大気汚染学会誌
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最新号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ラグランジュ型粒子モデルを軸として
    市川 陽一, 佐田 幸一, 朝倉 一雄
    1994 年 29 巻 6 号 p. 297-312
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    最近, 濃度分布の予測に風速変動の2次以上のモーメントやエネルギーの散逸率, 時間スケールなど高次の乱流統計量が使用されるようになってきた。本報告では, 大気中の物質移動現象を支配する高次の乱流統計量をもとにした拡散予測手法のうち, 特にラグランジュ型粒子モデルに焦点をあてて述べた。ラグランジュ型粒子モデルの特徴は以下の通りである。(1) 地形や熱, 植生などによって生じる複雑な気流場における拡散解析に適用できる。(2) ラグランジュ的な考え方は自然でわかりやすい。また, オイラー型モデルと異なり, 数値解法上の問題がほとんどない。(3) クロージャーモデルと違い, モデル化に労力を割かなくて済む。
    ラグランジュ型粒子モデルには, 25年におよぶ開発過程があり, その間に乱れの非均質性, 非正規性を組み込むことができるようになった。非均質性, 非正規性を考慮できるラグランジュ型粒子モデルは, 現在のところ, 対流境界層の拡散予測によい成果をあげている。今後, 複雑地形上の3次元拡散予測, 植生あるいは都市キャノピー内での拡散予測, 濃度変動予測などでの活用が期待できる。
  • 樋口 隆哉, 西田 耕之助, 樋口 能士, 武内 伸勝, 土橋 隆二郎
    1994 年 29 巻 6 号 p. 313-322
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    嗅感覚の時間特性のうち, 吸入時間と連続的曝露に関する実験的検討を行った。ただし, ここでは嗅感覚を嗅覚性刺激による “におい” と非嗅覚性刺激 (三叉神経性刺激) による “刺激性” の両面からとらえ, 相互に比較, 対応させた。
    まず, 吸入時間を変化させたときの, におい物質と刺激性物質のにおいおよび刺激の知覚強度を測定した結果, におい物質, 刺激性物質ともに, においの知覚強度は低濃度においては吸入時間とともに増大したが, 高濃度においては逆に減少する傾向を示した。一方, 刺激の知覚強度は吸入時間とともに増大し, 物質濃度と吸入時間の積としての全体の物質量が重要な因子となっていることが見いだされた。よって, 臭袋を用いた官能試験を行う際には, 各被験者の吸入時間を一定にすることが重要であると考えられた。次に, におい物質と刺激性物質を連続的に曝露したときのにおいおよび刺激の知覚強度の変化を測定した結果, におい物質, 刺激性物質ともに, においの知覚強度は時間の経過とともに低下したのに対し, 刺激の知覚強度は上昇し, しかも変動する傾向を示した。このことから, 臭気の連続的曝露においては, 刺激性の感覚的応答特性に十分留意して臭気の評価, 規制を行う必要があることが明らかとなった。
  • 原口 公子, 北村 江理, 山下 俊郎, 貴戸 東
    1994 年 29 巻 6 号 p. 323-331
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    北九州市における大気中の農薬の濃度を, 市街地および農業地域に近接した地域で, 農薬を大量に使用する時期 (1992年6月, 8月) とそれ以外の時期 (11月, 1993年2月) について, 石英ろ紙とXAD-2樹脂を装着したハイボリュームエアサンプラーを用いて試料を採取し, GC/MS-SIM法により測定した。調査対象とした36種類の農薬のうち35種類が検出され, それらの農薬の検出濃度範囲は0.01から70ng/m3であった。最も高い濃度を示したのはFlutoluanilの70ng/m3であったが, 35種類のうち30種類の農薬の平均濃度は1ng/m3以下であり極めて低濃度であった。農薬の濃度は, すべての測定地点で8月が他の月に比べ最も高く, 特に農業地域に近接した地点でその傾向は顕著であったが, 市街地でも同様の傾向がみられた。この現象は, 使用された農薬からみて農業地域からの影響が最も大きく, その他の地域で用いられた農薬がこれに加わり各地点に影響を与えていることが推察された。また, 6, 11, 2月では数種類の高沸点の農薬以外は, ほとんどの農薬がガス状物質としてXAD-2樹脂上に検出されたが, 8月では, 石英ろ紙上に粒子状として捕集されるFlutoluanilが大量に検出されたため, ガス状物質より粒子状物質の検出量が高い値を示した。
  • 宇都宮 彬, 土井 妙子, 溝口 次夫
    1994 年 29 巻 6 号 p. 332-339
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    九州北部地域は, 春期にオゾン濃度が高濃度になり, この原因として, 自然起源による比率, すなわち, 成層圏あるいは対流圏上部から降下する量が多いと推定されている。大気の比較的清浄な山頂 (33.53°N, 130.57°E;標高920m) および平野部低汚染地点 (33.4°N, 130.5°E: 標高25m) においてオゾンの観測を実施し, この観測値を基にバックグラウンドオゾン濃度の長期変動, 季節変動等を明らかにするとともに, 春期および秋期に, 地上 (33.5°N, 130.5°E;標高27m) のベリリウム-7濃度の観測を実施し, バックグラウンドオゾンの濃度変動をに及ぼす気象条件について考察した。
