胆道
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31 巻, 4 号
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第52回日本胆道学会学術集会記録
日本胆道学会認定指導医養成講座4
  • 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 河合 学, 後藤 秀実
    2017 年 31 巻 4 号 p. 671-677
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    胆道癌診断におけるEUSの果たす役割は大きなものがある.中でも,EUSは胆道癌診療ガイドライン(改定第2版)の中では,診断におけるサードステップと位置づけられている.

    一方,胆道癌取扱い規約第6版は,TNM分類第7版との整合性を図り,進行度分類をUICC分類と一致するように大きく変更された.

    本稿では,胆道癌診療におけるEUSの役割を胆道癌取扱い規約第6版の中でどのように取り扱っていけば良いかについて実際の症例で示した.

    さらに,EUS-FNAによって行われる胆道癌の診断は,現時点では安易に行うべきではないということに言及した.

原著
  • 坂東 正, 出村 しおり, 渋谷 和人, 澤田 成郎
    2017 年 31 巻 4 号 p. 678-682
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    急性期病院はDPCによる包括評価が必須で各施設は独自に対応する必要がある.腹腔鏡下胆囊摘出術における術者の違いがDPCに及ぼす影響をクリニカルパス使用例を対象として検討した.胆道学会認定指導医でかつ肝胆膵外科学会高度技能指導医が術者として施行した指導医群と,後期研修医が施行した研修医群に分け比較した.両群の術後経過に,DPCに影響を与える様な違いは認めなかった.入院医療費は53395点で,仮にDPCではなく従来の出来高として算定した場合の54983点に比し約1600点減収していた.研修医群の入院医療費は54033点と増収し,内訳をみると,指導医群のDPC算定部分が研修医群にくらべ10点の減であったのに比し,出来高部分が628点も減収しており,研修医群の増点主因となっていた.手術時間に左右される麻酔料などが研修医群で増加する事が影響していると考えられた.腹腔鏡下胆囊摘出術のDPCは術者別に収益に差が生じる.

  • 高橋 幸治, 露口 利夫, 杉山 晴俊, 熊谷 純一郎, 中村 昌人
    2017 年 31 巻 4 号 p. 683-690
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    【目的】術後再建腸管例におけるダブルバルーン小腸内視鏡を用いた胆道処置について,経乳頭処置例と経胆管消化管吻合処置例の偶発症の種類および頻度を比較検討する.【方法】2012年1月から2015年12月までの4年間にダブルバルーン小腸内視鏡を用いて胆道処置を試みたRoux-en-Y再建例および胆管消化管吻合術後例を後方視的に調査した.【結果】対象70例中,目的部位未到達あるいは胆管処置不成功の15例に偶発症は認めなかった.胆道処置に成功した55例の検討では,経乳頭群34例,経胆管消化管吻合群21例であり,偶発症発症率はそれぞれ20.6%,19.0%であり,内訳は膵炎11.8%/4.8%,胆管炎8.8%/14.3%であった.胆管炎は胆管狭窄や吻合部狭窄に対する治療例ではみられなかった.【結論】経乳頭群と経胆管消化管吻合群で偶発症発症率に有意差はみられなかった.膵炎は経乳頭例だけでなく経胆管消化管吻合例でも起こり得ること,経胆管消化管吻合例では狭窄がなくとも胆管炎が発症することに留意する必要がある.

総説
  • 大塚 将之, 清水 宏明, 加藤 厚, 宮崎 勝
    2017 年 31 巻 4 号 p. 691-696
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    胆道癌に対して長期生存が期待できる最も有効な治療法は外科切除であるが,切除不能の進行癌の状態で診断される症例も少なくない.そのような切除不能進行胆道癌に対しては,近年の化学療法剤の進歩により化学療法や化学放射線療法が広く適応とされるようになった.その結果切除可能となりconversion surgeryとして外科切除をしえたとする報告が散見されるようになった.特に,肝内胆管癌,胆嚢癌ではconversion surgery後の明らかな予後延長効果が示されており,今後の重要な治療戦略の一つとなりうると考えられる.一方,切除不能の定義,conversionのタイミング,分子標的薬を含む最適な化学療法剤およびレジメンの開発,個々の症例における感受性の評価など解決されねばならない課題も多く認められる.

  • 安藤 久實
    2017 年 31 巻 4 号 p. 697-706
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    先天性胆道拡張症に対する分類としては戸谷分類が世界的に認められているが,これは治療法に結びついた分類ではなく,また,成人膵・胆管合流異常症例の34.0%を占める胆管拡張を伴わない膵・胆管合流異常は含まれていない.一方,先天性胆道拡張症に対する分流手術後に発生した胆道癌107例を集計した結果,術後平均12.0年,2.0%の発生率であり,膵内胆管の遺残や胆管狭窄の不十分な対処が発癌の危険因子であった.それ故,膵内胆管の完全切除と肝管狭窄の除去は術後合併症の予防に必要な操作である.そこで,膵・胆管合流異常症例に対し,総胆管の拡張形態から嚢胞型,紡錘型,不完全型,非拡張型に分け,これに肝管狭窄の有無を加え,拡張形態と治療法とを関連づけた膵・胆管合流異常に対する新しい型分類を作成した.

