胆道
Online ISSN : 1883-6879
Print ISSN : 0914-0077
ISSN-L : 0914-0077
25 巻, 5 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 大内田 次郎, 千々岩 一男, 矢野 公一, 今村 直哉, 永野 元章, 旭吉 雅秀, 大谷 和広, 藤井 義郎, 甲斐 真弘, 近藤 千博
    2011 年 25 巻 5 号 p. 725-731
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:総胆管結石に対して初回内視鏡的治療を行った症例で,内視鏡的治療選択の妥当性と胆管結石再発症例について検討した.対象は1990年から2010年まで,胆嚢摘出後症例と予後不明症例を除く,初回経乳頭的内視鏡的治療を行った156例で,ESTによる切石は108例,EPBDによる切石は48例であった.術後膵炎に関してはEPBD群に多く認められたが,統計学的な有意差は無く,いずれも保存的加療で軽快した.胆管結石の再発はEST群が11例(10.2%),EPBD群が3例(6.3%)とEST群で多い傾向にあったが有意差は認めなかった.再発群14例と無再発群142例との比較では,胆管原発結石症例と胆嚢結石の無い症例が再発群で有意に多く認められた.胆嚢摘出併施の有無に関しては施行しなかった症例が再発群に多い傾向にあったが有意差は無かった.総胆管結石症では胆管原発結石例と無石胆嚢といえども胆嚢摘出術非併施例において,再発に対する注意深い観察が必要と考えられる.
  • 西野 隆義, 白戸 泉, 白戸 美穂, 田形 倫子, 濱野 徹也, 光永 篤, 鬼澤 俊輔, 濱野 美枝, 新井田 達雄
    2011 年 25 巻 5 号 p. 732-738
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:急性胆管炎のTokyo Guidelines(以下,TG)および国内版診療ガイドライン(以下,国内版)の重症度判定基準を臨床的に評価した.TGで診断された48例を緊急ドレナージ群(緊急群,n=18)および待機的ドレナージ群(待機群,n=30)にわけた.緊急群はTGにおける重症10例,中等症8例であり,待機群は中等症8例および軽症22であった.国内版では,緊急群は重症13例および中等症5例だが,待機群では重症2例および中等症が24例あり,軽症は4例のみであった.国内版はTGに比べ重症度が過大に評価される傾向があった.国内版中等症項目の陽性項目数から中等度スコア(0-5点)を算出しROC解析を行った.緊急ドレナージの予測はROC曲線のAUCは0.87と良好で,TGの重症の予測はAUC 0.97と非常に良好であった.中等度スコアは緊急ドレナージの適応や重症の予測に寄与する可能性があると考えられた.
  • 森 隆太郎, 上田 倫夫, 熊本 宜文, 野尻 和典, 松山 隆生, 遠藤 格
    2011 年 25 巻 5 号 p. 739-744
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術(SILC)の術後疼痛に対する有用性を明らかとするため4点式腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)と比較し検討した.疼痛評価はVisual Analog Scale(VAS)を用い安静時・体動時それぞれの疼痛を術後6,24,48時間,退院時,1カ月後に評価した.SILC群21例,LC群12例で術後疼痛は48時間後,退院時の安静時痛でLC群0.6,0.3に対しSILC群1.7,1.4と有意に高かったが,体動時痛には有意差を認めなかった.LC群で硬膜外麻酔(Epi)併用例が多かったため,まず全症例でEpi併用の有無別の術後疼痛を比較したところ,VASは48時間後の体動時痛以外退院時まで安静時,体動時ともにEpi併用群において有意に低かった.Epi併用例に限って術式別に検討すると,24時間後の体動時痛がSILC群0.5とLC群3.0に比し有意に低かった.単孔式手術は術後の疼痛,特にEpi併用下において術後24時間での体動時痛の軽減に有効である可能性が示唆された.
総説
  • 岡島 正純, 佐伯 修二
    2011 年 25 巻 5 号 p. 745-750
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:見えない傷の手術とも呼ばれる単孔式内視鏡手術は,その名の通り,術創が臍の中に隠れてしまうため,整容性に優れた手術である.一方で従来の腹腔鏡手術の基本的なトロッカー配置を崩しており,手技が困難であることは否めないが,胆嚢摘出術を単孔式で行ってみると,技術的に不可能ではなく,むしろ実地臨床で行うことができることがわかった.このような経緯から,その症例数は着実に増加している.今後は単孔式内視鏡手術研究会などの活動を通じて,より安全,確実な手技と機器,器具の開発が望まれる.また,整容面だけではない本術式の利点についての研究も今後の大きな課題であろう.
