大気汚染学会誌
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29 巻, 2 号
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  • 東京都世田谷区役所周辺における1989年3月の調査
    松本 幸雄, 新藤 純子, 田村 憲治, 安藤 満, 伊藤 政志
    1994 年 29 巻 2 号 p. 41-54
    発行日: 1994/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染による住民の健康リスクを評価する視点から, 生活空間の大気汚染を把握し人口集団の暴露情報を評価することが大気モニタリングに課せられた重要な使命の一つである。 モニタリングにより生活空間の大気汚染状況をどの程度まで把握可能かを明らかにするには, 都市における大気汚染濃度の時間空間変動特性を明らかにする必要がある。 このための知見をうる調査の一つとして, 幹線道路を含む住宅地域におけるNO2濃度の時間空間変動の実態を把握するために, フィルターバッジを用いた簡易測定によりNO2の1日平均濃度の調査を1989年3月の5日間, 東京都世田谷区役所を中心とする東西3km, 南北4kmの領域において実施した。 サンプリングは, 次の2種類の地点で行った:(1) 自動車交通の直接影響を受けていないと思われる地点で約1km間隔で格子点に配置した地点 (東西3×南北4=12), および (2) 格子点h (松陰神社) の周辺で, 世田谷区役所と環状七号線の間に設定した地点 (15地点)。 後者は環状七号線からの距離により群分けした。 日と地点を因子とする2元配置分散分析により調査結果を解析した結果, 全体的に日による変動が最も大きいという過去の調査の結果を定性的に再確認した。 新しく次のことが明らかになった:(1) 1km間隔の地点の濃度については, 過去の調査の結果と比べて地点による変動および日×地点交互作用が同程度かやや小さかった。(2) 道路近傍の地点では道路との間に構造物があるとき, 道路からの直接暴露を受ける場合に比べて濃度が低いことが分かった。 道路端から350mまでの群では道路からはなれるに従って濃度が低下した。(3) 各群の日による変動の大きさは, 道路端から350mまでの群では道路からの距離に依存せず, ほぼ同程度の濃度変動を示した。(4) 地点変動と日×地点交互作用は道路近傍で道路との間に構造物のない地点群で大きかったが, それ以外の地点群では極めて小さく群内でのNO2濃度は局所的に一様で安定していた。(5) 日変化パターンは道路から350mの群までほとんど同一であった。(6) 道路から最も離れた400~700mの群では, 環状七号線により近い群に比べて濃度が上昇傾向で, 日変動, 地点変動, 交互作用とも大きかった。 この群は環状七号線以外の局所的な道路の影響を受けていると推察された。
  • 嵯峨井 勝, 平野 靖史郎, 市瀬 孝道
    1994 年 29 巻 2 号 p. 55-64
    発行日: 1994/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究では, 実験動物用のエアロゾル暴露装置を開発製作し, これを用いて10mg/m3の硫酸エアロゾル (平均粒径=0.7μm) をラットに1日8時間ずつ, 10日間間欠暴露し, 肺の過酸化脂質およびスーパーオキシドディスムターゼ (SOD) や抗酸物質濃度の変化, ならびに肺胞マクロファージのスーパーオキシド (O2-) 産生能の変化を調べた。
    硫酸エアロゾルの間欠暴露により, ラットの肺の過酸化脂質濃度は暴露1日目には対照群より若干増加したが, その後対照レベルより有意に低下した。 一方, グルタチオンペルオキシダーゼやグルタチオンS-トランスフェラーゼ等の過酸化脂質代謝系酵素活性の若干の増加とこれら酵素の基質であるグルタチオン (非蛋白質性SH化合物として測定) 濃度は有意に増加した。 また, 酸化的ストレスの指標としてのSOD活性も有意に増加し, 肺においてO2-の産生亢進が起っていたことを示唆している。 さらに, これら抗酸性酵素活性やグルタチオン濃度の増加は, 硫酸エアロゾル暴露で肺細胞内に生じたO2-やそれから派生する活性酸素による傷害に対する肺の防御機能の亢進現象と推測される。
    一方, ラットの肺胞マクロファージのO2-産生能は対照群の半分近くに低下していた。 このマクロファージの02-産生能の低下は, 肺における細菌やウイルス等に対する感染抵抗性の低下につながる可能性があり, 慢性閉塞性肺疾患の発現の面から重要と考えられる。
  • 古明地 哲人, 朝来野 国彦
