胆道
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10 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 武藤 博昭
    1996 年 10 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    進行胆嚢癌に対するリンパ節郭清を目的とした, 膵頭十二指腸切除(PD)の必要性を明確にするために本研究を行った.PDを施行した胆道癌20例に対し,摘出標本において膵頭組織のリンパ節徹底郭清を行い,13a・b,17a・bリンパ節の遺残状況を病理組織学的に検討した.その結果,20例中16例(80%)に膵頭組織にリンパ節が遺残した.3mm未満のリンパ節55個中39個(71%)は,徹底郭清後も膵頭組織に遺残した.胆嚢癌症例の13a・b,17a・bの3mm未満の小リンパ節のうち,7%が転移陽性であった.胆嚢癌症例の徹底郭清後の膵頭組織に,静脈浸潤1例,リンパ管浸潤1例計2例に癌遺残を認めた.PDは膵頭周囲リンパ節の完全郭清に対して必須であり,また静脈・リンパ管浸潤に対しても不可欠であると考えられた.
  • 本多 博, 伊勢 秀雄, 北山 修, 森安 章人, 平間 義之, 鈴木 範美, 松野 正紀
    1996 年 10 巻 3 号 p. 210-220
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胃切除術施行後(胃切後)胆石の成因を解明する目的で,教室で胆嚢摘出術を施行した84例の胆嚢胆汁を分析した.対象は,胃切後胆石症27例を中心に,対照例や色素胆石の胆嚢結石例など8群に分類した.胃切後胆石例は,男17例,女10例,平均年齢62歳,原疾患は胃癌24例,胃十二指腸潰瘍3例で,術後平均7.5年経過していた.胃切後胆石群の胆汁は,pHは中性域で,イオン化カルシウム濃度,総ビリルビン濃度,総胆汁酸濃度およびリン脂質濃度は低く,胆汁酸画分では,グリシン抱合型の割合が高く,G/T比は高値を示した.胃切後胆石群の胆汁と極めて類似した分析成績を示したものは,肝硬変群(無石例・黒色石併存例)やビリルビンカルシウム石(ビ石)群であり,この事実は,胃切後胆石症例で黒色石やビ石の占める比率が高いことと一致するものであった.胃切後胆石生成の解明には,「胃切後胆石」として一括して取り扱わず胆石種類別に検討する必要性が指摘できた.
  • -特に胃切除後胆嚢結石併発群と非併発群の比較検討において-
    加沢 昌洋, 緑川 武正, 菊地 浩彰, 町田 宏, 高 用茂, 八木 秀文, 真田 裕, 成原 健太郎
    1996 年 10 巻 3 号 p. 221-230
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胃切除後胆嚢結石症はほぼ確立された概念であるが,同様な胃癌手術を受けた症例の中にも胆嚢結石を併発するものとしないものが存在するが,その発生機序に関する報告はみられない. そこで胃切除前より術後6 カ月まで内因性胆嚢収縮動態, 血中CCK分泌動態を測定し得た症例を,術後胆嚢結石形成の有無により結石併発率(A群)と結石非併発群(B群)に分け,両群を比較検討した.その結果,最大胆嚢収縮率とピーク時血中CCK値で,A群の値はB群を有意に下回り,経時的なピーク時血中CCK値の推移でも,A群では不変であったのに対し,B群では順次術後6カ月まで有意に上昇した.以上より,術後のCCKの過剰分泌反応の欠落による胆嚢収縮率の低下が,胃切除後胆嚢結眉症のより大きな発生要因の一つであることが証明された.
  • -免疫学的指標の変動について-
    冨田 政雄, 小野山 裕彦, 山本 正博, 斎藤 洋一
    1996 年 10 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸患者では,各種合併症が惹起されやすい病態であるが,閉塞性黄疸における術前減黄処置の評価は一定ではない.そこで我々は免疫能の観点からこれらを実験的に検討した.ラットで2週間の閉塞性黄疸を作成し,その後減黄できるモデルを用い,末梢血中リンパ球数,リンパ球サブセット,Con-Aによるリンパ球幼若化能を測定した.また,肝網内系Kupffer細胞の活性化をNBT肝灌流法で検討した.リンパ球サブセットでは, 変化は認めなかった. リンパ球幼若化能は閉塞性黄疸時低下し, 減黄処置により速やかに回復した.肝網内系Kupffer細胞は閉塞性黄疸時には活性化状態にあり,減黄処置により活性化は軽減した.以上より,閉塞性黄疸に対する減黄処置は免疫能の観点から有用であると思われた.
