胆道
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27 巻, 1 号
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第48回日本胆道学会学術集会記録
会長講演
  • 滝川 一
    2013 年 27 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:胆汁酸は,胆汁中に最も多く含まれる有機成分であり,肝でコレステロールより生合成される.胆汁生成に重要な物質であるとともに,ミセル形成能により胆汁中でのコレステロールの溶存や小腸内での脂質の消化,吸収にも重要な役割を果たす.最近の研究により,胆汁酸の代謝や輸送とその制御機構が徐々に明らかとなってきた.UDCAの作用機序の1つとして近年,重炭酸の分泌を増やすbiliary bicarbonate umbrellaの考えが提唱された.胆汁うっ滞のかゆみは胆汁酸やオピオイドでなく,リゾレシチンから生成されるlysophosphatidic acidにより起こると考えられるようになってきた.FXRは胆汁酸をリガンドとする核内受容体であり,TGR5は胆汁酸をリガンドとするG蛋白共調の細胞膜受容体である.近年,これらを介して,胆汁酸が脂質,糖質およびエネルギー代謝に重要な役割を持つことが報告されており,これらの胆汁酸受容体をターゲットとした各種疾患の治療薬の開発が行われている.
日本胆道学会認定指導医養成講座
  • 良沢 昭銘, 岩野 博俊, 田場 久美子, 工藤 進英
    2013 年 27 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:低侵襲医療に対するニーズが高まるなか,胆道疾患診療においてERCP関連手技はますます不可欠のものとなっている.近年のERCPは処置が中心となっているため,胆管へのより確実な挿管が求められる.胆管挿管困難例では同じ方法を繰り返すのではなく,それぞれの状況に応じた方法で対処することが重要である.ESTは胆管結石に対する標準的治療であるばかりではなく,各種治療,診断に必須の手技となっている.ERCP関連手技は少人数で比較的短時間で安全に施行でき,劇的な効果をもたらすことができる一方で,ときには重篤な合併症が発生することもある.より安全かつ確実に行うためには,その基本についてよく理解し,手技に習熟しておく必要がある.
  • 糸井 隆夫, 土屋 貴愛, 栗原 俊夫, 石井 健太郎, 辻 修二郎
    2013 年 27 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管ステンティングおよび胆嚢ステンティングの際の注意すべきポイントについて解説した.胆管ステンティングにおいてはステントの種類と特性を理解しておくことが肝要である.特に胆管メタルステントに関しては近年様々な種類のものが登場しており,ステントの特徴(カバーの有無,編み込み型かレーザーカット型か,再収納の可否など)を理解した上でのステンティングが極めて重要である.胆嚢ステンティングにおいてはまず胆嚢内にガイドワイヤーを送り込むことが重要であり,胆嚢管の分岐パターンを理解して効率よく確実な胆嚢管挿管を心がけることが大切である.
  • 森 俊幸, 鈴木 裕, 杉山 政則
    2013 年 27 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:単孔式胆摘術とは,従来離れた4カ所から挿入されていた標準的腹腔鏡下胆摘術のポートを臍部に集中させ,体壁損傷の減少による術式の低侵襲化をはかる試みである.単孔式胆摘術は1996年にNavarraによる第一報があるが,急速に広まってきたのは2008年頃からである.ポートを近接させることにより,ポート同志,器械やスコープの相互の干渉が問題となった.この解決のために種々の器機やテクニックが開発され,またアクセスデバイスも数社から供給されるようになった.Needlescopic Surgeryは細径の鉗子を用い体壁侵襲を軽減する試みであるが,単孔式手術と利点欠点が相補的であることが知られるようになり,両者を併用する試みがReduced Port Surgeryと呼ばれるようになった.単孔式胆摘術と従来法の比較では,手術創の整容性を除いて臨床的メリットが示されていない.単孔式手術には,NOTES deviceやRobotの応用も報告され,内視鏡外科手術の近未来はこれら多様な器機を用いるReduced Port Surgeryにあると考えられている.
原著
  • 梶山 英樹, 新井田 達雄, 太田 岳洋, 山本 雅一
    2013 年 27 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:Computed Tomography(CT)による3次元構築した血管像(3DCT)の検査後に治癒切除術を受けた肝門部胆管癌及び胆嚢癌67例について,3DCTでの主にmaximum intensity projection(MIP)像での変形・狭窄をもとに肝動脈・門脈浸潤について術前診断し,病理組織学的な血管浸潤診断と比較し,3DCTの血管浸潤診断の有用性を検討した.
