胆道
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33 巻, 1 号
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第54回日本胆道学会学術集会記録
会長講演
  • 露口 利夫
    2019 年 33 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    総胆管結石症に対して内視鏡的治療を行った長期コホート研究により有石胆嚢,胆嚢摘出術既往,pneumobiliaなどが胆管結石再発の危険因子であることを明らかにしてきた.しかし,胆石症は糖尿病や脂質異常症を背景に有する疾患であり,胆石コホートの最終死因は心臓血管障害や他臓器癌によるものが多数を占めていた.従って胆石治療だけに焦点を置くのではなく,長期予後を見据えた食事・運動療法の指導介入を行うべきである.本稿では会長講演の内容および学術集会に附随して開催した胆石症市民公開講座についても述べた.

日本胆道学会認定指導医養成講座
  • 中井 陽介, 白田 龍之介, 斉藤 圭, 斉藤 友隆, 高原 楠昊, 木暮 宏史
    2019 年 33 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    胆道疾患における内視鏡診断・治療は,ERCPを中心に行われてきたが,近年ではEUSや管腔内超音波検査(IDUS)が果たす役割も重要となっている.良性疾患として最も多い胆管結石の診断能は,CT,MRCPと比較しても,EUSが優れていることが報告されている.胆道癌では,ERCPと同時に行う検査として,IDUSの有用性に加えて,病理診断法としてEUS-FNAの有用性の報告も増えている.胆道疾患に対するEUSを用いた治療は,現時点では胆道ドレナージ(EUS-BD)が主なものである.EUS-BDは,当初十二指腸乳頭へのアクセス不能あるいは胆管挿管不能といったERCPを用いた経乳頭的ドレナージ不成功例が適応とされてきたが,近年では経乳頭的ドレナージ可能な症例においても初回ドレナージ法としてのEUS-BDの研究が多く報告され,また専用デバイスの開発も進んでおり,今後ますます発展が期待されている.

  • 西野 隆義
    2019 年 33 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    IgG4硬化性胆管炎(IgG4-SC)はIgG4関連疾患の胆道病変と考えられている.診断は画像所見,高IgG4血症,胆管外のIgG4関連疾患の存在および胆管壁の病理組織学所見に基づくIgG4-SC臨床診断基準2012で可能である.IgG4-SCは時に原発性硬化性胆管炎(PSC)あるいは胆管癌との鑑別診断が困難な場合がある.最近IgG4-SCの診療ガイドラインが作成された.胆管像分類は鑑別診断に有用である.下部胆管狭窄では胆管癌および膵癌を鑑別する.肝門部領域の狭窄を示す場合には,PSC,胆管癌および濾胞性胆管炎を鑑別する.治療はステロイド治療が標準治療であり,経口プレドニゾロン0.6mg/kg/日を2~4週間投与後漸減する.ほとんどの場合ステロイド治療が奏功するが,ステロイド治療後胆管像に程度の差があるが狭窄が残存することもある.予後はおおむね良好と考えられるが,長期予後は不明である.

  • 河上 洋
    2019 年 33 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    悪性胆道閉塞に対する経乳頭的胆道ドレナージを各種ガイドラインで検討した.

    切除例に対しては,膵癌の場合は抜去可能なcoveredタイプの金属ステントを留置する例が多くなっている.胆道癌の場合は経鼻胆道ドレナージによる減黄が第一選択である.切除不能例に対する胆道ドレナージは胆道閉塞の部位を問わず,質の高い無作為化比較試験により金属ステントを留置することが第一選択として推奨される.肝門部領域胆管閉塞は片葉あるいは両葉ドレナージ,両葉ドレナージのstent-in-stent法あるいはside-by-side(SBS)法,SBS法でステント下端を揃えるべきか,同時展開(simultaneously placement)あるいは1本ずつの留置(one-by-one placement)が良いのか,が未解決である.遠位胆管閉塞はcoveredタイプの金属ステントを留置することが推奨される.

