胆道
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13 巻, 4 号
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  • 徳村 弘実, 梅澤 昭子, 坂本 宣英, 今岡 洋一, 大内 明夫, 山本 協二, 松代 隆
    1999 年 13 巻 4 号 p. 301-307
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術時のルーチン術中経胆嚢管的X線透視下胆道造影(IOC)1,179例を検討した.IOCの成功率は98.3%で,胆管結石の診断率は98.5%と高かった.術前ERCとIOCの結石診断一致率は93.4%で,ERCの診断は必ずしも正確ではなかった.IOCで術前疑われなかった胆管結石が2.1%,胆嚢管結石が1.4%に発見された.副肝管が2.4%,副肝管から胆嚢管の分岐が0.8%に認められた.胆管損傷4例中3例は総胆管を胆嚢管と誤認した症例で,IOCで発見され離断損傷を免れ術中に対処できた.以上から,ルーチンIOCは遺残胆道結石の予防や胆管損傷の防止と早期発見に有用であった.腹腔鏡下胆嚢摘出術では,IOCをルーチン化すべきと考えられた.
  • 上田 順彦, 小西 一朗, 泉 良平
    1999 年 13 巻 4 号 p. 308-314
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    進行胆道癌に対する放射線療法の効果と問題点を明らかにすることを目的に,放射線療法を施行した胆道癌19例(胆管癌7例,胆嚢癌12例)を,組織学的非治癒切除+放射線療法(I群;3例)と肉眼的非治癒切除または非切除+放射線療法(II群;16例)に分類し,検討した.I群のうち胆管癌では8年9カ月生存中を1例,1年8カ月生存可能を1例,胆嚢癌では2年2カ月生存中を1例認めた,II群のうち,胆管癌では1年8カ月と1年2カ月生存可能例を,胆嚢癌では1年5カ月と1年2カ月生存可能例を認めたが,他の生存期間は1年以内であった.ただし,胆管の再開通は胆管癌では外部照射の4例中2例,胆嚢癌では外部照射±術中照射の8例中7例に認めた.また,胆管ステント留置の6例中5例は,死亡時まで胆管の再閉塞はなかった.以上より,放射線療法はI群では予後の向上に寄与する可能性が示唆され,II群では胆管の再開通と胆管ステントの開存性に寄与する可能性が示唆された.
  • 木下 壽文, 今山 裕康, 橋本 光生, 佐藤 真二, 橋野 耕太郎, 玉栄 剛, 原 雅雄, 中山 和道
    1999 年 13 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    当科での下部胆管癌切除症例67例のうち,5年以上生存した10例を長期生存群,5年未満に再発死亡した29例を非長期生存群として,比較検討した.長期生存群にはssまでのものが大部分であり,肉眼型は限局型が比較的多く,リンパ節転移は全例n1以下であった.脈管・神経浸潤はないかあっても軽微なもので,非長期生存群には高度なものが多かった.組織学的膵浸潤はpanc1a以下が過半数以上を占めていたが,非長期生存群ではpanc1b以上が大部分を占めていた.em因子は長期生存群は全例em0で有意差を認めたが,hm因子に有意差はなかった.総合的進行度はstageII以下が多かったが,非長期生存群ではstageIII以上が大部分を占めていた.総合的根治度はcurA,Bであった.長期生存を得るためにはstageII以下で,脈管・神経浸潤はないかあっても軽微な症例と思われるが,最も重要なことはcurB以上を得ることであり,治癒切除は長期生存を得るための必要条件と考えられた.
  • 神澤 輝実, 屠 聿揚, 江川 直人, 石渡 淳一, 岡本 篤武, 小池 盛雄
    1999 年 13 巻 4 号 p. 322-326
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    局所温熱療法,化学療法,放射線療法の三者併用療法施行後に再疎通した胆管に,金属ステントを挿入した治癒切除不能の進行胆道癌6例(胆嚢癌3例,胆管癌3例)の剖検時の胆管の病理組織所見を,無治療で金属ステントを挿入した胆道癌2剖検例(胆嚢癌1例,胆管癌1例)と比較検討した.組織学的には,金属ステントは胆管粘膜に食い込み,筋層を圧排して胆管内腔を開存させていた.三者併用療法後の症例では,治療による変化と思われる胆管壁の線維性肥厚があり,ステントの非開存と腫瘍のingrowthを各3例で認めたが,腫瘍によるステントの完全閉塞はなく,ステントの閉塞には胆泥や壊死物質が関与していた.無治療例では,ステントは非開存で腫瘍のingrowthを認め,1例では腫瘍によりステントは完全閉塞していた.進行胆道癌において,三者併用療法後に再疎通した胆管への金属ステントの挿入は,病理組織学的にも無黄疸期間の延長が期待され,有用な治療法と考えられた.
  • - 特にコレステロールポリープと腺腫について-
    藤井 義郎, 遠藤 格, 関戸 仁, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    1999 年 13 巻 4 号 p. 327-331
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢摘出術を施行して胆嚢隆起性病変と診断した56例(n=62)で,頻度の高かったコレステロールポリープ40例について,術前と術後の診断を比較検討した.超音波検査による術前診断の感度は94%,特異度は70%,正診率は81%であった.コレステロールポリープの大きさは10mm以下が95%で,多発病変は83%であった.腺腫合併を6例に認め,そのうち2例は同一病変内にコレステロールポリープと腺腫が混在し,いずれも大きさ11mm以上であった.大きさ11mm以上のコレステロールポリープは,腺管や固有上皮の過形成,腺腫あるいは癌を合併し,上皮性ポリープの性質をもってくるものがあるため,注意を要すると考えられた.
