膵・胆管合流異常に胆道癌が高率に合併することは知られている. その原因として膵液の胆道内逆流が注目されているが, その発癌機序に関してはいまだ不明のところも多い. そこで, ハムスターに遠位側共通管の結紮切離と胆嚢十二指腸吻合(CD)を行い, 術後4週後よりN-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP)を10mg/kg/bwを9週間皮下投与し, BOP投与開始後12, 16, 20週で屠殺したところ, ヒトに類似の早期胆道癌が高率に発生したので, このCDモデルを用いて, 発癌機序の解析(CDモデルと胆嚢回腸吻合(CI)の比較, 発癌過程における遺伝子変異, 発癌剤非投与モデルにおける発癌)と化学予防物質の検索を行った, 本モデルの発癌機序は, 胆汁と膵液を含んだ十二指腸液が胆管へ逆流し, うっ滞すると, 膵酵素が活性化されて, 胆道粘膜の細胞回転数の増加と胆道粘膜障害を起こし, 発癌剤の効果が促進されるためと考察した. また, エトドラク, シメチジン, FOY-305の経口投与は本モデルの発癌を抑制し, 化学予防物質として有用である可能性が示された.
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