胆道
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22 巻, 5 号
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原著
  • 大屋 敏秀, 村上 英介, 高亀 亜希, 沼田 義弘, 平岡 政隆
    2008 年 22 巻 5 号 p. 617-623
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    近年, 総胆管結石症の治療は, 多くの場合, 内視鏡的なアプローチによって結石除去が行われている. 結石除去の効率, 早期合併症の頻度の観点から, EST (endoscopic sphincterotomy) あるいはEPBD (endoscopic papillary balloon dilatation) について, 両者の優位性が論議され, また, 長期合併症である結石再発の面からも議論されている. 今回, 両手技およびESWL (extracorporeal shock wave lithotripsy) を用いて結石除去が可能であった302例を対象とし, 結石再発と手技および胆嚢の有無の関係, また, 結石有無と胆管径, 胆管内の感染の有無についての検討を行った. 全症例の結石再発は, 302例中28例 (9.3%) であったが, 胆嚢結石有りの群では, 8.7%, 胆嚢結石無しの群で7.1%, 胆摘後の群で15.2%の再発率であった. また, 胆汁中細菌培養検査を施行し得た44例について, 細菌感染の有無を検討すると, 結石を有する症例では, 90.9%で感染を認めたが, 結石を有さない症例では, 9.1%の感染率であった. また, それぞれの胆管径は, 平均14.8mm, 8.9mmと有意に総胆管結石群で拡張を認めた. 結石再発の観点から, 総胆管結石の除去において, 胆管内への逆行性感染を阻止することが重要であり, 胆嚢機能の温存と, 十二指腸乳頭機能の温存を考慮した結石除去が望ましいと考えられた.
  • 河本 博文, 石田 悦嗣, 藤井 雅邦, 小川 恒由, 堤 康一郎, 原田 亮, 加藤 博也, 平尾 謙, 栗原 直子, 水野 修, 山本 ...
    2008 年 22 巻 5 号 p. 624-631
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    メタリックステント (MS) によるマルチステンティング後の化学療法の有用性と安全性を検討した. 1999年から2006年間に肝門部胆管狭窄でマルチステンティングを行った胆道癌患者46例を31例の化学療法群と15例のbest supportive care群 (BSC群) に分け, 生存期間, MS開存期間, 合併症について後向きに検討した. 化学療法はゲムシタビンかS-1を投与した. 多変量解析による結果では化学療法は生存期間を延長 (HR0.36 ; 95%CI 0.14-0.91) し, 生存期間中央値はそれぞれ化学療法群420日, BSC群190日であった (P<0.05). 合併症は前者で胆嚢炎 (n=3) と肝膿瘍 (n=1). 後者では仮性動脈瘤による胆道出血 (n=1) を認めた. 肝門部悪性胆道狭窄を伴った胆道癌症例に対する化学療法は生存期間延長に寄与し, MSによるマルチステンティングで安全に施行可能である.
  • 伊藤 啓, 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 尾花 貴志, 洞口 淳, 高澤 磨
    2008 年 22 巻 5 号 p. 632-637
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    【背景】 急性胆嚢炎に対する治療は早期の胆嚢摘出術であるが, 全身状態不良例や高齢者では手術関連の合併症率は高く, 経皮的胆嚢ドレナージ術 (PC) が有用とされている.
    【対象と方法】 PCを施行した急性胆嚢炎134例を対象に, 手技的成功率, 臨床的有効率, 偶発症および予後について検討を行った.
    【結果】 手技的成功率は100%で, 臨床的有効率は90%であった. 偶発症はカテーテルの自然逸脱を0.7%に, 自己抜去を1.5%に認めた. 重篤な基礎疾患を有していた3例は死亡した. PC後99例に対し胆嚢摘出術を施行した. 腹腔鏡下手術を施行した16%で炎症が高度のため開腹下手術に移行した. 非手術例の胆嚢結石例の10%にカテーテル抜去後再発がみられた.
    【結論】 早期の胆嚢摘出術が施行できない場合には, 急性胆嚢炎に対するPCは有用で安全な治療法である. 胆嚢摘出術を行わない場合, カテーテルの抜去後再発に注意が必要である.
