ERCPの教育に際しては,研修者が偶発症の実態,対応を熟知し,さらにこれらについてinformed consentに盛り込む必要を認識させることが重要である.日本消化器内視鏡学会による「ERCPの偶発症防止のための指針」を簡略化すると,術前ではinformedconsent,病状の把握として既往歴,アレルギー体質,基礎疾患の有無(高血圧,狭心症,心筋梗塞など),内服中の薬剤の確認,血液生化学検査,心電図,胸腹部単純X線検査などが必要である.術中では緊急事態への備え,監視装置の使用(パルスオキシメーター,心電図モニターなど),酸素吸入の準備,救急カートの常備などが求められる.術後は各種偶発症を踏まえた患者管理が重要で,機器の洗浄,消毒法に関しても学会のガイドラインを参照する.実際の手技に関しては,一般的な内視鏡施行時の注意点と共に,ERCPの術前では・絶飲絶食,内服薬中止による負担(脱水,虚血性疾患の悪化)・sedationによる呼吸抑制(低酸素血症).術中は・cholangio-vagal reflexによる徐脈や血圧低下(ショック)・過度な肝内胆管内圧の上昇に伴う疼痛・血圧上昇(脳出血).術後は・膵管や乳頭部への負担(急性膵炎,乳頭浮腫)などに注意が必要である.後進の指導にあたっては,内視鏡操作は決して盲目的に行わせず,先進部の把握を確実にさせる.造影時は造影剤注入時の所見を大事にすることを教育し,十分な読影,他の画像診断,標本との対比といったトレーニングを積ませることが必要である.ERCP関連手技は指導施設で十分な介助の経験を積み,チームで行うべき手技であることを認識させる.
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