悪性胆道狭窄に対する金属ステントの有用性については,多数の報告があり,確立された治療法である.一方,良性胆道狭窄や胆汁瘻に対する治療法としては,バルーン拡張術チューブステントの留置が一般的方法であるため,患者のQOLが制限されることが多い.
今回我々は,術中胆道損傷のための胆管狭窄および術後難治性胆汁瘻に対してWallstentを留置し,黄疸の改善および胆汁瘻消失が得られ,患者のQOLの改善が見られた症例を経験したので報告する.
症例は,70歳男性.進行胃癌の診断にて,胃摘出術およびリンパ節廓清が施行された.術中,胆道損傷を認めたため,RTBDチューブが挿入され,経過観察されていたが,胆汁瘻が改善しないために総胆管にWallstentを挿入した.挿入後,黄疸の改善および胆汁瘻の消失が認められ,5カ月後に癌死するまで黄疸や胆汁瘻の再発を認めず,患者のQOLの改善にWallstentは有用であった.
抄録全体を表示