胆道
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5 巻, 2 号
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  • 中村 隆
    1991 年 5 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝内結石症の病態および成因の解明の1つとして,雑種成犬の部分肝に胆汁うっ帯ならびに胆道感染を負荷した肝内結石症のモデル犬を作製し,胆道感染の肝内胆管枝に及ぼす影響について検討した結果,以下の成績を得た.肝内大型胆管枝において,好気性菌と嫌気性菌との混合感染群では,胆管壁の線維性肥厚や炎症細胞浸潤などの慢性炎症所見が高度であった.また,胆管上皮の乳頭状増殖や胆管壁内粘液腺の増生などの増殖性変化が顕著であり,これらの所見はヒト肝内結石症で高率に見られる慢性増殖性胆管炎の像と極めて類似していた.一方,好気性菌のみの単独感染群では,胆管壁の慢性炎症所見は混合感染群と同様に高度であったが,胆管上皮の増殖性変化は極めて軽微であった.以上の成績より,慢性増殖性胆管炎における胆管上皮の増殖性変化には嫌気性菌が大きく関与していることが示唆された.
  • -ヒト赤血球膜を用いて-
    佐川 広, 田妻 進, 水野 重樹, 佐々木 晴敏, 初鹿 寿美恵, 伊藤 正樹, 峠 誠司, 山下 郡司, 相原 直樹, 堀内 至, 梶山 ...
    1991 年 5 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    タウロデオキシコール酸(TDCA),タウロケノデオキシコール酸(TCDCA),タウロコール酸(TCA),タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)を用いて,各種胆汁酸の細胞膜障害性をヒト赤血球膜を用いて溶血を指標として検討した.その結果膜障害性の強さは,TDCA>TCDCA>TCA>TUDCAの順で濃度および時間依存性であった.一方,高送液体クロマトグラフィーで算定された各種胆汁酸の疎水性は膜障害性の強度と一致し,両者は正の相関を示した(r=0.99,p<0.01).さらに,その膜障害性は,ホスファチジルコリンおよび牛血清アルブミン添加によって阻止されたが,コレステロール,豚胃粘膜ムチン添加では阻止されなかった.透過型電子顕微鏡による赤血球膜表面の形態学検討では,胆汁酸による膜内粒子の溶出,微絨毛様の突起形成が認められた.以上より,胆汁酸はその界面活性作用によって,膜脂質二重層の構築を変化させることによって膜障害を惹起し,その強度は胆汁酸の疎水性によって規定されると考えられた.
  • -とくに減黄術後ならびに減黄術兼肝切除後のビリルビン分画の変動-
    松田 信介
    1991 年 5 巻 2 号 p. 133-145
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    雑種成犬を用い,胆嚢摘除後総胆管を結紮切離して閉塞性黄疸を作成し,2,3週後に減黄術あるいは減黄術+70%肝切除を施行してビリルビン代謝の変動について検索した.胆道閉塞期間が長期に及ぶものや肝切除併施例では減黄術後黄疸が遷延し,予後も不良であった.減黄術後の血清ビリルビン分画の変動をみると黄疸持続期間が長くなるにつれてbilirubin diconjugate(BDC)の減少率が不良となったが,肝切除を併施するとさらにbilirubin monoconjugate(BMC)やbilirubin unconjugate(BUC)の減少率も不良となり,δ-bilirubin/direct bilirubinは低下した.胆汁中ビリルビン分画は減黄術のみのものでは正常犬と差はなかったが,肝切除を併施するとBDCが減少し,bilirubin monoglucuronideが増加した。肝組織中のUDP-glucuronyltransferase活性は減黄術により回復したが,肝切除を加えると低下した.以上,黄疸持続期間が長期に及ぶとBDCの排泄障害の期間が遷延し,これに肝切除を加えるとBUCやBMCの抱合能の低下も加わって,黄疸がさらに遷延あるいは増悪するものと考えられた.
  • 真弓 俊彦, 蜂須賀 喜多男, 久世 真悟, 近藤 真治, 青野 景也, 新井 利幸, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 塩見 正哉, 新美 教弘 ...