  • 佐々木 隆, 尾阪 将人, 笹平 直樹
    2019 年 33 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    胆道癌に対しては外科切除が唯一の根治治療ではあるが,切除不能例や術後再発例も多く存在し,化学療法の果たす役割は大きい.現在標準的な一次治療はgemcitabine+cisplatin併用療法であるが,さらなる治療成績向上を目指した治療法の開発が進められている.術後補助化学療法に関しても大規模臨床試験が進められており,徐々にエビデンスが蓄積されてきている.一方で術前治療やconversion surgeryについては,様々な試みがされているもののまだエビデンスが十分とは言えず,今後の課題となっている.なお従来の殺細胞性抗癌剤とは異なるアプローチとして,分子標的薬を用いたprecision medicineと免疫チェックポイント阻害剤に代表される免疫治療には大きな期待が寄せられている.このような様々なアプローチにより,胆道癌に対する内科治療の成績が向上してくることが期待される.

  • 清水 宏明, 細川 勇, 山崎 将人, 藤野 真史, 幸田 圭史
    2019 年 33 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    肝胆道領域における局所解剖の難しさは肝動脈,胆管の分岐・合流形態が様々であり,走行の変異が多いこと,さらに門脈に対しての三次元的な位置関係を把握しなければならないことにある.胆管癌手術の際に知っておくべき解剖学的破格として胆管系では,右後区域胆管枝の南回り(Infraportal type),肝動脈系では,右後区域肝動脈の北回り(Supraportal type)は良く知られている.しかしながら,非常に希な破格であっても胆道癌手術においてそれが安全性・根治性にまで影響を与え,術後に重大な合併症を引き起こす可能性があれば,術前の画像診断にて見落とさないように注意しておかなければならない.胆道癌の各術式においてその解剖学的破格のもつ意義を十分に理解した上で,胆道外科医は,症例ごとにCTから構築した立体解剖を詳細に検討し,術前に綿密な手術シミュレーションをしておくことが重要なポイントである.

  • 若井 俊文, 坂田 純, 三浦 宏平, 堅田 朋大, 廣瀬 雄己, 滝沢 一泰
    2019 年 33 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    十二指腸乳頭部癌は膵頭十二指腸切除術が標準的治療であり,胆道癌の中で最もR0切除率が高く,治療成績は比較的良好である.粘膜内に留まりOddi筋に達しない癌はリンパ節転移をきたす可能性が非常に低く,理論的には局所的乳頭部切除術が適応可能である.しかし,術前画像診断では癌がOddi筋に達するか否かを正確に診断することは困難であり,基本的には十二指腸乳頭部癌に対しては縮小手術を適応するべきではない.生検で腺腫と診断された場合も局所的乳頭部切除術が適応可能だが,深部に癌を認める可能性もあり,術後の病理学的検索が必須である.膵浸潤は十二指腸乳頭部癌の重要な予後因子であり,癌が膵実質におよぶと神経(周囲)浸潤を高率に認め,浸潤性膵管癌と同様の生物学的悪性度を有するようになる.リンパ節転移も強力な予後因子であり,リンパ節転移個数(0個,1~3個,≥ 4個)は本疾患の予後を良好に層別化する.

  • 蒲田 敏文
    2019 年 33 巻 1 号 p. 60-68
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    通常の胆汁はMRIのT1強調像では低信号を呈するが,胆嚢内で濃縮するとT1強調像で高信号を呈するようになる.また,濃縮胆汁はMRCPでは信号が低下するので,胆嚢の評価が困難となる場合がある.肝内胆管閉塞等で胆汁がうっ滞した肝区域はT1強調像で区域性に高信号を呈する.石灰化の乏しい肝内結石の診断は超音波やCTでは難しいが,ビリルビンカルシウム結石が多い肝内結石はT1強調像で高信号を呈することが多いので,肝内結石の診断にMRIは有用である.急性胆管炎ではダイナミックCTやダイナミックMRIの動脈相で肝実質に一過性の不均一濃染が出現するのが特徴的である.その他胆管壁肥厚濃染,MRIのT2強調像での門脈周囲高信号,拡散強調像での不均一な肝実質の高信号域などの所見も認められる.

