胆道
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33 巻, 2 号
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報告(secondary publication)
  • 神澤 輝実, 中沢 貴宏, 田妻 進, 全 陽, 田中 篤, 大原 弘隆, 村木 崇, 乾 和郎, 井上 大, 西野 隆義, 内藤 格, 糸 ...
    2019 年 33 巻 2 号 p. 169-210
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    IgG4関連硬化性胆管炎は,高率に自己免疫性膵炎を合併する胆管炎で,現在はIgG4関連疾患の胆管病変と考えられている.IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準が2012年に策定されたが,原発性硬化性胆管炎や胆管癌との鑑別はしばしば困難である.ほとんどの関連文献のエビデンスレベルは低いため(C以下),コンセンサスに基づくガイドラインを作成した.本ガイドラインの作成組織として,ガイドライン作成委員会,modified Delphi法による専門家委員会と評価委員会の3つの委員会を設けた.診断と治療に関する18個のクリニカルクエスチョンと各クリニカルステートメントを作成した.各ステートメントの推奨度は,modified Delphi法により決定した.本ガイドラインでは,IgG4関連硬化性胆管炎の正確な診断法と安全で適切な治療法を解説した.

原著
  • 尾花 優一, 多賀谷 信美, 土屋 宗一, 新井 俊文
    2019 年 33 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    最近の1年間に人間ドックおよび腹部症状のない腹部超音波検査を施行された2265名を対象に,胆嚢摘出既往の有無による肝外胆管径の年齢による変化について,上限値の設定も含め検討した.胆嚢摘出術は69例に施行されていた.腹部超音波検査にて描出された肝外胆管の前壁の立ち上がりから後壁の立ち上がりまでを胆管径として計測した.年代別の平均肝外胆管径は,全体および胆嚢摘出既往例を除いた場合ともに,10歳,90歳および100歳台を除き,経年的に増加を示した.性別でも男性では10歳台,女性では90歳および100歳台を除き,経年的に増加を示した.胆嚢摘出術既往例では,経年的な変化は認められなかったが,非既往例より各年代において拡張を示した.肝外胆管径は性別に関係なく経年的に増加するため,胆嚢摘出術の既往の有無を考慮した年代別の基準値を設け,適正な拡張の有無の判断をすべきである.

  • 栗山 直久, 臼井 正信, 加藤 宏之, 村田 泰洋, 安積 良紀, 岸和田 昌之, 水野 修吾, 伊佐地 秀司
    2019 年 33 巻 2 号 p. 216-223
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    血管合併切除再建(VR)を伴う肝門部領域胆管癌(PHC)の手術成績から,VRの意義について検討を行った.対象は当科で根治切除を施行したPHC81例で,非血管合併切除41例(non-VR群),門脈合併切除28例(VR-PV群),肝動脈または動門脈合併切除12例(VR-HA群)の3群に分け検討した.術前CA19-9値は,non-VR群に比し,VR両群で有意に高値であった.術後合併症,在院死ともに3群間で有意差を認めなかった.病理診断では,VR両群で有意に進行例が多かったが,リンパ節転移率,R0切除率ともに3群間で有意差を認めなかった.疾患特異的5年生存率は,non-VR群42%,VR-PV群29%,VR-HA群25%と,VR両群で不良な傾向を認めたが,局所進行のため非切除(遠隔転移例を除く)となった症例(5%)に比べて有意に良好であり,血管合併切除をする意義はあると考えられる.

