棚田学会誌
Online ISSN : 2758-4364
Print ISSN : 2436-1674
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論文
  • 大澤 啓志, 河原 菜月
    2022 年 23 巻 p. 2-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー
     河岸段丘沿いの小規模な棚田・段畑跡地を公園にしてヒガンバナの群生地化を図り、観光資源としている栃木県那須町蓑沢地区を事例に、畦畔法面の植生を実態把握した。ヒガンバナの開花景観維持に向けた年三回の草刈りの継続により、畦畔法面には良好な半自然草地が維持されていることが明らかにされた。TWINSPAN により秋季の種組成はまず二群に大別され、ツリガネニンジン、ゲンノショウコ、ヨモギ、コナスビ等の関東地方のススキクラスの種の出現の有無で分けられていた。さらに細分し四群を得て比較した結果、ヒガンバナの冬期の被度が最も高い地点群は、他の三群に対し種数が有意に低く、帰化植物率は有意に高く、一年草の割合も高かった。ヒガンバナの冬期の被度が最も低い地点群は、有意ではないが種数が最も多く、アキカラマツの被度も高まることで良好な半自然草地の種組成となっていた。このように、ヒガンバナの過密な生育は、植物の種数を低下させることも示された。当地区ではヒガンバナの開花期には外部向けのイベントが催され、それが草刈り管理も含む地域活性化活動の刺激になっていることもヒアリングにより指摘された。ヒガンバナを前面に出した公園整備とその管理・活用活動の経緯より、以前からの住民とヒガンバナの関りの地域文脈を継承する群生地であることが明らかにされ、そこでは「畦畔の草刈り- 開花景観- イベント」のサイクルによって地域活力の持続が図られていた。
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