胆道
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23 巻, 4 号
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原著
  • 谷澤 武久, 新井田 達雄, 太田 岳洋, 山本 雅一
    2009 年 23 巻 4 号 p. 594-601
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨:術中胆道損傷後の良性胆道狭窄は,憂慮すべき合併症であり,治療に難渋する事が多い.当科で経験した34例を対象に治療法を検討した.他施設損傷例は33例(97.1%)であり,17例(50.0%)が既に何らかの修復を受けていた.当科での治療内容としては,手術例が31例(91.2%)を占めた.平均観察期間は8年11カ月,予後良好28例(82.3%),再狭窄3例(8.8%),難治性胆管炎,死亡例が各々1例(2.9%)であった.治療内容は胆管空腸吻合15例,胆管胆管吻合7例,胆管十二指腸吻合,胆管十二指腸間空腸間置が3例,結紮糸除去,クリップ除去,腹腔ドレナージ術が各々1例,非手術例は3例であった.胆管空腸吻合はBismuth III型以上,多次手術症例が多かった.胆管胆管吻合はBismuth II型が多く全例予後良好であった.術中胆道損傷後の胆管狭窄では,難治例が多く積極的な外科的治療が良好な予後につながり,適切な症例選択によっては,胆管胆管吻合による修復も有用である.
  • 三村 享彦, 伊藤 謙, 鈴木 拓也, 岡野 直樹, 五十嵐 良典
    2009 年 23 巻 4 号 p. 602-609
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 高齢化社会の進行に伴い,高齢者に内視鏡治療を行う機会が増えている.今回当院で経乳頭的に結石除去を行った総胆管結石症426例に対し,80歳以上の高齢者群122例と80歳未満の群304例とに分類し,比較検討した.医療費の検討のために,当院でDPCが導入された2003年5月以降の症例においては入院費用の検討も追加した.結果は高齢者群と80歳未満の群において,完全結石除去率はそれぞれ97.5%,99.7%,治療回数はそれぞれ1.6回,1.4回,入院期間はそれぞれ18.6日,18.7日であり両群間に有意差は認めず,良好な治療結果が得られた.ERCP手技に関連する偶発症の頻度においても有意差は認めないが,高齢になるにつれて心肺系などに基礎疾患を有する症例も多く,重篤な偶発症を併発することがあるために慎重な対応が必要と考えられた.両群間の入院費用に有意差は認めなかったが,治療回数の減少や入院期間の短縮が入院費用の減少,ひいては医療費の削減につながると考えられ,そのためには各種処置具の改良などが望まれる.
  • 柴尾 和徳, 日暮 愛一郎, 平田 敬治, 岡本 好司, 山口 幸二
    2009 年 23 巻 4 号 p. 610-614
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 総胆管結石症に対し,当院で腹腔鏡下総胆管切石術を施行した57例の治療成績を開腹群14例と比較,検討した.腹腔鏡下群の平均手術時間は,開腹群と差はなかったが,症例を重ねても手術時間の短縮は認めなかった.術中出血量は,腹腔鏡下群で少なく,結石の最大径は腹腔鏡下群で小さかった.腹腔鏡下群の切石は51例が総胆管切開部より,6例が経胆嚢管的に施行された.胆道減圧チューブは腹腔鏡下群でCチューブ47例,Tチューブ4例で6例では留置しなかった.開腹群では全例でTチューブを挿入していた.腹腔鏡下群での採石成功率は94.7%で遺残結石は3例(5.3%)に認められた.結石再発は腹腔鏡下群で2例(3.5%)に認められた.腹腔鏡下群では早期の食事再開,退院が可能であった.腹腔鏡下総胆管切石術は,症例を適切に選択することにより,低侵襲で開腹術に比べ遜色のない治療成績を得ることが可能であると思われた.
  • 河端 秀明, 萬代 晃一朗, 宇野 耕治, 田中 聖人, 安田 健治朗, 中島 正継
    2009 年 23 巻 4 号 p. 615-621
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 総胆管結石症のため当院に入院した85歳以上の超高齢者141例について検討した.内視鏡的結石除去術あるいは内視鏡的胆管ステント留置術を試みた内視鏡的治療群135例と絶食および抗生剤の投与のみで治療した保存的治療群6例を比較すると,各群132例(97.7%),5例(83.3%)が軽快退院しており,内視鏡的治療群において有意に軽快率が高かった.また,内視鏡的処置を行った130例のうち完全除去群75例とステント留置群55例を比較すると,結石数が5個以上のものが完全除去できず胆管ステント留置で終了する傾向を認めたが,偶発症,軽快率,再発率に差を認めなかった.しかしながら,各群1例に術後脳血管障害を発症した.超高齢者においても総胆管結石に対する内視鏡的治療は有効かつ安全であり,全身状態が許せば,十分なインフォームド·コンセントと厳重な術中·術後管理の下で積極的に施行すべきであると考えられた.また,結石が残存しても,胆管ステントを留置することにより完全除去と遜色ない長期経過が期待できるため,速やかに処置を終えることを念頭に置いた柔軟な対応が望まれる.
