胆道
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19 巻, 5 号
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  • 角田 司
    2005 年 19 巻 5 号 p. 533-542
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    膵・胆管合流異常に胆道癌が高率に合併することは知られている. その原因として膵液の胆道内逆流が注目されているが, その発癌機序に関してはいまだ不明のところも多い. そこで, ハムスターに遠位側共通管の結紮切離と胆嚢十二指腸吻合(CD)を行い, 術後4週後よりN-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP)を10mg/kg/bwを9週間皮下投与し, BOP投与開始後12, 16, 20週で屠殺したところ, ヒトに類似の早期胆道癌が高率に発生したので, このCDモデルを用いて, 発癌機序の解析(CDモデルと胆嚢回腸吻合(CI)の比較, 発癌過程における遺伝子変異, 発癌剤非投与モデルにおける発癌)と化学予防物質の検索を行った, 本モデルの発癌機序は, 胆汁と膵液を含んだ十二指腸液が胆管へ逆流し, うっ滞すると, 膵酵素が活性化されて, 胆道粘膜の細胞回転数の増加と胆道粘膜障害を起こし, 発癌剤の効果が促進されるためと考察した. また, エトドラク, シメチジン, FOY-305の経口投与は本モデルの発癌を抑制し, 化学予防物質として有用である可能性が示された.
  • IDUS・EUSを中心に
    松永 隆裕, 真口 宏介, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 小山内 学
    2005 年 19 巻 5 号 p. 543-549
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    2003年に胆道癌取扱い規約が第5版に更新され, S浸潤の有無でT1とT2を, 臓器浸潤(膵・肝)浸潤の有無でT2とT3を, 脈管浸潤(右肝動脈・門脈)の有無でT3とT4を区別するようになった.今回, 胆道癌取扱い規約第5版に準じたdiagnostic Tstaging(dT Stage)を作成し, IDUS・EUSによる診断能について検討した. 判定基準は, S因子については「SS浅層まで」と「SS以深」, 臓器(Panc/Hinf)・脈管因子(A/PV)は「浸潤あり」と「浸潤なし」とした.外科切除58例を対象に検討した結果, S浸潤, Panc/Hinf1, A/PV1の判定が困難であることが判明した. また, 予後の推定にはdT Stageが役立つことが判明した. 予後に影響を及ぼす因子の検討では, 単変量解析ではA浸潤, リンパ節転移, 肝浸潤, 多変量解析ではA浸潤, リンパ節転移であった.以上から, 外科切除と予後を考慮に入れた必要最低限の診断は, A浸潤, リンパ節転移水平進展度であり, それを考慮した診断アルゴリズムの構築が重要である.
  • ErbB2トランスジェニックマウス胆嚢癌を用いた検討
    川本 徹, Lynnsie RUFFINO, 味木 徹夫, John DIGIOVANNI, 木口 薫
    2005 年 19 巻 5 号 p. 550-556
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢発癌におけるErbB2蛋白の役割を知るために, BK5. ErbB2トランスジェニックマウス(以下, ErbB2マウス) 52例の胆嚢のErbB2およびリン酸化ErbB2の発現を免疫組織化学的に解析した. 52例の内訳は, 正常4例, 過形成上皮14例, 癌が34例で, 全体の65%に癌発生が認められた.癌組織発生過程は, ポリープ状に生じた過形成上皮 (hyperplasia in focal lesion;HIF) から癌が発生したと考えられる癌 (HIF型癌) と, 粘膜全体に一様に認められる過形成上皮 (hyperplasia in whole epithelium(HIW)) から発生したと考えられる癌 (HIW型癌) の2型に分類できた. HIF型癌は癌全体の41%, HIW型癌は59%に認められ, HIW型癌はHIF型癌と比較して有意に局所浸潤所見を示した. 胆嚢病変の違いによるErbB2の発現に差はなかったが, リン酸化ErbB2の発現は過形成上皮の一部と癌のみに認められた. また, 局所浸潤部におけるリン酸化ErbB2の発現強度は, 強い傾向が認められた.
    以上より, ErbB2マウス胆嚢癌の発生過程はヒトのそれに類似した形態を示すこと, リン酸化ErbB2の発現が癌の進展に重要であることが示唆された.
  • 木村 泰三
    2005 年 19 巻 5 号 p. 557
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
  • 来見 良誠, 仲 成幸, 塩見 尚礼, 清水 智治, 村田 聡, 阿部 元, 谷 徹
    2005 年 19 巻 5 号 p. 558-568
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術は従来の手術と異なり, 臓器に直接手で触れることなく手術を行うため, 術者の技量がそのまま結果に反映される手術である. 術者と助手が同じ操作をイメージできるように基本的な手術手技に名称をつけることにより, 術者の指示が的確に関係者に伝わることが腹腔鏡下胆嚢摘出術全般についてのコツの一つである. 本稿では腹腔鏡下胆嚢摘出術のコツを詳細に述べるとともに, 胆道の走向形式の重要性を示し, 胆管損傷の回避策を提案する. 最後に術者は, 自身の手技を過信することなく, 常に自分を客観視できるような, 精神的にも安定した手術手技の習熟が期待されていることを強調する.
