胆道
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21 巻, 4 号
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  • 鈴木 雅貴, 小野寺 博義, 鈴木 眞一, 萱場 佳郎, 加賀谷 浩文, 野口 哲也, 菊地 徹, 内海 潔
    2007 年 21 巻 4 号 p. 489-496
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    【目的】胆管非拡張型膵・胆管合流異常の診断におけるIDUSの有用性について明らかにすること.【対象及び方法】1996年より経験した32例を対象とし,診断方法,診断方法別共通管長及び径,IDUSのOddi氏筋描出能について検討した.【結果】ERCPで診断可能であったのは23例(71.9%)で,ERCPでは判定困難でIDUSにより十二指腸壁外合流であると診断に至った例が9例(28.1%)であった.胆嚢癌の2例,胆管癌の2例はIDUSのビデオを再検討して判明した症例であった.IDUS診断例ではERCP診断例に比し有意に共通管が短く細かった.IDUS施行20例中15例(75.0%)ではOddi氏筋が合流部では存在せず,より乳頭側で出現する所見を捉えることにより合流異常と診断可能であった.【結語】ERCPだけでは合流異常と確診できない症例が存在する.このような症例においてIDUSは非常に有用であった.
  • 神澤 輝実
    2007 年 21 巻 4 号 p. 497-505
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    正常の十二指腸主乳頭部には,Oddi括約筋が存在し,胆管末端部から膵胆管の合流部を取り囲んで胆汁の流れを調節し, 同時に膵液の逆流を防止している. 膵・胆管合流異常では,膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,その作用が合流部に及ばないことより,膵液と胆汁の相互逆流が起きる.通常,膵管内圧が胆管内圧より高いことより,膵液の胆道内逆流が容易に生じ,そのうっ滞などにより胆道系に高率に発癌が起きる,膵液胆道逆流規象は,胆汁中のアミラーゼ値の測定,セクレチン負荷ダイナミックMRCP,副乳頭造影などにより診断され胆道癌との関係が,胆汁膵管逆流現象は,Tチューブ造影,DIC-CTなどにより診断され急性膵炎との関連性が注目されている.近年,膵胆管高位合流例や通常の膵胆管合流部の例でも,膵液胆道,胆汁膵管逆流現象が起きることが報告されている.これらの逆流現象について,病態や適切な治療法を含めて,今後検討していく必要がある.
  • 木村 理, 桜井 文明, 平井 一郎, 布施 明
    2007 年 21 巻 4 号 p. 506-521
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    病理学的に転移陰性と診断されたリンパ節のなかには潜在的に転移陽性のリンパ節が存在するものがあり,微小リンパ節転移とはそれらを指すことが多い.しかしその定義や検出法,臨床的意義には,多くの問題点が存在する.第1に連続切片法,免疫組織化学的染色法,PCR法など検索方法の相違があげられる. いずれにも偽陽性・偽陰性の問題や手技の再現性の問題が存在する.第2には報告された検索症例数が少ないこと,第3には定義が統一されていないこと,第4に臓器によってリンパ節転移の予後規定因子としての重要性に差があることが挙げられる.われわれは連続切片法と免疫組織化学的染色法を組み合わせた新しい方法を用いて,より正確な微小リンパ節転移の検出の可能性を示した.その結果,肝門部胆管癌の5年生存率は微小リンパ節転移陽性例では31.2%で,通常の組織学的検索で転移陽性と診断された症例の19.7%と有意差を認めなかった.また通常の方法による解析でリンパ節転移陰性で,かつ微小リンパ節転移を認めない症例の5年生存率57.5%に比較して予後不良な傾向が認められた.