  • 杉山 晴俊, 露口 利夫, 酒井 裕司, 三方 林太郎, 安井 伸, 加藤 直也
    2019 年 33 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    胆道疾患の診断と治療において,選択的胆管挿管は最も重要な手技の一つであるが,経験豊富な術者にとっても胆管挿管困難な症例は存在する.胆管挿管法のトレーニングにおいてはまず安全性が重視される.初学者は指導医の監督下にまず助手を務め,可能であればシミュレータでの研鑽を積むとよい.さらに実際の患者に臨む時には戦略を明確にしておく必要がある.まず意図しない膵管挿管がある場合にはワイヤーを留置してから2つの方法で胆管挿管を目指すことができる.膵管ガイドワイヤー留置法,経膵管口プレカット法である.いずれも膵炎予防のために自然脱落型膵管ステントを留置できる.膵管挿管が得られない場合には針状メスによるプレカットが選択できる.指導医としては,自らが適切に後進の指導を行えているかどうかも検証すべきで,それぞれの方法に習熟し,ひとつの方法に執着することなく対応する必要がある.

原著
  • 横田 祐貴, 富丸 慶人, 野口 幸蔵, 堂野 恵三
    2019 年 33 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    【背景】当院における上腹部手術既往を有する症例に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)の手術成績を検討したので報告する.【対象・方法】上腹部手術既往を有するLC施行例48症例を対象とし,手術成績を検討した.【結果】既往の上腹部手術は胃切除術33例,結腸切除術3例,肝外傷手術3例,その他9例であった.原疾患は胆石症39例,急性胆嚢炎6例,胆嚢ポリープ3例であった.開腹移行は8例(16.7%)に認められ,その理由は癒着であった.平均出血量は41ml,手術時間は111分で,Clavien-Dindo分類Grade III以上の術後合併症は2例(4.2%)に認められ,術後在院日数は6日であった.【結語】上腹部手術既往を有する症例におけるLCの手術成績を明らかにした.この成績は,上腹部手術既往のない症例と比較すると,術中出血量,開腹移行率は高いものの,許容できる成績と考えられた.

  • 阿部 紘大, 鈴木 慶一
    2019 年 33 巻 1 号 p. 92-100
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    Tokyo Guideline 18で推奨されている中等症以上の急性胆嚢炎の治療戦略に則り,急性胆嚢炎に対するPTGBDの功罪について考察した.2012年1月から2017年12月までに当院で治療された146例を対象に,重症度に応じてPTGBD群と非施行群とに分け比較検討した.146例のうち中等症61例,重症18例だった.PTGBDは中等症で25例,重症で9例に施行された.中等症においてPTGBD群は手術成績や退院可能までの期間では有意差は無かったが,PTGBD群のうち手術しなかった13例は,手術群よりも退院可能,食事開始,炎症改善日数が長かった.重症例では手術施行例は10例あり,PTGBD群は全例腹腔鏡で施行され出血量が少なく転帰も良好だった.一方PTGBD非施行群で手術を受けた5例中4例が開腹手術となり3例は術中輸血を要した.中等症の場合,高リスク患者ではPTGBDにより安全に手術できると考えられるが,超高齢でPS不良の場合,PTGBDはむしろ長期入院となる傾向があるため,慎重な患者選択が必要である.重症の場合,PTGBDにより低侵襲で安全に手術できる可能性が示唆された.

総説
  • 安田 一朗, 長田 巧平, 小林 才人
    2019 年 33 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    Endoscopic papillary large balloon dilation(EPLBD)は,大結石や多発結石を効率よく簡便に治療できる手技として近年急速に普及した治療法である.当初,内視鏡的乳頭括約筋切開術(Endoscopic sphincterotomy:EST)での結石除去不成功例に適用されていた経緯から,バルーンで拡張する前にESTを付加する方法が標準的な手技とされてきたが,最近ではESTを付加しない方法での治療成績も数多く報告されている.これまでの報告からは,ESTの付加に関わらず治療の有効性および安全性はほぼ同等であることが示唆されたが,質の高い比較対照試験はまだ少なく,本当にESTが不要かどうかを結論付けるには,さらなる検討が必要である.一方で,ESTの既往のある再発結石例やESTが難しい術後再建腸管例においては,敢えてESTを付加する必要はないと考えられる.

