胆道
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23 巻, 5 号
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原著
  • 木村 康利, 永山 稔, 孫 誠一, 今村 将史, 秋月 恵美, 信岡 隆幸, 水口 徹, 古畑 智久, 平田 公一
    2009 年 23 巻 5 号 p. 725-733
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】教室における中·下部胆管癌切除症例の予後因子として,「胆管断端癌陽性」の意義と,その取り扱いに関して検討した.
    【対象と方法】2007年7月までに教室で経験した中·下部胆管癌切除57例.男性42例,女性15例,平均年齢66±10.2歳.
    【結果】全例の5年生存率は33.3%で,根治度別の生存率は,f Cur A·B(36例/44.5%),C(21例/0%)と,f Cur C症例において有意に予後不良であった.多変量解析では,胆管断端癌陽性が独立した予後因子であった(H.R. 3.27,95% C.I. 1.003-10.663,p=0.0495).しかし,胆管断端が上皮内癌の症例は,浸潤癌の症例に比べて長期生存者が存在した.
    【結論】中·下部胆管癌の根治切除にあたってはf Cur A·Bが重要で,とくに胆管断端癌陽性を回避すべく術式を立案することが肝要である.また,予後不良因子陽性の症例に対しては,補助療法を考慮すべきと思われた.
  • 川野 誠司, 石田 悦嗣, 河本 博文, 原田 亮, 加藤 博也, 平尾 謙, 水野 修, 小川 恒由, 山本 和秀
    2009 年 23 巻 5 号 p. 734-739
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 従来は内視鏡治療が困難とされていた術後再建腸管を有する胆道疾患症例でダブルバルーン内視鏡を用いた治療を経験し,その有用性と問題点について検討した.対象は2008年1月から2008年9月までに当科に入院した術後再建腸管を有する胆道疾患5症例で再建方式はRoux-en-Y 3例,Billroth II法2例であった.スコープはフジノン社製EC450-BI5を使用し,内視鏡挿入とERCPでそれぞれに精通した術者が交代して行った.5症例すべてにおいて処置可能であり,重篤な偶発症は認めなかった.術後の観察期間は平均8カ月と短いが,胆管炎の再燃などは現在まで認めていない.術後再建腸管を有する胆道疾患症例においてダブルバルーン内視鏡を用いた検査処置は安全かつ有用であることが示唆された.
  • 岡屋 智久, 中川 宏治, 木村 文夫, 清水 宏明, 吉留 博之, 大塚 将之, 加藤 厚, 吉富 秀幸, 伊藤 博, 宮崎 勝
    2009 年 23 巻 5 号 p. 740-748
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 閉塞性黄疸(閉黄)肝での減黄の肝微小循環,Kupffer細胞活性への影響を検討するため,C57BL/6雄性マウスを用いて総胆管結紮切離による閉黄モデル(J群),1·2週間後,3日間の胆汁外瘻による減黄モデル(J+D群)を作成した.対照として非閉黄モデル(S群),非閉黄後胆汁ドレナージモデル(S+D群)を用いた.生体顕微鏡で類洞血流,肝中心静脈での白血球Roller·Sticker,類洞内径,貪食能を有するKupffer細胞数を測定した.類洞血流はJ群でS群に比し有意に減少し,J+D群でS+D群に比し有意に減少したがJ群に比し有意に増加した.Roller·StickerはJ群でS群に比し有意に増加し,J+D群でS+D群と有意差を認めなかった.類洞内径はJ群でS群に比し有意に低値であり,J+D群でJ群と有意差を認めなかった.貪食能を有するKupffer細胞数はJ群でS群に比し有意に高値であり,J+D群でJ群と有意差を認めなかった.減黄により白血球-血管内皮相互作用は早期に改善するが,類洞内径狭小化による循環障害は遷延することが示された.
  • 大谷 和広, 千々岩 一男, 甲斐 真弘, 永野 元章, 大内田 次郎, 近藤 千博, 今村 直哉, 旭吉 雅秀
    2009 年 23 巻 5 号 p. 749-755
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 75例の肝外胆管癌切除例を対象とし,胆管断端陽性例の特徴および予後を検討した.非治癒切除16例のうち胆管断端が陽性であったものは10例,うち8例では胆管断端陽性のみが非治癒となった因子であった.腫瘍の肉眼型では平坦型の43%が胆管断端陽性となった.切除例全体の単変量解析では,組織学的胆管周囲進展度,総合的進行度,リンパ節転移が予後因子であったが,胆管断端における癌の遺残は予後に影響を与えなかった.リンパ節転移陰性かつ剥離面陰性の症例に限って検討した場合,胆管断端陽性例は陰性例に比し有意に予後が不良であった.胆管断端はリンパ節転移陰性かつ剥離面陰性の症例においては予後因子としての意義があり,そのような症例においては可能な限り胆管断端陰性化を目指すべきであるが,リンパ節転移陽性例や剥離面陰性とならない症例に対しては,胆管断端の陰性化にこだわる意義は乏しいと思われた.
