胆道
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21 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 藤田 直孝
    2007 年 21 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆道疾患に対する内視鏡を用いた診療について述べた.内視鏡的手法は現在,診断,治療の両面で臨床の場で多くの重要な役割を担っている.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP),経皮経肝的胆管ドレナージ術(PTCD),超音波内視鏡(EUS)を基盤とした経乳頭的,経皮経肝的,経消化管的なアプローチがあり,これらについて現状と,将来展望についても触れた.内視鏡は精度の高い診断法,より低侵襲性の治療法を可能にする方法論として,今後一層の発展が期待される.そのためには特に若い世代の胆道医の参入と活躍が待望される.
  • 大井 至, 土岐 文武, 西野 隆義, 小山 祐康
    2007 年 21 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    膵・胆管合流異常においては,胆道拡張を伴わないものと胆道の嚢腫状拡張を伴うものがある.そして,胆道が嚢腫状に拡張することが,先天性胆道拡張症として基本的な病態と理解されているが,胆道が嚢腫状に拡張する機序は不明である.今回,胆道の嚢腫状拡張の発生機序を推測せしめる,総肝管には嚢腫状拡張がなく,総胆管と胆嚢管にのみ嚢腫状拡張を呈した膵・胆管合流異常を3例経験したので,総肝管の発生と胆道の嚢腫状拡張の発生学的考察を行った.そして,総肝管の形成には,肝憩室細胞が主に関与している場合と肝原基の原肝細胞の未分化胆管細胞が主に関与している場合があり,膵・胆管合流異常における胆道の嚢腫状拡張は,胎生時の肝憩室細胞にのみ生じ,原肝細胞から形成された胆管には生じないと推測された.また,この肝憩室細胞から形成される胆管の嚢腫状拡張には,胆道のRecannalizationが大きく関与していると考えられた.
  • 新しい疾患概念の提唱とその病理学的スペクトラム
    中沼 安二, 全 陽, 板津 慶太
    2007 年 21 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝内外の胆管内腔で胆管被覆上皮が乳頭状に発育し,しばしば粘液過剰産生や胆管拡張を示す腫瘍として胆管内発育型胆管癌,胆管乳頭腫(症),粘液産生腫瘍,胆管腔と交通を示す胆管嚢胞腺腫/腺癌等が知られている.これらの腫瘍は,膵の乳頭状粘液性腫瘍intraductal papillarymucinous neoplasm (IPMN)に類似しており胆管内乳頭状腫瘍intraductal papillary neoplasmof bile duct(IPNB)と呼ぶことを提唱した.IPNBは肝外胆管,肝門部胆管,左右肝管,肝内大型胆管に発生し,境界病変,低悪性度癌の組織像を示す.さらに進行胆管癌の中にも高度に浸潤したIPNB例が含まれている可能性がある.IPNBを1つ疾患単位とみなし,その形態および進展状態に基づくスペクトルムの理解と,これに対応した治療法の開発が可能かもしれない.
  • 真口 宏介
    2007 年 21 巻 1 号 p. 55-67
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部腫瘍の診断には, 乳頭部特有の解剖の理解が必須である. 本腫瘍の多くは,癌または腺腫であるが,カルチノイドや内分泌腫瘍もある.腺腫の全てが治療対象となるかについては統一した見解は得られていないが,家族性大腸腺腫症(FAP)に合併する乳頭部腺腫は治療対象であり,FAP以外でもadenoma-carcinoma sequenceが一部の症例でみられることから, 腺腫に対する治療を肯定する意見が強まりつつある.
    腫瘍の進展度診断には,EUS,IDUSによる十二指腸固有筋層浸潤(Du),膵浸潤(Panc)の判定に加え,胆管・膵管内進展の評価が必要である.IDUSによるOddi筋の描出と早期癌の診断が可能か否かについては意見が分かれている.
    治療に関しては,外科手術が基本となるが,内視鏡的乳頭切除術が世界的に注目されてきている. 適応は, 胆管・膵管内進展陰性の腺腫については統一した見解が得られているが, 早期癌への適応拡大については意見が分かれている. 問題は, 早期癌の正確な術前診断が現状では必ずしも容易ではないこと,Oddi筋に留まる早期癌のリンパ節転移の頻度が明確になっていないことであり,今後の検討を要する.また,偶発症対策,長期経過についても検討を要する課題である.
  • 矢澤 直樹, 今泉 俊秀, 堂脇 昌一, 大谷 泰雄, 飛田 浩輔, 岡田 健一, 松山 正浩, 種田 靖久, 柏木 宏之, 石井 正紀, ...
