棚田学会誌
Online ISSN : 2758-4364
Print ISSN : 2436-1674
22 巻
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論文
  • 平成三〇年七月豪雨による愛媛県宇和島地区を事例に
    岡島 賢治
    2021 年 22 巻 p. 2-14
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
     平成三〇年七月豪雨における愛媛県宇和島市吉田町付近の土砂崩壊を研究対象地域とし、現地調査による土砂災害の実態把握をおこなった。その結果、研究対象地域における土砂災害のほとんどが樹園地内で発生していたことが明らかとなった。また、表層崩壊、表層土流出、土壌浸食、比較的深い土砂崩壊の四つに分類される土砂災害が確認できた。つぎに、研究対象地の土砂災害地を航空写真判別することで、研究対象地域内に土砂崩壊地の源頭部が二二三六か所あることがわかった。これらの土砂崩壊地の源頭部の地点と地域全体について、QGISの一八の地形解析項目について比較した。その結果、研究対象地域で発生した多くの土砂崩壊の地形的特徴は、傾斜角度三〇度以上の凹凸の少ない斜面で、水が集まりはじめるような地形であることが示唆された。さらに、土砂崩壊地の源頭部をプロットした地図から、尾根線沿ってやや下がった標高に並んで発生する地形的特徴があることが分かった。この地形的特徴を表現しうる災害予測マップを作成するために、GISによる地形解析項目データをもとに、機械学習の一つであるニューラルネットワークを構築した。その結果、適用する地形解析項目数が多いほど正答率の高い災害予測マップを作成することができるが、崩壊地の地形的特徴を再現するためには適切な地形解析項目を選択する必要があることが分かった。
  • 栃木県那珂川町小砂地区の「日本で最も美しい村連合」加盟を契機とする事例
    大澤 啓志
    2021 年 22 巻 p. 15-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
    調査対象とした小砂地区では、古くからの里山資源利用(製陶・炭焼き等)そして新たな里山空間利用の活動が二〇一三年の「日本で最も美しい村」連合への加盟を機に集約され、小砂地区全体の環境資源として認識されるに至っていた。特に加盟後の活動は、素朴な農村景観の中で「食べる」「寝起きする」「簡単な農作業をする」「遊ぶ」「歩く」「走る」と都市住民のニーズを踏まえた、新たな農村の空間利用であった。ただし、二〇一五年及び二〇一八年実施のアンケート調査では、活気や参加状況の表層面での変化は生じていたが、地域への誇り等の深層部分の評価は短い活動期間では十分な変化は生じていなかった。当事例活動を一般の棚田保全活動に対比させると、「棚田求 心力型」に対する「環境資源布置型」と類型が得られた。「環境資源布置型」では棚田は地域内に数ある環境資源の一つと認識されており、環境資源同士が緩やかに連携して存在する構造を有していた。そこでは棚田のみならず、景観・自然環境の豊かさを活かした多元的な空間利用が随所で実践され、一つまた一つと環境資源が生成されるのが特徴であった。また、農村での生産・生活といった伝統的な土地利用文脈だけでない、地域に対して新たな「遊びの場」としてのまなざしも加味されていた。潜在的な環境資源を多様に内包する中山間地域は、多元的な空間利用に向けた実験の場として強い優位性を持つことが示唆された。
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