  • 糸井 隆夫
    2019 年 33 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(endoscopic papillary large balloon dilation;EPLBD)は近年普及している総胆管結石に対する治療法の一つである.

    EPLBDを安全かつ確実に実施するためには,基本的な指針が必要である.日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「EPLBD診療ガイドライン」を作成した.本ガイドラインは,「EST診療ガイドライン」に準じて,定義と適応,手技,特殊な症例への対処,偶発症,治療成績,術後経過観察の6つの項目について計21個のClinical Question(CQ)を作成し,各CQに対するステートメントと解説文という形で構成されている.本稿では「EST診療ガイドライン」の要点について述べる.

症例報告
  • 長尾 美奈, 須藤 広誠, 門田 球一, 岡野 圭一, 鈴木 康之
    2019 年 33 巻 1 号 p. 114-120
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性.倦怠感と褐色尿を主訴に近医を受診した.血液検査で総ビリルビンの上昇と肝胆道系酵素の上昇を認め,CTでは三管合流部に及ぶ遠位胆管狭窄と壁肥厚を認めた.閉塞性黄疸の治療および胆管病変の精査目的に当院へ紹介となった.閉塞性黄疸に対しては胆管ステントを留置し減黄を行った.胆管病変に関してはERCで遠位胆管から三管合流部に造影欠損を認め,生検では腺癌と診断された.EUSやERCで十二指腸乳頭部も観察されていたが,特に悪性所見等の指摘はなかった.遠位胆管癌(Bd-Bp)の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見では胆管に低分化型腺癌の像を認め,また十二指腸乳頭部に高分化型腺癌の像を認めた.両病変間の胆管上皮にはBilIN1-2に相当する異型上皮を認めた.組織型が異なる点や免疫染色の相違から遠位胆管癌と十二指腸乳頭部癌の重複癌と診断した.

  • 兼平 卓, 岡本 友好, 安田 淳吾, 藤原 佑樹, 二川 康郎, 矢永 勝彦
    2019 年 33 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    腎細胞癌胆囊転移はまれな疾患であり,とくに胆囊への単独転移の報告は少ない.症例は65歳,男性.当院泌尿器外来通院中の定期的な腹部エコー検査で胆囊腫瘍を指摘され,当科紹介された.既往歴で6年前に右腎癌に対し,右腎摘出術を施行されている.腹部超音波検査,CT,MRI,超音波内視鏡検査にて胆囊頚部にφ10mm大の円形腫瘤を認め,悪性腫瘍の否定ができず手術となった.手術は開腹にて施行し,術中超音波検査にて明らかな肝浸潤は認めず,迅速診断にて腺癌が否定されたため胆囊床切除を含む拡大胆囊摘出術を施行した.病理組織学的所見で既往の右腎癌と類似しており,腎細胞癌(淡明細胞型)胆囊転移の診断となった.腎細胞癌の胆囊への単独転移はきわめてまれであるが,腎癌の既往のある胆囊腫瘍では本症を考慮し,積極的な切除により良好な予後が期待されると考えられた.

  • 佐藤 文哉, 渡邊 真哉, 會津 恵司, 三竹 泰弘, 山口 竜三, 立山 尚
    2019 年 33 巻 1 号 p. 127-133
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    症例は53歳女性.下腹部痛を主訴に受診.CTで,肝右葉に径7cm大の肝門に及ぶ腫瘤を認め,内部には動脈枝・門脈枝が貫通していた.肝生検では腺癌の所見で,肝内胆管癌と診断し,拡大肝右葉切除・尾状葉切除・肝外胆管切除術を施行した.腫瘍は白色充実性で内部を貫通する門脈域の構造は保たれていた.術後病理組織検査では,間質に線維化を伴い,核の腫大した細胞が比較的細く不規則に分岐・癒合する腺管を形成しており,細胆管細胞癌と診断した.術後7カ月目に胆管空腸吻合部に狭窄をきたし,PTBDを施行.良性狭窄と診断し,PTBDカテーテルを内瘻ステントとして留置し,吻合部の拡張が得られた後,抜去した.術後7年6カ月の現在まで長期無再発生存中であり,胆管空腸吻合の再狭窄も来していない.本症例は,腫瘍が肝門に及び,胆道再建を伴う葉切除を要したにもかかわらず長期生存を得ることができた.

