胆道
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10 巻, 5 号
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  • 福田 秀一, 奥田 康司, 木下 壽文, 中山 和道, 田中 正俊, 吉田 正, 磯本 浩晴
    1996 年 10 巻 5 号 p. 333-340
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    進行胆道癌に対して動注化学療法を施行し,高い奏効率が得られたので報告する.切除不能と判断されたStageIV胆嚢癌8例,StageIVA胆管細胞癌4例を対象に肝動脈よりcisplatin(CDDP),5-fluorouraci1(5-FU)少量持続動注療法を施行した.奏効率は58.3%で,胆嚢癌ではCR:0例,PR:5例,NC:3例,PD:0例(奏効率62.5%),平均生存期間481.9日と良好であった.胆管細胞癌では,CR:0例,PR:2例,NC:1例,PD:1例(奏効率50%),平均生存期間217.5日と比較的良好であった.胆嚢癌でPR3例に対し,動注後,主腫瘍を中心とする癌減量切除術を施行し,1例は術後4年4カ月無再発生存中である.この結果は,従来切除不能と考えられた進行胆道癌に対して,化学療法有効例では切除療法との併用により長期予後が期待できる可能性を示すものであり,さらにCDDP+5-FU少量持続動注療法が,術前化学療法"Neoadluvant chemotherapy"として期待しうるものと考えられた.
  • 前谷 容, 井上 博和, 小川 聡, 佐藤 正弘, 大橋 茂樹, 五十嵐 良典, 酒井 義浩
    1996 年 10 巻 5 号 p. 341-345
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    手術不能悪性胆道狭窄に対する経皮経肝胆道内瘻術(PTBE)における,チューブ・ステント(TS)とexpandable metallic stent(EMS)の治療成績を比較し,次にステント仕様のうち開存期間に影響する因子について,Coxの比例ハザードモデルで多変量解析を行った.TSとEMSのステント開存期間の比較において,両群間に差はなかった.ステント径,長さ,材質,ステント末端の位置は4因子のうち,TSではステント末端の位置が選択され,ステントの開存期間にはステント末端の位置が最も関与していることが示唆された.筆者らの検討したステント径は,平均11.2Frであり,諸家の報告からもTSで同様の径があれば,ステント末端を胆管内に留置すること,すなわち,乳頭機能の温存により開存期間の向上が得られると思われた.またEMSでは,どの因子も関連はみられず,EMSの最も多くみられた閉塞原因が,tumor ingrowthであったことを裏付ける結果となった.しかし,食物残渣による閉塞例もあり,TSだけでなくEMSにおいても,可能な限りステント末端の位置を胆管内に置き,乳頭機能の温存を図ることが重要と思われた.
  • 石井 博, 新井 一成, 福島 元彦, 加藤 貴史, 丸岡 義史, 星野 光典, 中村 明央, 小池 康, 坂本 信之, 花田 裕之, 大山 ...
    1996 年 10 巻 5 号 p. 346-352
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    Digital Biplain装置を用いた回転式胆管造影法(以下,本法)により,肝門部胆管の分岐様式・立体構築を把握することを目的に検討した,対象は,胆道癌7例,膵癌,肝内結石症などの計13例で,DSA撮影装置を用い,PTCDもしくはENBD下に造影剤を注入した.管球アームの回転軸を患者に対し水平方向とし,180度の回転画像を得る水平回転と,回転軸を頭側に30度傾けた頭側回転,尾側に30度傾けた尾側回転,回転軸を頭尾方向とした頭尾回転を行い,撮影した.さらに,病変に対する垂直方向の回転軸を求めて3軸回転アームを用い,病変に対し垂直方向に回転するTargetting Shotを行った.各回転画像により,各区域胆管枝の描出が連続的に得られ,立体構築の掘握が可能で病変の重なりのない鮮明な画像が得られた.本法により,肝門部胆管の分岐様式・立体構築が明瞭化され,本法は胆道精査法の一助となりうるものと考えられた.
  • 数井 啓蔵, 佐治 裕, 倉内 宣明, 上井 直樹, 山賀 昭二, 広瀬 邦弘, 高田 譲二, 中山 雅人, 津田 一郎, 有里 仁志, 木 ...
