非観血的胆道内瘻術としてmetallic stent(以下MS)は広く普及しているが,かえってMSの本来の目的であるQOLの向上に貢献できないケースも存在する.今回,MS留置の際のQOLの向上における問題点とその対策を自験例より検討した.51例の非切除悪性胆道狭窄例を対象に,再狭窄と合併症について留置方法,MSの種類,原因疾患,狭窄部位,補助療法の有無別に検討した.再狭窄は全体で29%に認め,原因は80%が腫瘍の増大であった.重篤な合併症は14%に認めた.留置成功率は経肝的または経乳頭的ルート単独では86%であったが,双方を試みることで94%に増加した.再狭窄で有意差が認められたのはMSの種類(Wallstentとそれ以外),原因疾患(胆管癌,リンパ節転移と膵癌)であった.合併症はすべての項目で有意差は認められなかったが,胆管炎,肝膿瘍併発症例の75%は乳頭機能非温存群であった.
以上より,QOL向上をめざしたMS留置の際のポイントを検討すると,留置に難渋する症例は1ルートにこだわらず他ルートを試行してみる,原則としてWallstent(以下WL)の使用が望ましい,リンパ節転移は上下方向に再狭窄をおこし易いので長いMSを選択する,乳頭機能はできる限り温存する,などの点が重要と思われ,補助療法に関してはさらなる検討が必要と考えられた.
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