    2007 年 21 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部に発生した腺内分泌細胞癌の2症例を経験した.手術は2例ともPPPDを施行した. 病理組織では異型の強い腫瘍細胞が充実胞巣状に増殖し, 一部に腺癌成分が観察された. 免疫組織化学染色で神経内分泌マーカーが陽性を示し, 腺内分泌細胞癌と診断した.症例1 : 5 5 歳, 男性. 主訴は上腹部痛. 急性膵炎の診断で入院. pT3, pN2, H0, P0, M(-),fStageIVaであった. 術後5 カ月で多発性肝転移のため死亡した. 症例2 : 7 2 歳, 男性. 主訴は悪寒戦慄.急性胆管炎,閉塞性黄疸の診断で入院.pT3, pN2, H0, P0,M(-),fStageIIIであった.術後1年経過した現在,再発の徴候はない,十二指腸乳頭部原発腺内分泌細胞癌の本邦報告例はわずか5例に過ぎず,術後早期より肝転移やリンパ節転移をきたし,予後は極めて不良であった. 根治度A の手術に加えて, 有効な術後補助療法が必要であると考えられた.
  • 本邦報告73例の検討
    広松 孝, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎
    2007 年 21 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性. 腹痛, 発熱にて当院受診. CT, 超音波検査にて胆嚢壁肥厚と胆石を認め, 胆嚢炎疑いで入院となった. 絶食, 抗生剤にて胆嚢炎は保存的に軽快した. DIC-CTにて下部胆管の不整狭窄を認め,3D-CT上,総胆管下部に結節状構造と内腔へのわずかな突出像が描出された.内視鏡的逆行性胆道造影(ERC)では下部胆管に全周性狭窄を認め,IDUSでは結節浸潤型様の全周性隆起を認め,狭窄部からの内視鏡下生検にて,乳頭腺癌の診断を得た.下部胆管癌の診断にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では下部胆管に20×12mmの乳頭状腫瘍を認めた.病理組織学的所見は乳頭腺癌で深達度はmの早期癌であった.術後24カ月現在無再発生存中である.本症例は3D-CTにて下部胆管の微細な不整狭窄が描出され,内視鏡下全周性生検が早期胆管癌の確定診断に有用であった.本邦報告73例の検討を加え,報告する.
  • 竜 崇正, 趙 明浩, 郡司 久, 山本 宏
    2007 年 21 巻 1 号 p. 82-90
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝門部にはplate systemといわれる,比較的厚い結合組織が覆っている.Plate Systemは肝外では肝十二指腸間膜に移行し,肝内ではグリソン鞘に移行する.Plate systemは以下の4つに大別される.左右にグリソン鞘が分岐する部位にhilar plateがあり,右側はCystic plateに,左側はumbihcal plate,そしてArantian plateに連続している.肝門部での胆管走行の変異はこのplate systemの中で見られるが,肝内では胆管,動脈,門脈がグリソン鞘に包まれて同一に走行する.しかし尾状葉枝は胆管と門脈が別々に流入流出する事が多い.plate system内での胆管走行を検討すると,右側では右肝菅を形成するものは53%で,残る30%は後区域肝菅が肝門分岐部に,14%は左肝菅に,3%は総肝菅に流入した.左測ではB2B3共通肝型は44%にみられこの合流部はUPの左側であった.B3B4共通幹型は31%,B2B3B4同一合流型は25%であり,いずれも合流部位はUPの右側であった.左右肝動脈交通枝はすべてplate system内でみられ,胆菅の重要な血流路であった.肝門部の適切な手術を行うためには, 肝門部のplate systemの理解は必須である.
  • 神谷 順一
    2007 年 21 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝門部では動脈と胆管の走行にバリエーションが多い.動脈枝の多くは肝門部では胆管と並走せず,肝内に移行する部位で門脈と胆管の間に入り込む.肝門に現れる胆管は左右肝管とは限らず,亜区域枝やその共通管が肝門まで到達することもまれではない.右肝管後枝の10%は門脈右枝尾側を走行して右肝管や総肝管に合流する.
  • 村上 弦
    2007 年 21 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹膜に直接覆われない部位の肝被膜は,組織学的には厚い明瞭な線維性構造として同定できる.門脈・動脈そして多くの神経が疎性結合組織の中に浮いているのに対して,総胆管や胆嚢管を除く多くの末梢の胆道系が,密な線維性結合組織に包まれて肝被膜のすぐ外にある.後者の密な結合組織が,いわゆるグリソン鞘として末梢に続くのであろう.外科的に観察される肝門板は,組織学上は,胆管が埋没している密な結合組織構造に対応すると共に,術中に胆管を明瞭化する作業過程で,周囲の疎な線維性組織が板状に凝集していくのであろう.下大静脈の外膜に接する肝被膜は,例外的に厚い平滑筋層からなる.静脈中膜の平滑筋が粒状に見えるのに対して,肝被膜のそれは線状に見える.肝被膜平滑筋の一部の層は,尾状葉静脈や主要3肝静脈に沿って,それらの中膜の平滑筋と混在しながら肝実質内の末梢まで連続している.
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