    1994 年 29 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 1994/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    酸性雨現象の中で重要な部分を占めている乾性沈着現象についてはいまだ, その測定法, 結果の評価についてもほとんど確立されていない。 そこで, 乾性沈着測定のひとつの方法である代理表面法 (ボトル採取) について検討した。 乾性降下物採取における水添加の効果は測定成分のすべてについて認められたが, 特に水面へのガス吸収もあるSO42-, NO3-の捕集効果が大きく, 2倍以上の捕集量を示した。 また, ボトルによる乾性降下物捕集のもう1つの特性は粗大粒子の降下を示すCa2+の降下量が多いことであり, 降下量が他の成分と比較し, もっとも多い例が多くみられた。 乾性降下物の降下量の地域分布では, 1つは東京湾沿岸より内陸部への距離減衰を示す成分であり, これらはSO42-, また海塩成分であるNa+, Cl-であった。 他はNO3-, NH4+であり, 大気中で二次的に生成される成分であるが, これらは内陸部の福生で最高の降下量を示した。 湿性降下物の降下量との比較では, Ca2+の乾性降下物による降下量はほぼ同程度であり, SO42-, NO3-は湿性降下物の降下量の約50%であった。
  • 河野 吉久
    1994 年 29 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 1994/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ハツカダイコンとインゲンマメに対して, pH2.0~4.0の硫酸水溶液あるいは純水を4ないし6週間噴霧処理した。 可視害の発現が観察されたpH2.0の硫酸水溶液を噴霧した葉の向軸側表皮について, エネルギー分散型X線検出器を装着した凍結走査型電子顕微鏡で形態観察を行った。 壊死斑の発現状況を検討した結果, 気孔や毛茸の存在とは関係なく障害が発現していた。 また, インゲンマメでは, 葉の表面に白色~灰白色の結晶状物質が析出するのが観察された。 これらの元素組成について検討した結果, 噴霧処理した硫酸によって葉内のCaが溶出・析出したものであると考えられた。
  • 兼保 直樹, 吉門 洋, 水野 建樹, 田中 敏之, 坂本 和彦, 王 青躍, 早福 正孝
    1994 年 29 巻 2 号 p. 80-91
    発行日: 1994/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    関東地方で初冬季に出現する広域・高濃度NO2現象の要因として, 数値実験的にはその寄与が指摘されていたNOx-炭化水素系光化学反応を, 野外観測によって捉えることを試みた。 NO2の高濃度 (>90ppb) が観測された1991年11月26, 27日および12月6, 7日に東京都都心部の高層ビル屋上および地上, 東京湾岸の東京都環境科学研究所, 関東平野内陸部の4地点および筑波山頂上において光化学反応に関与する物質の測定を行い, 各物質濃度の経時変化を検討した。
    東京都都心部でのperoxyacetylnitrate (PAN) 濃度は最高3.9~11.7ppbと高濃度を示し, 経時変化は [PO (=NO2+O3)-NO2Prime (直接排出起源のNO2)] の経時変化と類似した挙動を示した。 高層ビル屋上で測定されたNO3-濃度は12月7日以外の3日間は日中に顕著な増加を示し, 特に12月6日に最高59μgm-3と非常な高濃度に達した。 アセトアルデヒド/CO比は12月6, 7日の日中に顕著な増加を示した。 これらの指標物質の挙動から, 高濃度NO2の出現時に光化学反応が生じていたことが明らかとなった。 また, 船舶による東京湾内での観測結果より, 東京湾上空ではPOはO3の形で存在する割合が大きいことが示唆された。 さらに, 関東平野内陸部での観測結果より, 冬季光化学大気汚染はNO3-の生成を通して高濃度SPM現象の一因となる場合があることが明らかとなった。
  • 竹内 浩士, 指宿 堯嗣, 吉廣 眞一, Wolfgang JUNKERMANN
    1994 年 29 巻 2 号 p. 92-103
    発行日: 1994/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中の過酸化水素濃度測定の重要性は広く認識されつつあるが, わが国やアジア地域における測定データはこれまでのところ非常に少ない。 低濃度かつ反応性の高い過酸化水素を正確に測定するのが困難であったためと考えられるが, 最近ではペルオキシダーゼを用いる酵素式蛍光法とそれによる自動連続測定が一つの標準法となり, 欧米でデータの蓄積が進んでいる。 われわれはこの装置を試作して実際に観測に供した結果, 自動測定により人為的な誤差要因は大部分排除されるものの, 正確なデータを得るためには試料採取や装置の状態に十分な注意を払う必要があることを経験してきた。 本稿では酵素式蛍光法による大気中の過酸化水素の自動連続測定装置について, その原理, 構成, 製作法, 調整・校正法などを述べるとともに, 試作装置の特性や経験に基づく故障対策などを示した。
  • 1994 年 29 巻 2 号 p. N24
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 太田 幸雄
    1994 年 29 巻 2 号 p. A31-A41
    発行日: 1994/03/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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