総説
  • 肱岡 範, 清水 泰博, 原 和生, 島田 和明, 奥坂 拓志
    2019 年 33 巻 2 号 p. 224-233
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    超音波内視鏡(EUS)は,他の画像診断に比べ空間分解能が優れており,胆嚢病変の存在診断,胆嚢癌を疑う場合の深逹度診断あるいは進展度診断などにドプラモードや超音波造影剤を使用した精密検査が可能であり,欠かすことのできないモダリティーである.また,胆嚢病変に対するEUS-FNAは黄色肉芽腫性胆嚢炎(XGC)などとの良悪性の鑑別,化学療法前のエビデンス取得に必要であり,その感度,特異度ともに高く診断に有用である.しかし,胆汁漏出という偶発症を防ぐことが最も重要である.次世代シークエンサーの普及により,胆嚢癌を含む胆道癌においてもドライバー遺伝子が報告され,これらを標的とした分子標的治療薬の治験も行われている.次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査は,EUS-FNAによる検体でも可能であり今後ますますEUS-FNAの必要性は高まるものと考えられる.

  • 遠藤 格, 松山 隆生, 熊本 宜文, 本間 祐樹, 土屋 伸広, 藤井 義郎
    2019 年 33 巻 2 号 p. 234-243
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    胆嚢癌の発生頻度は世界的に減少傾向であるが,未だに不幸な転帰をとる症例は後を絶たない.胆嚢癌の危険因子には民族性,地域性,性別,胆嚢結石,感染,肥満,膵・胆管合流異常,胆嚢腺筋腫症,喫煙,化学物質,赤唐辛子,重金属,などが報告されてきた.顕著な地域差は民族性や食生活,生活環境などの複合した結果かもしれない.胆嚢結石が最も強い危険因子であるが,胆嚢結石の大きさや病歴持続時間だけでなく胆汁中コレステロール生成と関連する酵素,いわゆる倹約遺伝子の多型といった遺伝的背景が関連している可能性もある.今後,複数の危険因子を有する患者における予防的腹腔鏡下胆嚢摘出術の意義については更なる研究の蓄積が必要である.

症例報告
  • 松本 龍, 北川 裕久, 橋田 和樹, 石田 悦嗣, 能登原 憲司
    2019 年 33 巻 2 号 p. 244-249
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代女性.健診の腹部超音波で胆管拡張を指摘された.腹部造影CT及びMRCPで肝外胆管に18mm大の嚢状拡張を認め,戸谷Ic型先天性胆道拡張症と診断した.ERCPは同意がえられず,膵・胆管合流異常は確認できなかった.術中胆道造影でリアルタイムに乳頭括約筋運動を観察して膵・胆管合流異常と診断し,左右肝管合流部直下から膵管合流部直上までの肝外胆管を切除した.特に膵側胆管の切離は術中胆道造影で位置確認を繰り返して行い,膵管を損傷することなく,十分な切除を行いえた.近年の画像技術の進歩に伴い,合流異常の診断に胆道直接造影が不要な症例もあるが,本症例は乳頭括約筋作用が膵・胆管合流部直下の共通管初部まで及んでいたため,術中胆道造影ではじめて確定診断しえた.また,膵側胆管を可能な限り残さずかつ安全に切除するために,術中造影で確認しつつ膵内より剥離し切離ラインを決定する方法が有用であった.

  • 落合 一成, 土岐 真朗, 両角 克朗, 吉田 翼, 深澤 友里, 太田 博崇, 権藤 興一, 渡邉 俊介, 倉田 勇, 山口 康晴, 森 ...
    2019 年 33 巻 2 号 p. 250-254
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    症例は79歳男性.慢性心不全急性増悪で入院中に心窩部痛,発熱が出現.肝胆道系酵素及び炎症反応の上昇を認めた.腹部CT検査で胆嚢内と遠位胆管に高吸収域を認めた.急性閉塞性胆管炎の診断でERCPを施行し,ENBDチューブを留置した.後日施行した腹部CT検査で遠位胆管の高吸収域は消失していた.胆汁中のアミオダロンとその代謝物が高濃度であり,閉塞性黄疸の原因と考えられた.症例は内服継続が必要であったため,ESTを施行した.以後,閉塞性黄疸,急性胆管炎の再発は認めていない.アミオダロンによる閉塞性黄疸,急性胆管炎の報告は本邦ではなく,またESTが再発予防に関与したと考えられ報告する.

