本研究は, 低濃度オゾン (O
3) 長期暴露の気道反応性に及ぼす影響を調べる目的でなされた。気道反応性は, モルモットに清浄空気または0.2ppm O
3を9~10週間暴露した後, メサコリン (Mch) を用いて, 静脈内投与法 (静注法) または吸入法により測定した。Mch溶液静注に対するO
3暴露群のモルモットの気道反応性は亢進した。特に毎分1または2μg/kg体重のMch溶液を5分間投与した時, O
3暴露群のGrs (呼吸器コンダクタンス) は生理食塩水 (生食) 投与時の82, 62%に低下したが, 対照群では94, 84%にしか低下せず, この時の2群間には統計学的有意差が認められた。逆に, Mchェーロゾル吸入に対するO
3暴露群のモルモットの気道反応性は低下した。すなわちMch溶液の濃度を100, 200, 400mg/mlとあげても, O
3暴露群のGrsは, 生食エーロゾル投与時の96, 85, 71%にしか低下しなかったのに対し, 対照群のGrsは, この時75, 53, 42%と大きく低下し, 2群間には統計学的有意差が認められた。以上より, 低濃度O
3長期暴露は, 静注法により気道反応性の亢進をもたらし, 吸入法によってはその低下をもたらすような変化を同時に気道に生じさせるものと示唆された。これらの結果はまた, O
3暴露により気道平滑筋の過敏性が生じたとしても, それは同時に生じる気道粘液の過分泌や壁の肥厚といった, いわゆるmuco-epithelial barrierによって抑制されうるという仮説を支持するものである。
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