症例は53歳,女性で,1992年7月,右乳癌手術目的で入院中,術前検査においてUS上,総胆管の拡張および総胆管下部に腫瘤像を認めた.定型的乳房切除術後,精査施行,肝内胆管および総胆管の拡張, 膵・胆管合流異常, 総胆管下部に辺縁不整な陰影欠損を認めた.総胆管癌を合併した膵・胆管合流異常を伴う先天性胆道拡張症の診断で,手術を施行した.手術所見では,拡張した総胆管下部に腫瘍を認め,膵頭十二摺腸切除術を施行した.病理組織学的診断は,低~中分化型腺癌で膵浸潤陽性の進行癌であった.
先天性胆道拡張症に合併した進行胆管癌での長期生存の報告は,我々が検索する限りみられない.今回,乳癌手術目的で入院中,偶然に発見された先天性胆道拡張症に合併した進行胆管癌に対し,根治手術を施行後,5年3カ月生存中の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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