胆道
Online ISSN : 1883-6879
Print ISSN : 0914-0077
ISSN-L : 0914-0077
12 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • その臨床的特徴と成因に関連して
    松代 隆
    1998 年 12 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胃切後胆石症の臨床的特徴とその成因を明らかにする目的で,これまで報告された文献を中心に自験例を加えて総論的考察を試みた.胃切後胆石が形成される根本的原因は幹迷切に起因する肝枝の切離であるが,胃切自体も胆汁組成の変化に大きな影響を与えている.胃切後胆石の大部分は胃切後5年以内に形成されるが,術後10年以内に形成される胆石には共通の特微がみられた.形成される胆石はビリルビン・カルシウム石(ビ石)の頻度が高く,黒色石の頻度はそれほど高くないことが推察された.両胆石は成因が異なるが,胃切と迷走神経肝枝の切離による影響が複雑にからみあい,ある時はビ石が,そしてある時には黒色石が形成されることが推察された.
  • 三坂 和温
    1998 年 12 巻 4 号 p. 311-320
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆管癌55例の肉眼形態と病理組織学的悪性度との相関について,さらに,増殖・浸潤・転移に関連した諸因子の免疫組織化学染色から,肉眼形態および病理組織像と生物学的悪性度との関連を検討した.腫瘍肉眼形態を乳頭型(P型)・結節型(N型)・びまん浸潤型(D型)に分類すると,P>N>Dの順で,有意に組織分化度は高く,リンパ管浸潤度は低く,またp53陽性率が低いことが認められ,肉眼形態の3型が悪性度の違いをも表しているとみなされた.E-cadherinの陽性率は組織分化の高さと細胞の集団性発育に有意に相関していた.逆に腫瘍間質産生型MMP2は,境界不明瞭な浸潤の強いものほど陽性率が高かった.MMP9は深達度が増し低分化ほど,またリンパ浸潤のあるものに陽性率が高かった. MUC1陰性例は, 陽性例に比べ予後が有意に良好であった.
  • QOLの向上をめざして
    岡本 友好, 柳澤 暁, 稲垣 芳則, 青木 照明
    1998 年 12 巻 4 号 p. 321-325
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    非観血的胆道内瘻術としてmetallic stent(以下MS)は広く普及しているが,かえってMSの本来の目的であるQOLの向上に貢献できないケースも存在する.今回,MS留置の際のQOLの向上における問題点とその対策を自験例より検討した.51例の非切除悪性胆道狭窄例を対象に,再狭窄と合併症について留置方法,MSの種類,原因疾患,狭窄部位,補助療法の有無別に検討した.再狭窄は全体で29%に認め,原因は80%が腫瘍の増大であった.重篤な合併症は14%に認めた.留置成功率は経肝的または経乳頭的ルート単独では86%であったが,双方を試みることで94%に増加した.再狭窄で有意差が認められたのはMSの種類(Wallstentとそれ以外),原因疾患(胆管癌,リンパ節転移と膵癌)であった.合併症はすべての項目で有意差は認められなかったが,胆管炎,肝膿瘍併発症例の75%は乳頭機能非温存群であった.
    以上より,QOL向上をめざしたMS留置の際のポイントを検討すると,留置に難渋する症例は1ルートにこだわらず他ルートを試行してみる,原則としてWallstent(以下WL)の使用が望ましい,リンパ節転移は上下方向に再狭窄をおこし易いので長いMSを選択する,乳頭機能はできる限り温存する,などの点が重要と思われ,補助療法に関してはさらなる検討が必要と考えられた.
  • 同一術者による治療成績の検討
    三上 繁, 清水 史郎, 菰田 文武, 秋本 政秀
    1998 年 12 巻 4 号 p. 326-330
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    総胆管結石に対する内視鏡的治療である乳頭バルーン拡張術(EPBD)と乳頭括約筋切開術(EST)の治療成績を比較検討した.対象は同一の術者がEPBDおよびESTを施行したそれぞれ21例で,両群ともに胆石は全例で完全採石し得た.採石に要した内視鏡の平均回数は,EST群1.52回,EPBD群1.42回と有意差は認めなかった.合併症については,両群とも出血,穿孔などの重篤なものはみられず,EST群で1例に膵炎,2例に胆管炎を認めた.EPBD群では明らかな合併症は認めなかった.治療翌日の血清アミラーゼ値は,上昇がみられなかったものはEST群3例(14.3%),EPBD群5例(23.8%),300U/l以上に上昇したものは,EST群14例(66.7%),EPBD群6例(28.6%)で,EPBD群の方がアミラーゼ値の上昇が有意に低かった.EPBDはESTに比較して手技が簡便で,熟練を必要とせず安全で有効な内視鏡的治療法であると考えられた.
  • 深井 利花
    1998 年 12 巻 4 号 p. 331-337
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    体外衝撃波結石破砕療法:ESWL(Extracorporeal shock wave lithotripsy)を施行した胆嚢内結石194例の治療成績を検討した.ESWL後の観察期間は7カ月から9年2カ月である.Kaplan-Meier法での完全消失は5年で37.1%であった.破砕片3mm以下群の消失率は5年後66.4%で,4mm以上の15.4%に比して有意に高かった.径20mm以下,CTにて石灰化のない,土屋の超音波分類Ia型とIb型の単発結石の消失率は1年で78.8%と最も高かった.再発率は5年で11.5%であった.ESWL後の症状出現率は5年で7.5%であり,破砕片4mm以上群の症状出現率は5年で13.0%で3mm以下の2.8%に比し,有意に高かった(p<0.05).無治療経過観察例の症状出現率は5年で14.1%で,ESWL後破砕片4mm以上の群と差がなかった.ESWLは単発,径20mm以下,CTで石灰化のない,純コレステロール結石では有用な治療法である.