  • 児玉 亮, 三枝 久能, 牧野 睦月, 川口 研二
    2019 年 33 巻 2 号 p. 255-263
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    症例は60歳台,男性.黄疸を主訴に入院した.腹部造影CT検査では肝内胆管から総胆管にかけて拡張がみられ下部胆管で狭窄しており,造影すると遅延性に濃染する壁肥厚を認めた.ERCPでは胆嚢管分岐部より乳頭部側で壁硬化を認め,乳頭部近傍で強い狭窄を認めた.狭窄部の生検で扁平上皮癌を認めた.胆管腺扁平上皮癌の術前診断で膵頭十二指腸切除術を行った.病変の乳頭部側では扁平上皮癌が優位,病変の肝側では粘膜内進展主体の腺癌が優位であり,両者の間では扁平上皮癌と腺癌が移行像を伴い混在していた.胆管造影と病理所見を対応させると,扁平上皮癌優位の領域でより強い狭小化を認めた.扁平上皮癌優位の領域からの生検で扁平上皮癌の術前診断が可能であった.

  • 高橋 幸治, 鹿志村 純也, 仁平 武
    2019 年 33 巻 2 号 p. 264-271
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    症例1は84歳女性で,胆管炎を伴う胆石性膵炎に対してERCPを施行し,8Fr・10cmのストレート型胆管プラスチックステントを留置した.自覚症状はなかったが,2カ月後のCT検査でステントによる十二指腸穿孔を認めた.内視鏡的なステント抜去と穿孔部のクリップで閉鎖を行い,経過良好で退院した.症例2は93歳女性で,総胆管結石に対してERCPを施行したが,結石除去が困難であり,8.5Fr・9cmのストレート型胆管プラスチックステントを留置した.自覚症状はなかったが,5カ月後に結石除去目的で内視鏡を挿入すると,ステントが対側の十二指腸粘膜に刺入していた.CT検査を行うとステントによる十二指腸穿孔が確認された.内視鏡的にステントを抜去し,穿孔部はクリップで閉鎖し,経過良好で退院した.2例とも胆管ステントによる十二指腸穿孔があったが無症状であり,クリップによる内視鏡的穿孔部閉鎖が有効であった.

  • 鈴木 修司, 下田 貢, 丸山 常彦, 大城 幸雄, 森下 由紀雄
    2019 年 33 巻 2 号 p. 272-279
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    長期生存を認めている極めて稀な胆管原発癌肉腫を経験したので報告する.症例は69歳の男性で,黄疸を主訴に近医受診し,胆管癌疑いにて紹介となった.CT,MRIでは中下部胆管に壁肥厚と造影効果を認めた.胆管細胞診はclassIIIであったが,遠位胆管癌の疑いにて手術を施行した.開腹すると横行結腸間膜に3cm大の孤立性結節を認めたが,肉眼的根治切除可能と考え,亜全胃温存膵頭十二指腸切除+横行結腸部分切除を施行した.病理検査では腫瘍は6cm×3cm大で肝側断端からVater乳頭まで進展し,HE染色では肉腫様成分と腺癌や扁平上皮癌からなる癌成分の混在を認め,横行結腸間膜の腫瘤は黄色肉芽腫であった.免疫組織学的検査ではAE1/AE3,Vimentin陽性,HHF35弱陽性で,胆管原発のいわゆる癌肉腫であった.術後S-1を内服継続し,術後42カ月明らかな局所再発,遠隔転移なく生存中である.

