胆道
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11 巻, 5 号
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  • 安井 智明, 山中 若樹, 神野 浩樹, 田中 渉, 安藤 達也, 田中 恒雄, 山中 潤一, 岡田 敏弘, 洪 基浩, 岡本 英三
    1997 年 11 巻 5 号 p. 397-402
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆管空腸吻合部狭窄に対するmetallic stent留置の有用性と問題点について検討した.1991年2月から1995年12月の期間に,胆管空腸吻合部狭窄にSelf-expandablemetallic stent(EMS)を留置した症例は6例で,内訳は胆管癌が3例,胃癌,肝内結石症,先天性胆道拡張症がそれぞれ1例であった.狭窄部は膵頭十二指腸切除2例および肝外胆管切除4例(うち肝切除併施3例)の胆管空腸吻合部で,狭窄の原因は,吻合部再発が3例,炎症性狭窄が3例であった.全例共にEMS留置に伴う合併症はなく,チューブフリーとなった.吻合部再発例では挙上空腸脚に通過障害があり,早期に胆管炎を反復した.一方,炎疵性狭窄例ではEMS留置後1年以降,胆管炎を反復した.以上より,胆管空腸吻合部狭窄へのEMS留置は,患者をチューブフリーとする点において有用と考えられるが,早晩胆管炎が反復する点で問題である.よって,吻合部再発例では胆汁外瘻にとどめ,炎症性狭窄例では再吻合術が優先されるべきと考えられる.
  • -有症状化胆石手術例の臨床的特徴-
    杉山 譲, 小堀 宏康, 三上 泰徳, 袴田 健一, 高橋 秀, 川崎 仁司, 遠藤 正章, 鈴木 英登士, 佐々木 睦男
    1997 年 11 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胃癌切除後胆石症を発見した場合, 経過観察にするか手術を行うかは外科医の迷うところである.そこで,これまで発見された本症116例中,胆石症特有の症状(以下,症状)を発現して胆石手術(以下,手術)を受けた25例21.6%を対象に,症状発現例の臨床的特徴について検討した.対象の性別,胃切除および胃再建術式別には,症状発現頻度に差がみられなかった.症状は胃癌切除後の経過期間には関係なく発現(3年未満32.0%,3~6年未満36.0%,6年以上32.0%),さらに胆石発見前の症状発現が56.0%を占めた.手術は胃癌切除後6年を境にほぼ半数ずつが施行され,胆石発見後および症状発現後2カ月以内の手術が48.0%および68.0%であった.胆石はj総胆管結石合併,複数個,小結石,ビ石,胆汁感染陽性などが特徴的であった.以上の結果,症状発現時期を予測するのは困難であり,胃癌切除後6年以後の手術例が約半数を占めることより,術後長期間にわたる経過観察が肝要と思われた.
  • 山崎 修, 松山 光春, 堀井 勝彦, 檜垣 一行, 川井 秀一, 半羽 宏之, 広橋 一裕, 木下 博明
    1997 年 11 巻 5 号 p. 409-417
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC) 施行121例の, 術中経過と術中・術後合併症を検討した.
    手術時間と気腹時間は,術前胆嚢造影像上における胆嚢非描出例や急性胆嚢炎後症例および総胆管結石合併例では延長していた.開腹移行例6例(5%)のうち術中偶発症に起因するものは3例(2.5%)であるが,胆嚢非描出例,急性胆嚢炎後症例あるいは総胆管結石合併例は1例ずつにすぎなかった.術後合併症がみられた13例(11%)のうち,12例は経過観察のみで軽快した.また,術後肝機能障害が56例(49%)にみられ,気腹時間との間に有意の相関関係を認めた.
    LCは手技に習熟すれば,胆嚢非描出例や急性胆嚢炎後症例のみならず,総胆管結石合併例に対しても適応拡大が可能である. しかし, 通常の腹腔鏡下手術における気腹時間は,120分以内が安全域であると思われる.これら症例では気腹時間の延長と共に術後肝機能障害が頻発する恐れがあるため,症例を慎重に選択すべきと考えられた.