症例報告
  • 五十嵐 亮, 入澤 篤志, 澁川 悟朗, 佐藤 愛, 山部 茜子, 藤澤 真理子, 阿部 洋子, 牧 匠, 添田 暢俊, 齋藤 拓朗
    2017 年 31 巻 4 号 p. 707-713
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    胆嚢胆管瘻は稀であり,術前診断は困難であるとされている.症例は70代女性.約30年前より胆嚢結石が指摘されていた.20XX年に胆管結石に対してERCP・切石術を施行された.2年後に経過観察目的に施行された腹部CTにて胆嚢腫瘍が疑われ,精査加療目的に当院を紹介され受診した.腹部造影CTでは胆嚢頚部に嵌頓する結石を認め,ERCPにて上部胆管の片側性陰影欠損と狭窄像を認めた.経口胆道鏡検査にて狭窄部の直視下観察を行い,結石の露出を認めたため,胆嚢胆管瘻を伴うMirizzi症候群(Corlette I型,Csendes III型)の診断で外科手術を施行した.胆嚢胆管瘻を伴うMirizzi症候群の診断や細分類は単一画像での評価が困難なことが多く,経口胆道鏡検査を含めた総合的な画像診断が有用である.

  • 須藤 亜希子, 木村 憲央, 石戸 圭之輔, 工藤 大輔, 袴田 健一, 諸橋 聡子, 鬼島 宏
    2017 年 31 巻 4 号 p. 714-722
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    75歳,女性.上部内視鏡検査にて十二指腸乳頭部に腫瘍性病変を認め,生検で高分化型管状腺癌の診断を得た.下部胆管癌の診断で残膵全摘術を施行した.病理組織学的検査で,十二指腸乳頭部にneuroendocrine carcinoma(NEC),small cell typeと腺癌の混在を認めた.腫瘍は下部胆管の内腔を占拠するように発育するとともに,腺癌成分は膵管に沿って上皮内進展を示していた.以上より,十二指腸乳頭部原発mixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)と診断した.術後2カ月で多発肝転移をきたし,術後8カ月で死亡した.MANECは予後不良だが,標準術式や化学療法については十分に解析されていない.若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 鈴木 修司, 梶山 英樹, 丸山 常彦, 下田 貢, 松本 暢彦, 森下 由起雄
    2017 年 31 巻 4 号 p. 723-730
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    症例は,58歳女性.体重減少を主訴に当院消化器内科受診し,CT検査にて胆石症,胆嚢壁肥厚指摘され,経過観察となった.1年1カ月後定期受診にてCT検査,US検査にて胆嚢腫瘍を疑う不整な壁肥厚・十二指腸圧排の所見を認め,当科紹介となった.精査にて胆嚢癌・十二指腸浸潤の診断にて,肝S4下S5切除+亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理診断にて扁平上皮成分と腺癌成分が混在しながら浸潤を来し,両成分の移行も見られた.また腺癌成分から移行する形で紡錘形細胞を主体とする肉腫様変化を伴った腺扁平上皮癌,T3a,N1,M1(PER)Stage IVBであった.胆嚢腺扁平上皮癌は比較的稀で,予後が悪いことが知られている.本症例は肉眼的には認めなかったが,膵頭後面リンパ節周囲にわずかに腹膜播種を認め,術中腹腔洗浄細胞診陽性であり,十二指腸浸潤を認めていた.若干の文献的考察を含め,肉腫様変化を伴った胆嚢腺扁平上皮癌の一例につき報告する.

  • 山宮 知, 北村 勝哉, 石井 優, 三井 佑太, 野本 朋宏, 吉田 仁
    2017 年 31 巻 4 号 p. 731-736
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    術後再建腸管の胆管結石症に対する内視鏡的治療は,解剖学的に困難なことがある.近年,内視鏡技術の進歩により,小腸内視鏡を使用した胆管結石除去術やEUSガイド下順行性治療の有用性が報告されているが,手技難易度が高く,手技成功率や安全性に関して課題が残る.今回,当施設において胆管炎合併胆管結石症に対して経皮経肝的順行性胆管結石除去術を施行した術後再建腸管の3例を報告する.急性胆管炎に対して,抗菌薬による保存的加療にて経過観察したが,胆管炎は軽快せず,胆道ドレナージを要した.USガイド下に拡張胆管よりPTBDを施行し,胆管炎軽快後に経皮経肝的順行性胆管結石除去術を施行した.全症例において,胆管結石を偶発症なく,完全に除去し得た.以上より,内視鏡的治療困難な術後再建腸管の胆管炎合併胆管結石症に対する経皮経肝的順行性胆管結石除去術は,有用な救済治療の一つと考えられる.