  • 景岡 正信, 大畠 昭彦, 渡辺 文利
    2009 年 23 巻 4 号 p. 622-629
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 目的: 高齢者の総胆管結石症に対する内視鏡的治療(EST,EPBDによる切石あるいは胆管ステント長期留置)の有用性を明らかにする.
    方法: 総胆管結石に対して内視鏡的治療を行った389名を80歳以上の高齢者(A群: 90名)と79歳以下の非高齢者(B群: 299名)の2群に分けて検討した.
    結果: A群は重篤な基礎疾患や抗凝固薬投与の頻度が高かった.切石例の完全切石率はA群91.4%,B群98.0%.A群25名,B群6名に重篤な基礎疾患等の理由で切石が困難なため胆管ステント長期留置を行った.両群の長期胆道偶発症の発症頻度に差を認めず,また重篤なものはなく全て治療可能であった.
    結論: 高齢者の総胆管結石に対する内視鏡的治療は安全かつ有用である.
  • 森川 孝則, 片寄 友, 力山 敏樹, 山本 久仁治, 吉田 寛, 林 洋毅, 大塚 英郎, 元井 冬彦, 江川 新一, 海野 倫明
    2009 年 23 巻 4 号 p. 630-639
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 肝門部胆管癌肝切除例における新鮮凍結血漿(FFP)使用状況および厚生労働省「血液製剤の使用指針」の妥当性につき検討した.対象は1989年から2007年12月まで当科にて葉切除以上の肝切除術を施行した広義の肝門部胆管癌120例.各因子別の術後FFP使用量は術後総ビリルビン高値例,術中輸血例,自己血輸血非施行例の使用量が多く,前期(1989年∼2001年),中期(2002年∼2005年),後期(2006年以降)と年代別の検討では38.1±26.5単位,31.1±26.0単位,10.6±12.7単位と,術後在院日数と同様に年次的に減少しており,術中,術後経過の安定が使用量減少の要因と考えられた.術後プロトロンビン時間50%未満30%以上の症例においてFFP投与の有無により合併症発症率,術後在院日数に差を認めず,「血液製剤の使用指針」は認容しうるものであった.周術期管理の安定および指針の遵守により,大量肝切除術後においてもFFP使用量削減は可能と考えられる.
総説
  • 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英, 土屋 貴愛, 栗原 俊夫, 辻 修二郎, 石井 健太郎, 池内 信人, 森安 史典
    2009 年 23 巻 4 号 p. 640-648
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 急性胆嚢炎における胆嚢ドレナージについて解説した.ドレナージ法は経皮経肝的アプローチにPTGBD,PTGBA,内視鏡的アプローチとして経乳頭的な経鼻胆嚢ドレナージ(ENGBD),胆嚢ステンティングと超音波内視鏡(EUS)ガイド下の経鼻胆嚢ドレナージ,胆嚢ステンティングがある.PTGBDは30年以上前から始められ現在最も確立した有効な手技である.一方,PTGBAは奏効率はPTGBDにはやや劣るものの患者のADLも損なわない治療法として普及している.また近年,経乳頭的アプローチによる胆嚢ドレナージ術の報告も散見されるが,その手技成功率と起こりうる偶発症としての急性膵炎の存在は未だ議論の余地がある.さらに現在EUS下の胆嚢ドレナージ術が試みられつつあるが,消化管壁と癒着のない胆嚢とのドレナージ術が常に安全な手技となり得るのか,さらにはより安全で確実な手技の開発についてを動物実験も含めた検討が必要である.
症例報告
  • 豊川 秀吉, 權 雅憲
    2009 年 23 巻 4 号 p. 649-653
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨:黄色肉芽腫性胆嚢炎は胆嚢内に胆汁色素を含む組織球(xanthoma cell)を主体とした肉芽腫を形成する比較的まれな胆嚢炎の1亜型と考えられている.治療は腹腔鏡手術の適応にもなるが,病期や炎症の程度によっては開腹手術を要することが多い.胆嚢癌との鑑別も困難であり十分な術前検査,および術中は迅速病理検査による診断を行い過不足ない手術治療を行うべきである.
