胆道
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20 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 坂本 英至, 長谷川 洋, 小松 俊一郎, 広松 孝, 田畑 智丈, 河合 清貴, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 土屋 智敬
    2006 年 20 巻 5 号 p. 577-583
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    1996年から2005年までの間に当科で腹腔鏡下手術を試みた胆嚢消化管瘻6例について検討した.胆嚢と瘻孔を形成していた臓器は,十二指腸が5例と胃が1例であった.術前胆嚢消化管瘻が診断あるいは疑診されたのは5例であった.胆嚢消化管瘻と診断し胆嚢内に結石を認めなかった2例は瘻孔の自然閉鎖を期待し経過観察したが,胆管炎に起因する症状のため結局手術となった.手術は6例とも腹腔鏡下に開始した.高度の炎症性癒着のため2例が開腹移行となった.腹腔鏡下手術を完遂した4例中3例は胆摘と瘻孔切除を行ったが,1例では胆嚢が高度に萎縮しているため瘻孔切除のみを行った.腹腔鏡下での瘻孔の切除にはendoscopic linear staplerを使用した.術後合併症として腹腔内膿瘍1例と瘻孔閉鎖部の縫合不全を1例に認めた.晩期合併症は認めなかった.
  • -特集「ERCPの指導と教育」によせて-
    藤田 直孝
    2006 年 20 巻 5 号 p. 585-586
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    ERCPは胆膵内視鏡診断・治療の根幹となる手技である.開発当初は唯一の胆膵精査法として広く適応とされていた.しかし,その後のMRCPをはじめとする画像診断の発達により,ERCPの役割は単に胆管,膵管の形態を映し出すことから,治療的応用へと展開が進んでいる.また,診断的アプローチにも進歩がみられ,生検や細胞診,分子生物学的手法への応用と広がりをみせている.このようにERCPの需要はますます増加しているが,反面,ERCPの偶発症は残念ながら明らかな減少傾向にはない.このような状況の中,ERCPの教育はどのようにあるべきか,という問題がクローズアップされてきている.第41回日本胆道学会の教育セミナーにおいて,この「ERCPの指導と教育」が取り上げられた.発表施設の創意工夫を学会誌に掲載し情報を共有することは極めて意義深いと考える.本特集がERCPのさらなる普及に貢献することを期待する.
  • 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英
    2006 年 20 巻 5 号 p. 587-596
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    ERCP関連手技の当科の指導と教育の実際について述べた.ERCP手技は難易度が高く,致命的な偶発症も少なからず起こることから,熟練した指導医のもとでトレーニングすべきである.当科ではスコープ挿入から処置に至るまである程度の手技到達の目安を設定してトレーニングを行わせている.一方トレイニーは手技の習得のみに終始するのではなく,手技の理論的な理解や各疾患の病態に対する十分な知識も同時に習得していく姿勢が必要である.
  • 小林 剛, 藤田 直孝, 野田 裕, 伊藤 啓, 洞口 淳, 高澤 磨, 尾花 貴志, 遠藤 琢朗, 中原 一有
    2006 年 20 巻 5 号 p. 597-603
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    ERCPの教育に際しては,研修者が偶発症の実態,対応を熟知し,さらにこれらについてinformed consentに盛り込む必要を認識させることが重要である.日本消化器内視鏡学会による「ERCPの偶発症防止のための指針」を簡略化すると,術前ではinformedconsent,病状の把握として既往歴,アレルギー体質,基礎疾患の有無(高血圧,狭心症,心筋梗塞など),内服中の薬剤の確認,血液生化学検査,心電図,胸腹部単純X線検査などが必要である.術中では緊急事態への備え,監視装置の使用(パルスオキシメーター,心電図モニターなど),酸素吸入の準備,救急カートの常備などが求められる.術後は各種偶発症を踏まえた患者管理が重要で,機器の洗浄,消毒法に関しても学会のガイドラインを参照する.実際の手技に関しては,一般的な内視鏡施行時の注意点と共に,ERCPの術前では・絶飲絶食,内服薬中止による負担(脱水,虚血性疾患の悪化)・sedationによる呼吸抑制(低酸素血症).術中は・cholangio-vagal reflexによる徐脈や血圧低下(ショック)・過度な肝内胆管内圧の上昇に伴う疼痛・血圧上昇(脳出血).術後は・膵管や乳頭部への負担(急性膵炎,乳頭浮腫)などに注意が必要である.後進の指導にあたっては,内視鏡操作は決して盲目的に行わせず,先進部の把握を確実にさせる.造影時は造影剤注入時の所見を大事にすることを教育し,十分な読影,他の画像診断,標本との対比といったトレーニングを積ませることが必要である.ERCP関連手技は指導施設で十分な介助の経験を積み,チームで行うべき手技であることを認識させる.
