大気汚染学会誌
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25 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 最近の動向
    功刀 正行
    1990 年 25 巻 6 号 p. 355-370
    発行日: 1990/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染物質の一つである浮遊粒子状物質の測定法について概説する. 浮遊粒子状物質の測定, 分析法には, 様々な角度からのアプローチがあるが, ここではその質量濃度測定法について, わが国および米国の環境基準の標準測定法と連続測定法および個人暴露や分布調査に用いられる小型サンプラーの現状を主に取り上げた.
    米国の新たな環境基準に盛り込まれたPM10については少し詳しく解説した.
  • 1. 暴露実験による可能性の検討
    岡野 那夫, 古川 昭雄
    1990 年 25 巻 6 号 p. 371-377
    発行日: 1990/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中の窒素酸化物 (NOx) 汚染のバイオモニタリングを行う目的で, 植物が吸収・蓄積した二酸化窒素 (NO2) 量の推定に, 15N希釈法の適用を検討した. 予備的実験として, 発芽段階から15N標識の窒素を含む水耕液で栽培した植物に, 0.1ppmおよび0.2ppmNO2を3週間暴露し, 植物体の15N濃度の希釈率, 個体当りのNO2吸収量, 単位葉面積当たりのNO2吸収速度と暴露濃度の関係を調べた.
    植物体の15N濃度の希釈率は, 大気中のNO2濃度に比例し, かつ生長量の影響を受けにくいことから, 大気NO2汚染度の指標として最も適当と判断された. 15N希釈法により地点間のNOx汚染度の差を検出するには, トマトやヒマワリなどの15N濃度の希釈率の大きい植物種が有効であった. 今回用いた方法では, 地点間のNO2濃度差が42-44ppb前後なければ検出が不可能であったが, 今後, 適切な植物種の選定や配置個体数の増加などの工夫により, さらに微妙なNOx汚染度の検出が可能になると考えられた.
  • 劉 国林, 尾張 真則, 山田 治彦, 鈴木 周一, 二瓶 好正
    1990 年 25 巻 6 号 p. 378-385
    発行日: 1990/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究は大気浮遊粒子状物質の粒別分析の利点を十分活かすと共に統計的クラスター分析を用いた起源解析法の開発を目指した. 東京都内の交通量の多い幹線道路のアンダーパス部の沿道においてローボリウムエアサンプラーおよびアンダーセンエアサンプラーを用いて実試料を捕集し, 粒径分布および濃度を測定したのち, X線マイクロアナライザーを用いて粒別に元素組成分析を行い, 組成データに基づくクラスター分析により起源解析を行った. その結果, 大気粒子について多種起源の同時解析, つまりそれぞれの寄与率が求められ, かつ, 寄与率の小さい起源種の寄与も明らかにすることができた.
  • 三浦 和彦
    1990 年 25 巻 6 号 p. 386-394
    発行日: 1990/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    冬期東京神楽坂において地表付近の大気エーロゾル粒子濃度を測定し, 逆転層の高さと比較した. エイトケン粒子濃度はポラック凝結核計数器と拡散箱を用いて測定し, ミー粒子濃度 (半径0.055~2.5μm) は2台の光散乱式計数器を用いて測定した. 逆転層の高さはパイロットバルーンを用いた高層風観測より求めた. また, エーロゾル粒子の垂直分布は, 逆転層の高さと地上付近の粒子濃度との関係から推定した. その結果次の事がわかった.
    (1) 冬期は, 逆転層が形成されやすく逆転層下ではすべての大きさの粒子が増加するが, 逆転層が消滅するときには強い風を伴い, 比較的大きい粒子を減少させる.
    (2) ミー粒子濃度は負の勾配を持つ垂直分布をもつが, エイトケン粒子は高度700mまでほぼ一様な濃度分布をもつと推定された. 粒子濃度に対する風速の影響として, 水平輸送と垂直輸送が考えられる. 垂直輸送によりエイトケン粒子濃度は変わらないが, ミー粒子は下層の高濃度の空気が上層の低濃度の空気と混合するため減少する. ミー粒子に対する風速の影響が著しいのはこのためと推定された.