  • 山下 裕一
    2005 年 19 巻 5 号 p. 569-573
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術は, すでに胆嚢摘出術(LC)の標準術式となっている. しかし, 視野, 手術器具, 手術操作に起因する腹腔鏡手術特有の術中偶発症や術後合併症が発生している. とりわけ, 胆管損傷出血, 他臓器損傷は重要であり, 胆管損傷と狭窄は本邦アンケート調査でのLC214, 935例中1,587例(0.74%), 開腹止血が必要な術中出血は胆嚢動脈(478例:0.22%), 胆嚢床(431例:0.20%), 肝動脈(69例:O.03%)の順であり, 他臓器損傷は671例(0.31%)であった.これらの開腹移行の原因となる偶発症などの予防を講じた手術手技の確立が重要である. 本項では, LCの開腹移行の原因となる偶発症や合併症に焦点をあて紹介し, それらを予防するLCの手術手技のポイントについて述べる.
  • 胆道損傷を中心に
    向谷 充宏, 平田 公一, 木村 康利, 信岡 隆幸, 水口 徹, 桂巻 正
    2005 年 19 巻 5 号 p. 574-582
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    手術中に発生しうる胆道損傷を防ぐためには, 解剖学的変異の術前把握, 炎症症例における注意深く愛護的な手術操作が重要である. また, 剥離操作による胆道損傷を予防あるいは確認するために, 術中胆道造影を行うべきであろう. 炎症による癒着が著しい場合は内視鏡下手術に拘泥することなく開腹移行とすべきで, 術後に胆道損傷を確認した場合は, 損傷の程度, 範囲を正確に把握し, 術後に再狭窄を来さぬ再建術式を選択しなければならない. 時間の経過した症例では, 瘢痕狭窄部位を十分に切除した後に肝管空腸吻合術を行うのが最も予後良好で, 胆管狭窄に対する第一選択術式と考えるべきである, 腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)は, 短期間に急速に普及し標準となった術式である.胆道損傷に代表される術中偶発損傷など解決されるべき問題点も残っているという点についても, 手術前のインフォームドコンセントを充分に行い, 術中の柔軟な姿勢と慎重な対応に心がけたい.
  • 中村 知己, 大谷 泰雄, 檜 友也, 田島 隆行, 向井 正哉, 中崎 久雄, 今泉 俊秀, 幕内 博康
    2005 年 19 巻 5 号 p. 583-589
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆石イレウスを契機に発見された胆嚢癌の1例を経験したので報告する. 症例は79歳, 男性. 嘔吐と腹痛を訴え, イレウスと診断され, 紹介医へ緊急入院となった. 保存的療法を施行したが改善せず当院へ転院となった.イレウスチューブを挿入し造影すると, 小腸内に蟹爪様所見を認めたため, 小腸腸重積と診断し, 緊急開腹手術を施行した. 開腹時, 回盲弁から約100cmの口側小腸に硬い腫瘤を認めたため, 同部位の部分切除を行ったところ, 切除部腸管内腔から4×2.8cm大の結石が1個認められた. 胆石イレウスを疑い胆道消化管瘻の検索をしたところ, 胆石十二指腸瘻が認められた. 胆嚢摘出術を行い, 十二指腸前壁の一部をトリミング後, 大網充填術を施行した. 術後の病理検査結果で, 胆嚢癌と診断された. 追加手術も検討したが, 高齢虚血性心疾患の既往があり, 経過観察となった, 内胆汁瘻を認めた場合, 鑑別には胆嚢癌を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 相本 隆幸, 内田 英二, 川東 豊, 勝野 暁, 張 一光, 清水 哲也, 水口 義昭, 中村 慶春, 横室 茂樹, 有馬 保生, 内藤 ...
    2005 年 19 巻 5 号 p. 590-596
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術(PD)後2年目に良性胆管空腸吻合部狭窄を来し肝内結石を合併した2例を経験した.症例1は70歳女性で下部胆管癌術後2年7カ月後に吻合部狭窄, 肝内結石を合併し, PTCSにて切石し狭窄部拡張術を施行した.症例2は57歳, 男性で十二指腸癌術後2年5カ月後に肝内結石を合併し, PTCSL下で切石し, 狭窄部拡張術を施行した.2症例ともに胆汁細胞診, 吻合部生検やIntraductal ultrasonography(IDUS)にて再発はなく, 良性狭窄と診断した.PTCSチューブステントを症例1では1カ月間, 症例2では1.5カ月間留置し, その後はそれぞれ9カ月, 10カ月問再発を認めていない.PD後の胆管空腸吻合部狭窄や肝内結石症に対する治療は非観血的治療が原則であり, ステント留置の期間については短期間でも開存効果が望める可能性があり, 今後の治療方針の一つと考えられる.
  • 古川 舞子, 鬼束 惇義, 片桐 義文, 飯田 豊, 島本 強, 杉本 琢哉
    2005 年 19 巻 5 号 p. 597-601
    発行日: 2005/12/26
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で, 十二指腸球後部潰瘍による十二指腸狭窄症の手術に際し, 左側胆嚢と肝外側区域に本来のRex陥凹の遺残と思われる肝実質の欠損陥凹を認めた. 術後の検索で肝内門脈は後枝を独立分枝した後, P2, P3, P4をおよそ同じ部位より分枝し, 部を形成せず右に横走してP5, P8に分かれていた.造影CT冠状断像で, Rex陥凹はP2, P3, P4の合流部の右側にあり, 中肝静脈の末梢の枝が肝円索の左側にあることが判明した. 以上より, 本症例は右肝円索を伴う後枝独立分岐型門脈走行異常であり, 肝外側区域の実質欠損陥凹部は本来のRex陥凹の遺残と考えられた.
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