  • 平野 聡
    2011 年 25 巻 5 号 p. 751-758
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:各肝切除術式において解剖学的に切除可能な最も上流側の胆管部位を「胆管分離限界点」と呼称する.具体的には肝内胆管が上流の末梢で肝動脈・門脈との癒着のために剥離が困難になる点,もしくは胆管枝が温存すべき門脈枝の陰に隠れてしまい追求することが不可能になる点が分離限界点である.切除胆管断端を癌陰性にするためにはこの分離限界点を同定し,腫瘍の先進部との関係を明らかにする必要がある.胆管の合流形態に破格が存在した場合はこの限界点も異なることがあり,注意を要する.浸潤型胆管癌では精密胆管造影における胆管壁の硬化狭窄像(tapering)で進展範囲を診断し,分離限界点と照らして切除断端を陰性化しうる切除術式を選択する.表層拡大進展例においては,その正確な術前進展度診断は困難なことが多いが,分離限界点を考慮して行う各種画像診断と胆管生検所見を総合し,切除術式を決定すべきである.
症例報告
  • 小倉 健, 瀧井 道明, 有坂 好史, 増田 大介, 桑原 宏子, 江頭 由太郎, 梅垣 英次, 樋口 和秀
    2011 年 25 巻 5 号 p. 759-767
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は50歳代後半,男性.既往に膀胱癌があり,再発なく通院中であった.経過観察目的に施行された腹部CTで胆嚢に異常を指摘され入院.発熱と,著明な炎症反応が認められた.MDCTでは胆嚢体底部から肝に連続して径80 mm大の腫瘤が認められた.FDG-PETでは腫瘤に著明な集積と,脊椎にびまん性に集積が認められた.ERCP下に施行した胆汁細胞診で扁平上皮癌が検出された.血清G-CSF値は119 pg/ml と高値で,G-CSF産生胆嚢癌を疑った.脊椎へのFDG-PETの集積はG-CSF産生による影響と判断した.全身化学療法を行ったが6カ月間の経過で永眠された.剖検では,胆嚢,肝臓を中心に,扁平上皮癌と腺癌の混在が認められ,腫瘍細胞はG-CSFが陽性であった.脊椎に腫瘍浸潤はなく,過形成性変化のみであった.以上,特徴的なFDG-PET所見を呈したG-CSF産生胆嚢癌の一剖検例を経験したので報告する.
  • 金丸 理人, 小泉 大, 佐田 尚宏
    2011 年 25 巻 5 号 p. 768-773
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は61歳,男性.発熱で近医受診し,血液検査にて肝機能障害を指摘された.そのときは自然軽快したが4カ月後に再度発熱・黄疸を認め,近医で肝機能障害を指摘された.腹部エコーでは,膵頭部腫大を認め,精査目的に当院紹介となり,緊急入院となった.ENBD造影で,下部胆管に表面不整な陰影欠損を認めた.腹部造影CTでは,下部胆管内に造影効果を認める腫瘤を認めた.画像所見,臨床所見から下部胆管癌の術前診断のもと,幽門輪温存膵頭部十二指腸切除術(D2郭清)を施行した.摘出標本の病理結果は,下部胆管内に進展した十二指腸乳頭部癌(ポリープ型,adenocarcinoma,20×11 mm,深達度od)であった.下部胆管内に進展したポリープ型の十二指腸乳頭部癌は極めてまれであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 清住 雄希, 高森 啓史, 堀野 敬, 生田 義明, 中原 修, 近本 亮, 別府 透, 猪山 賢一, 馬場 秀夫
    2011 年 25 巻 5 号 p. 774-778
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は80歳女性.1982年に胆石症に対し開腹胆嚢摘出術を施行された.2010年1月前医の精査にて中部胆管に腫瘍性病変を認め,当科紹介となった.血液検査上,胆道系酵素の上昇は認めず,腫瘍マーカーも全て基準値内であった.造影CT上,中部胆管に造影効果を有する境界明瞭な片側性の腫瘤を認めた.同腫瘤は,MRIのT2WIおよび拡散強調画像上,高信号病変として描出された.超音波内視鏡検査では,点状高エコーを有する低エコー腫瘤として描出された.FDG-PET検査では腫瘍に淡い集積を認めた.擦過細胞診では悪性所見を認めなかった.胆管癌を否定できず,肝外胆管切除を施行した.切除標本では,粘膜面は平滑で境界明瞭な充実性腫瘍であった.術後病理標本では腫瘍部に悪性細胞認めず,粘膜下に神経繊維束の密な増生を認め,断端神経腫と診断した.胆嚢摘出後の中部胆管の片側性で境界明瞭な腫瘤性病変では,胆管断端神経腫も鑑別診断として念頭に置く必要がある.