  • 岡村 行泰, 上坂 克彦, 前田 敦行, 松永 和哉, 金本 秀行, 古川 敬芳, 佐々木 恵子
    2007 年 21 巻 4 号 p. 522-526
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は6 8 歳, 男性. 近医の腹部超音波検査( U S ) で胆嚢壁の肥厚を指摘され, 当院を受診した.USでは胆嚢は分節型腺筋腫症によって2房に分かれ,その頸部側には乳頭状腫瘤を多数認めた.底部側の粘膜面は平滑であった.MRCPでは膵胆管合流異常を認めなかった.早期胆嚢癌も否定できないことから胆嚢摘出術を行った.摘出標本で分節型胆嚢腺筋腫症を認めた.胆嚢内の胆汁アミラーゼ値は高値で潜在的膵液胆道内逆流現象が示唆された.病理学的には,腺筋腫症の頸部側には乳頭状の過形成を,また底部側には粘膜の剥脱を認め,残存した粘膜の一部に上皮内癌を認めた.本症例では,解剖学的膵胆管合流異常はないものの,分節型腺筋腫症と潜在的膵液胆道内逆流現象という2 つの発癌因子により, 腺筋腫症の底部側に癌が, また頸部側に著明な粘膜過形成が誘導されたと考えられた.
  • 小野寺 学, 河上 洋, 〓谷 将城, 上林 実, 平野 聡, 近藤 哲, 中西 喜嗣, 伊藤 智雄, 浅香 正博
    2007 年 21 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.近医で血清CA19-9の高値と肝腫瘤性病変を指摘され,当科紹介となった.各種画像検査において肝腫瘤性病変と上中部胆管狭窄を認めた.両者の連続性は明らかでなかったため,肝内胆管癌と上中部胆管癌の重複癌を疑い,肝左葉尾状葉切除および肝外胆管合併切除術, 門脈楔状切除, 右肝動脈切除, 再建術を施行した. 病理組織学的には, 胆管浸潤型の肝内胆管癌が連続性に肝外胆管へ線維筋層を中心に粘膜下壁内進展し,上中部胆管で壁肥厚が増して胆管狭窄をきたしていた.画像上は主病巣と上中部胆管狭窄との間に,正常胆管が存在しているようにみえたため,両者が連続病変であるとの術前診断に至らなかった.肝内胆管癌が連続性に肝外胆管へ広範囲に粘膜下壁内進展することは稀と考え報告する.
  • 笹田 雄三, 菊山 正隆, 仲程 純, 大田 悠司, 松橋 亨, 平井 律子, 小出 茂樹
    2007 年 21 巻 4 号 p. 534-539
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性. 検診の腹部超音波検査で胆嚢底部に長径2cm の隆起性病変を指摘され,当科を受診した.腹部CT検査では胆嚢の隆起性病変は動脈相で濃染した.超音波内視鏡検査では胆嚢底部の隆起性病変は実質様エコーを呈していた.また,胆嚢壁の構造は保たれていた.以上より,StageIの胆嚢癌と診断し,開腹下に胆嚢摘出術を施行した.病変は亜有茎性の腺癌で,内部に著明なコレステローシスがみられた.本症例は特異な病理所見を呈した胆嚢癌であり,興味深いと考え報告する.
  • 戸澤 智浩, 牧野 直彦, 白幡 名香雄, 本田 悌一朗, 池田 祐之, 河田 純男, 平井 一郎, 木村 理
    2007 年 21 巻 4 号 p. 540-546
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は7 6 歳, 女性. 上腹部の腫瘤を自覚し, 肝嚢胞腺癌の疑いで当科紹介入院となった.腹部US,CTおよびMRCPにて,総胆管から左肝内胆管に連続する乳頭状腫瘍を認めた.ERCP時には乳頭開口部の開大と粘液の排出を確認でき,造影上,総胆管から左肝内胆管にかけての著明な拡張と多量の粘液塊が認められた.胆管生検では粘液産生像を呈する乳頭状腫瘍がみられ,総胆管から左肝内にかけての粘液産生胆管腫瘍と診断した.造影では多量の粘液塊により壁内進展を正確に診断できなかったため管腔内超音波検査(以下IDUS)を施行した.右肝管と膵内胆管には腫瘍の進展を認めなかったため拡大肝左葉切除を施行した.病理診断は腺癌で,右肝管および総胆管での断端は陰性であった.
    粘液産生胆管癌は粘液塊の修飾による多彩な胆管像のために術前診断に難渋する場合も多く,本疾患の進展度診断にはIDUSが有効な検査と考えられた.
