不溶性の酸化クロム (Cr2O3, 2.4±1.7μm) 粉じんを吸入 (4.45±0.27mg/m3, 5hr) させた。病理組織学的検索および原子吸光法による肺内粉じん量測定の結果, 肺気腫マウスでは, 粉じん吸入直後の肺内沈着量が正常のものに比べて有意に低く, 約70%しか沈着しなかった。一方, 粉じん吸入から1年後までの, 肺からの粉じんクリアランスは, 肺気腫マウスが正常のものに比べて遅延する傾向が認められた。
  • 鹿島地域への適用
    多田 和雄, 間 博之, 小林 恵三, 岡本 眞一
    1989 年24 巻1 号 p. 64-73
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    粒子状物質の拡散モデルを開発し, 茨城県鹿島地域における粒子状物質の発生源別寄与率を算出した。この拡散モデルでは, 従来の粒子状物質を対象とした拡散シミュレーションではあまり考慮されていなかった稲わら焼および海塩粒子も対象とした。発生量の未把握等のため拡散モデルでは計算しにくい土壌および二次粒子については, 別途測定した化学成分濃度より概算値を求め, その濃度を拡散計算値に加えた。拡散計算は0-2, 2-10, 10-20, 20μm以上の4粒径に分けて行い, 粒径10μm以下の拡散計算値を浮遊粉じんおよび浮遊粒子状物質の実測値と比較した。
    その結果, 実測値と計算値を比較すると, 良い整合性が得られた。また, 傾き1の回帰式の切片A0は3.6μg/m3となり, 実測値の約9割を説明できた。
    さらに, 本拡散モデルと別途実施したリセプターモデル (CMB法) による発生源別寄与濃度の計算結果を比較して, 両モデルを適用する上での問題点を検討した。
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