関東地方で初冬季に出現する広域・高濃度NO
2現象の要因として, 数値実験的にはその寄与が指摘されていたNO
x-炭化水素系光化学反応を, 野外観測によって捉えることを試みた。 NO
2の高濃度 (>90ppb) が観測された1991年11月26, 27日および12月6, 7日に東京都都心部の高層ビル屋上および地上, 東京湾岸の東京都環境科学研究所, 関東平野内陸部の4地点および筑波山頂上において光化学反応に関与する物質の測定を行い, 各物質濃度の経時変化を検討した。
東京都都心部でのperoxyacetylnitrate (PAN) 濃度は最高3.9~11.7ppbと高濃度を示し, 経時変化は [PO (=NO
2+O
3)-NO
2Prime (直接排出起源のNO
2)] の経時変化と類似した挙動を示した。 高層ビル屋上で測定されたNO
3-濃度は12月7日以外の3日間は日中に顕著な増加を示し, 特に12月6日に最高59μgm
-3と非常な高濃度に達した。 アセトアルデヒド/CO比は12月6, 7日の日中に顕著な増加を示した。 これらの指標物質の挙動から, 高濃度NO
2の出現時に光化学反応が生じていたことが明らかとなった。 また, 船舶による東京湾内での観測結果より, 東京湾上空ではPOはO
3の形で存在する割合が大きいことが示唆された。 さらに, 関東平野内陸部での観測結果より, 冬季光化学大気汚染はNO
3-の生成を通して高濃度SPM現象の一因となる場合があることが明らかとなった。
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