  • 小西 一朗, 上田 順彦, 広野 禎介, 斉藤 勝彦
    1998 年 12 巻 4 号 p. 338-343
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    1985年Wheelerらによりhepatobiliary cystadenoma with mesenchymalstroma(CMS)の臨床病理学的概念が確立されて以来,卵巣間質を伴った,女性に特有の肝嚢胞腺腫が注目されてきている.今回,閉塞性黄疸を契機に発見された,稀なCMSの1例を経験し報告した.患者は34歳,女性.黄疸を主訴に入院した.画像診断所見では,肝S4,5に径約12cmの嚢胞性病変を認め,それにより総肝管が圧排されていた.経皮経肝的嚢胞ドレナージを行った後,嚢胞を切除した.組織学的所見では,嚢胞壁は硝子化を伴う厚い線維性結合織でできており, 低円柱上皮が内腔を被い, 間質には卵巣間質様の密なfi -broblastの増生が認められた.なお,上皮の内腔側に,ジアスターゼ消化PAS染色,アルシアンブルーpH2.5に陽性の粘液がわずかに認められた.免疫組織学的所見では,上皮にはCA19-9,BerEP4が陽性で,特徴的な間質にはα-smooth muscle actinとvimentinが陽性であった.
  • 加納 宣康, 笠間 和典, 山田 成寿, 佐久間 隆, 内田 千博, 大畑 賀央, 草薙 洋, 渡井 有, 武士 昭彦, 永谷 京平, 光島 ...
    1998 年 12 巻 4 号 p. 344-349
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部に発生したカルチノイドの1例を報告する.患者は42歳,女性.主訴は吐き気.内視鏡検査では,十二指腸第II部に直径約3cmの腫瘤を認め,基部には軽度のくびれを伴い,表面平滑で粘膜下腫瘍と考えられた.腫瘤のほぼ中央に乳頭の開口部を認めたが,cannulationはできなかった.低緊張性十二指腸造影では,十二指腸第II部,乳頭部に一致して,約3cmの腫瘤を認め,bridging foldを伴っていた.以上の所見から,十二指腸のカルチノイドを強く疑ったが,術前診断が確定していないため,まず十二指腸を切開して,粘膜と共に腫瘤を筋層から剥離して,Oddi筋を含めて腫瘤を切除した.迅速病理組織診断では,腫瘤はneuroendocrine系のもので,筋層への浸潤を認める所見であったため,膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した.永久標本での組織診断はカルチノイドで,PDにて切除された標本に腫瘍の遺残はなかった.結果的にはPDが不必要であった可能性もある.
  • 長 剛正, 柳澤 暁, 石井 雄二, 稲垣 芳則, 高橋 恒夫, 青木 照明
    1998 年 12 巻 4 号 p. 350-353
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は6 7 歳, 男性, 黄疸を主訴に来院. E R C にて上部胆管に狭窄を認め閉塞性黄疸と診断した.術前診断では胆管癌を疑い,開腹手術を施行したが,術中所見,および術中迅速病理診断にて悪性所見を認めず,上部胆管に極めて限局した炎症性狭窄病変として,胆管切除,胆嚢摘出術,胆管空腸吻合術を施行した.術後の病理組織学的検索にて胆管周囲の線維化と非特異性の慢性炎症を認め,限局型の原発性硬化性胆管炎(primary sclerosingcholangitis,以下PSC)と診断された.
    限局型PSCの予後は不明と言われているが,自験例においては,術後4年の現在,再発もなく元気に日常生活を送っている.上部胆管に限局し,胆管癌との鑑別に難渋したPSCの1切除例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 小西 一朗, 上田 順彦, 二上 文夫, 広野 禎介
    1998 年 12 巻 4 号 p. 354-359
    発行日: 1998/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    放射線治療が奏効し8年を経て健在な,肝側胆管切離端癌遺残肝門部胆管癌の1例を報告した.患者は71歳,男性.肝機能障害の精査を目的に入院した.血液生化学的検査では, 肝胆道系酵素値の上昇を認めたが, 黄疸はなかった. 腹部画像診断では, 肝内胆管の拡張と総肝管を中心とした不整狭窄像が認められた.PTCDチューブを通じて行った胆汁細胞診にてclass5の診断をえた.肝門部胆管癌の診断にて肝外胆管・胆嚢切除術(D2)を施行した.術中迅速病理診断にて右後枝と左肝管切離端の壁内に癌遺残と診断された.肝門部を中心に20Gyの術中開創照射を施行したのち,4本の胆管と小腸をRoux-en-Yにて吻合した.組織学的に腫瘍は中分化型腺癌で,壁深達度は外膜までに留まり,リンパ管浸潤・神経周囲浸潤は認められたがリンパ節転移は認めなかった.術後は,肝門部を中心に計45Gyの体外照射を行った.8年を経た現在,再発の徴なく健在で,放射線治療の効果と考えられた.
feedback
Top