大気汚染学会誌
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25 巻, 5 号
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  • 野内 勇
    1990 年 25 巻 5 号 p. 295-312
    発行日: 1990/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    酸性雨は今や世界的な環境問題であり, 酸性雨の陸上生態系への影響に関する多くの研究が報告されている。本稿は酸性雨による農作物および森林樹木への影響をまとめたものであり, 特に, 酸性雨による葉障害, 植物の生長低下や農作物の収量減少, 障害発現メカニズムおよび酸性雨が原因と言われている森林衰退を中心とした。
    人工酸性雨の実験によると, 葉面に現れる可視葉被害発生は, ほとんどの農作物ではpH3.5以下であり, いくつかの感受性の樹木ではpH 3.0以下であった。また, ほとんどの人工酸性雨実験で, 農作物の生長・収量減少と樹木苗木の生長減少は, pH 3.0以上のpHの酸性溶液では生じなかった。それ故, 現在の大気環境レベル (pH4.0~5.0) の酸性雨では, 農作物の生長や収量および樹木苗木の短期の生長には影響はないであろう。しかし, 自然の森林における樹木では, 酸性雨は土壌を酸性化し, 毒性の強いアルミニウムの溶解性の増加, 葉成分および土壌養分の酸性溶脱の増加, 菌根菌の活性阻害など様々な影響を受けている。そのため, 酸性雨は森林衰退に寄与する環境要因の一つであるかもしれない。森林衰退の原因に関しては,(1) 土壌酸性化-アルミニウム毒性説,(2) オゾン説,(3) マグネシウム欠乏説,(4) 窒素過剰説,(5) 複合ストレス説の五つの主要な仮説がある。酸性雨にはこの5仮説のうち4つに関連する。ヨーロッパや北米での森林衰退の原因は明らかではないが, 研究者の多くは寒害, かんばつ, アルミニウム毒性, 昆虫害, オゾン, 酸性雨, 酸性の雲水などが複合して森林衰退を導いているものと推定している。
  • 橋本 芳一, 金 煕江, 大歳 恒彦, 関根 嘉香
    1990 年 25 巻 5 号 p. 313-323
    発行日: 1990/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    国設大気測定網 (NASN) のモニタリング方法に準じて, 韓国ソウル市において1987年4月から1989年3月にかけてローボリューム・サンプラーによって大気エアロゾルを捕集し, その成分分析と結果の解析を行った. 大気粉塵量および大気汚染物質濃度は日本の東京および川崎と比較して全般に高く, 特に, A1, Sc, Th等の土壌由来元素, As, Se, V, Ni等の化石燃焼排出物由来の元素およびPb, Brの有鉛ガソリン使用の自動車排出粒子由来の元素濃度が高く観測された. またCMB法により主要発生源からの寄与率を推定したところ, 土壌粒子の影響が最も高く, 2年間の平均で全大気粉塵の約25%, 春先では約60%占めると考えられた. 有鉛ガソリンの使用は1988年から規制が始まり, 大気中の鉛濃度の観測は今後重要になると思われる. 今回の解析では, 石炭燃焼排出物の影響について十分な情報が得られなかった. これは, 現時点では石炭の燃焼排出物について適した指標元素が見出されていないためである.
  • 嵯峨井 勝, 市瀬 孝道, 佐野 友春, 村上 正孝, 藤井 敬二
    1990 年 25 巻 5 号 p. 324-333
    発行日: 1990/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染物質のNO2が肺腫瘍発生を促進する作用を有するかどうかを明らかにするため, 発癌剤投与とNO2暴露の併用実験を行った。低濃度の発癌剤N-bis (2-hydroxypropyl) nitrosamine (DHPN) あるいは生理食塩水を6週令のWistar系雄ラットの腹腔内に1回投与し, 翌日からそれらのラヅトを清浄空気, 0.04ppm, 0.4ppmあるいは4ppmのNO2に17ヵ月間連続暴露した。肺では, DHPNを投与した清浄空気暴露群と0.04ppm NO2暴露群の各40匹中に各々1匹 (3%) つつに腺腫が認められた。これに対してDHPNを投与した4ppm NO2暴露群では40匹中5匹 (13%) に肺の腫瘍が認められ, そのうち4匹に腺腫が, 1匹に腺癌が認められた。しかし, この値はDHPNを投与した清浄空気暴露群と比べて有意差はなかった。DHPNを投与したあとNO2暴露されたラットでは高率に肺胞上皮細胞の過形成が発生していたが, その発生率とNO2濃度の間に有意な差は認められなかった。なお, NO2暴露のみの群では肺胞上皮細胞の過形成は認められなかった。一方, 細気管支上皮の過形成はDHPNを投与した4ppm NO2暴露群で顕著で, 40匹中17匹 (43%) に認められた。しかし, DHPNを投与した他の暴露群ではその過形成はほとんど認められなかった。また, DHPN無投与の4ppm NO2暴露群で認められた過形成はDHPN投与群で認められたものより軽度であった。
    これらの結果は肺の腫瘍発生が4ppmNO2暴露によって促進されることを示している。しかし, 低濃度のNO2暴露ではその効果は認められなかった。
  • 孫 富順, 新田 裕史, 前田 和甫, 金 潤信, 柳澤 幸雄
    1990 年 25 巻 5 号 p. 334-342
    発行日: 1990/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1989年1月に韓国で一酸化炭素 (以下CO) の室内濃度と個人曝露濃度の測定を行った。同時に室内汚染と個人曝露濃度に影響を及ぼす家庭特性を調べるための質問紙調査も行った。室内濃度は台所と居間で, 個人曝露濃度は最近開発されたパッシブCOサンプラーを用いて, 主婦に対して測定を行った。調査対象は都市地域であるソウルと地方である忠清南道Togoから, 暖房形態として伝統的オソドル又はオンドルポィラーを使用する世帯を選んだ。その結果, 日平均で室内CO濃度は台所23ppmと居間12ppm, 個人濃度はその中間の18ppmに及んでいた。室内濃度と個人曝露濃度には家庭特性, 特にオンドルのタイプの影響が認められた。さらに, 家庭での換気設備および対象家庭の社会経済的水準が室内CO濃度に影響を与える重要な要因であることが明らかになった。
  • 藤田 慎一, 高橋 章, 村治 能孝
    1990 年 25 巻 5 号 p. 343-353
    発行日: 1990/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    わが国の気象条件や地理要因と照らして, 妥当性のある硫黄化合物の沈着速度を検討するとともに, 既存の濃度データを用いて乾性沈着量を推計し, 湿性沈着量や先駆物質の発生量との関係を調べた。
    陸域と沿岸海域を綱羅するほぼわが国の全域を, 80×80kmの114個の正方メヅシュに分割し, 土地利用データと気象データを用いて地表面の粗度と吸収抵抗を設定し, 暖候季の沈着速度の分布を求めた。推定した平均沈着速度は, 二酸化硫黄: 0.41cm/s, 硫酸塩: 0.21cm/sであった。暖候季に乾性沈着の過程で全域に沈着した硫黄化合物の量は, 約0.30TgS/005yであり, この値は同じ期間の湿性沈着量とほぼ匹敵することがわかった。また沈着した硫黄化合物の90%以上は二酸化硫黄であり, 硫酸塩の寄与は相対的に小さいことが示唆された。
  • 1990 年 25 巻 5 号 p. N45
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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