  • 植村 修一郎, 安田 秀喜, 樋口 亮太, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 平野 敦史, 土屋 博紀
    2009 年 23 巻 4 号 p. 654-660
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 60歳代男性,心窩部痛を主訴に2008年4月末に当院受診し,胆道系酵素上昇,胆管と胆嚢壁の肥厚,胆嚢内ガス像,高度炎症所見を認め,急性胆管炎·胆嚢炎,敗血症の診断で緊急内視鏡的経鼻胆道ドレナージを施行した.その後,状態は改善傾向であったが,5月中旬になり経鼻胆道チューブからの出血と貧血進行を認め,造影CTにて胆嚢出血が疑われた.血管造影にて胆嚢動脈からの造影剤の血管外漏出像を確認し,coilにて胆嚢動脈を塞栓し止血し得た.止血後の胆道造影では肝門部胆管は狭窄し,Mirizzi症候群を呈していた.開腹すると胆嚢は著明に萎縮し,周囲と高度に癒着していた.胆嚢頚部肝側に径1 cm大の血腫を認めたが,胆道との交通は確認できなかった.胆嚢摘出術を行ったが,胆嚢内に出血塊も確認できなかった.外傷性·医原性を除く胆嚢出血に対し,TAEにて止血し待機的に手術を行い得た報告は自験例を含め2例であり貴重な症例と思われ報告する.
  • 上田 順彦, 澤 敏治
    2009 年 23 巻 4 号 p. 661-667
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 患者は70歳代,女性.腹部CTでは肝十二指腸間膜内は腫瘤で一塊となっていた.肝門部では肝内に浸潤する腫瘤により両葉の肝内胆管の拡張を認め,右肝内胆管は前後枝合流部まで浸潤を受けていた.また右肝動脈は肝門部近傍で腫瘤の浸潤が疑われた.胆管造影では左右肝管から総肝管にかけて高度な狭窄を認め,左および前枝の肝内胆管の拡張を認めたが後枝は描出されなかった.腹部血管造影では門脈は本幹から左右分岐部にかけて狭窄を認めた.門脈浸潤を伴う肝門部胆管癌と診断し手術を施行した.術中洗浄細胞診がclass Vであったため,尾状葉を含む肝左葉切除,門脈合併切除,D2リンパ節郭清を施行し,再建終了後に持続温熱腹膜灌流を施行した.組織学的にはBsBpBmC,se,pHinf2,pGinf0,pPV2,pA(不明),pN1,pHM2,pDM2,pEM(h,rHA)2,fStage IVa,fCur Cであった.術後S-1内服とpaclitaxel靜注による補助化学療法により4年10カ月無再発生存中である.
  • 宮田 英樹, 佐藤 一弘, 岩尾 年康, 吉田 浩司, 牛尾 純, 佐藤 雅, 石野 淳, 長田 祐輝, 河瀬 智哉, 野村 佳克, 森本 ...
    2009 年 23 巻 4 号 p. 668-676
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 73歳,女性.スクリーニング目的にて施行された腹部超音波検査(ultrasonography: US)にて,胆嚢ポリープを指摘され入院となった.超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography: EUS)および胆嚢二重造影の所見より,Ipポリープ以外にIIaおよびIIb病変を認めたため,早期胆嚢癌の多発病変と考え,開腹胆嚢摘出術+D2リンパ節郭清を行った.病理組織学的には,腺腫成分を伴わないIp型早期胆嚢癌と,非癌粘膜が介在したIsおよびIIb型早期胆嚢癌の混在した症例と考えられた.切片上は多発癌の可能性も考えられる点,また,腺腫成分を伴わないIp型早期胆嚢癌である点から,稀な症例と思われた.
  • 菅野 敦, 佐藤 賢一, 廣田 衛久, 正宗 淳, 片寄 友, 海野 倫明, 石田 和之, 全 陽, 下瀬川 徹
    2009 年 23 巻 4 号 p. 677-683
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 症例は64歳·男性.検診にて肝左葉に腫瘤を指摘され,精査目的に当科を紹介された.腹部超音波検査,CT,MRIで肝S2に類円形の嚢胞内に増殖する乳頭状腫瘤を認めた.MRCPでは嚢胞はB2からの連続性が推測されたが,ERCPでは胆管と嚢胞の交通は確認できなかった.肝左葉切除を施行したところ,嚢胞内に少量の粘液と,充実性に発育する腫瘍を認めた.腫瘍は,卵巣様間質を認めず,pancreatobiliary typeの高分化型乳頭腺癌であった.中枢側の正常胆管と交通を示唆する部位を認め,また腫瘍より末梢の胆管の存在を認めなかった.以上から,末梢胆管に発生した胆管内乳頭状腫瘍(intraductal papillary neoplasm of the bile duct: IPNB)と診断した.IPNBは,症例数が少なく臨床的特徴が不明である.本症例は類円形の形態を呈した貴重な一例と考えられた.