  • 新倉 直樹, 飛田 浩輔, 福光 寛, 岡田 健一, 松山 正浩, 矢澤 直樹, 種田 靖久, 堂脇 昌一, 大谷 泰雄, 今泉 俊秀, 幕 ...
    2007 年 21 巻 4 号 p. 547-552
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    われわれは,Bouveret症候群と呼ばれる,十二指腸に結石が嵌頓した胆石イレウスを経験したので, 報告する. 症例は72歳女性. 心窩部痛, 背部痛, 嘔気出現し近医に緊急入院した,上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に巨大胆石が嵌頓していた.胆石症,胆嚢十二指腸瘻,胆石イレウスの診断にて当院を紹介され入院となった.既往に僧房弁狭窄症があり内視鏡治療を第一選択とした.第4病日,内視鏡下にYAGレーザーを使用し採石試みるも困難であったため,第12病日に開腹手術を施行,胆嚢十二指腸瘻を同定し胆嚢摘出術,結石を摘出した.十二指腸瘻孔部閉鎖し手術を終えた.結石は53×44mmであった.術後腹腔内膿瘍を併発するもドレナージにて軽快,術後心不全認めるも,43病日に軽快退院となった.十二指腸球部に嵌頓する,胆石イレウス(Bouveret症候群)は胆石イレウスの9.0~14.6%と報告されており,検索をしえた限り本邦では16例報告されていた.
  • 星本 相淳, 守瀬 善一, 棚橋 義直, 香川 幹, 加藤 充純, 池田 匡宏, 溝口 良順, 杉岡 篤
    2007 年 21 巻 4 号 p. 553-558
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆管内腫瘍栓による閉塞性黄疸で発症した大腸癌肝転移術後再発の1例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.他院にて1994年に上行結腸癌の診断で結腸右半切除術,2000年に異時性肝転移に対し肝右葉切除術を施行された. 2004年8月に横隔膜, 右腎に浸潤する肝断端再発を認め,当院にて肝S4部分切除,横隔膜・右腎合併切除を施行した.外来経過観察中の2006年5月,黄疸が出現し当科入院となった.腹部CTで肝門部に2cm大の腫瘤と,胆道造影で総胆管内に長径4cmの陰影欠損を認め,大腸癌肝転移術後の胆管内再発と診断し,同年7月に肝S4部分切除・肝外胆管切除,左肝管空腸吻合を施行した.切除標本の割面では胆管壁外に明らかな腫瘍は認めず,病変は胆管内に充満する腫瘍栓が主体であった.腫瘍栓は一部で胆管壁との連続性を認めるのみで,胆管上皮は保たれていた.病理組織学的には高分化型腺癌で,結腸癌の胆管内転移と診断した.
  • 堀口 祐爾, 末永 昌宏, 久留 宮隆
    2007 年 21 巻 4 号 p. 559-566
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    ステロイド療法が有効であったIgG4関連胆管炎と思われる一例を報告した.症例は74歳の男性.2006年3月末より食欲不振,嘔気,上腹部鈍痛があり,近医を受診したところ黄疸を指摘され当院を紹介された.血液生化学検査では,総ビリルビン1.9mg/dl,AST194IU/l,γ-GTP1453IU/l,エラスターゼI630ng/dlと高値であったが,CA19-9は正常であった.腹部超音波検査では下部胆管閉塞,膵頭部腫瘤,尾側膵管拡張を認めた.さらに,胆管閉塞部上流の拡張胆管壁が不規則に肥厚していることが注目された.造影CT検査で膵頭部の腫瘤はよく造影され,その後の血液検査で抗核抗体(+),IgG2277mg/dl,IgG41120mg/dlと高値であったので,自己免疫性膵炎と診断した.ステロイドホルモン療法を行ったところ,黄疸や肝機能障害は劇的に改善し,膵頭部腫瘤は経時的に縮小し,胆管壁の肥厚も徐々に軽減した.
