タウロデオキシコール酸(TDCA),タウロケノデオキシコール酸(TCDCA),タウロコール酸(TCA),タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)を用いて,各種胆汁酸の細胞膜障害性をヒト赤血球膜を用いて溶血を指標として検討した.その結果膜障害性の強さは,TDCA>TCDCA>TCA>TUDCAの順で濃度および時間依存性であった.一方,高送液体クロマトグラフィーで算定された各種胆汁酸の疎水性は膜障害性の強度と一致し,両者は正の相関を示した(r=0.99,p<0.01).さらに,その膜障害性は,ホスファチジルコリンおよび牛血清アルブミン添加によって阻止されたが,コレステロール,豚胃粘膜ムチン添加では阻止されなかった.透過型電子顕微鏡による赤血球膜表面の形態学検討では,胆汁酸による膜内粒子の溶出,微絨毛様の突起形成が認められた.以上より,胆汁酸はその界面活性作用によって,膜脂質二重層の構築を変化させることによって膜障害を惹起し,その強度は胆汁酸の疎水性によって規定されると考えられた.
抄録全体を表示