  • 野間 文次郎, 佐々木 民人, 藤本 佳史, 桑原 健一, 芹川 正浩, 小林 賢惣, 井上 基樹, 齋 宏, 神垣 充宏, 南 智之, 茶 ...
    2008 年 22 巻 5 号 p. 638-643
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌に対する術前胆道ドレナージは, 経皮あるいは経乳頭的アプローチに大別されるが, 現在その選択に明確な基準はない. 今回われわれは, 当院にて外科的切除を施行した肝門部胆管癌31症例を対象に, アプローチ方法と部位別の胆管炎合併率, 切除までに要した期間の比較を行い, また上部胆管癌48症例も対象に加えてアプローチ別に病理組織学的検査の癌正診率を検討した.
    胆管炎合併率の比較では, 経乳頭的ドレナージ群は経皮的ドレナージ群と同等, 片葉ドレナージ群も両葉ドレナージ群と同等の合併率であった. さらに病理組織学的検査の検討では, 経乳頭群と経皮群に有意差はなく, 経乳頭的アプローチ群においても, 組織生検は高い癌正診率を示した. 一方, 切除までに要した期間では, 経乳頭的アプローチ群が有意に短い結果となった.
    肝門部胆管癌に対する術前ドレナージは, 経乳頭的片葉ドレナージが第一選択となり得る可能性が示唆された.
  • 鈴木 修司, 小池 伸定, 原田 信比古, 鈴木 衛, 羽生 富士夫
    2008 年 22 巻 5 号 p. 644-649
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    胆道癌における腫瘍内核酸代謝関連酵素発現についての報告は少ない. 今回胆道癌症例22例においてTS, TP, DPD, OPRTmRNA発現量をDannenberg tumor profile法で半定量し, 大腸癌63例, 胃癌29例と比較検討し, さらに臨床病理学的因子と比較検討した. 胆道癌のTS, OPRTは他の癌との間に有意差は認めなかった. 胆道癌のDPD, TPは他の癌に比し有意に高値であった. 臨床病理学的因子との比較では組織型, 深達度, 間質比, INF, ly, v, pnに有意差は認めなかったが, pT1, 2とpT4のTS, OPRTは有意にpT4の方が低値であった. 胆道癌は他の癌に比してDPD, TPは有意に高く, 臨床病理学的因子ではpTがTS, OPRTにおいて有意な差を認めた. 他の癌に比し胆道癌はDPD活性が高いことから, DPD活性を抑えた抗がん剤は有効であると考えられるが, TP活性が高いため, その効果は他の癌に比し, 減弱する可能性を示した.
  • 樋口 亮太, 新井田 達雄, 太田 岳洋, 安田 秀喜, 吉川 達也, 山本 雅一
    2008 年 22 巻 5 号 p. 650-657
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    (目的) ss and/or pHinf0-1a胆嚢癌に対する至適リンパ節 (以下LN) 郭清について検討した.
    (対象・方法) 胆嚢癌切除371例中, 深達度ss (and/or pHinf0-1a) でかつD1以上の郭清を伴う手術が行われた74例を対象とした.
    (結果) 治癒切除 (62例 : 5生71%) と非治癒切除 (12例 : 5生38%) 間の生存率に差を認めた (P=0.0006). LN転移陽性率は55% (41/74) で, pN (+) pBinf (-) の症例では非PD群に比較してPD群で生存率の改善を認めた (胆管切除 (以下BDR) なし : 5生53%, BDRあり : 5生38%, PDあり12例 : 5生83%, BDRあり vs PDあり : P=0.0045, BDRなし vs PDあり : P=0.0055). pN (-) pBinf (-) の症例ではPDは有用でなく, 郭清度別 (D1-D3) の生存率にも差はなかった. pBinf (-) の症例ではBDRの有無による生存率にも差はなかった.
    (結論) 治癒切除を目指してD2郭清を行い, pN (+) の場合には (PP) PD併施を考慮する. LN郭清のための胆管切除の意義は見いだされなかった.