  • 水崎 馨, 斉藤 英一, 小林 秀昭
    2007 年 21 巻 4 号 p. 567-573
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で,右季肋部痛を主訴に来院した.右季肋部に腹膜刺激症状を認めた.腹部CT検査で腫大した胆嚢内に胆砂様の病変を認めた.急性胆嚢炎の診断で,PTGBD目的で胆嚢を穿刺したが,胆砂様の部分は腫瘍であったため穿刺吸引細胞診を行い,胆嚢癌の診断を得た. 入院19日後に胆嚢を含む肝部分切除術, 胆管切除術, 横行結腸部分切除術, D2リンパ節郭清術を施行した.病理診断は未分化癌であった.術直後より呼吸不全を併発した.肺炎を合併した肺水腫と考え治療したが, 治療には反応せず, 術後34日目に死亡した. 術後, 腫瘍マーカーが急上昇したことと,死後行った肺の針生検がClass IIIbであったことから,肺転移が疑われた.
  • 脊山 泰治, 國土 典宏, 幕内 雅敏
    2007 年 21 巻 4 号 p. 574-583
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌に対する根治的切除術はリスクが高かったが, 術前減黄処置, 門脈枝塞栓術の普及,進展形式の解明などに伴い根治性,安全性が飛躍的に向上した.特に拡大半肝切除はシンプルで根治性の高い標準術式として定着してきた. 一方で肝門部胆管癌症例は約7割が黄疸肝であり拡大半肝切除,左右三区域切除など大量肝切除による術後肝不全,周術期死亡のリスクがあるが,術前減黄処置,門脈枝塞栓術を含む治療戦略により根治性,安全性を確保できる.左右肝管の交通性が失われている症例に対する減黄処置は切除術式を想定した上で施行する.半肝膵頭十二指腸切除や門脈,肝動脈合併切除再建も根治が望める症例には積極的に行うべきである.自験例では切除率74.5%,治癒切除率64%であり術後肝不全,周術期死亡は認めなかった.5年生存率は33.9%であり,リンパ節転移陽性症例など予後不良群に対しては術後化学療法などが今後の課題となる.
  • 梛野 正人
    2007 年 21 巻 4 号 p. 584-590
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    癌に対する手術の基本は, 癌を露出させないよう十分なsurgical marginをとって切除することにある.肝門部胆管癌では腫瘍の進展範囲から根治的切除に必要な術式を想定し,肝機能からみてその術式が妥当かどうかを判断することになる.放射線治療や化学療法には全くエビデンスはないので,まず,何とか切除できないか?を考える.術式は尾状葉(S1)切除を伴う右葉,左葉,右三区域,左三区域切除のいずれかが基本である.それほど高齢ではなく肝機能がよければ,十分なsurgical marginが得られる術式(大きくとる術式)にする.Bismuth I・II型癌は肝門部胆管切除などの小さい手術でも切除できるように見えるが,結節型や浸潤型では肝右葉+尾状葉切除を選択すべきである.門脈浸潤例に対する積極的切除の意義は十分あるが,肝動脈切除については更なる検討が必要である.
  • 宮崎 勝, 木村 文夫, 清水 宏明, 吉留 博之, 大塚 将之, 加藤 厚
    2007 年 21 巻 4 号 p. 591-598
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌の外科切除においては根治性が重要な予後規定因子であるため,いかにして安全度の高い術式において根治度を高められるかが大きなポイントである.そのためには正確な癌の進展度診断,正確な肝予備能判定,安全を高めるための門脈塞栓術の応用,黄疸肝の減黄管理,また手術に際しては血管合併切除再建手技の確立,肝実質温存切除術の適応,適切な術後管理といった点についてすべて適切に行う事で良好な外科切除成績を上げていく事が出来る.また現時点でどのような肝門部胆管癌が外科切除可能なものでその際の術式選択の考え方,および切除適応外となるものはどのような症例なのかについて具体的な基準を呈示する.外科切除が根治性を得られうる唯一の治療手段である事より,肝門部胆管癌症例を診る臨床医は安易に切除不能と判断せずに外科切除の可能性を徹底的に追求した上で判断する責務があるであろう.本稿では肝門部胆管癌外科治療のポイントについて述べてみたい.
  • 花田 敬士, 飯星 知博, 福田 敏勝, 米原 修治, 田妻 進
    2007 年 21 巻 4 号 p. 599-602
    発行日: 2007/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
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