  • 上田 順彦, 三浦 聖子, 甲斐田 大資, 大西 敏雄, 宮田 隆司, 藤田 秀人, 木南 伸一, 小坂 健夫
    2019 年 33 巻 2 号 p. 280-287
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    無石の急性胆嚢炎に対して緊急で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行したところ,術中に右側肝円索を伴った症例であることが判明した1例を報告する.症例は51歳,女性.主訴は上腹部痛.無石の急性胆嚢炎の診断で緊急で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.通常の4点ポート法で開始した.胆嚢は腫大し,胆嚢の頸部は肝円索の左側の胆嚢床に広く面で付着し,体部は肝円索の右側に膜様の組織で付着していた.右側肝円索を伴った急性胆嚢炎と診断した.胆嚢頸部へ直接アプローチが困難なため底部より順行性に胆嚢を剥離し,最後に胆嚢管を露出し胆道造影後切離した.自験例は胆嚢頸部で屈曲しており,この部より体底部の壁は浮腫で著明に肥厚していた.術後経過は良好であった.右肝円索症例では胆嚢の付着部位によっては胆嚢が屈曲して胆嚢炎を引き起こす可能性があることが示唆された.

  • 木建 薫, 橋本 泰司, 江口 紀章, 嶋本 文雄
    2019 年 33 巻 2 号 p. 288-293
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    69歳男性,腹痛と背部痛を主訴に当院受診した.血液検査では炎症反応の上昇と閉塞性黄疸および高度肝障害を認めた.腹部エコーおよび腹部CTより胆嚢内と胆管内に血腫を疑う所見を認めた.ERCPを施行し,Vater乳頭より凝血塊の排出を認め,胆道出血と診断した.ENBDチューブにて減黄後,胆嚢摘出術を施行した.摘出標本内には凝血塊が充満していた.病理組織学的所見では,胆嚢壁の一部に出血を伴う全層性の壊死層を認め,壊死性胆嚢炎の診断であった.自験例では黄疸と肝障害を認めENBDチューブ留置による減黄処置を要したが,胆嚢出血は時にショックに至るため,全身状態が許せば可能な限り早急に手術を施行すべきである.

胆道専門医講座 胆道病変の診断のコツとピットフォール
  • 岡庭 信司
    2019 年 33 巻 2 号 p. 294-307
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    超音波(US)は簡易で低侵襲なことから,スクリーニングにも広く用いられている.しかし,胆道は解剖学的な位置関係が複雑であるだけでなく,肥満や消化管ガスにも影響を受けやすいことからUSによる描出が困難な領域でもある.

    胆道の描出は仰臥位よりも左側臥位の方が容易であり,小さな病変の拾い上げには高周波プローブや拡大観察が必須である.

    胆嚢は多重反射やサイドローブといったアーチファクトに注意が必要である.さらに,US像を有茎性隆起型,広基性隆起型,壁肥厚型の3群に分類すると,鑑別のみならず深達度診断にも有用である.

    肝外胆管は逆“く”の字の走行をしているため,プローブを時計方向に回転させ,患者の右側に向けながら足側に進めると,肝門部領域から遠位胆管まで描出できる.さらに,虚脱や胆泥の貯留を伴う腫大といった胆嚢の異常像は,潜在的な胆管病変の拾い上げに有用である.

  • 櫻井 康雄
    2019 年 33 巻 2 号 p. 308-320
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    近年のCT,MRIの進歩はめざましいものがあり,胆道系疾患の診断における役割は非常に大きなものとなった.CTではmultidetector-row CTの進歩により時間分解能,空間分解能が飛躍的に向上し,胆管壁,胆嚢壁の肥厚や造影態度の微妙な変化をとらえることが可能となった.MRIでも空間分解能,時間分解能が向上し,高いコントラスト分解能をいかせるようになり,特にMRCPと拡散強調像の発達による影響が大きい.しかし,それに伴って作成される画像の種類,枚数は膨大なものとなり,検査一つ一つを順番に全てに目を通すのは非効率的である.読影に際しては,疾患ごとに診断の鍵となる画像検査があり,読影にはちょっとしたコツがある.比較的遭遇する機会の多い,胆道結石,胆嚢隆起性病変,胆嚢壁肥厚性病変,胆管病変の診断におけるCT,MRIの役割を,そのコツとピットフォールを交えて解説する.

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