総説
  • 全 陽, 中沼 安二
    2008 年 22 巻 5 号 p. 658-668
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    原因不明の硬化性胆管炎は原発性硬化性胆管炎 (PSC) と呼ばれてきたが, 近年, 多数のIgG4陽性細胞の浸潤を特徴とする胆管炎 (IgG4関連硬化性胆管炎 : IgG4-SC) がPSCと類似の病態を起こしうることが明らかとなった. 病理学的に, PSCとIgG4-SCはリンパ球・形質細胞浸潤と線維化を特徴とするが, PSCでは胆管内腔側のびらん性変化が目立ち, IgG4-SCでは胆管壁の高度の肥厚を特徴とする. IgG4の免疫染色では, IgG4-SCの罹患胆管にはびまん性かつ多数の陽性細胞が認められる. PSCとIgG4-SCは病理学的に異なる疾患であるが, 臨床的には鑑別が困難な症例があり, 各症例で慎重な鑑別が求められる. 特に, 治療法が異なるため, 適切に鑑別する必要がある. 硬化性胆管炎の病態には不明な点が多く残されているが, PSCでは細菌やウイルス感染, 遺伝子異常などの関与が指摘されている. 一方, IgG4-SCの病態研究は始まったばかりで, 制御性T細胞の関与や, Th2優位の免疫応答が病態形成に関与していると考えられている.
症例報告
  • 長田 成彦, 後町 成輔, 鈴木 孝良, 川口 義明, 堂脇 昌一, 今泉 俊秀, 中村 直哉, 峯 徹哉
    2008 年 22 巻 5 号 p. 669-675
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 男性. 糖尿病, 慢性腎不全, 左第5趾の皮膚潰瘍にて他院に通院, 2006年7月に皮膚潰瘍が悪化し, 下腿にまで及び10月入院, 精査中に腹部CTで肝左葉外側区域に30mm大の腫瘤を認めたため当科受診となった. 超音波像では肝左葉S3に30mmの境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め, 内部エコーは比較的均一, 造影超音波でほとんど造影効果が無かった. 腹部CTでも肝左葉に30mm大のlow density massがあり, 一部陥凹し, 造影すると動脈相で造影効果が僅かに認められる不均一なlow densityを示した. MRIのSPIOで取り込み欠損像として明瞭に描出された. これらの所見を基に腫瘍生検を行い細胆管細胞癌の診断を得た. 手術を考慮したが, 左下腿切断術後の経過が思わしくなく, 開腹ラジオ波焼灼療法 (以下RFA) を行った. 肝腫瘤の診断に苦慮した症例を経験したので報告する.
  • 西川 貴雄, 杉浦 信之, 秋池 太郎, 伊藤 健治, 阿部 朝美, 有賀 明子, 金田 暁, 齊藤 正明, 森嶋 友一, 中野 雅行
    2008 年 22 巻 5 号 p. 676-681
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は84歳男性. 食後の悪心および心窩部痛, 発熱を主訴に受診し, 入院となった. 血液生化学検査では肝胆道系酵素の上昇とCRPの上昇を認め, 急性胆管炎と診断された. 腹部超音波検査では胆嚢内に12mm大のポリープを認め, 造影超音波検査ではポリープは造影効果良好であり, 血流豊富なポリープと考えられた. 腹部症状および血液生化学検査所見はすみやかに正常化した. 臨床所見からは胆石の自然排石に類似した経過であったが, 腹部超音波検査では胆嚢内に胆石を認めず, 血流の豊富なポリープの存在から, ポリープの一部が自然脱落し, 胆管炎症状を呈した可能性も考えられた. 高齢でもあり経過観察としたが, その後腹部超音波検査で24mm大とポリープが増大したため, 悪性の可能性もあり外科にて胆嚢摘出術を施行した. 病理組織所見は有茎性の絨毛状管状腺腫であった. 一部に出血の痕跡も認められ, ポリープの一部が自然脱落した可能性を示唆する所見であった.