  • 古川 正人, 酒井 敦, 宮下 光世, 三根 義和, 佐々木 誠, 近藤 敏, 坂本 喜彦, 大坪 光次, 草野 敏臣
    1996 年 10 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    1980年1月より1995年12月までの16年間に経験した,胆管拡張を伴わない膵・胆管合流異常症15例(小児例1例と成人例14例)を対象として臨床的検討を加えた.
    小児例の1例は3歳女児であった.成人例の年齢は20歳から76歳平均56.9±16.2歳で,男女比は4:10と女性に多かった.治療の対象となった疾患は,胆嚢結石9例,胆管結石3例,胆管内蛋白栓を伴う急性膵炎1例,胆嚢癌2例であった.胆汁中アミラーゼ値は12例中10例(83.3%)で,血清中アミラーゼの正常値上限値400IU/mlより高値を示した.定流量灌流法による胆道内圧を11例で測定したが,10例が正常パターンである直線型を示し,胆汁うっ滞はないものと考えられた.治療は,胆嚢摘出,胆管ドレナージがほとんどで,分流手術は1例も施行しなかったが,術後,2例が他病死した他は,最長15年3カ月の現在,症状の再発はなく健在である.
    以上のことから,胆管結石,蛋白栓などによる胆汁うっ滞を生ずる病態がなければ,胆道内圧は正常で胆汁うっ滞はなく,胆汁中に膵液が逆流したとしても,必ずしも病的状態を呈するものではなく,胆管拡張のない膵・胆管合流異常症に対する治療は,併存する疾患が対象であり,胆汁の貯溜を繰り返す胆嚢の摘出は必要であるとしても,分流手術の必要性はなく,現時点では,経過観察こそが選ばれるべき治療法であると考えられた.
  • 新本 修一, 林 泰生, 土山 智邦, 小林 泰三, 片山 寛次, 広瀬 和郎, 山口 明夫, 中川原 儀三
    1996 年 10 巻 3 号 p. 245-252
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    悪性胆道閉塞26例にstentによる27回の内瘻化を施行した.使用stentは12Frのtube stentと,expandable metallic stentのうちZ-stent,Strecker stent,Wallstentである.Wallstentは肝内胆管から総胆管まで屈曲した走向でのstent,胆管と十二指腸の間のstent,Z-stent閉塞に対するstent in stentに使用した.stentの種類と留置場所により再閉塞や感染等の成績を比較した.24例(88.9%)で外瘻tubeを抜去でき,22例(91.7%)が退院できた.8例が1~24カ月間無黄疸で生存中で,9例が2~15カ月後に無黄疸で原病死した.再閉塞や感染は7例(29.2%)に認められ,胆管と消化管との間のstentに多く認められた.stentの種類別では,tube stentの50%とStreckerの33.3%に認めWallstentでは11.1%と有意に少なかった.悪性胆道閉塞の内瘻化に,屈曲した走向での留置や下部胆管閉塞の内瘻化にも適応でき再閉塞や感染が少ないWallstentは有用と思われた.
  • 神沢 輝実, 田畑 育男, 石渡 淳一, 鶴田 耕二, 岡本 篤武, 小池 盛雄
    1996 年 10 巻 3 号 p. 253-257
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肉眼的,病理組織学的に異なる二病巣からなる十二指腸乳頭部癌の1例を報告した.肉眼的には,十二指腸内腔に発育するポリープ型と,その口側に主座する非露出腫瘤型で,両者に明らかな連続性はなかった.病理組織学的には,前者は乳頭腺癌でPAS陽性の粘液とパネート細胞や内分泌細胞を有し, 十二指腸粘膜下への浸潤を認めなかった.一方, 後者は中分化型管状腺癌でAlcian-blue陽性粘液を有し, 免疫組織化学的に抗CEA,抗CA19-9抗体に強陽性であり,膵浸潤を呈した. 両者は乳頭共通管開口部近傍で衝突していたが,組織学的に移行性は認められなかった.
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