大気汚染学会誌
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29 巻, 5 号
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  • 若林 孟茂, 水野 光一, 大内 日出夫
    1994 年 29 巻 5 号 p. 235-244
    発行日: 1994/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    オゾン層破壊の原因と見なされているトリクロロフルオロメタン (CFC-11) を高周波プラズマを用いて分解した。プラズマの入力が増大し, アルゴン流量が減少すると共に分解率は上昇した。生成物はすす, ハロゲン化メタンおよびエタン, ハロゲン分子等であった。水を添加すると分解率は100%になり, ハロゲン化炭化水素等とすすの生成が著しく抑制される一方, 一酸化炭素, 炭酸ガスの生成が認められるようになった。酸素を添加すると水を添加した時とほぼ同じ効果が認められた。水素を添加しても分解率, すすの生成に変化は認められなかったが, 生成ハロゲン化炭化水素の組成には変化が認められた。 ギブスの自由エネルギーの変化を基に生成過程について検討した。
  • 吉野 秀吉, 浦野 紘平
    1994 年 29 巻 5 号 p. 245-253
    発行日: 1994/09/10
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    一般廃棄物の焼却炉から排出される排ガスには, 発がん性, 催奇形性, 変異原性などの遺伝毒性を示す物質も含まれていることが考えられる。本研究では, 排ガスの遺伝毒性的観点からの安全性評価方法の一つとして, エームス変異原性試験を行うための排ガス採取方法と捕集物の試料調製方法を検討した。排ガスは煙道より1~4l/minで吸引し, 排ガス冷却・洗浄瓶, 石英ウールおよび吸着樹脂等で捕集し, 捕集物は極性の異なる5種類の有機溶媒, すなわち, ヘキサン, 酢酸エチル, アセトン, ジクロロメタン, メタノールを用いて抽出した。
    排ガス吸引速度約2l/minで100~300lの採取において, 変異原性物質はガス冷却・洗浄瓶中の凝縮水と管壁およびその後の5ml (0.7g) 石英ウールカラムにほとんどすべてが捕集された。また, 凝縮水中の捕集物の抽出は, 凝縮水の約1/4量の酢酸エチルの5分間1回振とう抽出, 石英ウールカラムは20mlの酢酸エチルを約3ml/minの速度で自然流下させて抽出し, ガス冷却・洗浄瓶は流入管部分を約20mlの酢酸エチルでリンスし, 更に40mlの酢酸エチルを加えて抽出すれば変異原性物質はほぼ完全に回収できた。これらの酢酸エチル抽出液を混合して約5gの硫酸ナトリウムで脱水した後, 酢酸エチルを蒸発させ, 5mlのジメチルスルホキシド (DMSO) に再溶解してエームス変異原性試験を行った結果, TA98株で約3000net rev./Nm3以上, TA100株で約8000net rev./Nm3以上の変異原性を測定できた。
  • 三輪 誠, 伊豆田 猛, 戸塚 績
    1994 年 29 巻 5 号 p. 254-263
    発行日: 1994/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    母材が異なる3種類の土壌の酸性化が, スギ苗の生長に及ぼす影響を調べた。供試土壌として, 火山灰を母材とする黒ボク土, 非固結堆積岩を母材とする赤黄色土および花歯岩を母材とする褐色森林土を用いた。これらの土壌1lに10, 30, 60または100meqのH+イオンを硫酸溶液で添加した。また, 硫酸溶液を添加しない各土壌を対照土壌とした。硫酸添加処理の1週間後, 各土壌を詰めた500ml容ビニールポットに, スギー (Cryptomeria japonica D. Don) の2年生苗を移植し, 1992年6月9日から9月1日までの12週間にわたって温室内で育成した。
    12週間の育成期間中におけるスギ苗の乾物生長は, いずれの土壌においても, 硫酸添加量の増加に伴って低下した。しかし, この生長低下の程度は, 黒ボク土に比べて, 赤黄色土と褐色森林土において明らかに大きかった。
    一方, 土壌への硫酸添加量の増加に伴って, いずれの土壌においても, p H (H2O) が低下し, 水溶性のMnおよびAl濃度が増加した。また, 硫酸添加処理区で育成したスギ苗の地下部のA1濃度は著しく高かった。
    以上の結果から, 土壌への硫酸添加処理に伴うスギ苗の生長低下は, 黒ボク土に比べて, 赤黄色土や褐色森林土で発現しやすいことが明らかになった。また, これらの生長低下には, いずれの土壌においても, 土壌p Hの低下とそれに伴う土壌中へのA1の溶出, およびスギ苗の地下部におけるA1濃度の増加が強く関与すると考えられた。