  • 今井 健一郎, 新井田 達雄, 鬼澤 俊輔, 山本 雅一, 河上 牧夫
    2008 年 22 巻 5 号 p. 682-686
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症に対する分流手術後, 膵炎に対するPPPD後に肝内結石症を発症し, 肝内胆管癌の併存を疑い肝左葉切除を施行した症例を報告する.
    症例は72歳, 女性. 昭和45年, 胆嚢摘出術を施行された. 昭和48年, 総胆管嚢腫の診断で肝外胆道切除, 総肝管空腸吻合術を施行された. 平成2年, 膵内遺残嚢腫による膵炎に対してPPPDを施行された. 平成19年, 腹痛の精査目的で施行したCT, MRCPで, 左肝管に狭窄とその末梢の結石像を認めた. 胆汁細胞診でClass IVが検出された. 肝内結石症, 肝内胆管癌疑いとの診断で, 肝左葉切除術を施行した. 胆管狭窄部には膜様狭窄を認め, 病理組織学的に線維性間質が増生しており, 悪性所見は認められなかった.
  • 原野 恵, 良沢 昭銘, 田場 久美子, 石垣 賀子, 岩本 早耶香, 岩野 博俊
    2008 年 22 巻 5 号 p. 687-695
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性, 全身倦怠感・食欲不振・黄疸を主訴に近医を受診し, CTで肝門部腫瘍・肝内胆管拡張を指摘されたため, 精査・加療目的で当院に紹介された. CTで肝門部に60mm大の腫瘍と多数の腹部リンパ節腫大が認められた. ERCPでは上部胆管で閉塞し, 左肝内胆管拡張が認められ, 右肝内胆管は描出不良であった. 胆道プラスチックステント留置後に, 動体追跡放射線照射療法と化学療法 (gemcitabine) の併用を行った. 放射線療法後にプラスチックステントに換えて金属ステントを留置した. 胆泥によるステント閉塞のためバルーンカテーテルによるクリーニングを要した以外, 外来通院加療が可能であった. 治療効果良好で腫瘍・リンパ節の縮小が得られ, 腫瘍マーカーもほぼ正常化している. 3年以上経過した現在も外来通院中である.
  • 貝田 将郷, 西田 次郎, 岸川 浩, 井口 清香, 森下 鉄夫
    2008 年 22 巻 5 号 p. 696-701
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は中国在住の71歳男性. 黄疸と褐色尿を主訴に現地病院を受診した際, 閉塞性黄疸と診断され, 精査加療の目的にて帰国後当院に入院した. 入院後PTBDを施行したところ, 排液胆汁より無数の肝吸虫の虫卵を検出し肝吸虫症と診断した. さらに腹部CTおよびMRCPにより膵頭部癌と診断した. プラジカンテルの投与によりドレナージチューブより多数の虫体が排泄されたが, その後も黄疸は改善せず全身状態は悪化し, 肝不全のため第61病日に死亡した. 剖検所見において肝吸虫は膵管内には認められなかった. 両疾患の併存例の報告は稀であり, 興味深い症例と思われた.
  • 佃 和憲, 平井 隆二, 高木 章司
    2008 年 22 巻 5 号 p. 702-706
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    黄色肉芽腫性胆嚢炎は胆嚢癌との鑑別が困難で, 両者の合併率も高く診断に苦慮することがある. 今回われわれは, 下腹部腫瘤として発見された黄色肉芽腫性胆嚢炎を合併した胆嚢癌の症例を経験した. 症例は85歳女性. 右下腹部痛のため近医受診し, 右下腹部腫瘤を指摘された. 術前検査では胆嚢に連続する5cm大の一部に嚢胞のある腫瘤を認めたが, 炎症性腫瘤と腫瘍との鑑別は困難であった. 術中所見では, 上行結腸および腸腰筋に強度に癒着しており胆嚢癌と考え, 上行結腸も合併切除した. 病理検査では嚢胞部に中分化腺癌がみられたが, 結腸と強固に癒着し浸潤を疑った底部には黄色肉芽性炎症があるのみで悪性所見はなかった.
  • 宮田 英樹, 佐藤 一弘, 岩尾 年康, 吉田 浩司, 牛尾 純, 佐藤 雅, 石野 淳, 長田 祐輝, 河瀬 智哉, 野村 佳克, 味岡 ...