  • 中嶋 潤, 佐々木 章, 大渕 徹, 馬場 誠朗, 高原 武志, 新田 浩幸, 池田 健一郎, 若林 剛
    2009 年 23 巻 5 号 p. 756-761
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 高齢者の胆嚢良性疾患に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)の有用性と安全性について報告する.1992年3月から2008年12月までに施行したLC1257例のうち,65歳以上の高齢者464例と65歳未満793例との手術成績について比較検討した.高齢者群では,基礎疾患,胆嚢炎の合併が高率で,手術時間の延長,出血量の増加が有意に認められた.合併症発生率,術後在院日数では両群で差を認めなかった.最近5年間における非手術例は高齢者で有意に多かった.高齢者に対するLCは適応と手術操作に慎重を要するが安全に実施でき,その低侵襲性を十分に生かすことができるという特徴を踏まえ,十分なインフォームドコンセントの上で実施することが重要である.
総説
  • 正田 純一, 石毛 和紀, 杉山 弘明, 川本 徹
    2009 年 23 巻 5 号 p. 762-774
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 胆道癌は,その発生と進展環境の複雑性,また,それに関連すると考えられる癌進展様式の多様性を示すこと,現行の化学療法や放射線療法に対して抵抗性を示す事が多いため,完全治癒の期待出来ない難治性の癌である.胆道癌の治療成績の向上と生命予後の改善には,胆道発癌,増殖,浸潤,転移の癌進展の分子機構にかかわる腫瘍生物因子を同定し,それらの因子を標的とする新しい有効な治療手段の開発が重要である.胆道癌の細胞株,臨床標本,また,モデル動物における解析により,胆道癌の発癌ならびに進展にかかわる分子機構が解明されつつあり,分子標的治療のために有用であるとされる腫瘍生物学的因子が絞り込まれている.現在までに胆道癌を対象とした分子標的治療薬の臨床試験の実施は数少ない.今後は,胆道癌の腫瘍生物学的特色を捉えた新規薬剤の登場と質の高い臨床試験の実施が早急に望まれる.
  • 古川 敬芳
    2009 年 23 巻 5 号 p. 775-782
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 胆道癌に対するFDG-PETの有用性に関する論文は少なく,現時点では保険収載となっていない.FDGの病変への集積の評価は,視覚的に周囲組織とのコントラストをみて判定する方法が用いられている.胆管炎や胆嚢炎など炎症が合併している可能性を考慮して,読影作業を行う必要がある.胆道癌のなかでは,肝内胆管癌や胆嚢癌より肝外胆管癌で,肉眼型では結節型より浸潤型で,原発巣が描出されにくい傾向にある.リンパ節転移診断のsensitivityは低くspecificityが高い.遠隔転移や副病変の拾い上げ,再発病変の診断に関する有用性は高く,他の画像診断では診断困難な病変が指摘されることがある.FDGが高集積であるほど予後不良の傾向がみられ,悪性度評価に利用できる可能性がある.従来の形態画像とは異なる検査法であり,臨床像や他検査と併せ,総合的に評価することで新たな情報が付け加わる.胆道疾患に対する,より効果的な利用法の開発が求められる.
症例報告
  • 竹島 薫, 山藤 和夫, 辻 忠男, 篠崎 博志
    2009 年 23 巻 5 号 p. 783-788
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 胆嚢摘出後に発生した遺残胆嚢管癌の1例を経験したので報告する.症例は66歳の女性で糖尿病と慢性C型肝炎のフォロー中に腹部US検査にて総胆管結石と診断され精査目的にて入院となった.既往に32歳時に胆石症にて胆嚢摘出術を受けていた.入院後実施したERCPにて総胆管結石は認めず,遺残胆嚢管のわずかな描出とそのやや肝門側で上部胆管に片側性の壁外性圧迫を疑わせる陰影欠損像を認めた.同部位から実施した組織生検にて腺癌と診断された.腹部血管造影検査では右肝動脈より分岐する胆嚢動脈を認め,その末梢に腫瘍濃染像を認めた.以上より遺残胆嚢管癌と診断し,胆管切除術およびD2リンパ節郭清術を実施した.切除標本にて癌腫は胆嚢管内腔より発生しており切除胆管への壁外からの浸潤を認め組織学的には中分化型管状腺癌であった.遺残胆嚢管癌と最終診断した.術後7カ月現在無再発生存中である.