    動脈浸潤についてはover all accuracy:79.1%,sensitivity:91.7%,specificity:76.4%.門脈浸潤についてはover all accuracy:76.1%,sensitivity:80.0%,specificity:74.5%で病理組織学的診断と高い一致を認めた.今回の検討で3DCTのMIP像の所見を中心とした診断においても肝門部胆管癌及び胆嚢癌の血管浸潤診断の有用性が高いと考えられた.
  • 長谷部 修, 越知 泰英, 伊藤 哲也, 成本 壮一, 大月 聡明, 保坂 典子
    2013 年 27 巻 1 号 p. 70-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:EST後に発症した胆道癌6例について報告する.年齢は72歳~89歳,男性5例・女性1例,初回ESTの原疾患は総胆管結石5例・術後胆汁漏1例であり,胆嚢結石を合併していた5例中3例にEST後胆嚢摘出術が施行された.発生胆道癌は胆嚢癌3例・胆管癌2例・乳頭部癌+胆管癌1例であり,初回ESTから2年2カ月~6年6カ月後に発症していた.3例は根治切除術が施行されたが,2例は切除不能,1例は併存疾患のため非切除となった.経過観察中に総胆管結石再発1例,総胆管結石再発のない無石胆管炎3例,胆嚢管中断1例を認めた.EST後に無石胆管炎を発症した場合,胆道癌を念頭に置いた精査および経過観察をすることが重要と考えられた.
総説
  • 蒲田 敏文
    2013 年 27 巻 1 号 p. 81-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:近年MDCT(multidetector row CT)とMRIの進歩にはめざましいものがある.これにより胆道癌の画像診断の精度も向上している.MDCTは薄いスライス厚の多相ダイナミックCTが有用である.多方向の再構成画像や3D画像は進展度診断に役立つ.MRIはMRCP(MR cholangiopancreatography)に加えてT1強調像,T2強調像,steady state image,造影ダイナミックMRIなど多彩な撮像法があり,胆道癌の検出のみならず胆汁うっ滞などの二次的変化も描出できる.CTとMRIの特徴を理解し,両者を併用することでより詳細な画像診断が期待できる.
  • 大原 弘隆, 中沢 貴宏, 林 香月, 内藤 格, 宮部 勝之, 城 卓志
    2013 年 27 巻 1 号 p. 92-99
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:IgG4関連硬化性胆管炎は高齢の男性に好発し,血中IgG4値の上昇,病変局所の線維化とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤などを特徴とする原因不明の硬化性胆管炎である.自己免疫性膵炎を高率に合併し,ときに硬化性唾液腺炎,後腹膜線維症などを合併する.さまざまな胆管狭窄像を呈するため,原発性硬化性胆管炎,胆管癌,膵癌などとの鑑別を要する.特に,膵病変が明らかでなく,本症単独で発症する症例の診断は難しい.2012年3月に厚労省の研究班と胆道学会が合同で作成した「IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2012」が報告され,今後,本症の鑑別診断にはこの診断基準を用いる機会が増えていくと考えられる.治療では,多くはステロイド治療に良好に反応して軽快するが,再燃を繰り返す症例に対して海外では免疫抑制剤の併用も行われている.予後はおおむね良好であるが,肝萎縮をきたす症例も報告されており,長期予後は不明である.
症例報告
  • 川本 研一郎, 植木 敏晴, 大塚 雄一郎, 簑田 竜平, 野間 栄次郎, 光安 智子, 三上 公治, 前川 隆文, 田邉 寛, 岩下 明徳
    2013 年 27 巻 1 号 p. 100-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管内乳頭状腫瘍(Intraductal papillary neoplasm of the bile duct;IPN-B)は,かつての胆管乳頭腫/胆管乳頭腫症(biliary papilloma/biliary papillomatosis)が含まれ,拡張した肝内胆管内に乳頭状もしくは絨毛状の上皮性腫瘍の増殖を認めることが基準となっている1)2)
    症例は60歳代の女性.腹部US,CT検査では肝S4に径66 mmの単房性嚢胞があり,その内部には径36 mmの乳頭状結節を認めた.ERCでは,嚢胞と肝内胆管は交通していた.以上よりIPN-Bと診断し肝左葉切除術を施行した.切除標本では嚢胞内に乳頭状に増殖する隆起を認めた.隆起部は類円形核と好酸性な細胞質をもつ異型上皮から成り間質浸潤や卵巣様間質はなかった.背景肝に多発する小肝嚢胞を認めたが,組織学的には増生した腺管と間質の線維化がみられるbiliary hamartomaでありIPN-Bとの関連はなかった.