    1996 年 10 巻 5 号 p. 353-359
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    過去16年間,教室で切除した肝門部胆管癌30例の手術成績と,長期生存のための因子について検討した.在院死7例,他病死1例,癌死13例,生存中9例で,累積生存率では,3生率は38.8%,5生率は31.4%であった,5年以上の生存は8例で,全例が尾状葉を含む亜区域以上の肝切除例で,n≦Rの郭清例,相対非治癒以上の占める割合が高かった.また,3例は単独の断端因子陽性の絶対非治癒であったが,術後放射線治療,化学療法により局所再発の抑制が可能であった.長期生存を得るためには,相対非治癒以上の根治度を得ることが重要であるが,絶対非治癒例のなかにも,術後の集学的治療により長期生存が得られるものがあるので,n≦Rの郭清を行うこと,切除断端陽性は一因子にとどめること,が重要と考えられた。
  • 徳村 弘実, 梅澤 昭子, 今岡 洋一, 大内 明夫, 山本 協二, 松代 隆
    1996 年 10 巻 5 号 p. 360-368
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆管切石術の100例を経験した.胆管結石が4個以下,大きさ8mm以下で総胆管径が15mm以下の症例に経胆嚢管的除石術(経胆嚢管法)を,他は胆管切開を選択した.その結果,経胆嚢管法を選択した47例中38例に成功,他9例は胆管切開に移行した.胆管切開は62例に行い61例に成功,1例は開腹移行した.胆管切開処置はTチューブドレナージ31例,Cチューブドレナージ19例,一期的縫合10例,胆管十二指腸吻合1例であった.術後主な合併症は皆無であった.遺残結石は経胆嚢管法1例,Tチューブ4例,一期的縫合3例であった.以上から,腹腔鏡下胆管切石術は良好な手術成績を得た.経胆嚢管法は理想的な方法であるが限界があり,われわれの選択基準は妥当と考えられた.胆管切開は胆管非拡張例以外はすべて施行可能であった.Tチューブは安定した成績を得た.Cチューブと一期的縫合は入院期間の短縮を得たが,遺残結石は避けなければならない.
  • 井上 晴之, 伊勢 秀雄, 小針 正人, 北山 修, 森安 章人, 鈴木 範美, 松野 正紀
    1996 年 10 巻 5 号 p. 369-378
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆石構成成分のうち炭酸カルシウムとリン酸カルシウムは,炭酸カルシウム石などの主成分をなし,黒色石にもしばしば多量に含まれる.これら無機成分の赤外線吸収スペクトル分析による定量分析法について検討した.アラゴナイトの定量は,key band853cm-1を用い,カルサイト,ヒドロキシアパタイトの干渉を補正することで可能であった.カルサイトの定量はkey band874cm-1を用い,他の二者の干渉を,ヒドロキシアパタイトの定量は,key band1,040cm-1付近を用い他の二者の干渉をそれぞれ補正することで可能であった.胆石および石灰乳胆汁49例の分析の結果は,赤外分析値と化学分析値がきわめて近似した値を示した.したがって赤外分析法により胆石中の無機カルシウム塩の定量分析が可能となった.
  • 二村 貢, 山中 桓夫, 大澤 博之, 太田 雅弘, 山田 茂樹
    1996 年 10 巻 5 号 p. 379-389
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    径6~20mmのIp型胆嚢小隆起性病変の超音波ドプラ法(UD)による質的診断を目的に,274例(101例に内視鏡的UD(EUD)施行)を対象に血流シグナルの解析を行った.血流検出率は,12.4%(34/274).UD単独4.4%,EUD単独28.7%で,EUDにより血流検出能は向上した.病理診断の確定した癌1例,腺腫2例,上皮過形成・線維化主体の非腫瘍性ポリープ4例では全例に面流シグナルを認めたが,典型的コレステロールポリープでは22例中7例に認めるのみであった.流速6cm/s以上検出7例中2例(28 .6%)が癌・腺腫,拍動性シグナル検出7例中1例(14.3%)が癌で,流速6cm/s以上あるいは拍動性シグナルを検出した場合には癌や腺腫の可能性を考慮して,切除術や厳重な経過観察をすべきと考えられた.また癌では,良性疾患に比較してresistance indexやacceleration time indexが高値である傾向が示され,両指標が胆嚢小隆起性病変の質的診断に有用である可能性が示唆された.
  • 瀧本 篤, 遠藤 格, 疋田 草生子, 渡会 伸治, 仲野 明, 嶋田 紘, 北村 均, 伊藤 隆明
    1996 年 10 巻 5 号 p. 390-396
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.閉塞性黄疸の診断でERNBD施行後,当科に入院した.胆道造影では肝内胆管拡張像と3管合流部に3cmの狭窄像を認め,中部胆管癌と診断した.手術は膵頭十二指腸切除が行われた.切除標本の肉眼所見では,3管合流部を中心に長径3cmにわたり内腔を閉塞する,壁のび漫性肥厚を示す病変を認めた.組織学的には,表層部には高分化腺癌の像が,深部浸潤部には小型の円形核を持つ細胞が特定の極性を示さずシート状に増殖している像がみられ,著しい静脈侵襲を伴っていた.後者の腫瘍細胞はEMAとchromogranin A陽性であり,小細胞癌と診断された.胆管原発の小細胞癌は,これまで6例が報告されており,自験例が7例目である.自験例は術後3カ月目に癌死の転帰をとり,病理解剖で骨,副腎などにも広範に転移が認められた.文献的にも本腫瘍は予後が悪く,早期に血行性転移をきたすので,肺小細胞癌と同様,化学療法中心の治療方針を考慮すべきと思われた.
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