  • 光山 俊行, 坂尾 将幸, 山口 隆志, 柴谷 伸行, 藤村 和代, 市島 國雄, 内田 一茂, 岡崎 和一
    2009 年 23 巻 5 号 p. 789-796
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 症例は53歳,男性.全身倦怠感,褐色尿を主訴に当院を受診した.来院時の血液検査所見は肝胆道系酵素の上昇をみとめた.腹部超音波では肝S4に低エコー腫瘤と左肝内胆管の拡張をみとめた.腹部CTでも肝S4に造影効果のない境界明瞭な低吸収域を示す腫瘤として認めた.肝門部胆管癌を疑い,ERCを施行した.胆管は上部胆管で途絶し,左右肝管の合流部周囲まで陰影欠損を認めた.胆汁細胞診はclass IIIaであったが,総合的に肝門部胆管癌と診断し,肝拡大左葉切除,胆管切除を施行した.切除標本は3×2 cm大の黄白色腫瘍であった.病理組織検査では腫瘍,胆管に悪性細胞をみとめず,リンパ球や形質細胞の高度な細胞浸潤をともなう線維の増生をみとめるのみで炎症性偽腫瘍と診断した.免疫組織染色ではIgG陽性形質細胞の浸潤をみとめたが,IgG4陽性細胞の浸潤はみとめられず,血中IgG4も104 mg/dlと基準範囲内(4.8∼105 mg/dl)であった.肝門部胆管癌と鑑別困難な硬化性胆管炎に併発した肝炎症性偽腫瘍の一例を経験したので報告する.
胆道専門医講座(3)胆道癌の進達度診断―US, EUSとMDCTの比較―
  • 廣岡 芳樹, 伊藤 彰浩, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 後藤 秀実
    2009 年 23 巻 5 号 p. 797-805
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 十二指腸乳頭部癌進展度診断における体外式超音波検査(US)と超音波内視鏡検査(EUS)の役割について述べた.局所の観察が十分ではないUSは十二指腸乳頭部癌進展度診断に限界があり,閉塞性黄疸によって引き起こされる胆管拡張や進行癌例における遠隔転移診断などがその役割になる.局所進展度診断の主役はEUSであり,十二指腸浸潤,膵浸潤および腫大リンパ節の良悪性診断に寄与する部分が大きい.但し,近年積極的に実施されるようになった乳頭切除術の適応決定に関しては管腔内超音波検査(IDUS)が有用であり,両者の使い分けが重要である.今後,超音波造影剤を用いた診断など新たなモダリティ-が加わればEUS単独での診断精度の向上が期待される.
  • 伊藤 茂樹, 松島 正哉, 鈴木 耕次郎, 太田 豊裕, 長縄 慎二
    2009 年 23 巻 5 号 p. 806-815
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 十二指腸乳頭部近傍領域のCT診断においては1.25 mm以下の検出器厚による多相造影検査と2-3 mm厚の水平断と高分解能のmultiplanar reformatted imagesの作成が重要である.これらの画像は,主膵管,膵内胆管,膵頭十二指腸動脈などの細かな解剖学的構造の描出を可能とする.また,膵実質相において膵頭部と十二指腸の間に造影効果の低下した領域が描出され,この領域は膵胆管をOddi括約筋が取り巻いている領域に相当すると推定される.膵胆管拡張の原因検索のためCT検査が施行された乳頭部腫瘍の症例において,CTの果たすべき最も重要な役割は膵癌や胆管癌などの他の疾患を除外することである.しかしながら,CTは共通管,Oddi括約筋,十二指腸固有筋層を分離して同定できないため,局所進展度診断におけるその役割は限られる.乳頭部腫瘍は比較的予後が良好であるため,CT検査の施行においては,その被曝や造影剤に伴う副作用にも十分留意すべきである.
胆道専門医講座(3)胆道癌の進達度診断
  • 吉満 研吾, 井田 樹子, 藤光 律子, 浦川 博史, 高良 真一, 東原 秀行
    2009 年 23 巻 5 号 p. 816-823
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    要旨: 胆道癌の進展度診断にMRを用いる際は,その優れたコントラスト分解能を活かしたMR cholangiography(MRC)と3Dダイナミック撮像が基本となる.まずはMRCで胆道系の全体像を把握し,異常(狭窄,閉塞,拡張)が疑われる部位に対して,ダイナミック撮像を主体とする他のシークエンスで詳細に評価する.MRCは,それぞれの長所を活かして2D法と3D法の両者を併用することが望ましい.3Dダイナミック撮像は脂肪抑制を併用し病変評価に最も有用な断面で撮像する.拡散強調像は悪性腫瘍検出に広く応用されているが,胆道系疾患においては今後の評価が待たれる.胆嚢癌においては,ダイナミック撮像平衡相での漿膜下濃染が漿膜下浸潤を示唆し,MDCTに勝るサインである可能性がある.胆管癌においても,質的診断においてMDCTより優れる可能性がある.MR/MRCは造影MDCTに加え,胆道癌評価の有用なモダリテイーである.
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