    山頂のオゾン濃度は4, 5月に44~60ppbと最も高くなり, 7月にその濃度が低下する季節変化が見られ, 7, 8月を除くオゾン濃度の変動は, 春に高く秋に低い北半球で見られるオゾン濃度変化と大まかに類似している。山頂および平野部低汚染地点のオゾン濃度は減少傾向が見られ, その減少トレンドは4.7%/年と推定された。
    ベリリウム-7濃度の平均値は春期および秋期で, それぞれ (5.7±2.2) ×10-3Bq/m3および (5.1±2.0) ×10-3Bq/m3であった。上層大気の侵入または沈降により, ベリリウム-7濃度は気圧の谷および寒冷前線の後面から西高東低の気圧配置で上昇し, また高気圧前面から後面にかけて漸次増加している。
    山頂のオゾン濃度は気圧の谷, 高気圧の影響を受ける気象条件で高くなり, また, 北の気団の影響を受ける気圧配置のO3濃度の方が南の気団の影響を受ける気圧配置のO3濃度より高くなる傾向が見られる。
  • 水野 建樹, 兼保 直樹
    1994 年 29 巻 6 号 p. 340-350
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都市部における観測データの解析から, SPMは大気中の湿度によって粒子内の重量が変化すると考えられたので, 相対湿度の変化による水分影響を考慮に入れたSPMシミュレーションを行った。拡散モデルとしては多重ボックスモデルを用いた。このモデルでは乱流拡散とモデルの性格上生じる疑似拡散の両者が濃度に影響を与えるので, 最初に疑似拡散の補正法について考察し, 新しい補正方法を提案した。この補正を適用すると, 結果的に同時に実際の乱流拡散も適切に表現されるようになり, 計算手法上の問題は解決された。
    SPM濃度への水分影響については, Winklerの経験式 (都市域の粒子状物質に及ぼす水分影響を表したもの) を若干単純化したモデルを用いた。計算は東京都全域を対象に, 冬季高濃度が出現した日から4例を抽出して行った。その結果, 水分を考慮しなかった場合に比べ, 水分影響を考慮した計算結果はより実測濃度に近づいた。
  • 吉門 洋
    1994 年 29 巻 6 号 p. 351-358
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    浮遊粒子状物質 (SPM) や二酸化窒素 (NO2) による大気汚染が環境基準を超える日は, 関東平野では初冬季に集中している。その高濃度汚染と結び付いた弱風安定条件の気象構造を1989~1991年の12月について統計的に調べた。
    東京都心部の内陸側から埼玉県中央部にかけての広い地域で, SPMの日平均濃度レベルはよく一致する。その地域の中心部でSPM日平均濃度が130μg/m3以上であった日を高濃度日とした。なお, 日々のNO2濃度レベルの高低もSPMのそれと高い相関を持つ (相関係数0.91)。高濃度日は既に前夜以来100μg/m3を下回らない高濃度が続いていることが多く, 一日以上の時間スケールをもつ広域気象条件に支配されて起ることを示している。
    高濃度日には上層が通常よりも高温になっているのが特徴的で, 日平均では海抜870mの筑波山と平野面の間の温度差がほとんどない。筑波山の風は, 南西風の場合が多いが, 明瞭でない場合もある。
    また, 高濃度日は平野周辺部に比べて2度ほど平野内の冷え込みの度合いが大きく, その領域は広く平野中西部をおおっている。これは盆地などで報告されるいわゆる冷気湖のような構造と考えられる。高濃度日には山沿いでは山谷風, 東京湾岸では海陸風のような風の日変化があるが, 高濃度汚染の起る平野中西部はそれらのはざまに当たり, きわめて風が弱いことがわかった。
  • 生成・変質・除去
    笠原 三紀夫
    1994 年 29 巻 6 号 p. A93-A101
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 近藤 矩朗
    1994 年 29 巻 6 号 p. A102-A110
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    成層圏オゾンの減少により地上に到達する紫外線が増加し, それによって植物は悪影響を受けるのではないかと懸念されている。UV-B (280~315nm) 照射量が増えると, 一般に植物の成長は阻害され, 葉面にクロロシスの発現などが見られる。また, 紫外線は植物の遣伝子損傷を引き起こすことが明らかとなり, 紫外線増加と遺伝子損傷との関係が注目されている。一方, 紫外線照射により様々な紫外線防御機能が誘導される。特に紫外線吸収物質であるフラボノイドの合成が促進され, 植物の紫外線に対する防御機能が強化される。そのため, 紫外線増加の植物への影響を定量的に測定することは困難である。
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