  • 山崎 将人, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 樋口 亮太, 平野 敦史, 植村 修一郎, 土屋 博紀
    2009 年 23 巻 4 号 p. 684-691
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 腹腔鏡下胆嚢摘出術後10日目に発生した遅発性胆汁瘻症例を経験した.初発症状は右下腹部痛と非典型的であり診断·治療で注意すべきと考えられた.症例は50歳代,男性.再入院10日前,胆嚢結石に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し,初回手術後第4病日に退院した.退院5日後の夕食にてんぷらを食べ2時間後より押されるような重苦しい痛みが出現したが自然消失した.しかし翌朝より右下腹部痛が出現し来院,右下腹部を中心に圧痛を認めたが筋性防御は明らかではなかった.血液検査ではWBC 11500 /mm3,CRP 2.1 mg/dlと軽度上昇,腹部造影CTで右下腹部から骨盤内を中心に液体貯留を認めた.腹膜炎の診断にて開腹すると腹腔内に胆汁を認め,総胆管の右側面にある直径1 mmほどの小孔から胆汁の流出を認めた.同部に胆道外瘻チューブを挿入し手術を終了した.穿孔の原因としては鉗子の柄の接触が考えられた.術後経過は順調で再手術後第16病日に胆道外瘻チューブを挿入したまま退院した.3カ月後のMRCPでも胆道狭窄は認めていない.
  • 原田 雅生, 橋本 千樹, 川部 直人, 吉岡 健太郎, 黒田 誠
    2009 年 23 巻 4 号 p. 692-697
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: 今回我々は,超音波内視鏡下穿刺吸引術(endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration: EUS-FNA)が診断に有用であった結核性リンパ節炎による閉塞性黄疸の1例を経験したので報告する.
    症例は32歳,男性.約1年前に肺結核にて治療歴があった.上腹部痛にて近医を受診したところ,閉塞性黄疸と診断され当院紹介となった.腹部造影CTにて,肝門部付近に辺縁が造影される低濃度の腫瘤を認め,それを原因とした閉塞性黄疸と考えられた.減黄·原因精査目的にてPTBDを施行したところ,上部胆管に左方からの圧排による平滑な狭窄を認め,腫大した肝門部リンパ節による圧排が疑われた.減黄後,腫大したリンパ節に対しEUS-FNA施行した.生検組織に乾酪壊死を伴う類上皮性肉芽腫を認め,結核菌PCR検査が陽性であったため,肝門部の結核性リンパ節炎と診断した.肝機能正常化後,抗結核薬投与を開始した.以後,リンパ節は徐々に縮小傾向を認めている.
胆道専門医講座(3)胆道癌の進達度診断 -US, EUSとMDCTの比較-
  • 洞口 淳, 藤田 直孝
    2009 年 23 巻 4 号 p. 698-702
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: USやEUSといった超音波検査は,胆嚢病変の存在診断や質的診断を行う上で重要な検査法の一つである.特にEUSは胆嚢病変の詳細な観察が可能であるため,腫瘍の形態と胆嚢壁層構造の関係から癌の壁深達度診断が可能である.EUSで有茎性の病変であることが確認されれば,深達度は粘膜内にとどまる早期癌と診断できる.一方,病変が広基性の場合には病変部の胆嚢壁の詳細な観察を行い,外側高エコー層に変化が生じているか否かで深達度診断を行う.外側高エコー層に不整がみられる場合には漿膜下浸潤が考えられるが,外側高エコー層に影響のない症例では癌浸潤が粘膜層,粘膜固有筋層,漿膜下層までのいずれの場合も存在するため,鑑別には他のモダリティの併用が必要である.最近ではUSでドプラ法や造影法を用いて腫瘍部の血流解析を行うことで,深達度を診断する試みがなされており,今後EUSでの応用が期待される.
  • 佐々木 民人, 藤本 佳史, 芹川 正浩, 茶山 一彰
    2009 年 23 巻 4 号 p. 703-708
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/27
    ジャーナル フリー
    要旨: MD-CTを用いた胆嚢癌診療について概説した.胆嚢癌の予後の改善には,早期の病変の存在診断と,正しい病期診断に基づいた適切な治療が不可欠である.早期胆嚢癌の発見には,胆嚢内に限局する隆起性病変と非対称性の胆嚢壁肥厚の質的診断が重要である.びまん性の壁肥厚では膵·胆管合流異常も念頭に置く必要がある.胆嚢内に限局する病変の進展度診断は,MD-CTのみでは不十分であり,他のモダリティーの併用が必要である.胆嚢周囲臓器への進展度診断では,axial画像に加えて,MPR再構成画像を加えた総合的診断が,病変の進展度診断には有用である.
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