  • 森 治樹, 飯田 洋也, 前平 博充, 松原 亜希子, 谷 眞至
    2019 年 33 巻 1 号 p. 134-139
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    症例は81歳,男性.総胆管結石に伴う胆管炎に対して施行されたERCP検査で遠位胆管に狭窄を認め,胆管生検は上皮内癌(BilIN-3)であった.CT検査では遠位胆管に全周性の造影効果を伴う壁肥厚を認め,右肝動脈と胆管の交差部まで胆管壁の造影効果を認めた.遠位胆管癌の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本では遠位胆管に白色調隆起性病変を認めた.病理組織学的には,粘膜内では杯細胞を伴う管状構造,腫瘍浸潤部で豊富な細胞外粘液をもつ小胞巣状の腫瘍細胞を認め,粘液癌成分が優勢であったため,遠位胆管原発の胆管粘液癌と診断した.また広範に高度神経周囲浸潤を伴っていた.本症例は広範な神経周囲浸潤を特徴とする遠位胆管原発粘液癌であった.

胆道専門医講座 急性胆道炎の診断と治療
  • 露口 利夫, 杉山 晴俊, 中村 昌人, 酒井 裕司, 三方 林太郎, 加藤 直也
    2019 年 33 巻 1 号 p. 140-146
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    急性胆管炎に対する治療法を「Tokyo Guidelines 2018」をもとにドレナージ方法とそのタイミングについて述べた.胆管炎診断基準,重症度判定基準はTG13の検証によりTG18でも同じ基準が採用された.急性胆管炎の多くは胆管結石によるものであり内視鏡的経乳頭的ドレナージが推奨される.新たな手技としてバルーン小腸内視鏡による胆管ドレナージ,超音波内視鏡ガイド下胆管ドレナージなどがあげられるが,先進施設で施行されるべきである.

  • 山本 智支, 乾 和郎, 片野 義明, 三好 広尚, 小林 隆, 松浦 弘尚
    2019 年 33 巻 1 号 p. 147-155
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    急性胆嚢炎は胆嚢に生じた急性の炎症性疾患と定義され,原因の85~95%は胆嚢結石である.リンパ管のうっ滞・拡張を認める浮腫性胆嚢炎,壊死出血を認める壊疽性胆嚢炎,膿瘍化してきた化膿性胆嚢炎に分けられる.診断は,臨床兆候(Murphy's signと右上腹部の腫瘤触知・自発痛・圧痛),血液検査,画像所見により行う.白血球異常,CRPの上昇などを認め,ビリルビン,肝・胆道系酵素の上昇は軽度見られることが多い.腹部USでは,胆嚢腫大,壁肥厚,結石嵌頓,デブリ,sonographic Murphy's signのほか,胆嚢周囲浸出液貯留,胆嚢壁hypoechoic layer,不整な多層構造を呈する低エコー帯,ドプラシグナルが診断に有効である.急性胆嚢炎の診断が困難な場合や胆嚢穿孔,胆嚢周囲膿瘍などの合併症が疑われた際には,ダイナミックCTが有用である.

  • 三浦 文彦, 和田 慶太, 澁谷 誠, 高橋 邦彦, 佐野 圭二
    2019 年 33 巻 1 号 p. 156-163
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー

    2018年に発刊された急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン第3版での改訂部分を中心に急性胆嚢炎の治療について述べた.診療フローチャートは重症度に加えて手術リスクに基づいた診療指針となった.軽症例・中等症例では,低リスクの場合(中等症では熟練した内視鏡外科医がいれば)早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy;LC)が第一選択となる.手術リスクが高いと判断された場合は,抗菌薬投与または胆嚢ドレナージにて炎症が軽快後にLCの適応について検討する.重症例については,臓器サポートと緊急胆嚢ドレナージ後の待機的LCが推奨されていたが,臓器障害が治療反応性臓器障害で初期治療と昇圧薬投与に反応が良好で手術リスクが低い場合は早期LCの適応とするという改訂がなされた.

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