大気汚染物質のNO
2が肺腫瘍発生を促進する作用を有するかどうかを明らかにするため, 発癌剤投与とNO
2暴露の併用実験を行った。低濃度の発癌剤N-bis (2-hydroxypropyl) nitrosamine (DHPN) あるいは生理食塩水を6週令のWistar系雄ラットの腹腔内に1回投与し, 翌日からそれらのラヅトを清浄空気, 0.04ppm, 0.4ppmあるいは4ppmのNO
2に17ヵ月間連続暴露した。肺では, DHPNを投与した清浄空気暴露群と0.04ppm NO
2暴露群の各40匹中に各々1匹 (3%) つつに腺腫が認められた。これに対してDHPNを投与した4ppm NO
2暴露群では40匹中5匹 (13%) に肺の腫瘍が認められ, そのうち4匹に腺腫が, 1匹に腺癌が認められた。しかし, この値はDHPNを投与した清浄空気暴露群と比べて有意差はなかった。DHPNを投与したあとNO
2暴露されたラットでは高率に肺胞上皮細胞の過形成が発生していたが, その発生率とNO
2濃度の間に有意な差は認められなかった。なお, NO
2暴露のみの群では肺胞上皮細胞の過形成は認められなかった。一方, 細気管支上皮の過形成はDHPNを投与した4ppm NO
2暴露群で顕著で, 40匹中17匹 (43%) に認められた。しかし, DHPNを投与した他の暴露群ではその過形成はほとんど認められなかった。また, DHPN無投与の4ppm NO
2暴露群で認められた過形成はDHPN投与群で認められたものより軽度であった。
これらの結果は肺の腫瘍発生が4ppmNO
2暴露によって促進されることを示している。しかし, 低濃度のNO
2暴露ではその効果は認められなかった。
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