  • 田中 聖人, 中島 正継, 安田 健治朗, 宇野 耕治, 河端 秀明
    2006 年 20 巻 5 号 p. 604-618
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    当院における,ERCP関連手技の指導,教育体制について述べた,当院では卒後初年度から研修を開始する一貫研修と,卒後5年次頃をめどに専門分野として研修するオープン研修の二つの方式がある.いずれも完全主治医制を貫き,ERCP関連手技にとどまらず,広く内視鏡学,消化器病学を学ぶように設定されている.当院の形態は短期間の技術習得には当たらないが,責任と臨床的思考に裏打ちされた臨床医を育てる上で優れたシステムであると自負している.
  • 玉田 喜一, 冨山 剛, 大橋 明, 井戸 健一
    2006 年 20 巻 5 号 p. 619-627
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    初心者にERCPを教育するには,1)スムースな乳頭への到達,2)乳頭の正面視,3)乳頭正面視後の胆管deep cannulationの順に教える必要がある.スムースな乳頭への到達は直視鏡と側視鏡の違いを理解することが肝要である.乳頭の正両視には,左右のアングルを使う,つま先を左右に向け体をローテイションさせる,左手首を左右に振る等の組み合わせが大切である.以上の理解にファントムを用いた練習が役立つ.乳頭正面視後は,凹型,玉葱型,舌状突起型といった,乳頭の形状に応じてカニュレイションの手法を使い分けることを指導する.
  • 猪瀬 悟史, 鈴木 修司, 原田 信比古, 鈴木 衛, 羽生 富士夫
    2006 年 20 巻 5 号 p. 629-634
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    総肝管十二指腸吻合術後の遺残胆管断端神経腫の1例を経験したので報告する.症例は81歳,男性,2003年5月,胆嚢結石症,総胆管結石症,傍十二指腸乳頭憩室症に対し,胆嚢摘出術,総胆管切開切石,総肝管十二指腸吻合を施行した.その際,膵鉤部に18mm大の膵intraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)を認め,経過観察とした.術後上腹部痛を繰り返すため諸検査を施行したところ,膵IPMNの増大を認め,膵IPMNによる腹痛発作と診断し,2005年2月PPPDを施行した.切除標本にて遺残胆管断端に15mm大の小結節を認めた.病理組織検査では遺残胆管断端の小結節は断端神経腫の診断で,膵IPMNはadenomaの診断であった.術後経過は良好で,疼痛の再燃は認めていない.病理組織学的所見をふまえて考察すると,膵IPMN以外にも遺残胆管断端神経腫が上腹部痛の原因であった可能性も考えられた.
  • 小島 英吾, 束原 進
    2006 年 20 巻 5 号 p. 635-641
    発行日: 2006/12/27
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.胆嚢腫瘤の精査目的にて入院となった.腹部超音波検査では多発する扁平隆起性病変,腹部CTでは造影効果を持つ多発性腫瘤として描出された.EUSでは周囲粘膜の不整な肥厚像を伴う扁平隆起病変を認め,外側高エコー層は保たれていたため,早期胆嚢癌と診断し,肝床合併切除を施行した.切除標本の肉眼像は,小顆粒状の拡がりをもった不整粘膜に丈の低い扁平隆起性病変を認めた.また,隣接してやや褪色調の約5mm大の亜有茎性ポリープを認めた.病理組織所見は,周囲に広範な異型上皮を伴った深達度mの癌で,亜有茎性ポリープの本体は幽門腺化生上皮からなる過形成性ポリープであった.また,その表層をも異型上皮が覆っていた.胆嚢癌と過形成性ポリープとが興味深い形態で併存している症例であった.
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