  • 長谷部 修, 越知 泰英, 成本 壮一, 大月 聡明, 保坂 典子
    2011 年 25 巻 5 号 p. 779-788
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は85歳,女性.6年前に総胆管胆嚢結石にてEST・結石除去術施行.胆嚢結石は本人の希望により放置となった.今回総胆管結石再発を疑われ入院.US・CT・MRI・EUSにて著明な胆道拡張と胆嚢底部腫瘍が疑われた.ERCP・胆道鏡では胆管内に多量の粘液貯留があり,胆嚢内腔から流出する粘液を認めた.CT・MRIでは総胆管・総肝管への腫瘍進展が疑われたが,EUS・IDUS・胆道鏡では総胆管への腫瘍進展は認めなかった.深達度ss浅層までの粘液産生胆嚢癌と診断し,拡大胆嚢摘出術を施行した.病理組織学的には深達度mpの乳頭腺癌であり,胆管内への腫瘍進展やリンパ節転移は認めず,stage Iであった.近年IPNBの概念が普及し,粘液産生胆管腫瘍の報告例は増加しているが,粘液産生胆嚢癌の報告は少ない.本例は総胆管胆嚢結石の経過観察中に緩徐に発育した腫瘍と考えられ,水平方向進展度診断にEUS・IDUS・胆道鏡が有用であった.
  • 横田 茉莉, 樋口 亮太, 太田 岳洋, 梶山 英樹, 谷澤 武久, 矢川 陽介, 植村 修一郎, 古川 徹, 山本 雅一
    2011 年 25 巻 5 号 p. 789-795
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は62歳の男性で,当院消化器内科にて非アルコール性脂肪肝炎の経過観察中であった.スクリーニングのUS,CTとEUSにて,胆嚢壁肥厚を認めた.PET-CTでも,胆嚢壁及び胆嚢床に高度集積を認めたことから,肝内直接浸潤を伴う胆嚢癌が疑われたため,手術を行った.術中迅速病理診断では胆嚢壁肥厚部と胆嚢管断端には悪性所見を認めず,胆嚢床切除にて手術を終了した.病理所見上,PET-CTで陽性を示した領域には,多数のリンパ球,好中球,形質細胞と異物型多核巨細胞を認め,肉芽腫と診断した.貴重な症例と思われたため若干の文献学的考察をふまえて報告する.
  • 松本 正成, 草塩 公彦, 宇田川 郁夫, 宮崎 勝
    2011 年 25 巻 5 号 p. 796-802
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管十二指腸側々吻合術後長期経過の後に発生した胆管過形成ポリープ・肝内胆管癌の2例を経験した.症例1は46歳,女性.胆管十二指腸側々吻合術後21年目に総胆管結石の診断にて胆管切除を施行した.吻合部より肝側の胆管に隆起性病変を認め,病理診断では過形成性ポリープの診断で,また胆管壁には広範に炎症細胞浸潤を認めた.症例2は,69歳,男性.同術後31年目に肝内胆管癌の診断にて肝切除・胆管切除を施行した.病理診断では中分化腺癌の診断であった.胆管には広範に炎症細胞浸潤および反応性に増殖する胆管上皮を認め,また非癌部門脈域にも炎症細胞浸潤が認められた.主病巣近位部の胆管粘膜ではその深部側に異型性のない増殖性変化が認められた.端側吻合に比べ側々吻合はその構造から内容の鬱滞をきたしやすく,持続する炎症で発癌リスクが増す可能性があり,その適応は慎重にすべきではないかと考えられた.
  • 伊藤 康博
    2011 年 25 巻 5 号 p. 803-808
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:腹腔鏡下胆嚢摘出術後に遅発性胆汁瘻を発症した1例を経験したので報告する.症例は48歳,女性.胆石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢管は低位合流し胆管損傷に注意し手術操作を行った.術中・術後経過良好にて退院されたが,退院後腹痛を認め入院となった.保存的治療行うも改善せず腹部CT検査にて遅発性胆汁瘻と診断した.緊急ERCPにて胆嚢管からの胆汁瘻を認めENBDを留置した.後日ENBD造影にて後区域枝からの胆汁瘻を新たに認めた.その後胆汁瘻なくENBDを抜去したが翌朝腹痛を認め腹部CT検査にて胆嚢管背側に液体貯留を認めた.ENBDを留置,1週間後にERBDへ交換して退院された.
胆道専門医講座(5)先天性胆道拡張症・膵胆管合流異常
第4回 治療
  • 石原 慎, 堀口 明彦, 宮川 秀一
    2011 年 25 巻 5 号 p. 809-814
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/30
    ジャーナル フリー
    要旨:膵・胆管合流異常(以下,合流異常)は,日本膵・胆管合流異常研究会の診断基準で,「解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の奇形をいう.」と定義されている.合流異常には,肝外胆管形態より1)胆管拡張型,2)胆管非拡張型の2つの型がある.胆管拡張型の標準術式は拡張胆管切除,肝管腸吻合術(分流手術)である.術後の合併症として肝内胆管結石形成,遺残膵内胆管結石形成などが問題となっている.胆管非拡張型の場合は,胆嚢を摘出することは合意が得られている.しかし,肝外胆管切除について統一した見解が得られていない.共通管もしくは副膵管の拡張を認める例や複雑な合流形態の例では,膵石(蛋白栓)や膵炎を合併しやすいことから,これらに対する治療について報告されている.
    本稿では,先天性胆道拡張症・合流異常に対する治療について概説した.
画像解説
feedback
Top