    1991 年 5 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胃切除後胆石症を術式別に検討し,術式別,特に再建方法の違いによる胆石症の特徴につき検討を行った.手術を施行した胃切除後胆石症92例を術式別にA群:食道胃吻合またはBI(27例),B群:BIIまたは胃空腸吻合(56例),B群:食道空腸吻合(9例)の3群に分類し検討した.A群Cから群になるにしたがって胆管に存在する頻度,色素胆石.とくにビリビルンカルシウム石の頻度が高くなり,特に,食道胃吻合の症例は全例胆合例みに結石がみられ,コレステロール胆石が66.7%と多かったのに対して,食道空腸吻嚢ので2/3の症例で結石が胆管に存在し,全例色素胆石であった.胃切除から胆石症症状出現までの期間はC群では他群に比べ有意に短かく,また,胃切除時のリンパ節郭清は胆石症の早期発生に関与していた.以上より,胃切除後胆石症においては迷切の影響だけではなく,胃切除の範囲や再建術式も大いに関連があると思われた.
  • 多賀谷 信美, 竹岡 秀生, 冨田 利夫, 小暮 洋暉, 田島 芳雄
    1991 年 5 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    切除不能の悪性胆管閉塞例に対して経皮経肝胆管内瘻術(以下PTBE)が盛んに行われるようになったが,PTBEに起因した合併症は比較的多く認められ,PTBE後の管理には問題が残されている,われわれはPTBEに際し,皮下埋め込み式インフューザ・ポートを内瘻チューブに接続し,良好な経過をとった2例を経験したので報告した.この方法の特徴は,1)内瘻チューブ内および胆管の洗浄,2)経時的胆管造影,3)胆管内薬剤注入,4)内瘻チューブのトラブルの原因究明ができることである.本法は,PTBE後の管理およびfollow up,患老のquality of lifeの向上に有用と思われた.
  • 上松 俊夫, 二村 雄次, 神谷 順一, 前田 正司, 近藤 哲, 安井 章裕, 塩野谷 恵彦
    1991 年 5 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は腹痛と発熱を主訴とする48歳の男性.経皮経肝胆道鏡検査(以下PTCS)を施行し,肝左葉外側後枝内の結石を切石した.結石成分分析の結果はコレステロール成分が90%を占めていた.肝左葉外側後枝は円筒状に拡張していたが,通常の肝内コレステロール結石症例とは異なり,その根部に高度の狭窄を認めた.内視鏡下に狭窄部の拡張術を施行したが,術後1年2ヵ月経過した現在,結石の再発や胆管の再狭窄を認めていない.症例を呈示して肝内コレステロール結石症の診断,治療に対するPTCSの有用性について述べた.
  • 越知 敬善, 鈴木 敏行, 小林 英治, 吉岡 宣夫, 小川 裕, 稲垣 孝憲, 鈴木 貞輔
    1991 年 5 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性,心窩部痛と黄疸を主訴に入院となった.腹部単純X線写真で胆嚢部に一致したX線不透過像を認めた.USで胆嚢腫大と総胆管拡張を,CTでは胆嚢内,総胆管内に高濃度域を認め胆嚢内で水平面を示した.PTCDを実施すると胆汁とともに黄緑色の粘土状の物質が吸引され,98%以上炭酸カルシウムであり,胆汁のpHは9.6と強アルカリ性であった.造影像では胆嚢管のラセン構造は正常に保たれていた.PTCSなどの諸検査を実施したが結石は認めず,石灰乳胆汁の完全排出を確認した後,PTCDチューブを抜出した.ERCPでも異常所見なく,US下で測定した胆嚢収縮率は60%と良好であった.1年前の腹部単純X線写真を見直してみると,胆嚢頸部に小結石,底部に石灰乳胆汁が指摘できた.自験例では,小結石による可逆的な胆嚢管の閉塞とともに,胆汁の強いアルカリ化も石灰乳胆汁の生成に強く関与していると考えられた.
  • -リザーバー留置皮下埋没法-
    竹内 一浩, 西野 裕二, 東郷 杏一, 久保 俊彰, 柳川 憲一, 小野田 尚佳, 金 義哲, 佐竹 克介, 梅山 馨
    1991 年 5 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    膵・胆道系悪性腫瘍をはじめ,他臓器癌の肝門部へのリンパ節転移などにより閉塞性黄疸をきたし,根治切除不能と判断された症例に対する経皮経肝胆道内瘻術は外科的内瘻術に比べ侵襲が少なく,また外瘻術に比べても患者を生理的な状態に保つ意味において極めて有用である.われわれは,洗浄用リザーバーを用いた経皮経肝胆道内瘻術(リザーバー留置皮下埋没法)を考案し,胆嚢癌1例,胆管癌1例および胃癌リンパ節転移1例に対して施行した.その結果,内瘻期間はそれぞれ28,48,164日問であったが,その間,胆管炎の併発もなく患者は満足のいく日常生活を送れた.成績が不良であった28日間の症例は,内瘻後に腫瘍の進展により左右胆管枝間の交通が消失したためであった.このことから,左右胆管枝間の交通が十分な症例に対しては,胆管洗浄を目的とするリザーバー留置皮下埋没法はチューブの閉塞や胆管炎の発生を予防することができ,内瘻期間の延長を期待できると思われた.
