胆石症手術において遺残結石を予防するという観点から術中胆道造影が必須のものとなっているが,遺残結石を完全に防止し得るかどうかについては問題があり,術中胆道鏡の施行を唱えるものもある.しかし,遺残結石の発生率の面から両者を対比した報告はない.そこで術中胆道精査法としての術中胆道造影と術中胆道鏡の意義を評価すべく,胆管結石手術における結石の見逃し遺残率について検討した.対象は過去6年間に胆管切開切石を施行した総胆管結石症84例,肝内結石15例の計99例中,術中に結石を故意に遺残しなければならなかった総胆管結石7例,肝内結石3例の計10例を除く89例である.
術中には完全切石と判断されながら,術後に遺残結石(見逃し遺残結石)が発見されたのは89例中11例(12%)であった.これらの内訳は,術中胆道造影のみ施行した56例では見逃し遺残結石が10例(18%)に,術中胆道鏡を併用した33例では1例(3%)であった.術中胆道鏡併用群に有意(p<O.05)に遺残結石の発現率が低かった.これらの結果は,胆管結石手術において術後の遺残結石予防には術中造影のみにとどまらず,術中胆道鏡の施行を意義づけるものである.
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