  • 佐古 辰夫, 小野山 裕彦, 味木 徹夫, 冨田 政雄, 山本 正博
    1997 年 11 巻 5 号 p. 418-423
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    良性胆嚢疾患の診断で手術され, 術中もしくは術後に初めて胆嚢癌と判明した自験106例のうち,特に急性胆嚢炎を合併した14例について検討した.10例には胆嚢結石が認められ,無石例では全例で病変が胆嚢頸部に及んでおり,腫瘍による胆嚢管閉塞が急性胆嚢炎を惹起したものと思われた.無石急性胆嚢炎症例では,常に胆嚢癌の可能性を念頭において治療に当たる必要がある.術前画像診断および術中の切除標本の観察では,浸潤型腫瘍と急性胆嚢炎による壁肥厚との鑑別が困難であり,壁不整がみられてもそれを急性胆嚢炎による変化と判定した症例もあり,急性胆嚢炎の所見に目を奪われることなく,注意深い観察が望まれる.手術では深達度ss以上の症例で,肝床切除とリンパ節郭清を加えた症例の予後は,胆摘のみの症例より良好であった.深達度pmで病組織学的に脈管侵襲を認める症例があるため,著者らは深達度pm以上の症例については積極的に手術を行うべきと考える.
  • - とくに, ビリルビンカルシウム, 黒色色素について-
    小針 正人, 伊勢 秀雄, 北山 修, 臼井 律郎, 森安 章人, 井上 晴之, 鈴木 範美, 松野 正紀
    1997 年 11 巻 5 号 p. 424-433
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆石中のコレステロール,ビリルビンカルシウム,黒色色素の3つの成分を赤外線吸収スペクトル分析を用い,それらの定量化について検討した.同時に化学分析を行い赤外分析値と比較検討した.
    赤外分析によるコレステロールの定量はkeyband 1056cm-1を, ビリルビンカルシウムはkey band 1274cm-1を用い,その重合体の黒色色素はビリルビンカルシウムのkeyband 1624cm-1と1247cm-1の両吸収帯を用い,計算式から定量化した.その結果,複雑な化学操作を加えることなく,赤外線吸収スペクトル分析を用いてこの3成分を定量分析できることが判明した.
  • 吾妻 司, 吉川 達也, 新井田 達雄, 本橋 洋一, 高崎 健
    1997 年 11 巻 5 号 p. 434-438
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は51歳, 男性. 1993年1月より原因不明の発熱のために, 近医への入院を繰り返していた.1994年7月12日に精査目的で当院に入院となった.諸検査により,十二指腸乳頭が十二指腸の蠕動運動に合わせて,総胆管へ嵌入したり総胆管から脱出したりすることが確認された.総胆管に結石や癌はなく,胆管拡張や胆管炎は乳頭のこのような特異的な動きによるものと考えられた.同様の報告は他にはなく,乳頭が総胆管に嵌入した原因は不明であった.保存的治療のみでは改善しないと判断し,10月27日に肝外胆道切除肝管空腸Roux-Y吻合を施行した.術後経過は良好であり,2年9カ月経過した現在,胆管拡張や胆管炎は認められていない.
  • 古川 善也, 松本 能里, 刈屋 憲次, 山本 昌弘, 山岡 義文, 藤原 恵, 佐々木 幸治, 江盛 圭史, 讃岐 英子
    1997 年 11 巻 5 号 p. 439-444
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.手術既往はない.突然の心窩部痛で発症し,腹部エコー,CT,内視鏡的逆行性胆管造影で胆嚢炎,胆嚢・胆管結石および総胆管の陰影欠損を指摘され,当科紹介となった.内視鏡的乳頭切開術後の造影では,中下部胆管に表面平滑な半円形の腫瘤像を認め,胆嚢管は閉塞していた.経口的胆管内視鏡検査(POCS)を施行したところ,総胆管の腫瘍は表面発赤調で平滑かつ比較的なだらかな隆起性病変で,直視下生検でも悪性所見を認めず,粘膜下腫瘍と考えられた.胆嚢・胆管切除および肝管空腸吻合術を施行したが,胆嚢管に径10mm,中下部胆管に径5mm大の腫瘍を認め,病理組織学的にはいずれもtraumatic neuromaであった.Traumatic neuromaを術前にPOCSで観察した報告は, 本例が初めてであるが, 胆管癌との鑑別は容易であり, 過大な手術侵襲を避けるうえでも有意義であった.