  • 高木 哲彦, 大場 範行, 金本 秀行, 高橋 道郎, 京田 有介, 川口 真矢, 室 博之
    2017 年 31 巻 4 号 p. 737-744
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    症例は86歳の女性で,右季肋部痛を主訴に当院救急外来を受診した.胆嚢内に径40mmの腫瘤性病変が指摘された.胆嚢癌と診断し,拡大胆嚢摘出術およびリンパ節郭清(#12b,c)を施行した.病理組織学的診断は,胆嚢扁平上皮癌T3aN0M0 Stage IIIA,R0切除であった.術後7年8カ月後に他病死され,その際に剖検が施行されたが胆嚢癌の再発は認めなかった.

    胆嚢癌において,扁平上皮癌はまれな組織型である.その特徴は,腫瘤形成型発育形態をとり,隣接臓器浸潤をきたしやすく,予後は一般に不良とされている.今回,切除により長期予後が得られた胆嚢扁平上皮癌を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 細村 直弘, 川井田 博充, 雨宮 秀武, 深澤 光晴, 佐藤 公, 望月 邦夫, 藤井 秀樹
    2017 年 31 巻 4 号 p. 745-751
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    顆粒細胞腫は全身に発生しうる良性腫瘍であるが,胆道での発生は極めて稀である.今回,著者らは胆嚢管に発生した顆粒細胞腫を経験したので報告する.症例は58歳の女性.健診の腹部超音波検査で胆嚢の腫大を認め,精査目的のCTで胆嚢管壁の肥厚を認めたため当院紹介受診となった.来院時,右季肋部に3cm大の圧痛を認めない卵型腫瘤を触知した.腹部超音波検査で三管合流部近傍の胆嚢管内に径8mm大の高エコー結節を認めた.腹部単純CTで膵実質と等濃度の胆嚢管壁肥厚を認め,造影CTでは漸増性に濃染する境界明瞭な腫瘤として描出された.胆嚢管癌を否定できないため,開腹胆嚢摘出術を施行した.摘出標本で胆嚢管に黄色腫瘤を認め,術中迅速病理診断で良性間葉系腫瘍と診断した.永久病理診断で顆粒細胞腫と診断され,組織学的に悪性所見は認めなかった.著者らが検索しえた限り,自験例は胆道顆粒細胞腫として本邦で6例目の報告である.

  • 赤須 玄, 田口 順
    2017 年 31 巻 4 号 p. 752-758
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    症例は74歳女性.上腹部痛を主訴に近医を受診.腹部超音波検査で総胆管内のstrong echoと総胆管・肝内胆管の拡張を指摘され,精査加療目的で当院紹介受診となった.造影CT検査にて下部胆管に淡い造影効果を有する腫瘤性病変を2カ所に認めた.ERCP時の生検にてadenocarcinomaと診断されたため,下部胆管癌の診断にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織所見では,2病変はいずれも高分化な乳頭腺癌であり,深達度fmの早期胆管癌であった.WHOの組織分類に準じ,胆管内乳頭状腫瘍(intraductal papillary neoplasm of the bile duct:IPNB)と診断された.2病変間には低乳頭状構築を示す粘膜が認められたが,明らかな腫瘍の連続性とする異型はみられなかったため同時多発性IPNBと判断された.IPNBの同時性多発例の報告は少なく非常に稀な病態と考えられたため,文献的考察を加え報告する.

胆道専門医講座 ⑪胆道癌取扱い規約 第6版
第3回 胆道癌取扱い規約第6版における胆管癌分類
  • 江畑 智希, 横山 幸浩, 菅原 元, 伊神 剛, 水野 隆史, 山口 淳平, 尾上 俊介, 梛野 正人
    2017 年 31 巻 4 号 p. 759-764
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    胆道癌取扱い規約は2013年に改訂され,第6版になった.今回の改訂の特徴は,本邦独自のTNM分類と病期分類を廃し,UICCに一致させたことである.肝外胆管癌は肝門部領域胆管癌と遠位胆管癌に分離され,前者は肝門部領域の胆管に主座のある胆管癌と定義され,肝腫瘤を形成する胆管癌も含まれるようになった.本稿では,新規約におけるTNM分類と病期分類を解説する.しかし,世界共通のステージングシステムであるUICCは2017年に8版に改訂されている.すでに本邦取扱い規約は古い内容となったため,早急な改訂が望まれる.

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