  • 羽田野 雅英, 串畑 史樹, 渡邊 常太, 米永 吉邦, 藤山 泰二, 高田 泰次, 竹治 みゆき, 杉田 敦郎
    2013 年 27 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は81歳男性.胆嚢腫瘤の診断で当院へ紹介された.CTでは胆嚢底部に径18 mmの広基性の隆起性病変あり,壁肥厚とともに造影効果を認め悪性が疑われ,EUSでは,隆起性病変の基部で外側高エコー層の断裂を認めた.肝床浸潤を伴う胆嚢癌を否定できず,胆摘および肝床部肝S5・S4a部分切除,肝外胆管切除,D2リンパ節郭清,胆道再建を施行した.術後経過は良好で,第12病日に退院した.切除標本では,粘膜面は平滑で境界不明瞭な隆起性病変であり,割面では胆嚢壁から肝被膜にかけて白色結節を認めた.病理組織診断では,悪性所見なく,硬結内部に壊死巣を含む類上皮肉芽腫,乾酪壊死を認め結核性肉芽腫が疑われた.Ziehl-Neelsen染色および切除標本PCR検査では結核菌は検出されなかったが,クオンティフェロン検査陽性より胆嚢結核性肉芽腫と診断した.結核既往者の胆嚢腫瘤では,胆嚢結核性肉芽腫も鑑別診断として念頭に置く必要がある.
  • 外川 明, 海保 隆, 新村 兼康, 西村 真樹, 畦元 亮作
    2013 年 27 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:十二指腸乳頭部原発腺内分泌細胞癌に術前化学療法施行後に治癒切除を施行した症例を経験した.症例は68歳女性,主訴皮膚掻痒感.黄疸と軽度の腫瘍マーカーの上昇を指摘.上部内視鏡検査にて十二指腸乳頭部に腫瘍を認め,生検にて内分泌細胞癌の診断.術前化学療法としてCPT-11+CDDP療法を2コース施行.腫瘍径はCT検査で18 mmから16 mmに縮小したが効果判定は安定.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術施行.病理組織診断:露出腫瘤型,乳頭部腺内分泌細胞癌,Synaptophysin(+),Chromogranin A(+),fCur A.化学療法効果判定Grade 1a.十二指腸乳頭部原発の腺内分泌細胞癌は,早期に肝・リンパ節転移を来たすこともあり,予後は比較的不良といわれている.化学療法の感受性判定も兼ねて術前化学療法2コース施行後,治癒切除施行.術後24カ月無再発生存中.自験例とあわせ本邦報告11例に対し文献的考察を加え報告する.
  • 菅 宏美, 藤本 佳史, 徳毛 宏則, 中光 篤志, 臺丸 裕
    2013 年 27 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は60代女性.嘔気を主訴に来院した.血液検査では黄疸と肝胆道系酵素の上昇を認めた.腹部CTでは上部胆管に早期相で強い造影効果を示す腫瘤を認めた.ERCPでは,上部から中部胆管に狭窄を来しており,その上流の胆管は著明に拡張していた.後日再検したERCPでは立ち上がりのなだらかな腫瘤影を認め,粘膜下腫瘍が疑われた.経口胆道鏡検査では腫瘤の大部分は粘膜下腫瘍の形態を示していた.以上より,上部胆管癌の粘膜下浸潤と術前診断し肝外胆管切除術を施行した.HE染色ではN/C比の高い小型の腫瘍細胞が充実性胞巣状に増殖していた.免疫染色ではchromogranin Aが陽性であり,2010年WHO分類でNeuroendocrine tumor(NET)-G2と診断した.
    胆管原発の神経内分泌腫瘍は極めて稀であり,また,術前に経口胆道鏡検査にて観察し得た症例の報告はなく,貴重と考えられた.
胆道専門医講座⑦胆道癌診療のスキルアップを目指して
第1回 胆道癌に対する化学療法
  • 奥坂 拓志, 森実 千種, 池田 公史
    2013 年 27 巻 1 号 p. 124-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:胆道癌では多くの例が診断時にすでに切除不能であり,切除可能例であっても早期に再発することが少なくない.このような症例に対しては,多くの場合化学療法が適応されてきたが,これまで大規模なランダム化比較試験がなく,延命効果についての十分なエビデンスを有する治療は確立していなかった.最近,切除不能胆道癌を対象にゲムシタビン単剤療法とゲムシタビン+シスプラチン併用療法を比較するランダム化試験が,英国では第III相試験,我が国ではランダム化第II相試験として実施され,ゲムシタビン+シスプラチン併用療法の有用性が報告され,本レジメンがグローバルスタンダードと考えられるようになっている.最近では分子標的治療薬の臨床試験も開始されており,また切除可能胆道癌に対する術後補助化学療法についても大規模な臨床試験が進行中であり,今後の展開が注目されている.
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