  • 森川 多津子, 伊藤 献一
    1994 年 29 巻 5 号 p. 264-277
    発行日: 1994/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    低公害自動車としてNOx対策等に有望視されているメタノール自動車の首都圏への大規模な導入を想定し, 冬期における, NOxの酸化還元機構に与える影響, および大気中HCHO濃度変化量を予測した。モデルはボックスモデルである。気象条件は, 冬期の高濃度大気汚染発現型である晴天型および曇天型について考慮した。シミュレーション条件は, バスおよび普通貨物車のすべてをディーゼルタイプメタノール自動車に転換するものとし, このとき, NOx排出量は15%削減され, HCHO排出量は3倍に増加するものと仮定した。
    メタノール自動車導入後のNOx濃度は, 晴天型で8.0%, および曇天型で8.1%減少した。NO2減少率は晴天型で1.5%, および曇天型で0.7%と小さいが, これはバックグラウンドO3によるNOの酸化速度が非常に速いためである。NOx排出量が等しいシナリオと比較した場合, 日中生成した過酸化物の分解によるNO2の生成, およびOH, HO2ラジカルによるNOの酸化反応の影響により, NO2は1%程度多かった。
    メタノール自動車のHCHO排出係数を高めに設定したため, また, 冬期は大気中の光化学反応が弱まるため, HCHO濃度は晴天型において21.0%, および曇天型において40.5%増加した。しかし, HCHO排出量と大気中濃度はほぼ比例関係にあり, 冬期の曇天型において, HCHO濃度を上昇させないためには, HCHO排出量が現在の1.09倍以下であればよいことがわかった。また, その際のHCHO排出係数は, メタノールトラックで0.036g/kmおよびメタノールバスで0.050g/kmとなった。
  • 坂本 和彦, 石原 日出一, 坪田 美佐, 君島 克憲, 奥山 正喜, 岩本 一星
    1994 年 29 巻 5 号 p. 278-285
    発行日: 1994/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    低濃度ふっ化水素 (以下HFと略す) ガスを実験室的に安全で容易に得られるHFガス発生装置を製作した。ふっ化ナトリウム溶液と硫酸の混合により生成したHFガスを, 多孔質ポリテトラフルオロエチレン (PPTFE) 管を浸透管として用いることにより, 試薬溶液から分離した。硫酸過剰な条件下では, 生成したHFガスの濃度は, Na F溶液濃度や精製空気流量, そして温度などの影響をうける。しかし, 温度と精製空気流量を一定とすれば, Na F溶液濃度に比例した低濃度のHFガス (20~700ppb (v/v)) を安定に発生することができた。
  • 静脈内投与法による反応性の亢進と吸入法による反応性の低下
    神馬 征峰, 内山 巌雄, 荒川 はつ子, 横山 栄二
    1994 年 29 巻 5 号 p. 286-295
    発行日: 1994/09/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究は, 低濃度オゾン (O3) 長期暴露の気道反応性に及ぼす影響を調べる目的でなされた。気道反応性は, モルモットに清浄空気または0.2ppm O3を9~10週間暴露した後, メサコリン (Mch) を用いて, 静脈内投与法 (静注法) または吸入法により測定した。Mch溶液静注に対するO3暴露群のモルモットの気道反応性は亢進した。特に毎分1または2μg/kg体重のMch溶液を5分間投与した時, O3暴露群のGrs (呼吸器コンダクタンス) は生理食塩水 (生食) 投与時の82, 62%に低下したが, 対照群では94, 84%にしか低下せず, この時の2群間には統計学的有意差が認められた。逆に, Mchェーロゾル吸入に対するO3暴露群のモルモットの気道反応性は低下した。すなわちMch溶液の濃度を100, 200, 400mg/mlとあげても, O3暴露群のGrsは, 生食エーロゾル投与時の96, 85, 71%にしか低下しなかったのに対し, 対照群のGrsは, この時75, 53, 42%と大きく低下し, 2群間には統計学的有意差が認められた。以上より, 低濃度O3長期暴露は, 静注法により気道反応性の亢進をもたらし, 吸入法によってはその低下をもたらすような変化を同時に気道に生じさせるものと示唆された。これらの結果はまた, O3暴露により気道平滑筋の過敏性が生じたとしても, それは同時に生じる気道粘液の過分泌や壁の肥厚といった, いわゆるmuco-epithelial barrierによって抑制されうるという仮説を支持するものである。
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