  • 南関東における観測から
    水野 建樹, 近藤 裕昭
    1990 年 25 巻 6 号 p. 395-404
    発行日: 1990/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    NOxや粉一じん (SP) が極めて高濃度になる初冬を対象に, 東京都の一般環境局および筑波での観測結果を用いて濃度の経日変化について調べた. NOx, SPの日平均濃度のパターンは関東地方を気圧の谷が通過し冬型の気圧配置になったときともに最低となり, その後冬型の気圧配置がゆるむとともにまずNOxが上昇し, SPはNOxより遅れて上昇する傾向を示す. そのため, 比率SP/NOxは寒冷前線あるいは気圧の谷が通過した直後に相対的に低くなり, 次第に増加して, 次の気圧の谷の部分で最も高くなるような鋸型の変化パターンをする. この変化は相対湿度の変化パターンと良く一致しており, 冬型の気圧配置になった後, 比較的乾燥している大気中でNOxがまず上昇し, 大気が湿潤になるにつれ粉じづ濃度が上昇すると言える. 解析は主に光散乱粉じん計のデータを用いて行ったが'β 線粉じん計やピエゾバランス粉じん計のデータも初冬には高い相対湿度の下で高濃度が観測されており, 測定法が異なっても相対湿度とともに測定値が増加する傾向は変わらないといえる. したがって, 今後, 連続測定によるSPM中の水分の影響を定量的に見積もることが必要である.
  • 脂質親和性との関連性
    大迫 政浩, 西田 耕之助, 松井 三郎
    1990 年 25 巻 6 号 p. 405-414
    発行日: 1990/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究では, 臭気の感覚量の評価を行う上で必要となる, 嗅覚閾値の推定方法を検討した. すなわち, 閾値が臭気物質の嗅細胞膜脂質層への吸着, 溶解量に支配されると考え, リソ脂質コーティング剤充填カラムを用いたGC分析法を利用した, 脂質層への親和性指標の評価方法を新たに開発した. そこで, 各臭気物質の同族列ごとに親和性指標としての保持時間と閾値の相関性を検討した結果, 炭化水素類において両者の間に高い相関性があることが確認されたことから, 閾値の推定方法として, 炭化水素類に対しては本法がきわめて有効であることが判明した. また, 閾値と保持時間が高い相関性を有するという実験的事実は, 嗅応答の発現に, におい分子の脂質層への吸着, 溶解過程が大きく関与している可能性を示唆している.
  • 辰市 祐久, 岩崎 好陽, 茅島 正資
    1990 年 25 巻 6 号 p. 415-420
    発行日: 1990/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    三点比較式フラスコ法を使った官能試験によって, 水温を変えた場合の希釈倍数値の変動を検討し, 東京都内の主要河川の水質と希釈倍数値を測定した. その結果, 次のことが明らかになった.
    1) 三点比較式フラスコ法によって河川水の水温別の希釈倍数値を測定したところ, 40℃ の希釈倍数値の平均は25℃ の場合に比べ約1.5倍感度が高くなったが, 逆に各被験者内の変動係数は40℃ で0.42, 25℃ で0.29と40℃ の場合の方が約1.5倍高くなった.
    2) 東京都内の34ケ所の河川水の希釈倍数値 (y) を測定したところ2~130の範囲にあった. また同時に測定したBOD値 (X) から
    y=4.6X+0.80
    の相関関係が得られ, その相関係数は0.71であり, 有意な相関が得られた.
    3) 河川周辺におけるアンケート調査から得られた結果より, 河川周辺に及ぼす臭気の影響を考慮すると, 川幅10m程度で希釈倍数値50以下, 30m位で希釈倍数値20以下が適当と考えられる.
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