  • 小野寺 健一
    1997 年 11 巻 5 号 p. 445-449
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    瘻孔形成不良の徴候が観察された, T チューブ抜去後胆汁性腹膜炎の1 例を報告した.
    症例は8 1 歳, 女. 糖尿病の治療歴あり. 胆嚢胆管結石に対して開腹下に胆嚢摘出術, 総胆管切石術およびTチューブ(ラテックス製)留置術を施行した.術後はTチューブ周囲から非胆汁性の浸出液が多く流出し, 第1 4 術日まで毎日ガーゼ交換を要した. その他は良好に経過し,胆道造影でも問題がないことを確認後,第22術日にTチューブを抜去した.しかし,胆汁性腹膜炎を併発した.再手術後,治癒退院した.
    自験例の原因は瘻孔形成不良である.観察されたTチューブ周囲からの浸出液流出所見は,瘻孔形成不良の間接的徴候と考えた.この徴候の発生病態とその所見を基にした,Tチューブ留置期間について検討した.
  • 杉本 涼二, 木下 壽文, 奥田 康司, 大堂 雅晴, 金澤 尚満, 八次 浩幸, 今山 裕康, 江里口 直文, 中山 和道
    1997 年 11 巻 5 号 p. 450-454
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    我々は, 胃癌手術時に診断された胆嚢欠損症を経験したので, 報吉する. 症例は,64歳の男性,無症状であったが,検診目的にて胃内視鏡検査施行.胃体中部前壁に陥凹病変を指摘され,当科紹介となる.術前超音波検査にて胆嚢は描出しえず,上部胆管の拡張を認めたが,下部胆管まで明らかな閉塞は認めなかった.開腹所見では上部胆管に限局性の拡張を認め,胆嚢窩に胆嚢を認めず,線状瘢痕を認めるのみであった。先天性胆嚢欠損症は,加齢とともに胆管拡張,胆管結石の頻度が増加する傾向があること,悪性腫瘍,特に数例であるが,胃癌,胆管癌の合併することが報告されている.先天性胆嚢欠損症においては,このような合併疾患についての注意が必要である.
  • 木下 壽文, 中山 和道, 今山 裕康, 佐島 秀一, 蓮田 啓, 斎藤 如由, 福田 秀一, 原 雅雄
    1997 年 11 巻 5 号 p. 455-461
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下脂嚢摘出術における胆管損傷に対して,胆管端々吻合術を施行し得た症例を経験したので報告した.
    症例1は51歳,女性.術中胆管損傷に気付かずに術後に黄疸が出現し,胆管の閉塞を認めたため胆管端々吻合術を施行したが,術後4カ月目に胆管の閉塞をきたした.再々手術ではあったが胆管の閉塞範囲は1 c m 以内であり, 胆管端々吻合術を施行した. スプリントチューブは9カ月間留置した.
    症例2は28歳女性.カローの三角を剥離中に出血をきたし,盲目的にクリップを掛けたため右肝動脈のみならず胆管にも一部クリッピングされた.胆管の閉塞範囲は2cmであったが, 若年者であったため胆管端々吻合術を施行した. スプリントチューブは7 カ月間留置した.
    胆管損傷の治療法としては,乳頭括約筋機能が温存される胆管端々吻合術を第一選択とすべきであり,スプリントチューブは最低6カ月間は留置すべきである.
  • 飯塚 昌志, 柿崎 健二, 山内 英生
    1997 年 11 巻 5 号 p. 462-465
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性で,1992年7月,右乳癌手術目的で入院中,術前検査においてUS上,総胆管の拡張および総胆管下部に腫瘤像を認めた.定型的乳房切除術後,精査施行,肝内胆管および総胆管の拡張, 膵・胆管合流異常, 総胆管下部に辺縁不整な陰影欠損を認めた.総胆管癌を合併した膵・胆管合流異常を伴う先天性胆道拡張症の診断で,手術を施行した.手術所見では,拡張した総胆管下部に腫瘍を認め,膵頭十二摺腸切除術を施行した.病理組織学的診断は,低~中分化型腺癌で膵浸潤陽性の進行癌であった.
    先天性胆道拡張症に合併した進行胆管癌での長期生存の報告は,我々が検索する限りみられない.今回,乳癌手術目的で入院中,偶然に発見された先天性胆道拡張症に合併した進行胆管癌に対し,根治手術を施行後,5年3カ月生存中の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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