  • 大平 基之, 山田 政孝, 石川 裕司, 大平 賀子, 村住 和彦, 大田 人可, 矢崎 康幸, 関谷 千尋, 並木 正義
    1991 年 5 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性.右季肋部痛を主訴として入院した.US,CTでは肝右葉の腫瘍と肝内胆管の拡張を認めた.AFPが高値であり,腹腔鏡検査所見とあわせて肝細胞癌と診断した.ERCでは左右肝管合流部から総胆管にかけて,柔らかい感じの透亮像と左右肝管合流部の舌状の透亮像を認め,胆管内発育型肝細胞癌と診断したが,16日後のERCでは柔らかい感じの透亮像は消失していた.剖検で肝細胞癌の胆管内発育を確認した.胆管内発育型肝細胞癌では黄疸の消長が見られることがある.その機序として胆管内に発育した腫瘍の壊死部分や付着する凝血塊の脱落が推測されているが,これを画像診断で証明した報告は見当らない.本症例は胆管内発育型肝細胞癌における胆管内透亮像の消失を画像診断で初めて示したと思われるきわめて示唆に富む癌例であり,文献的考察を加えて報告した.
  • 佐藤 裕, 北原 賢二, 鮫島 隆一郎, 宮崎 耕治, 久次 武晴
    1991 年 5 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    異所性胆嚢,および総胆管結石を伴った肝右葉形成不全症という非常に稀な症例を経験したので,本症例における胆管結石の成因についての推論とともに報告する.症例は68歳男性で,数年来胆嚢の位置異常,肝右葉形成不全,胆石症の診断にて経過を見ていた患者で,今回根治手術を希望して入院した.ERCPにて痕跡的に残存したと思われる右肝管の基部に結石を思わせる陰影欠損を認めた.PTCD後に経皮経肝的胆道鏡(PTCS)を施行し,痕跡的に残存した右肝管に鋳型状に存在したビ系石を截石し得た.血管造影にて右肝動脈系と右門脈幹の欠損が確認された.開腹手術にても,胆嚢は代償性に肥大した肝左葉内側区の後上方に位置しており,その右側に肝組織を認めず,肝右葉形成不全症と確診した.術前にPTCSにて截石がなされているため,手術は十二指腸憩室切除,胆摘,総胆管切開,術中胆道鏡,総胆管ドレナージを施行した、術後22日目に全治退院となった.
  • 坂田 龍彦, 高倉 範尚, 大倉 充博, 中川 浩一, 河村 寛
    1991 年 5 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝外胆管癌のほとんどは腺癌であり,稀に腺扁平上皮癌の報告があるが扁平上皮癌の報告はきわめて稀である.最近,著者らは黄疸を主訴とした68歳男性に,膵内胆管原発の純粋な扁平上皮癌をみとめ治癒切除を施行した.その発生に関しては扁平上皮化生した胆管上皮の癌化,あるいは腺癌の扁平上皮癌化が考えられるが,本症例では腺癌の部分が全くみられず,先行する扁平上皮化生の癌化と考えられた.
  • 小木曽 清二, 山瀬 博史, 所 昌彦, 岡本 好史, 洪 洋史, 浅野 英一, 宋 敏鎬, 岡本 一男, 伊藤 真悟
    1991 年 5 巻 2 号 p. 193-198
    発行日: 1991/04/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    重複癌では,胃癌と他臓器癌との重複例が多いとされているが,胃癌と胆管癌の重複は比較的まれである.今回,中部胆管癌と早期胃癌の同時性重複癌を経験したので報告する.症例は65歳,男性で,主訴は黄疸.経皮経肝胆管ドレナージを行い,胆管造影にて中部胆管に著明な全周性狭窄像を認め,胆管癌と診断した.術前の消化管検索として,胃内視鏡検査を行ったところ,前庭部にIIc型早期胃癌を認めた.膵頭十二指腸切除術にて両病変を切除し得た.胆管病変は25×20mmの結節浸潤型の中分化型管状腺癌であった.胃病変は14×6mm,深達度mの高分化型管状腺癌であった.患者は術後8ヵ月,健在である.胆道系悪性腫瘍では胆道系の精査とともに術前に消化管の検索を行う必要があると思われた.
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