  • 安井 智明, 豊坂 昭弘, 山中 若樹, 神野 浩樹, 田中 渉, 安藤 達也, 山中 潤一, 黒田 暢一, 岡田 敏弘, 洪 基浩, 金村 ...
    1999 年 13 巻 4 号 p. 332-338
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    良性胆道疾患に対するmetallic stent留置の問題点を示唆する症例を経験した.55歳男性で,某病院で手術不能上中部胆管癌と診断され,plastic stent留置,放射線外照射および化学療法が行われた.半年後stentが閉塞し当院に入院した.胆道鏡下の生検で悪性所見はなく,良性胆道狭窄と考えられたが,患者は手術を拒否しチューブフリーを希望したため,metallic stentを留置した.2年後stent ingrowthによるstent閉塞に対し,左右肝管,胆管末端部にstent in stentを行った.4年後胆管十二指腸瘻を形成し,7年後閉塞性化膿性胆管炎を発症した.開腹所見では,総胆管は著しい肉芽性変化を呈し,stentは肥厚短縮した肝十二指腸間膜内に埋没し,一部腹腔内に露出していた.手術は肝外胆管切除,胆管空腸吻合を行った.切除標本中には,悪性所見は認めなかった.長期にわたって留置されたmetallic stentが,局所に高度炎症を引き起こし,放射線外照射による組織障害がこれを増強したものと考えられた.良性胆道疾患は経過が長いため,metallic stent留置の適応は慎重に行わなければならないと考えられた.
  • 信川 文誠, 須田 耕一, 児島 邦明, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1999 年 13 巻 4 号 p. 339-343
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    筆者らは,エストロゲン・レセプター(ER),プロゲステロン・レセプター(PgR)陽性の卵巣様間質を伴い,胆管拡張型胆管癌との鑑別を要した肝嚢胞腺腫の中年女性例を経験した,腫瘍は33×18cmで,線維性被膜に覆われた多房性嚢胞からなり肝の構造を逸脱して発育し,一部に壁在結節を伴っていた.腫瘍の実質は,高円柱状・粘液産生性の明るい細胞からなり,平坦,一部乳頭状に配列していた.それらは構造・細胞異型に乏しく,腺腫であった.嚢胞壁には紡錘形細胞の密な増生,いわゆる卵巣様間質がみられた.卵巣様間質はビメンチンにびまん性に陽性,デスミンに一部陽性で,線維芽細胞や平滑筋などへの分化能を保持した幼若な間葉系細胞と考えられた.またER,PgRともに陽性を示すことから,肝嚢胞腺腫はエストロゲンおよびプロゲステロンの影響下にあると推測された.p53は腫瘍細胞のみならず卵巣様間質にも陽性を示し,後者の腫瘍性性格もうかがわれた.
  • 原 均, 森田 眞照, 石橋 孝嗣, 左古 昌蔵, 土肥 健彦, 大谷 昌裕, 岩本 充彦, 谷川 允彦
    1999 年 13 巻 4 号 p. 344-348
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆管と主膵管が別個に乳頭を形成していた胆道拡張症の1例を経験したので報告する.症例は,22歳,男性.2歳3カ月時,先天性胆道拡張症の診断のもと嚢腫空腸吻合を受けた.腹痛を主訴として来院.術前のCTにて肝門部から右肝管および左肝管に拡張した胆管を認めた.術中胆道造影にて胆管と膵管が別開口であると判明した.肝外胆管切除とRoux-en-Y法による胆道再建を行った.自験例は胆道拡張症の成因を考えるうえで興味ある症例である.
  • 清水 泰博, 安井 健三, 森本 剛史, 鳥井 彰人, 足立 尊仁, 大橋 計彦, 山雄 健次, 渡辺 吉博
    1999 年 13 巻 4 号 p. 349-353
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.胸部異常陰影で検査中,CTで右肝内胆管拡張を指摘された.US,CTで肝門部に類円形の腫瘍が存在し,ERCで右肝管は狭窄の後に閉塞していた.肝門部胆管癌と術前診断し,肝右葉・尾状葉切除,肝外胆管切除,胆管空腸吻合術を施行した.標本割面では,境界が明瞭な白色充実性腫瘍を認めた.病理組織所見では胆管上皮には悪性所見はなく,胆管壁および胆管周囲に線維性結合組織の増生とリンパ球,形質細胞の浸潤を認めた.胆嚢は慢性炎症の所見で,慢性胆嚢炎による非特異的胆管炎に起因する肝門部inflammatory pseudotumorと推測された.本例は術前診断では胆管癌との鑑別が,病理所見では限局型硬化性胆管炎との異同が問題となった.
  • 小山内 学, 真口 宏介, 柳川 伸幸, 潟沼 朗生, 伊藤 英人, 高橋 邦幸, 桜井 康雄, 中村 文隆, 道家 充
    1999 年 13 巻 4 号 p. 354-359
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は43歳男性.腹部CT検査,超音波内視鏡検査にて胆嚢体部中心に隔壁構造を多数認め,大小さまざまな腔に分かれていた.ERCP検査でも同様の所見であり,稀な先天性奇形とされている多発隔壁胆嚢と診断し,腹腔鏡下胆摘術を施行した.病理組織学的検索の結果は胆嚢腺筋腫症であり,RASが高度に嚢胞状に拡張した特異な例であった.画像上興味ある形態を呈した症例と考えられた.
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