    2008 年 22 巻 5 号 p. 707-714
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性. 腹部超音波検査 (US) で胆嚢壁の軽微な限局性肥厚が疑われた. 超音波内視鏡 (EUS) 及び腹部CTなどの断層画像による診断では病変の存在並びに質的な診断は難しかった. ERCPに引き続いて胆嚢二重造影を行い粘膜表面の描出から病変を診断した. 胆嚢底部から体部には病変周囲の網目状構造とは異なる不規則な一部に癒合顆粒の粘膜所見であった. 細胞診がclass IIIであったことも考慮して0-IIb型胆嚢癌と診断した. 切除標本の病理組織学的検索から病変はadenocarcinoma (tub2), pSS, IIb like advanced. Gf, INF-γ, sciと診断した. 術前の胆嚢二重造影並びに標本二重造影による粘膜所見と病理組織所見の病変範囲はほぼ一致しており, 二重造影による粘膜診断の有効性が再認識された症例であったため報告する.
胆道専門医講座 (2) 長期生存が可能なss胆嚢癌の基礎知識
「第三回 外科の立場から」
  • 新井田 達雄, 樋口 亮太, 太田 岳洋, 吉川 達也, 山本 雅一, 高崎 健
    2008 年 22 巻 5 号 p. 715-722
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ss胆嚢癌の外科治療についてR0の治癒切除が大事であることに異論はないであろう. しかしその治癒切除をえるための術式選択については以下の3点のcontravesyがある. I. pBinf (-) 症例や胆嚢管癌非浸潤例に対し予防的胆管切除は必要か?II. リンパ節の郭清範囲と郭清法 (特に膵頭十二指腸切除術の適応) III. 肝切除範囲についてである. これらの問題を臨床病理学的にretrospectiveに検討し, ss癌の進展度別にみた標準治療を検討した. ss癌切除115例を対象にし, さらに34回日本胆道外科研究会全国アンケート調査のss癌1148例の結果を参考にした. I) 予防的な肝外胆管切除 : pBinf (-) 群であればpNの有無にかかわらず肝外胆管非切除群と切除群の生存率に有意差がなく再発様式についても有意差はなかった. したがって予防的な肝外胆管切除の意味はないと思われた. II) リンパ節郭清法 : リンパ節郭清にはpBinf (-) &pN (+) ではPDを適応とするべきであるが, リンパ節転移のない場合にはD0-1郭清を基本とするべきであろう. III) 肝切除範囲 : pBinf (-) 群では, 癌占拠部位が腹腔, 肝側にかかわらず予防的なS4a+S5切除, 全層切除, 胆嚢床切除間に生存率や肝転移再発様式に有意差を認めず, 肝転移を予防する肝切除は必要ないと思われた. pBinf (+) では肝外胆管切除と肝右葉+尾状葉切徐が標準術式となると思われた.
  • 白井 良夫
    2008 年 22 巻 5 号 p. 723-731
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    進行胆嚢癌の手術成績は概して不良であるが, pT2 (ss) 癌では根治手術により治癒が期待できる. 胆嚢癌進展の自然史 (natural history) からみると, pT2 (ss) 癌の主要な進展様式はリンパ節転移であり, その根治手術ではリンパ節郭清を重視すべきである. 一方, pT2 (ss) 胆嚢癌に対する標準術式は未だ定まっていない. 当科では, 1982年以来, pT2 (ss) 胆嚢癌の根治術式として胆摘+胆嚢床切除+肝外胆管切除+D2郭清からなる拡大根治的胆嚢摘出術 (Glenn手術変法) を基本とし. 膵頭周囲リンパ節転移が高度な症例では膵頭十二指腸切除を追加してきた. 本稿では, 主として自験例の成績に基づき, pT2 (ss) 胆嚢癌の根治手術について考察する. さらに, 胆石症などの良性疾患に対する胆摘後に発見されたpT2 (ss) 胆嚢癌に対する根治手術 (再切除) の適応, 術式についても考察したい.
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